転生ニートは迷宮王

三黒

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第8章

230 共闘

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「二人にも戦ってもらうかな」
「させないわ――魅了解除ディスチャーム」 
 
 だが、ゆらりと立ち上がった姉妹には特に変化がない。リョーガと同じように奪われたのか? ……ラビは今出てきたばっかりだ、それはありえないよな。
 
「衰えたな、''色欲''」

 空中にふわっと現れたのはルイン。の皮を被った何か。 
  
「……''強欲''。やはりアナタだったのね。まさか魅了チャームを使うとは思わなかったわ。よりにもよって彼女たちにね」
「貴様は唯一の懸念事項だった。が、よもや魅了解除ディスチャームすら満足に使えない程だとはな。最早私たちの敵ではない」 
「アラ、舐めないでほしいわね。アタシが魅了チャームだけじゃないって、知ってるでしょう?」 
 
 素因エレメントが震える。そうだ、ラビは強い。最終的にレルアを止めたのだってラビだ。操られてたとはいえ|上級天使__エイフリッド__#だからな。つーか最初入ってきたときもレルアに勝ってた。
  
「それを超える術など使えぬだろう。マコト!」
「うん。――創造クリエイト強制カレイズ戦えヴィレット
「させんわ――亜縛縄レス・エイン!」 
   
 リフィストが光の縄で姉妹を縛る。中々頑丈なようで、二人の動きは止まった。
 
「――創造クリエイト雷獄ツァルジュ!」 
 
 リョーガが上から雷の檻を被せる徹底ぶり。ファリトスが使ってたのに似てるな。
 
「よっし!」
「やるのう童! 彼奴らも同じように縛り上げてしまうか!」
「はい! 俺が仕掛けます――創造クリエイト閃光ナーシャ!」 
  
 うお、眩し……くはならなかった。あの術、範囲指定で打てたのか。
  
創造クリエイト――」 
「――解呪ファスト!」 
「無駄だ」 
 
 ラビの放った解呪ファストは、間に入ってきた偽ルインによって打ち消される。ボディーブロックできたのかその術。
 
「――狂化バーサク」 
「っ、――聖浄リファイス!」
「――解呪ファスト」  
 
 マコトが狂化バーサクを姉妹にかける。同時にシエルがルインの方に聖浄リファイスを撃ち出すが、これも偽ルインに消された。
 
「目以外も潰しておくんだったな、リョーガ。私はルインとは違う」
 
 斬り込んできたリョーガを軽くいなして笑う偽ルイン。
 と、姉妹が縄を解い……というか、ぶち切ってシエルの方に走る。
 
「わわっ! ――防御結界プロテクション!」
「ガァァァッ!」 
 
 魔術じゃなく、拳。髪を振り乱して掴みかかる姿は人ってよりは獣だ。
  
「なんてことを……!」  
「少し細工はしてるけど、別に凝った術じゃない。僕を殺せば止まるよ。君らにそれができればね」 
「――創造クリエイト雷獄ツァルジュ!」 
 
 すぐに雷の檻を 被せるリョーガだが、姉妹は手のひらが焦げるのも厭わずに檻の破壊を試みる。
 
「――昏睡スナイド!」 
「アアァ゛ァア!」 
「効いてない!」 
 
 いや、シエルの術ってだけあって効いてはいるな。だがすぐに覚醒してる感じだ。狂化の効果なのか、あの二人本来の能力なのか。
 
創造クリエイト――」 
「――解呪ファスト!」
「――祓魔の陣エクソス
「っ!!」 
  
 爆発がリョーガを襲う。創造クリエイトをキャンセルして陣の起動に切り替えたか。だが幸いにして、威力はそこまで高くない。 
 
「ラビ! 二人を止めるのはお主に任せるぞ! 我では殺しかねん!」
「ええ。任せて――」  
「さあいくぞ天使の娘! 聖雷イクセアリだ! 上での演習の通りだ、今回は捻らん! 合わせよ!」
「は、はい!」 
  
