121 / 252
第4章
119 ゼーヴェ・アーゲンデルト
しおりを挟む
「わ、っと――危ないんですケド」
ラステラはゼーヴェの剣を宙返りで軽々躱し、着地までの間に地上に何本もの小型熱線を降らせる。
つい先程までの疲れきった様子はない。左肩から先の結晶部は、今や眩しすぎるほどに光り輝いている。
「……なんで正面から受けてまだ生きてるワケ? 面倒なんですケド」
「――踊れ、嗤え、そして貪れ――」
どうやら、ゼーヴェは魔術障壁か何かを展開して熱線を防いだらしい。
「――崇高なる闇の支配者よ!」
真っ黒の何かがラステラを囲んで、噴水のように噴き出す。リフェアの影にそっくりだ。量も勢いもリフェアのものには及ばないが、その分何かアレンジされてるようにも見える。
「まさか影の一族ってワケ!? でもこんな小細工、何の意味もないんですケド!」
ラステラは腕の一振りで粘土のような――というよりは乾留液のような、粘り気を増した影の膜に穴を開ける。
だが、影はそのままラステラの体にまとわりついて離れない。
「はあ? 動きづらいし、イライラするんですケド!」
「私は拘束系の魔術が得意でな――繋檻」
ゼーヴェは、影と格闘するラステラの上から更に漆黒の繭を被せにいった。
ラステラは繭の方には見向きもせず、無抵抗で飲み込まれる。繭が完全にその姿を覆い隠しても動きはない。
「聖なる光よ、此より広がり魔を祓え――」
おいおい。レイスなのに聖浄、それも高位のやつなんて使っちゃって大丈夫か。
……案の定大丈夫ではないらしく、魔力を練っている段階で既に掌が焼けてる。
「――よ――宿りて――と成せ――」
「――大聖浄!」
大聖浄が発動して爆発を起こす頃には、白い炎は腕まで移ってとんでもなくヤバいことになってた。すぐに解呪で消して治癒したお陰で、治りは早そうなのが救いか。
ラステラ側も何か詠唱していたようだが、漆黒の繭は派手に弾け飛んだし、あれは避けようがないはずだ。腕を犠牲にした甲斐はあったってこと――
「――全っ然効いてないんですケド!!!」
上から熱線。ゼーヴェは躱しきれずに数本食らった。
「何を終わったみたいな顔してるワケ? アンタの大聖浄なんて毛ほども痛くないんですケド?」
嘘だな。ギリギリで加速して避けたみたいだが、大聖浄が当たった部分はしっかり傷が残っている。膝と脛の爛れてる部分は、今の爆発で負った火傷だ。
「――ならばもう一度食らわせるまでだ。私とて大罪の弱点くらいは把握している」
「はっ! レイスごときが調子に乗らないでほしいんですケド!」
次の瞬間には、ラステラはゼーヴェの背後を取っていた。疾い。今までにない速度だ。これがラステラ本人が使うラステラの肉体か。
「――焼き尽くせ!」
「――聖盾――っ」
咄嗟に盾を出して守るが、ラステラの炎は前方だけに収まらなかった。
「まさか上がったのが速度だけだと思ってたワケ? 超ウケるんですケド!!」
「――闇鎖!」
「そんな遅い鎖、当たるはずないんですケド?」
「――治癒」
なるほど治癒のための時間稼ぎか。だが治りが遅い。聖浄の火傷はすぐ治ったのに。
「――闇の茨よ、隔絶の茨よ! 深淵より出で、その体に魂を宿せ! 我が腕を贄とし、我が命に従え!」
「そんな低練度の複合魔術なんて怖くないんです……ケド……?」
詠唱終了と同時に、ゼーヴェの焼け焦げた右腕が消失した。治癒で治ならないと判断して捨てたのか。だがそのせいで出血が酷い。そして多分めちゃくちゃ痛い。見てるだけでも痛い。
と、先程の影が棘を纏って復活する。それらはまるで意思を持っているかのように、バラバラにラステラに襲いかかった。
「なっ……ちょ……面倒なんですケド!」
重力を無視して四方八方から向かってくる影の相手は中々に大変そうだ。一本一本熱線で撃ち落としてるが、キリがない。
しかも、影は燃やされて数秒後には復活した。
