46 / 77
安元元年(1175年)
内政官の育成をしましょうまずは算数国語から
しおりを挟む
さて、平安時代末期において中央官庁は特定の氏族が特殊技能や知識を家職・家業としてそれに関連する官司を支配し、その上首いわゆる責任者にあたる官職を世襲する体制になっていました。
官司請負制によって継承されるのは、単にその官職が持つ地位や名誉、職権のみではなく、それに付属する所領や課税権限など様々な経済的な権益などを伴っていたのです。
そして中原氏は明法道、明経道、外記、東市正、大炊寮や酒造司、検非違使を世襲職とする京の都の行政や教育に関する家だったのです。
明法道は、律令法(法学)を講義した学科で法学部の教授みたいなもの。
明経道は、儒学を研究・教授した学科で大学の文系クラスの教授みたいなもの。
外記は少納言の下に置かれ、中務省の内記が作成した詔勅を校勘し、太政官から天皇に上げる奏文を作成したり、太政官の上卿の指示に従って朝廷の儀式・公事の奉行を行い、必要に応じて関係する先例を調査・上申してその円滑な遂行に努めたり、更に人事案件の手続の一端を行う躍如です。
その重要性から、平安時代中期には五位に昇進する大外記も現れるようになったくらいです。
これを大夫外記と呼ばれ、後に大夫外記の筆頭を局務とも称するようになるのです。
東市正は都の東に置かれていた市を監督をおこない、市における不正及び犯罪の防止や交易における度量衡の管理、物価の監視などにあたる他、時に応じて公用に供する物資の調達にもあたった役職で、市の治安を扱う事から検非違使を兼務することもあったのです。
大炊寮は宮中で行われる仏事、神事の供物、宴会での宴席の準備、管理を分掌するし、御料地の管理も行いました。
酒造司はその名の通り主な職務は酒や醴・酢などの醸造をつかさどった役所です。
検非違使は「非違(非法、違法)を検察する天皇の使者」の意で警察のようなものですね。京都の治安維持と民政を所管したのです。
他にも蔵人方の出納は、蔵人所の職員の1つで蔵人所の財物の出納をはじめ、一切の庶務を掌った場所です。
刑部省の品官として罪人を裁く判事も中原が行っています。
主殿寮で内裏における消耗品の管理・供給官奴婢・官戸の管理も行ったりもします。
また丹波重康にまなび典薬寮医生となる中原有言の後裔は典薬の家系でもありました。
また陰陽師や天文に関する職務についたものもおりました。
このように様々な官僚機構や大学の講師を行っている中原ですが、逆にいえばそういった知識はその他の家系には伝わっていないということでもあります。
なおのこと普通の農民は読み書きや計算なども細かくはできません。
しかし、軍事の規模が増大し、武器や糧秣の準備や管理を領地内の郎党などに行わせるのではなく、一元で管理しようとするのなら、だがそういった物資や食料の位の管理や輸送の手配を行う人間が必要です。
本来の私たちは国庫に集められた米を奪い取ったり反延暦寺派の寺社に食呂の寄進を願ったりすることで食料を手に入れていたはずですが、それでは不安定要素が多すぎますからね。
そこで、まずは、数の数え方それと足し算と引き算ですね。
「数の数え方ですが1,2,3,4,5,6,7,8,9、10を基本とします。
1は一で壱
2はニで弐
3は三で参
4は四で肆
5は五で伍
6は六で陸
7は七で漆
8は八で捌
9は九で玖
繰り上がって10は十で拾
100は百で佰
1,000は千で仟
10,000は万で萬となります
足すは+
引くは-
掛けるは×
割るは÷
の記号で表します
10までは左右の指の数と同じですので指を折って数えれば理解しやすいでしょう」
「巴様流石にそれくらいはわかります」
「では9+9はいくつでしょうか?」
「ええと……」
指を折って数えますが両手には10本しか指がないので困っているようです」
「答えは18ですね、1+1から10+10ぐらいまでは暗記してください」
「わ、わかりました」
私は白い石10こと黒い石10こを渡して、20までの足し算と引き算を覚えられるようにします。
その次は掛け算ですね。
1☓1=1
1☓2=2 2☓2=4
1☓3=3 2☓3=6 3☓3=9
1☓4=4 2☓4=8 3☓4=12 4☓4=16
1☓5=5 2☓5=10 3☓5=15 4☓5=20 5☓5=25
1☓6=6 2☓6=12 3☓6=18 4☓6=24 5☓6=30 6☓6=36
1☓7=7 2☓7=14 3☓7=21 4☓7=28 5☓7=35 6☓7=42 7☓7=49
1☓8=8 2☓8=16 3☓8=24 4☓8=32 5☓8=40 6☓8=48 7☓8=56 8☓8=64
1☓9=9 2☓9=18 3☓9=27 4☓9=36 5☓9=45 6☓9=54 7☓9=63 8☓9=72 9☓9=81
私は紙に書いた中国式の九九で掛け算を説明します。
「このような場合9かける9から数を減らしていって覚えるのが一番かんたんです。
最初はこれを移したものを暗記するようにしてください」