 偽ルインに向けて両手を向けるリフィストとシエル。今更ただの聖雷イクセアリが効くか? 大声で打ち合わせしてるってことは何か裏があるんだろうが。
 
「「――聖鎖雷アルド・イクセアリ!」」
 
 偽ルインを囲むように槍が降った。槍の間に細く走った電撃は、何重にもなって中央に繭を形成する。
 
「厄介な……マコト!」
「忙しい! 勝手に負けるな――創造クリエイト炎弾ファルダ!」
「――創造クリエイト炎弾ファルダ!」   
 
 マコトの方はリョーガに止められてるな。能力は半分までしか奪えない縛りなのか、割と拮抗してるように見える。
 マコトの使う術式を片っ端から相殺していけば、偽ルインを倒した後の人数差で勝てるってわけだな。
 
「――闇よデルス! 彼の者らを混沌カルード・シェ・の泥で覆い隠せケース・イオス!」 
「ァ゛ァァア゛アアァァ!!」
  
 ちょうど姉妹が雷の檻を破壊したタイミングで、ラビが術式を発動。空中に開いた穴から降り注いだ泥が、暴れる姉妹を覆って固まり、沈黙する。 
 
「マコト!」
「仕方ない。手段は選んでられないね――創造クリエイト吹風ウィレスカ!」 
「――創造クリエイト、っ!」  
 
 マコトが自らの体を浮かせて、蹲るエフィの元まで飛んでいく。
 
「どうせ魅了はもう使わないんだ。ここで僕が天使を受け継ぐ」
「待て――」
「ぅ、ぅあ、ああああああ!!」 
 
 マコトが手を握った瞬間、エフィの体が土気色に変色し始める。
 
「エフィ!」
 
 それを見て駆け出すリフィスト。
 
「援護します――創造クリエイト加速アクサール!」
「いいぞ童! さあ、覚悟せよ――亜滅槍レス・ニスタ!」 
 
 聖雷イクセアリよりも明るく輝く黄金の槍。リフィストは自らの背後に無数に出現したそれを一本引っ掴み、勢い良くマコトに突き刺した。
 が、 
  
「だめ、です、リフィスト様!」 
幻影ファントムだよ。まさか同じ手に引っかかってくれるなんてね」   
 
 腹を突き刺されていたのはリフィストだった。いつ幻影ファントムを? 今空間が歪んだことしか分からなかった。
 
「く……すまぬ、童……我は……っ、ぁあっ! ああぁああ!」  
「なんだ、神力の残っていない屑か。わざわざ奪うほどでもなかったかな」

 リフィストもエフィと同じように土気色になっていく。おいおい、なんか雲行き怪しくなってきたぞ。
 
『使い魔:リフィストが死亡しました』  
 
 冗談だよな? ……なあリフィスト?
 
「マコト! 早く助けろ!」
「黙っててほしいな。今少し集中してるんだから……」 
 
 マコトの背に翼が生えた。ついでに頭の上に光輪。 
 
「これで良し。ルインの分を合わせれば、ここで君たちを全員殺すくらいの力はある」    
 
 まずいぞ多分嘘じゃない。ずっとあの状態なのかは分からないが、少なくとも今はそれだけの力がある。
 
「俗に言う、天からの裁きってやつかな」 
 
 マコトが腕を振ると同時に、リョーガの周囲1メートルほどが光で照らされた。
 
「リョーガ! 避けて!」
「――天穿ヴァラース」 
  
 地面から空に向けて光が伸びる。ドサ、という音と共に、リョーガの腰から上が地面に落ちた。治癒ヒールは間に合わない。シエルにこれを治すまでの魔力は残ってない。
 
「シエ……ル……君は……」
「少し外しちゃったか。でも今のでコツは掴んだ。じゃあ、次」
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