転生ニートは迷宮王

三黒

文字の大きさ
上 下
101 / 252
第4章

99 雨

しおりを挟む
「あれ? レイはここ、来たことあんだっけか?」
「ああ、途中まではな。どうして?」
「いや、もっとビビるもんだと思っててよ。死んでも生き返るっつっても、あの巨体だぜ?」
「おいおいアレン、俺らがあんなのに負けるわけないだろ? 恐るるに足らないよ」
「は、はは……まあそれもそうだな、俺もアリーも、あの頃とは違う」 
 
 まあ、それはそうだ。全員装備が整ってるしな。上層何回か潜るだけで、外での普通以上の装備が揃うのがウチの売り。二人の成長も想定の範囲内。
 が。
 レイ、お前明らかにおかしいだろ。強すぎる。精神と時のナントカで修行でもしたのか?
 いかに最初のボスと言えども、片手剣の一振りで殺せていい相手じゃない。大体、ソロで殺したのだってまだ片手で数える程しかいないんだぞ。そもそもソロで挑む奴が少ないってのもあるが。
 
(マスター)
(ああ、レルア。何かわかったか?)
(いえ、それが……魔力が異常に多いこと以外は、何もおかしなところはありませんでした)
 
 …………んなわけあるか?
 
(はい、有り得ません。恐らく私――上級天使エイフリッドですら知覚できないほど巧妙に細工されていると思われます。……信じたくはないものですが)
 
 ここでは天界での二割ほどの力しか出せないらしいが、それでもウチの最高戦力であることに変わりはない。つまり、ちょっとヤバいかもしれない。
 いいとこカインと相打ちとかだろと思ってたが甘いかもな。地下51階から下はほぼ手を付けてないが、DP不足に陥ることはないしそろそろ造り始めるか。
 
(ちょっと迷宮の方をいじる。引き続き監視を頼む)
(了解しました)
 
 さて、と。こっから先はいよいよ普通に死ぬ階層だ。半端な実力の奴を通すわけにはいかない。
 と、なるとやっぱり地下52階から通常エリアにするのが正解か。地下51階でどんだけヤバいかを実感させる。カイン超えたところで、どの程度実力付いてるか分からんしな。
 いや、いっそ地下50階のボスに三騎将全員突っ込んでもいいかもしれない。既にマンティ三兄弟とかいるし。
 それに、レイスはBランクとかだって話だ。攻略組ならなんとかできるだろ。
 
 まず、場所のイメージ。もう普通に行動するだけでゴリゴリ体力減ってくような場所がいいな。暑いってのはあらかたやり尽くしたし、雪山の洞窟みたいな感じでどうだ。
 
『地下51~60階を雪山に設定しました』
 
 魔物は……そうだな。まずはイエティ。真っ白い毛のデカい猿。こいつは外せないだろ。
 
『イエティ:20,000DP』 
 
 雑魚一体でこの値段か。階層に合わせて強力になる設定にしてるからかもしれんが、既にミノっちの七倍弱。
 次は……狼とか? 上層にヴォルフってのを配置したが、それの亜種みたいな感じで。
 
『シルバーヴォルフ:8,000DP』
 
 群れで行動するのに一体8,000DPときた。良かったDPに余裕あって。ほんと良かった。
 あとはやっぱ氷ブレスの竜だろ。王道の白竜。いるよな?
 
『ホワイトドラゴン:50万DP』
 
 おっと急にインフレしたな。こいつ一体で城が買える。死霊術師ネクロマンサーの魂石も買える。因みにゴブリンやらスライムやらなら5,000匹買える。5,000匹のゴブリンに殴られたらいかにドラゴンと言えども死……いやブレスで一掃できるか……?
 それはともかくとして、だ。各階層に置いてると破産はしないまでも財布が厳しい。こいつにはボスになってもらおう。
 もっと安いドラゴンいないのか。……あ、ワイバーン。そういうときのためのワイバーンだと思うんですよ。上層に置く予定だった素ワイバーンは5,000DPとかだったっけな。
 雪山にワイバーンがいるのかは知らんが、俺がいると言ったらいるんだよ。ここは俺の迷宮だからな! いろ!
 
『スノーワイバーン:30,000DP』
 
 わかってるじゃねーの。ちょっと高いが、まぁそこまで大した問題でもない。ホワイトドラゴンに比べれば可愛いもんだ。
 罠の方も考えないとな。床が滑るってのは当然使うとして、あとはなんだろう。
 
「雪山……雪山ね」
 
 ちょっと外に出るルートを作ろう。んで爆裂罠エクスプロードトラップからの大規模な雪崩でも起こすか。踏んだら最後、駆け抜けないと道が塞がれて詰むっていう仕組みだ。
 かなりえげつないとは思うが、ここで手を抜くのは信条に反する。
 他には氷柱が落ちてくるのとか良さげだな。上なんてそうそう確認しないだろうし。
 ああ、滑った先に落とし穴ってのも良さそうだ。落とし穴の中には更にホワイトヴォルフとか置いちゃったりしてな。ただ、そこをなんとか凌ぎきったら宝箱も取れるようにしとこう。
 ……宝箱と言えばやっぱり。
 
『アイスミミック:15,000DP』
 
 ミミックも外せない。アイスミミックは、なんか凍った箱って感じの見た目だった。触ったらしもやけになりそうだ。
 昏睡スナイドとかで探索者を眠らせるとか書いてある。そこそこ高いだけあって凶悪だな。ちょっと頑張れば取れそうな場所に配置しとこう。うっかりミミックの確認を忘れる程度の場所。例えば――頑張って登った、滑りやすい坂の上とかね。
 
「――こりゃあ、雨、か?」
「そうみたいだな。雨が降るなんて、妙な迷宮もあったものだ」
「げー、最悪。なんか地面ぬかるんでるし、着替えとか持ってきてないし……」

 三人は今地下13階か。雨とはまたレアなもんを引いたな。詳しい確率は忘れたが、珍しさで言えば少なくとも魔物が宝箱落とすのよりも上だ。
 
「じゃあ、ここらで雨宿りでもしてくか?」
「いや、この雨は魔術的なものだろうし、すぐに止むとは思えない。休憩するにしても、先に進んで、視界の開けた場所でした方がいいだろうな」
「じゃあさっさと進も。はあ……」
 
 アリシアのテンションが目に見えて下がっている。気持ちはわかる。俺だってそんな雨で森ん中歩くのは嫌だ。でも流石に傘なんて差せないだろ君ら。魔物だらけの迷宮なんだし。
 風邪も怖いが、傘なんて差してたら魔物に対する反応はワンテンポ以上遅れる。その遅れは探索者……ってか冒険者にとって命取りだろうし、街で売り出してもこっちの世界じゃ流行らんだろうな。
 
「何かいる! ……囲まれてるな。アレン、後方は任せた。アリシアは状況に応じて支援を」
「あいよっ」
「だるい……」
 
 天候が雨だと、魔物の能力値が少し上がる代わりに入手エルの量も増えたはずだ。ってか晴れ以外は基本ボーナス入るようにしたんだったかな。
 天候によって素因エレメントの流れも多少変わるらしい。魔術素人だからよくわからんが、属性によって威力がどうとか。迷宮内だと特に顕著だから楽しいってアルデムの爺さんが言ってた。
 
「アレン!」
「わかってる――銀狼斬り!」
 
 シルバーヴォルフにぶっ刺さりそうな名前だなオイ。多分関係ないけど。
 
「なんとか倒したか……レイ、そっちは?」
「ああ、一体たりとも逃してはないよ。二人ともいい連携だった。先に進もう」
 
 うーん。なんかやけに落ち着いてるっていうか大人っぽくなったっていうか。ほんとにあのレイか? やっぱりナントカの部屋で修行したんじゃないか?
 一体どういう仕組みでそんな強くなってんのか非常に気になる。幻惑あたりで本気出してくれないかな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ひだまりを求めて

空野セピ
ファンタジー
惑星「フォルン」 星の誕生と共に精霊が宿り、精霊が世界を創り上げたと言い伝えられている。 精霊達は、世界中の万物に宿り、人間を見守っていると言われている。 しかし、その人間達が長年争い、精霊達は傷付いていき、世界は天変地異と異常気象に包まれていく──。 平凡で長閑な村でいつも通りの生活をするマッドとティミー。 ある日、謎の男「レン」により村が襲撃され、村は甚大な被害が出てしまう。 その男は、ティミーの持つ「あるもの」を狙っていた。 このままだと再びレンが村を襲ってくると考えたマッドとティミーは、レンを追う為に旅に出る決意をする。 世界が天変地異によって、崩壊していく事を知らずに───。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...