「――炎の蛇は灼熱の渦に身を投げる!」
鞭のようにうねる炎の蛇が、影の茨を燃やしにかかる。だが影の復活ペースは落ちない。
燃やすのにもエネルギーを使うらしく、対する炎の蛇はどんどん小さくなっていく。
「――其の闇は冠を象る――」
ゼーヴェは止血もそこそこに、新たな詠唱に入った。素因の震えからしてかなり強力なやつだな。多分勝負を決めにいってる。
「――其の闇は黒衣を飲む――」
「ねえ! アンタは悔しくないワケ!? ウザったい攻撃ばっかだし、もう私一人じゃ厳しいんですケド!」
ラステラがレイ――恐らく――に向かって叫ぶ。
「――されど、其の闇は器を作らぬ――」
「そう思うなら、もっと、脳が沸騰するくらいキレまくってほしいんですケド! 私の、そしてアンタの勝利のために――」
ラステラの周囲に黒い霧が出始めた。だが、レイに使ったものとは全く別物な気がする。
そもそも、まだ詠唱が終わっていない。
「――顕現せよ、闇霊の心臓よ!」
「――消し飛べ!」
――轟音。鼓膜が破れるかと思った。
突如として出現した巨大な黒球が、ラステラを押し潰すようにして包み込む。
ラステラから放たれた純白の光線は、そのブラックホールのごとき黒球に飲み込まれて、消えた。
少し経っても、黒球は沈黙したままだ。ゼーヴェは残った片腕と両膝を地について、肩で息をしている。
「理に触れたな、レイスの童」
「うおリフィスト、いたのか。それよりゼーヴェがどうしたって?」
「ふむ……あれは恐らく、精霊王の核を擬似的に創り出したモノであろう。闇のそれは、一般的には災厄を呼ぶとされているらしいの」
これまた凄えのを作ったもんだ。
「詠唱を聞くに、あえて不完全な状態で止め、純粋な力として創り出したようだが……精霊王の心臓など一個人が創り出していいものではないからのう。本来なら、対価として己の全てを捧げても失敗に終わるはずよの。それを可能にしたのは迷宮の素因濃度の高さが故か、はたまた……」
そんなの作って大丈夫なのかよ。ゼーヴェは強いが、それでも普通のレイスの域を出ないはずだろ?
「うむ。まあ駄目であろうな。レイスの童の肉体はもう長くは持たぬ」
「マジかよそれを先に言ってくれ! 待ってろゼーヴェ、今助けに――」
「やめておけ童。人の形を保っているだけでも奇跡のようなものであるぞ。何をしてもレイスの童は助からん」
……そんな。
「何を悲しい顔をする? どうせ復活するのであろ。違うかえ?」
「あ、ああ。そうだった……」
そうだ。別にマジで死ぬわけじゃない。すっかり忘れてた。ここは迷宮内だからな。
――と、黒球が派手な音を立てて割れた。ゼーヴェもその場に崩れ落ちる。確かにもう限界って感じだ。
ラステラの側は……レイと分離していた。っていうか動いてる。レイは気絶してるみたいだが、ラステラには動けるだけの力が残ってる。まずい。
(レルア! 今から地下40階に向かってくれ、俺も行く!)
(了解しました)
「童が行く必要はなかろ」
「いや、俺がここで座ってるだけってのはなんか、ほら、違うだろ」
「ふむ、そういうものかえ」
一応近くにあった紅蓮刀を引っ掴んで転移門を踏む。
「……アンタがマスターってワケ?」
「いかにも俺がマスターだ」
やっぱ殺気立ってる大罪って弱ってても怖いな。レルアももう着く頃だと思うが……。
「はあ……認めるんですケド。今回は私の負けってワケ。契約もここで破棄するんですケド」
「おう、そうか! 話が早くて助かる。ま、ここで死んだところで上で復活するけどな」
「はあ? アンタはそうでも、私はそうはいかないんですケド。まあ詳しいことは色欲にでも聞けばいいと思うんですケド――」
ラステラが目を閉じると、その体は細かい橙のガラス片のようなものに変わり始め……数秒で完全に消えた。消え方が他の魔物と違うし、もしや大罪は復活できない……のか?
「マスター、レイは死ねば復活します。叛逆者はここで……地下51階以降で殺しておくべきかと」
ああ、ラステラが消えたから魔術が解けて、肩の結晶部分が消えたのか。早いとこ止血しないと、というか止血しても間に合わない気がする。
「……ろ、ロード……」
「ゼーヴェ! どうした?」
ゼーヴェもかなりヤバそうだな。今にも死にそうな雰囲気だ。……まあリフィスト曰く何しても無駄らしいが。
「勝手な願いであることは承知しておりますが、どうか、レイの記憶を消して……我々を忘れて平和に暮らせるように……していただけないでしょうか……」
「ゼーヴェ、分を弁えなさい。貴方の息子だとしても、叛逆者に変わりはありません」
「いや……本来ならそうすべきなんだろうが、レイがこうなったのは八割方俺の責任だ。ここはゼーヴェの意見を採用したい」
「ロード……! ありがとうございます……! このご恩は、必ず……!」
そう言うと、ゼーヴェの姿は塵となって消えていった。
まあこれはせめてもの罪滅ぼしだ。ひとまず止血しないと。別に無理に殺さずとも、傷治して記憶消して上に送ればいいだけだし。
「――遅延――時遡」
「……申し訳ありません。差し出がましい真似を……」
「いやいやレルアが謝る必要はないってマジで!! 普通はその判断が正しいし、迷宮王としてはそうするべきだった」
だが、無理だ。甘すぎる選択な気もするが、俺にレイを殺す権利はない。
「それで、ええと……その、レイの記憶を消してもらうことってできるか?」
「勿論です。お任せください。不自然にならないよう、忘却ではなく改変を使用します」
「ありがとう、頼んだ」
さて……これで全部終わりか。今回は楽しくパーティする気にはなれないが、ゼーヴェとカインは特に頑張ってたしな。復活したら何か美味いもんでも贈ろう。
ラステラはゼーヴェの剣を宙返りで軽々躱し、着地までの間に地上に何本もの小型熱線を降らせる。
つい先程までの疲れきった様子はない。左肩から先の結晶部は、今や眩しすぎるほどに光り輝いている。
「……なんで正面から受けてまだ生きてるワケ? 面倒なんですケド」
「――踊れ、嗤え、そして貪れ――」
どうやら、ゼーヴェは魔術障壁か何かを展開して熱線を防いだらしい。
「――崇高なる闇の支配者よ!」
真っ黒の何かがラステラを囲んで、噴水のように噴き出す。リフェアの影にそっくりだ。量も勢いもリフェアのものには及ばないが、その分何かアレンジされてるようにも見える。
「まさか影の一族ってワケ!? でもこんな小細工、何の意味もないんですケド!」
ラステラは腕の一振りで粘土のような――というよりは乾留液のような、粘り気を増した影の膜に穴を開ける。
だが、影はそのままラステラの体にまとわりついて離れない。
「はあ? 動きづらいし、イライラするんですケド!」
「私は拘束系の魔術が得意でな――繋檻」
ゼーヴェは、影と格闘するラステラの上から更に漆黒の繭を被せにいった。
ラステラは繭の方には見向きもせず、無抵抗で飲み込まれる。繭が完全にその姿を覆い隠しても動きはない。
「聖なる光よ、此より広がり魔を祓え――」
おいおい。レイスなのに聖浄、それも高位のやつなんて使っちゃって大丈夫か。
……案の定大丈夫ではないらしく、魔力を練っている段階で既に掌が焼けてる。
「――よ――宿りて――と成せ――」
「――大聖浄!」
大聖浄が発動して爆発を起こす頃には、白い炎は腕まで移ってとんでもなくヤバいことになってた。すぐに解呪で消して治癒したお陰で、治りは早そうなのが救いか。
ラステラ側も何か詠唱していたようだが、漆黒の繭は派手に弾け飛んだし、あれは避けようがないはずだ。腕を犠牲にした甲斐はあったってこと――
「――全っ然効いてないんですケド!!!」
上から熱線。ゼーヴェは躱しきれずに数本食らった。
「何を終わったみたいな顔してるワケ? アンタの大聖浄なんて毛ほども痛くないんですケド?」
嘘だな。ギリギリで加速して避けたみたいだが、大聖浄が当たった部分はしっかり傷が残っている。膝と脛の爛れてる部分は、今の爆発で負った火傷だ。
「――ならばもう一度食らわせるまでだ。私とて大罪の弱点くらいは把握している」
「はっ! レイスごときが調子に乗らないでほしいんですケド!」
次の瞬間には、ラステラはゼーヴェの背後を取っていた。疾い。今までにない速度だ。これがラステラ本人が使うラステラの肉体か。
「――焼き尽くせ!」
「――聖盾――っ」
咄嗟に盾を出して守るが、ラステラの炎は前方だけに収まらなかった。
「まさか上がったのが速度だけだと思ってたワケ? 超ウケるんですケド!!」
「――闇鎖!」
「そんな遅い鎖、当たるはずないんですケド?」
「――治癒」
なるほど治癒のための時間稼ぎか。だが治りが遅い。聖浄の火傷はすぐ治ったのに。
「――闇の茨よ、隔絶の茨よ! 深淵より出で、その体に魂を宿せ! 我が腕を贄とし、我が命に従え!」
「そんな低練度の複合魔術なんて怖くないんです……ケド……?」
詠唱終了と同時に、ゼーヴェの焼け焦げた右腕が消失した。治癒で治ならないと判断して捨てたのか。だがそのせいで出血が酷い。そして多分めちゃくちゃ痛い。見てるだけでも痛い。
と、先程の影が棘を纏って復活する。それらはまるで意思を持っているかのように、バラバラにラステラに襲いかかった。
「なっ……ちょ……面倒なんですケド!」
重力を無視して四方八方から向かってくる影の相手は中々に大変そうだ。一本一本熱線で撃ち落としてるが、キリがない。
しかも、影は燃やされて数秒後には復活した。
「――炎の蛇は灼熱の渦に身を投げる!」
鞭のようにうねる炎の蛇が、影の茨を燃やしにかかる。だが影の復活ペースは落ちない。
燃やすのにもエネルギーを使うらしく、対する炎の蛇はどんどん小さくなっていく。
「――其の闇は冠を象る――」
ゼーヴェは止血もそこそこに、新たな詠唱に入った。素因の震えからしてかなり強力なやつだな。多分勝負を決めにいってる。
「――其の闇は黒衣を飲む――」
「ねえ! アンタは悔しくないワケ!? ウザったい攻撃ばっかだし、もう私一人じゃ厳しいんですケド!」
ラステラがレイ――恐らく――に向かって叫ぶ。
「――されど、其の闇は器を作らぬ――」
「そう思うなら、もっと、脳が沸騰するくらいキレまくってほしいんですケド! 私の、そしてアンタの勝利のために――」
ラステラの周囲に黒い霧が出始めた。だが、レイに使ったものとは全く別物な気がする。
そもそも、まだ詠唱が終わっていない。
「――顕現せよ、闇霊の心臓よ!」
「――消し飛べ!」
――轟音。鼓膜が破れるかと思った。
突如として出現した巨大な黒球が、ラステラを押し潰すようにして包み込む。
ラステラから放たれた純白の光線は、そのブラックホールのごとき黒球に飲み込まれて、消えた。
少し経っても、黒球は沈黙したままだ。ゼーヴェは残った片腕と両膝を地について、肩で息をしている。
「理に触れたな、レイスの童」
「うおリフィスト、いたのか。それよりゼーヴェがどうしたって?」
「ふむ……あれは恐らく、精霊王の核を擬似的に創り出したモノであろう。闇のそれは、一般的には災厄を呼ぶとされているらしいの」
これまた凄えのを作ったもんだ。
「詠唱を聞くに、あえて不完全な状態で止め、純粋な力として創り出したようだが……精霊王の心臓など一個人が創り出していいものではないからのう。本来なら、対価として己の全てを捧げても失敗に終わるはずよの。それを可能にしたのは迷宮の素因濃度の高さが故か、はたまた……」
そんなの作って大丈夫なのかよ。ゼーヴェは強いが、それでも普通のレイスの域を出ないはずだろ?
「うむ。まあ駄目であろうな。レイスの童の肉体はもう長くは持たぬ」
「マジかよそれを先に言ってくれ! 待ってろゼーヴェ、今助けに――」
「やめておけ童。人の形を保っているだけでも奇跡のようなものであるぞ。何をしてもレイスの童は助からん」
……そんな。
「何を悲しい顔をする? どうせ復活するのであろ。違うかえ?」
「あ、ああ。そうだった……」
そうだ。別にマジで死ぬわけじゃない。すっかり忘れてた。ここは迷宮内だからな。
――と、黒球が派手な音を立てて割れた。ゼーヴェもその場に崩れ落ちる。確かにもう限界って感じだ。
ラステラの側は……レイと分離していた。っていうか動いてる。レイは気絶してるみたいだが、ラステラには動けるだけの力が残ってる。まずい。
(レルア! 今から地下40階に向かってくれ、俺も行く!)
(了解しました)
「童が行く必要はなかろ」
「いや、俺がここで座ってるだけってのはなんか、ほら、違うだろ」
「ふむ、そういうものかえ」
一応近くにあった紅蓮刀を引っ掴んで転移門を踏む。
「……アンタがマスターってワケ?」
「いかにも俺がマスターだ」
やっぱ殺気立ってる大罪って弱ってても怖いな。レルアももう着く頃だと思うが……。
「はあ……認めるんですケド。今回は私の負けってワケ。契約もここで破棄するんですケド」
「おう、そうか! 話が早くて助かる。ま、ここで死んだところで上で復活するけどな」
「はあ? アンタはそうでも、私はそうはいかないんですケド。まあ詳しいことは色欲にでも聞けばいいと思うんですケド――」
ラステラが目を閉じると、その体は細かい橙のガラス片のようなものに変わり始め……数秒で完全に消えた。消え方が他の魔物と違うし、もしや大罪は復活できない……のか?
「マスター、レイは死ねば復活します。叛逆者はここで……地下51階以降で殺しておくべきかと」
ああ、ラステラが消えたから魔術が解けて、肩の結晶部分が消えたのか。早いとこ止血しないと、というか止血しても間に合わない気がする。
「……ろ、ロード……」
「ゼーヴェ! どうした?」
ゼーヴェもかなりヤバそうだな。今にも死にそうな雰囲気だ。……まあリフィスト曰く何しても無駄らしいが。
「勝手な願いであることは承知しておりますが、どうか、レイの記憶を消して……我々を忘れて平和に暮らせるように……していただけないでしょうか……」
「ゼーヴェ、分を弁えなさい。貴方の息子だとしても、叛逆者に変わりはありません」
「いや……本来ならそうすべきなんだろうが、レイがこうなったのは八割方俺の責任だ。ここはゼーヴェの意見を採用したい」
「ロード……! ありがとうございます……! このご恩は、必ず……!」
そう言うと、ゼーヴェの姿は塵となって消えていった。
まあこれはせめてもの罪滅ぼしだ。ひとまず止血しないと。別に無理に殺さずとも、傷治して記憶消して上に送ればいいだけだし。
「――遅延――時遡」
「……申し訳ありません。差し出がましい真似を……」
「いやいやレルアが謝る必要はないってマジで!! 普通はその判断が正しいし、迷宮王としてはそうするべきだった」
だが、無理だ。甘すぎる選択な気もするが、俺にレイを殺す権利はない。
「それで、ええと……その、レイの記憶を消してもらうことってできるか?」
「勿論です。お任せください。不自然にならないよう、忘却ではなく改変を使用します」
「ありがとう、頼んだ」
さて……これで全部終わりか。今回は楽しくパーティする気にはなれないが、ゼーヴェとカインは特に頑張ってたしな。復活したら何か美味いもんでも贈ろう。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~
近衛 愛
ファンタジー
リュウは設計会社に勤務する一般男性だ。
彼女がようやく出来て、一週間後に勤務中に突如幻想世界に転移。
ラノベは好きだが、テンプレ勇者は嫌いだ!!
人類を滅ぼそうとする魔王を倒すため、女神と王により勇者として、召喚された。
しかし、雇用契約書も給料ももらえず勇者である僕は、日々の生活費を稼ぐべく、薬草採取、猪の討伐、肉の解体、薬草栽培など普段なら絶対しない仕事をすることに。
これも王と女神がまともな対応しなのが悪いのだ。
勇者のスキル「魔女の一撃」を片手に異世界を雇い雇われ、世界を巡る。
異世界転移ファンタジー。チートはあるけど、最弱ですけどなにか。
チートスキルは呪いのスキル、人を呪わば穴二つ。勇者と世界の行く末は。
『僕は世界を守りたい訳じゃない!目の前の人、親しい知人であるチル、君を守りたいんだ!』
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる