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16 諸国連合
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「帝国が?確かか?」
「物見の者の報告です。ディスペラント騎士団がそう伝えてきました」
「そやつらなら正確なんだろうな」
「いかがいたしましょう、国王陛下」
「諸国連合の招集会議じゃ!」
「ただちに」
アルデアン王国、ファニリアス王国、ビルゲンシュタイン王国、レイカ共和国、そしてスタンリー公国の重鎮が集められた。ほかに中小国が七か国、王代理をよこした。
「諸君に集まってもらった理由をいまさら説明する必要はないな」
アルデアン国王ピシャール・アルデンスタインがそう切り出した。ことは重大かつ急を要する。ぼやぼやしてはいられないのだ。
「兄上にお聞きしたい」
「なんだ、リシャール」
リシャール・スタンレー。スタンリー公国侯爵。事実上の王なのだが、兄のピシャールの手前、侯爵の位にある。
「魔族軍は百万、わが連合はあわせると一千万。戦力の差は歴然。おたおたすることでしょうか?」
「帝国が滅んだのは知っておろう?」
「帝都を奪われた、とは聞いております」
「ふん」
それだけか、というような顔をピシャールはした。恐らくこの場にいる誰もがその正確なことを知らない。精強をもって知られ、敵なしと恐れられていたディスペラント騎士団三千が、そのほとんどを失って得た情報だ。知る由もないだろう。
「違うのですか、兄上」
「公議の場だ。兄上はよせ」
「これは失礼」
「さて、多大なる犠牲をもって明らかになったことがある。帝国の滅亡だ」
おお、とざわめく。あの強大な軍事力を持ち、ようやく諸国連合をまとめ上げ、何とか均衡を保たせていたが、その帝国が滅亡した?こんな短時間で?魔族軍が帝国領に攻め入ったのはほんの数日前だったんじゃないのか?
「アルデアン王よ、しかし滅亡とはいささか大げさではないか?確かに帝都が陥落したとしても、強大な軍事力を持つ帝国各都市がそう簡単に…」
「すべて蹂躙され…生きとし生けるものはない、という報告じゃ」
「まさか…」
そんなことは不可能だ。みなそう思った。たかが百万の軍勢だ。何千万といる帝国領民を殺しつくすなどできっこない。
「まさか、ではない。われわれは勘違いしていたのだ」
「勘違い?い、いやそれはどのような…」
「もはや勘違いではすまされないな…この場になって…」
そう言ってアルデアン王は顔を伏せた。
「兄上!お気を確かに!いま一度聞きます!勘違いとは何のことですか!」
「ああ、すまない…急に気が抜けたのじゃ…。そうだ、われわれは勘違いしておったのじゃ。あれが魔族軍だとばかり思っておった」
「はあ?あいつらは魔族ではないと?」
「そうじゃない…あれは魔族だ…それは間違ってはいない」
「ではなぜ勘違いなどと」
アルデアン王は言葉を詰まらせながら、絞り出すように言った…。
「あれは魔族軍などではない…。あれは…魔王軍、なのだ!」
全員が死の予感を感じていた。魔王…もはやそれは人類に終末を告げる言葉だった。
「物見の者の報告です。ディスペラント騎士団がそう伝えてきました」
「そやつらなら正確なんだろうな」
「いかがいたしましょう、国王陛下」
「諸国連合の招集会議じゃ!」
「ただちに」
アルデアン王国、ファニリアス王国、ビルゲンシュタイン王国、レイカ共和国、そしてスタンリー公国の重鎮が集められた。ほかに中小国が七か国、王代理をよこした。
「諸君に集まってもらった理由をいまさら説明する必要はないな」
アルデアン国王ピシャール・アルデンスタインがそう切り出した。ことは重大かつ急を要する。ぼやぼやしてはいられないのだ。
「兄上にお聞きしたい」
「なんだ、リシャール」
リシャール・スタンレー。スタンリー公国侯爵。事実上の王なのだが、兄のピシャールの手前、侯爵の位にある。
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「帝国が滅んだのは知っておろう?」
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「ふん」
それだけか、というような顔をピシャールはした。恐らくこの場にいる誰もがその正確なことを知らない。精強をもって知られ、敵なしと恐れられていたディスペラント騎士団三千が、そのほとんどを失って得た情報だ。知る由もないだろう。
「違うのですか、兄上」
「公議の場だ。兄上はよせ」
「これは失礼」
「さて、多大なる犠牲をもって明らかになったことがある。帝国の滅亡だ」
おお、とざわめく。あの強大な軍事力を持ち、ようやく諸国連合をまとめ上げ、何とか均衡を保たせていたが、その帝国が滅亡した?こんな短時間で?魔族軍が帝国領に攻め入ったのはほんの数日前だったんじゃないのか?
「アルデアン王よ、しかし滅亡とはいささか大げさではないか?確かに帝都が陥落したとしても、強大な軍事力を持つ帝国各都市がそう簡単に…」
「すべて蹂躙され…生きとし生けるものはない、という報告じゃ」
「まさか…」
そんなことは不可能だ。みなそう思った。たかが百万の軍勢だ。何千万といる帝国領民を殺しつくすなどできっこない。
「まさか、ではない。われわれは勘違いしていたのだ」
「勘違い?い、いやそれはどのような…」
「もはや勘違いではすまされないな…この場になって…」
そう言ってアルデアン王は顔を伏せた。
「兄上!お気を確かに!いま一度聞きます!勘違いとは何のことですか!」
「ああ、すまない…急に気が抜けたのじゃ…。そうだ、われわれは勘違いしておったのじゃ。あれが魔族軍だとばかり思っておった」
「はあ?あいつらは魔族ではないと?」
「そうじゃない…あれは魔族だ…それは間違ってはいない」
「ではなぜ勘違いなどと」
アルデアン王は言葉を詰まらせながら、絞り出すように言った…。
「あれは魔族軍などではない…。あれは…魔王軍、なのだ!」
全員が死の予感を感じていた。魔王…もはやそれは人類に終末を告げる言葉だった。
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