「はい、分かりました」
「それからこれが、物資や駄馬などを管理する帳面です。
たとえば木曽屋敷の蔵に槍が10本あるとしたらここに槍10と書きます。
さらに槍10本が5組入ってきたらやりは何本でしょうか?」
「えっと……10本が5組だと50でそれに最初からあるのが10本ですから合わせて60本です」
「はい、そのとおりです
あなた達が実際に蔵の出納を行う際は最初に棚卸しを行って在庫を確認してもらいます」
ちなみに今までは米などの帳簿はちゃんとつけてないですね……てへ。
これからはきちんとやるようにしましょうか。
「文字については最初は必要そうなものから覚えてもらいます。
武器とか鎧とか納税品などです」
「わかりました」
漢の後方を支えた蕭何のような有能な後方内政官にぜひなって欲しいものです。
官司請負制によって継承されるのは、単にその官職が持つ地位や名誉、職権のみではなく、それに付属する所領や課税権限など様々な経済的な権益などを伴っていたのです。
そして中原氏は明法道、明経道、外記、東市正、大炊寮や酒造司、検非違使を世襲職とする京の都の行政や教育に関する家だったのです。
明法道は、律令法(法学)を講義した学科で法学部の教授みたいなもの。
明経道は、儒学を研究・教授した学科で大学の文系クラスの教授みたいなもの。
外記は少納言の下に置かれ、中務省の内記が作成した詔勅を校勘し、太政官から天皇に上げる奏文を作成したり、太政官の上卿の指示に従って朝廷の儀式・公事の奉行を行い、必要に応じて関係する先例を調査・上申してその円滑な遂行に努めたり、更に人事案件の手続の一端を行う躍如です。
その重要性から、平安時代中期には五位に昇進する大外記も現れるようになったくらいです。
これを大夫外記と呼ばれ、後に大夫外記の筆頭を局務とも称するようになるのです。
東市正は都の東に置かれていた市を監督をおこない、市における不正及び犯罪の防止や交易における度量衡の管理、物価の監視などにあたる他、時に応じて公用に供する物資の調達にもあたった役職で、市の治安を扱う事から検非違使を兼務することもあったのです。
大炊寮は宮中で行われる仏事、神事の供物、宴会での宴席の準備、管理を分掌するし、御料地の管理も行いました。
酒造司はその名の通り主な職務は酒や醴・酢などの醸造をつかさどった役所です。
検非違使は「非違(非法、違法)を検察する天皇の使者」の意で警察のようなものですね。京都の治安維持と民政を所管したのです。
他にも蔵人方の出納は、蔵人所の職員の1つで蔵人所の財物の出納をはじめ、一切の庶務を掌った場所です。
刑部省の品官として罪人を裁く判事も中原が行っています。
主殿寮で内裏における消耗品の管理・供給官奴婢・官戸の管理も行ったりもします。
また丹波重康にまなび典薬寮医生となる中原有言の後裔は典薬の家系でもありました。
また陰陽師や天文に関する職務についたものもおりました。
このように様々な官僚機構や大学の講師を行っている中原ですが、逆にいえばそういった知識はその他の家系には伝わっていないということでもあります。
なおのこと普通の農民は読み書きや計算なども細かくはできません。
しかし、軍事の規模が増大し、武器や糧秣の準備や管理を領地内の郎党などに行わせるのではなく、一元で管理しようとするのなら、だがそういった物資や食料の位の管理や輸送の手配を行う人間が必要です。
本来の私たちは国庫に集められた米を奪い取ったり反延暦寺派の寺社に食呂の寄進を願ったりすることで食料を手に入れていたはずですが、それでは不安定要素が多すぎますからね。
そこで、まずは、数の数え方それと足し算と引き算ですね。
「数の数え方ですが1,2,3,4,5,6,7,8,9、10を基本とします。
1は一で壱
2はニで弐
3は三で参
4は四で肆
5は五で伍
6は六で陸
7は七で漆
8は八で捌
9は九で玖
繰り上がって10は十で拾
100は百で佰
1,000は千で仟
10,000は万で萬となります
足すは+
引くは-
掛けるは×
割るは÷
の記号で表します
10までは左右の指の数と同じですので指を折って数えれば理解しやすいでしょう」
「巴様流石にそれくらいはわかります」
「では9+9はいくつでしょうか?」
「ええと……」
指を折って数えますが両手には10本しか指がないので困っているようです」
「答えは18ですね、1+1から10+10ぐらいまでは暗記してください」
「わ、わかりました」
私は白い石10こと黒い石10こを渡して、20までの足し算と引き算を覚えられるようにします。
その次は掛け算ですね。
1☓1=1
1☓2=2 2☓2=4
1☓3=3 2☓3=6 3☓3=9
1☓4=4 2☓4=8 3☓4=12 4☓4=16
1☓5=5 2☓5=10 3☓5=15 4☓5=20 5☓5=25
1☓6=6 2☓6=12 3☓6=18 4☓6=24 5☓6=30 6☓6=36
1☓7=7 2☓7=14 3☓7=21 4☓7=28 5☓7=35 6☓7=42 7☓7=49
1☓8=8 2☓8=16 3☓8=24 4☓8=32 5☓8=40 6☓8=48 7☓8=56 8☓8=64
1☓9=9 2☓9=18 3☓9=27 4☓9=36 5☓9=45 6☓9=54 7☓9=63 8☓9=72 9☓9=81
私は紙に書いた中国式の九九で掛け算を説明します。
「このような場合9かける9から数を減らしていって覚えるのが一番かんたんです。
最初はこれを移したものを暗記するようにしてください」
「はい、分かりました」
「それからこれが、物資や駄馬などを管理する帳面です。
たとえば木曽屋敷の蔵に槍が10本あるとしたらここに槍10と書きます。
さらに槍10本が5組入ってきたらやりは何本でしょうか?」
「えっと……10本が5組だと50でそれに最初からあるのが10本ですから合わせて60本です」
「はい、そのとおりです
あなた達が実際に蔵の出納を行う際は最初に棚卸しを行って在庫を確認してもらいます」
ちなみに今までは米などの帳簿はちゃんとつけてないですね……てへ。
これからはきちんとやるようにしましょうか。
「文字については最初は必要そうなものから覚えてもらいます。
武器とか鎧とか納税品などです」
「わかりました」
漢の後方を支えた蕭何のような有能な後方内政官にぜひなって欲しいものです。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
かくされた姫
葉月葵
歴史・時代
慶長二十年、大坂夏の陣により豊臣家は滅亡。秀頼と正室である千姫の間に子はなく、側室との間に成した息子は殺され娘は秀頼の正室・千姫の嘆願によって仏門に入ることを条件に助命された――それが、現代にまで伝わる通説である。
しかし。大坂夏の陣の折。大坂城から脱出した千姫は、秀頼の子を宿していた――これは、歴史上にその血筋を隠された姫君の物語である。
華闘記 ー かとうき ー
早川隆
歴史・時代
小牧・長久手の戦いのさなか、最前線の犬山城で、のちの天下人羽柴秀吉は二人の織田家旧臣と再会し、昔語りを行う。秀吉も知らぬ、かつての巨大な主家のまとう綺羅びやかな光と、あまりにも深い闇。近習・馬廻・母衣衆など、旧主・織田信長の側近たちが辿った過酷な、しかし極彩色の彩りを帯びた華やかなる戦いと征旅、そして破滅の物語。
ー 織田家を語る際に必ず参照される「信長公記」の記述をふたたび見直し、織田軍事政権の真実に新たな光を当てる野心的な挑戦作です。ゴリゴリ絢爛戦国ビューティバトル、全四部構成の予定。まだ第一部が終わりかけている段階ですが、2021年は本作に全力投入します! (早川隆)
忍者同心 服部文蔵
大澤伝兵衛
歴史・時代
八代将軍徳川吉宗の時代、服部文蔵という武士がいた。
服部という名ではあるが有名な服部半蔵の血筋とは一切関係が無く、本人も忍者ではない。だが、とある事件での活躍で有名になり、江戸中から忍者と話題になり、評判を聞きつけた町奉行から同心として採用される事になる。
忍者同心の誕生である。
だが、忍者ではない文蔵が忍者と呼ばれる事を、伊賀、甲賀忍者の末裔たちが面白く思わず、事あるごとに文蔵に喧嘩を仕掛けて来る事に。
それに、江戸を騒がす数々の事件が起き、どうやら文蔵の過去と関りが……
生き抜きたいのなら「刻」をみがけ
たぬきち25番
歴史・時代
『生き抜きたいのなら「刻(とき)」をみがけ』
『刀』という道具が歴史を変えたことは間違いない。
人々が刀と出会い、刀を使い始めた時代。
そんな時代に生きた異才研師の鉄。
物言わぬ刀が語る言の葉を紡げる鉄が、背負った使命は人々が思う以上に大きかった。
職人気質で人のよい研師『鉄』と、破天荒なのになぜか憎めない武士『宗』
そんな2人の物語。
※表紙は、たぬきち25番撮影
鶴が舞う ―蒲生三代記―
藤瀬 慶久
歴史・時代
対い鶴はどのように乱世の空を舞ったのか
乱世と共に世に出で、乱世と共に消えていった蒲生一族
定秀、賢秀、氏郷の三代記
六角定頼、織田信長、豊臣秀吉
三人の天下人に仕えた蒲生家三代の歴史を描く正統派歴史小説(のつもりです)
注)転生はしません。歴史は変わりません。一部フィクションを交えますが、ほぼ史実通りに進みます
※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』『ノベルアップ+』で掲載します
泥の中に咲く女
ニチカ
歴史・時代
壇ノ浦の戦い、自らの子が海に沈みゆくところを見ていることしかできなかった。徳子も重いしを懐に忍ばせて、重い着物が水を吸って沈みゆく水の中へ死んでいくつもりだったのだ。海の底の竜宮城で徳子は安徳天皇と幸せに暮らすつもりだったのだ。
落ち行く平家の中で生き残った平家のプリンセス、徳子の人生の話。
『定められた人生が不幸だとは限りません、私は泥の中でも咲く花になりとうございます』
強く、美しく、賢い徳子の人生とは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる