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第8章
223 戦士カイン
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「り、聖浄!」
「効かねェ効かねェ、効かねェなァ!」
シエルの撃ち出した光球も、先程と同じように片手で叩き消した。どうなってんだ?
天使の聖魔術ともなればレイスにも効きそうなもんだが。ゼーヴェもゴーストの頃は同じ聖魔術の盾で防御してたし、憤怒戦では自らの術に焼かれてた。
またラティス辺りの不思議魔道具か、それともただの痩せ我慢か、或いは効かないと思い込んでるとか? ……カインのことだ、戦闘中でハイになってるだけってのが有力だな。
「創造――」
「無駄ァ!」
無駄無駄無駄無駄ァーッ!!
「っ……!!?」
「リョーガ!」
斬撃を二人がかりでなんとかするも、今度は鋭い蹴りが股間に突き刺さった。もう何でもありだ。全身で攻撃しにかかってる。勇者でもタマ蹴り上げられたら流石にヤバいらしく、明らかに動きが鈍くなった。
「――祓魔の陣」
「ンなァ!?」
と、今度は背後からマコトの爆発が襲いかかる。威力はそこまでに見えるが、意識の外からの攻撃だったらしいのもあって一瞬カインの動きが完全に止まる。
「――滅魔の陣」
「てめェ! 邪魔ァしてんじゃねェぞ!」
「――大聖浄!」
続く爆発でマコトの方に向かった瞬間、今度はシエルの方から巨大な光球。叩き消せるサイズじゃないが、躱せる距離にいない。これはマズそうだぞ。
「ッぐ、ああァァ!」
「今だよ、リョーガ!」
「創造・轟雷――」
リョーガの周りの空間に、三箇所穴が空いた。
「――連展複式!」
カインに向けて、穴から一斉に光が伸びる――薄々予感はしてたが、鼓膜が破れるレベルの轟音。そして画面は真っ白。すぐ目の前に雷が落ちたような感じだ。
「カーッ、派手な術よ。騒がしくてならんわ」
カインは必死に戦ってんだぞ。それを他人事みたいに言いやがってこいつ……まあ俺も似たようなもんだが。
さて、大聖浄からのこれはカインでも厳しいか。アナウンスは聞こえないが、あれを食らって戦闘続行できるとも思えない。自殺コマンドを使うように言うかな。
「……オレ、ァ!」
カインの声が響く。
「負けねェ!」
立ち上がる影。闘志に燃えた目で、リョーガを睨め付ける。強え。
コマンドについての念話は、あいつへの否定か。あいつが頑張るなら、俺は応援してやるべきだ。
「まだァ終わってねェぞ! 勇者ァ!」
「シエル!」
「――聖浄!」
さっきの術の反動か動けないリョーガに代わって、シエルが牽制の聖浄を飛ばす。
だがカインは最早それを消そうとすらせず、真正面から受けてみせた。
「どォした天使ィ! 怯えが魔術に出てやがンぞ!」
「――聖雷!」
二人に向かって歩くカインの元に、今度は光る槍が撃ち出された。だがカインの言う通り、シエルの魔術はヘロヘロだ。これが怯えによるものかは分からないが、少なくとも今のカインにとって脅威ではない。
「こンな槍でェ! このオレは止まンねェ!」
地面に刺さった槍を引き抜くと、掌が焼けるのも厭わずに二人に向けて投げ返す――槍は空中で消えた。
「いくぞァ! 構えろォ!」
それと同時に、剣を下段に構えて走り出すカイン。シエルは大慌てで術式を組み始めるが間に合いそうにない。
「僕が!」
そこに走り込んでくるはマコト。へえ、随分な勇気だな。お前も足止めは得意なクチか?
「――炎獄」
「だァからそいつァ――」
「――討魔の陣!」
一瞬足を止めた隙を見逃さず、今までで一番デカい爆発を起動。クリーンヒット。
「なかなかよォ、痛ェじゃねェか」
「な……!?」
今のを食らってまだ立ってられるのか。さっきの時点で結構限界だったはずだろ。すげえよ。何がカインの体を動かしてるんだ。言っちゃ悪いが俺への忠誠心とかそういうタイプじゃないだろ。アイラが言ってた不気味な打たれ強さってのはこれのことだな。カインは何を見ている? その執念はどこから?
「マコト様!」
「どけ女ァ!」
ここで男女平等パンチが炸裂! 裏拳で吹き飛ぶ姉妹の片方!
カイン何を思ってるかは知らないが、今それは大した問題じゃない。頑張れカイン、お前自身の願いのために!
「てめェもだ!」
マコトも結局吹っ飛ばされた。再びリョーガの方へ走り出すカイン。
「――創造・具現化・属性付与・複式!」
が、ここでリョーガが復活。生成時間や素因の動きからしても、恐らくほぼ最低レベルの剣を二振り。
属性付与は光と見た。なんか聖剣って感じの光り方してるし。
「シエル! エリッツさんとの技を!」
ボロボロになりながら、雄叫びを上げて突っ込んでいくカイン。リョーガたちは、それを冷静に迎え撃つ。
「はあっ――」
「ええい――」
「おおおおおおおォォォォォ!!!」
カインの上段からの振り下ろし。だが、惜しくも、二人の方が少し速い。
「「――白輝斬!!」」
X字の斬撃を受けて、カインは遂に剣を落とした。そのまま地に膝をつき、倒れる。
「……っクソ、足りねェか……」
「それでも、僕らが戦ってきた誰よりも強かった。多分、ローレンツさんよりも」
「ッハハァ! てめェらの口からその名が出るたァな。そうか、あいつよりも上かァ……そりゃァいい」
ローレンツ、確かカインの知り合いなんだったか。俺が剣も魔術もまるで敵わなかった相手だ。カインも随分強くなったもんだな。
「さァて、オレァもう動けねェ。さっさとトドメを刺しな」
「ああ、そうさせてもらう。創造――」
「だめだ龍牙、待って!」
「――聖焔」
マコトの言葉が終わる頃には、もう魔術が発動していた。カインの体は炎に包まれ、そして消える。一瞬すぎて苦痛もあまり無さそうだった。あえてそういう魔術を選んでくれたのかね。
カインはお疲れ様って感じだな。大健闘だった。
「誠、お疲れ。なんか言ってたか?」
「いいや、もう今更だ。死ぬ前に解析で見れる情報があったかもと思っただけだよ。でも次のボスでいい」
「ああ……ごめんな」
「気にしないで。勝ちは勝ちだ」
いつも一足遅いやつだ。つーか死に際に解析してどうする気だよ。
まあいい、その解析には大幅ナーフが待ってる。精々今のうちに楽しんどくこったな。
「効かねェ効かねェ、効かねェなァ!」
シエルの撃ち出した光球も、先程と同じように片手で叩き消した。どうなってんだ?
天使の聖魔術ともなればレイスにも効きそうなもんだが。ゼーヴェもゴーストの頃は同じ聖魔術の盾で防御してたし、憤怒戦では自らの術に焼かれてた。
またラティス辺りの不思議魔道具か、それともただの痩せ我慢か、或いは効かないと思い込んでるとか? ……カインのことだ、戦闘中でハイになってるだけってのが有力だな。
「創造――」
「無駄ァ!」
無駄無駄無駄無駄ァーッ!!
「っ……!!?」
「リョーガ!」
斬撃を二人がかりでなんとかするも、今度は鋭い蹴りが股間に突き刺さった。もう何でもありだ。全身で攻撃しにかかってる。勇者でもタマ蹴り上げられたら流石にヤバいらしく、明らかに動きが鈍くなった。
「――祓魔の陣」
「ンなァ!?」
と、今度は背後からマコトの爆発が襲いかかる。威力はそこまでに見えるが、意識の外からの攻撃だったらしいのもあって一瞬カインの動きが完全に止まる。
「――滅魔の陣」
「てめェ! 邪魔ァしてんじゃねェぞ!」
「――大聖浄!」
続く爆発でマコトの方に向かった瞬間、今度はシエルの方から巨大な光球。叩き消せるサイズじゃないが、躱せる距離にいない。これはマズそうだぞ。
「ッぐ、ああァァ!」
「今だよ、リョーガ!」
「創造・轟雷――」
リョーガの周りの空間に、三箇所穴が空いた。
「――連展複式!」
カインに向けて、穴から一斉に光が伸びる――薄々予感はしてたが、鼓膜が破れるレベルの轟音。そして画面は真っ白。すぐ目の前に雷が落ちたような感じだ。
「カーッ、派手な術よ。騒がしくてならんわ」
カインは必死に戦ってんだぞ。それを他人事みたいに言いやがってこいつ……まあ俺も似たようなもんだが。
さて、大聖浄からのこれはカインでも厳しいか。アナウンスは聞こえないが、あれを食らって戦闘続行できるとも思えない。自殺コマンドを使うように言うかな。
「……オレ、ァ!」
カインの声が響く。
「負けねェ!」
立ち上がる影。闘志に燃えた目で、リョーガを睨め付ける。強え。
コマンドについての念話は、あいつへの否定か。あいつが頑張るなら、俺は応援してやるべきだ。
「まだァ終わってねェぞ! 勇者ァ!」
「シエル!」
「――聖浄!」
さっきの術の反動か動けないリョーガに代わって、シエルが牽制の聖浄を飛ばす。
だがカインは最早それを消そうとすらせず、真正面から受けてみせた。
「どォした天使ィ! 怯えが魔術に出てやがンぞ!」
「――聖雷!」
二人に向かって歩くカインの元に、今度は光る槍が撃ち出された。だがカインの言う通り、シエルの魔術はヘロヘロだ。これが怯えによるものかは分からないが、少なくとも今のカインにとって脅威ではない。
「こンな槍でェ! このオレは止まンねェ!」
地面に刺さった槍を引き抜くと、掌が焼けるのも厭わずに二人に向けて投げ返す――槍は空中で消えた。
「いくぞァ! 構えろォ!」
それと同時に、剣を下段に構えて走り出すカイン。シエルは大慌てで術式を組み始めるが間に合いそうにない。
「僕が!」
そこに走り込んでくるはマコト。へえ、随分な勇気だな。お前も足止めは得意なクチか?
「――炎獄」
「だァからそいつァ――」
「――討魔の陣!」
一瞬足を止めた隙を見逃さず、今までで一番デカい爆発を起動。クリーンヒット。
「なかなかよォ、痛ェじゃねェか」
「な……!?」
今のを食らってまだ立ってられるのか。さっきの時点で結構限界だったはずだろ。すげえよ。何がカインの体を動かしてるんだ。言っちゃ悪いが俺への忠誠心とかそういうタイプじゃないだろ。アイラが言ってた不気味な打たれ強さってのはこれのことだな。カインは何を見ている? その執念はどこから?
「マコト様!」
「どけ女ァ!」
ここで男女平等パンチが炸裂! 裏拳で吹き飛ぶ姉妹の片方!
カイン何を思ってるかは知らないが、今それは大した問題じゃない。頑張れカイン、お前自身の願いのために!
「てめェもだ!」
マコトも結局吹っ飛ばされた。再びリョーガの方へ走り出すカイン。
「――創造・具現化・属性付与・複式!」
が、ここでリョーガが復活。生成時間や素因の動きからしても、恐らくほぼ最低レベルの剣を二振り。
属性付与は光と見た。なんか聖剣って感じの光り方してるし。
「シエル! エリッツさんとの技を!」
ボロボロになりながら、雄叫びを上げて突っ込んでいくカイン。リョーガたちは、それを冷静に迎え撃つ。
「はあっ――」
「ええい――」
「おおおおおおおォォォォォ!!!」
カインの上段からの振り下ろし。だが、惜しくも、二人の方が少し速い。
「「――白輝斬!!」」
X字の斬撃を受けて、カインは遂に剣を落とした。そのまま地に膝をつき、倒れる。
「……っクソ、足りねェか……」
「それでも、僕らが戦ってきた誰よりも強かった。多分、ローレンツさんよりも」
「ッハハァ! てめェらの口からその名が出るたァな。そうか、あいつよりも上かァ……そりゃァいい」
ローレンツ、確かカインの知り合いなんだったか。俺が剣も魔術もまるで敵わなかった相手だ。カインも随分強くなったもんだな。
「さァて、オレァもう動けねェ。さっさとトドメを刺しな」
「ああ、そうさせてもらう。創造――」
「だめだ龍牙、待って!」
「――聖焔」
マコトの言葉が終わる頃には、もう魔術が発動していた。カインの体は炎に包まれ、そして消える。一瞬すぎて苦痛もあまり無さそうだった。あえてそういう魔術を選んでくれたのかね。
カインはお疲れ様って感じだな。大健闘だった。
「誠、お疲れ。なんか言ってたか?」
「いいや、もう今更だ。死ぬ前に解析で見れる情報があったかもと思っただけだよ。でも次のボスでいい」
「ああ……ごめんな」
「気にしないで。勝ちは勝ちだ」
いつも一足遅いやつだ。つーか死に際に解析してどうする気だよ。
まあいい、その解析には大幅ナーフが待ってる。精々今のうちに楽しんどくこったな。
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