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第4章
114 火山洞窟
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「ここは……? 洞窟……にしては少し暑いな」
ようこそ脱水注意エリアその二へ。そこから先は火山洞窟、マグマの近くはぶっちゃけ炎天下の砂漠より暑い。
ちょっと触るだけで火傷するような魔物もいる。炎を吐くトカゲもいるぞ。進化して飛竜になってる個体もいるが、そっちの数はまだ少ない。
この辺りから即死罠も増えてくる。爆裂罠がある石橋は、踏んだらマグマに真っ逆さまだ。逆にマグマの方が吹き出てくるのもある。その分誘引とかは少なめにしてあるが、魔物と鬼ごっことかはやめとけよ。なんでかはそのうち分かる。
「気をつけろ、そっちは崖だ!」
「っとと、余所見は危ねえな」
ああ、ついでに視界も悪い。これも鬼ごっこするとまずい理由の一つだな。同じ洞窟風の階層でも、地下1~10階は壁やら天井やらに光源を設置しておいた。が、ここはそういうの一切なしだ。
といっても溶岩はかなり光ってるし、岩壁だってぼんやり光る。試しに歩いたときはそこまで困らなかったし、あえてそのままにした。
まあ暗がりを進むときは急に襲ってくる魔物に気をつけろよ。さっきも言ったが触るだけで火傷とかあるからな。
「アレン、上だ!」
「おうよ! っつっても――剣が――届かねえ!」
見上げた先にはファスケーヴ――高温の鋭い牙を持つコウモリだ。……それ以外はこれといった特徴もない。噛まれると鎧くらいなら溶けるし、体も火傷じゃ済まないだろうが、普通は噛まれる前に倒す。
「っ、レイ! なんとかしてくれ!」
「少し屈んでギリギリまで引き付けろ!」
やっぱりアリシアがいなくなったのが痛いな。わかってはいたが遠距離に対応できない。
「まずは一匹――」
レイはアレンの首筋を目掛けて飛んできたファスケーヴを両断、そのまま岩壁を蹴って空中に跳び上がる。
「食らえ!」
天井からぶら下がってた残りをまとめて薙ぎ払った。なるほどそうきたか。
だが着地はどうする? そのままだと落下死だぞ。
「――っ!」
「――間に合った! おいレイ、先になんか言っといてくれよ!」
「悪い、助かった。俺も着地点に床がないとは思わなくてな」
間一髪、アレンが手首を掴んで引き上げる。そんなマ〇オみたいなノリで死なれても困るぞ。罠ですらない。スター取ってても落下には勝てないんだからな。
しっかしまあ難易度の高い攻略してるな。アリシアが撃ち落としてればこんなことにはなってない。
そして早速次の魔物だ。今度は自分たちから魔物の方に向かっていってるぞ。
実は地下31~40階は自動修復を切ってあるんだが、それは天然の罠が作られるからだ。今二人はその罠に足を踏み入れた。
「暗いな……しかも狭い」
「ああ。やけに細い道だ」
突然だが、この世界にはアンスっていう蟻が存在する。花の蜜を吸う、米粒くらいの大きさのやつだ。
あるとき、火山付近でアンスをそのまま巨大化させたような見た目の魔物が発見されたらしい。そいつらは火山の斜面を食い破って地下にまで渡る立派な洞窟を作り、そこを巣として生活してたんだとか。
もうわかったと思うが、二人が今歩いているのはその巣穴だ。この階層にはその巨大アンス――ラヴィアンスがいる。
「何か物音がした気がしないか? 奥だ」
「魔物か! だが狭すぎる、横に並ぶのが精一杯だぜ」
「数が多ければ撤退しよう。流石にこの狭さでは満足に戦えない」
狭い狭いって言うが、ラヴィアンスの体長からしたらかなりのデカさなんだぜ。あいつら人頭三個分くらいのサイズしかないくせに、平気で5メートル四方くらいの穴掘るからな。今のとこは確かに狭めだが、もう少し進めば広場に出る。まあその前に戦うことになるだろうが。
「……後ろにもいる!」
「おい待て、前の音も近づいてきたぞ! どうする!」
「どうするもこうするも、迎え撃つしかないだろう! 後ろは俺がやる、アレンは前を!」
ラヴィアンス側も意図した挟撃じゃないと思うけどな。運とタイミングが悪い。
レイは先手必勝とばかりに突っ込んでいく。が、踏み込みが浅いか。
「刃が通らない!?」
やっぱりな。その赤黒く光る体は、浅い斬り込み程度では傷一つ付かない。
岩壁の中の特に硬い鉱石を好んで食うらしいし、その硬度はかなりのもんだぞ。
「ならば溶かすまでだ!」
レイは刀身に魔力を巡らせる。いいのかこんな雑魚に魔力使っちまって……と思ったが、まあ死ぬよりはよっぽどいいか。魔力消費自体も、炎よと比べればかなり少なく済んでそうだし。ただラヴィアンスの体ってかなりの高温じゃないと溶かせないはずなんだがな。相変わらず大罪パワーがチートすぎる。
さて、後ろの個体は片付いた。アレンは?
「――銀狼双斬!」
うへえ、剣が悲鳴上げてるのが聞こえる。もうお前は鈍器持った方がいい。そもそも、ラヴィアンスは物理耐性がめちゃくちゃ高いメタル系みたいなやつだからな。まあ経験値も入らなければドロップが美味しいわけでもないから魔術は効くようになってるが。つまり魔術で攻略するべきなんだ本来は。
真っ向勝負でカチ割るってどんだけだよ。その双剣もう永くないぞ。無理させすぎだ。
「っし、一丁上がりぃ!」
「俺の方も終わりだ。ひとまず先に進むか」
「おうよ!」
二人は更に奥に進む。残念ながらその先はどれだけ進んでもラヴィアンスが大量にいるだけだ。マップによれば別の出口もあるらしいが、そこまで行くには二回広場を経由しなきゃならない。それもラヴィアンスまみれのな。
ラヴィアンスが人肉を食うって話はなかったが、肉もいけるならちょっとグロ注意になりかねないぞ。
「おい、レイ……」
「これは……困ったな……」
巣への侵入者に気付いたラヴィアンスが、何段にも重なった居住スペースから続々と降りてくる。体のひび割れて赤く煌めく部分が綺麗だが、集合体恐怖症にはキツい絵面だろうな。
「撤退しよう、早く」
「お、おう!」
正しい判断だ。この数相手は魔術使わないと無理だからな。融解とか使えば一網打尽にできるだろうが、そこまでの魔力の無駄遣いはできない。
「奴ら追ってきてる!」
「気にするな、とにかく走るんだ」
いいぞ走れ走れ。死の鬼ごっこスタートだ。巣穴を出たあとも直進し続けると、落ちたら即死の溶岩落とし穴がある。
「出口だ! あー、俺たちどっちから来たんだっけか?」
「左だ。だが一旦岩の上で待とう、俺の読みが正しければ、奴ら――」
げ。ラヴィアンスは獲物を見失っちまったらしい。すぐ横だよ。視点の高さ的に見えないのか?
ああ、一部勢いよく溶岩に落下してるし。残った個体も散り散りになっていく。ダメだこりゃ。もしかして目は良くないのか。そういや触角みたいなやつで空気の震えをどうのとか書いてあった気がする。
「なるほど、考えたなレイ」
「正直賭けだったが、上手くいって良かった」
変なところで運がいいやつだ。だが結果的に大量のラヴィアンスが巣の外に解き放たれることになった。アレンの剣はあと数回も戦闘をこなせばぶっ壊れるだろうし、焦って逃げても死の罠が待ってる。状況はあまり良くないぞ。
ようこそ脱水注意エリアその二へ。そこから先は火山洞窟、マグマの近くはぶっちゃけ炎天下の砂漠より暑い。
ちょっと触るだけで火傷するような魔物もいる。炎を吐くトカゲもいるぞ。進化して飛竜になってる個体もいるが、そっちの数はまだ少ない。
この辺りから即死罠も増えてくる。爆裂罠がある石橋は、踏んだらマグマに真っ逆さまだ。逆にマグマの方が吹き出てくるのもある。その分誘引とかは少なめにしてあるが、魔物と鬼ごっことかはやめとけよ。なんでかはそのうち分かる。
「気をつけろ、そっちは崖だ!」
「っとと、余所見は危ねえな」
ああ、ついでに視界も悪い。これも鬼ごっこするとまずい理由の一つだな。同じ洞窟風の階層でも、地下1~10階は壁やら天井やらに光源を設置しておいた。が、ここはそういうの一切なしだ。
といっても溶岩はかなり光ってるし、岩壁だってぼんやり光る。試しに歩いたときはそこまで困らなかったし、あえてそのままにした。
まあ暗がりを進むときは急に襲ってくる魔物に気をつけろよ。さっきも言ったが触るだけで火傷とかあるからな。
「アレン、上だ!」
「おうよ! っつっても――剣が――届かねえ!」
見上げた先にはファスケーヴ――高温の鋭い牙を持つコウモリだ。……それ以外はこれといった特徴もない。噛まれると鎧くらいなら溶けるし、体も火傷じゃ済まないだろうが、普通は噛まれる前に倒す。
「っ、レイ! なんとかしてくれ!」
「少し屈んでギリギリまで引き付けろ!」
やっぱりアリシアがいなくなったのが痛いな。わかってはいたが遠距離に対応できない。
「まずは一匹――」
レイはアレンの首筋を目掛けて飛んできたファスケーヴを両断、そのまま岩壁を蹴って空中に跳び上がる。
「食らえ!」
天井からぶら下がってた残りをまとめて薙ぎ払った。なるほどそうきたか。
だが着地はどうする? そのままだと落下死だぞ。
「――っ!」
「――間に合った! おいレイ、先になんか言っといてくれよ!」
「悪い、助かった。俺も着地点に床がないとは思わなくてな」
間一髪、アレンが手首を掴んで引き上げる。そんなマ〇オみたいなノリで死なれても困るぞ。罠ですらない。スター取ってても落下には勝てないんだからな。
しっかしまあ難易度の高い攻略してるな。アリシアが撃ち落としてればこんなことにはなってない。
そして早速次の魔物だ。今度は自分たちから魔物の方に向かっていってるぞ。
実は地下31~40階は自動修復を切ってあるんだが、それは天然の罠が作られるからだ。今二人はその罠に足を踏み入れた。
「暗いな……しかも狭い」
「ああ。やけに細い道だ」
突然だが、この世界にはアンスっていう蟻が存在する。花の蜜を吸う、米粒くらいの大きさのやつだ。
あるとき、火山付近でアンスをそのまま巨大化させたような見た目の魔物が発見されたらしい。そいつらは火山の斜面を食い破って地下にまで渡る立派な洞窟を作り、そこを巣として生活してたんだとか。
もうわかったと思うが、二人が今歩いているのはその巣穴だ。この階層にはその巨大アンス――ラヴィアンスがいる。
「何か物音がした気がしないか? 奥だ」
「魔物か! だが狭すぎる、横に並ぶのが精一杯だぜ」
「数が多ければ撤退しよう。流石にこの狭さでは満足に戦えない」
狭い狭いって言うが、ラヴィアンスの体長からしたらかなりのデカさなんだぜ。あいつら人頭三個分くらいのサイズしかないくせに、平気で5メートル四方くらいの穴掘るからな。今のとこは確かに狭めだが、もう少し進めば広場に出る。まあその前に戦うことになるだろうが。
「……後ろにもいる!」
「おい待て、前の音も近づいてきたぞ! どうする!」
「どうするもこうするも、迎え撃つしかないだろう! 後ろは俺がやる、アレンは前を!」
ラヴィアンス側も意図した挟撃じゃないと思うけどな。運とタイミングが悪い。
レイは先手必勝とばかりに突っ込んでいく。が、踏み込みが浅いか。
「刃が通らない!?」
やっぱりな。その赤黒く光る体は、浅い斬り込み程度では傷一つ付かない。
岩壁の中の特に硬い鉱石を好んで食うらしいし、その硬度はかなりのもんだぞ。
「ならば溶かすまでだ!」
レイは刀身に魔力を巡らせる。いいのかこんな雑魚に魔力使っちまって……と思ったが、まあ死ぬよりはよっぽどいいか。魔力消費自体も、炎よと比べればかなり少なく済んでそうだし。ただラヴィアンスの体ってかなりの高温じゃないと溶かせないはずなんだがな。相変わらず大罪パワーがチートすぎる。
さて、後ろの個体は片付いた。アレンは?
「――銀狼双斬!」
うへえ、剣が悲鳴上げてるのが聞こえる。もうお前は鈍器持った方がいい。そもそも、ラヴィアンスは物理耐性がめちゃくちゃ高いメタル系みたいなやつだからな。まあ経験値も入らなければドロップが美味しいわけでもないから魔術は効くようになってるが。つまり魔術で攻略するべきなんだ本来は。
真っ向勝負でカチ割るってどんだけだよ。その双剣もう永くないぞ。無理させすぎだ。
「っし、一丁上がりぃ!」
「俺の方も終わりだ。ひとまず先に進むか」
「おうよ!」
二人は更に奥に進む。残念ながらその先はどれだけ進んでもラヴィアンスが大量にいるだけだ。マップによれば別の出口もあるらしいが、そこまで行くには二回広場を経由しなきゃならない。それもラヴィアンスまみれのな。
ラヴィアンスが人肉を食うって話はなかったが、肉もいけるならちょっとグロ注意になりかねないぞ。
「おい、レイ……」
「これは……困ったな……」
巣への侵入者に気付いたラヴィアンスが、何段にも重なった居住スペースから続々と降りてくる。体のひび割れて赤く煌めく部分が綺麗だが、集合体恐怖症にはキツい絵面だろうな。
「撤退しよう、早く」
「お、おう!」
正しい判断だ。この数相手は魔術使わないと無理だからな。融解とか使えば一網打尽にできるだろうが、そこまでの魔力の無駄遣いはできない。
「奴ら追ってきてる!」
「気にするな、とにかく走るんだ」
いいぞ走れ走れ。死の鬼ごっこスタートだ。巣穴を出たあとも直進し続けると、落ちたら即死の溶岩落とし穴がある。
「出口だ! あー、俺たちどっちから来たんだっけか?」
「左だ。だが一旦岩の上で待とう、俺の読みが正しければ、奴ら――」
げ。ラヴィアンスは獲物を見失っちまったらしい。すぐ横だよ。視点の高さ的に見えないのか?
ああ、一部勢いよく溶岩に落下してるし。残った個体も散り散りになっていく。ダメだこりゃ。もしかして目は良くないのか。そういや触角みたいなやつで空気の震えをどうのとか書いてあった気がする。
「なるほど、考えたなレイ」
「正直賭けだったが、上手くいって良かった」
変なところで運がいいやつだ。だが結果的に大量のラヴィアンスが巣の外に解き放たれることになった。アレンの剣はあと数回も戦闘をこなせばぶっ壊れるだろうし、焦って逃げても死の罠が待ってる。状況はあまり良くないぞ。
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