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第2章
55 連携
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『フィライシリーズ各種をランダムで200個製作します。オプション:属性付与ランダム、特殊効果ランダム。製作コスト(1個):2,000DP+300DP。消費アイテム:フィライ鉱石200個』
単純計算で46万DP。聖騎士分どころか貯めてあったDP全部使ってギリギリだ。作るけど。実行。
『製作完了。フィライソード他199個に特殊効果が付与されました』
財布が軽いぜ。折角だから1/50くらいの確率でドロップするように設定しとくか。ドロップする度に新しく作ってけばいいしな。
「あ、ラーさん!」
「ラストルさん!」
お、合流したのか。まぁ序盤の魔物は弱いし迷宮造って待っとこう。
……いっそ上層に新しい罠とか設置してみるか?
いくら上層ったって落とし穴だけは芸がない。大体あっちの世界じゃもっと色々罠張ってあったしな。
壁が突然せり出してくるとか、誘引罠で軽いモンスターハウス状態になるとかしよう。
どうせ今いる階層には干渉出来ないんだし、ワイズスライムのとこからでいいか。
……でもワイズスライムは誘引せずとも固まって動いてるよな。壁の罠だけにしとこう。
「ラーさん、この宝箱ルナ入ってますよ! ラッキー!」
「えー、ずるい。私も欲しいんだけど……最近弓新しくしたせいで金欠なんだよね」
「アリーは新しいの買いすぎなんだよ。ちょっと傷んだくらいなら直せばいいっつーのに」
「弓は両手剣みたいに頑丈じゃないの! すぐに壊れるし、歪んだ部分を直すのも結構手間とお金がかかるんだから」
弓……は宝箱に入ってたっけ。砂漠のやつには入れておいた気がする。多分アリシアが使ってるやつより強いやつがな!
ってかアリシアが撃ってるの魔力の矢か。属性付与か何かで光ってるだけだと思ったが、どうやら矢そのものが魔術によるものらしい。
盗賊が投げてた短剣と似てるのかもな。
「きゃあっ!」
「どうしたアリー、って落とし穴にハマったのか。ドジだなー、全く」
「うっさい! 見てないで助けてよ」
「へーへー、今助けますよっと……どわっ!?」
お、盗賊二人組がかかった罠と同じとこだ。あいつらは二人同時に落ちたが、本来はこうやって落ちて欲しかったんだよ。そのためにわざわざ少しズラして設置したんだからな。
「さーせんラーさん! ちょっと手伝って下さい」
「ははは、構わないよ」
ラーさんは落ちなかったのか。結構デカい落とし穴のはずなんだが。
「お喋りも良いけど、二人はもう少し注意して歩いた方がいいね。君たちなら、踏んだ瞬間に飛び退くことも不可能ではないはずだ」
いやマジで? もう少し注意っていうか、それ最早落とし穴警戒して歩けっつってるようなもんだろ。
「確かにここ迷宮ですもんね、緊張感持ってかないと」
「あーもう、服が泥だらけになっちゃった。最悪ー」
「んなこと気にしてる場合かよ。落ちた先が針まみれで血だらけになるよりマシだろ?」
「ちょっと! 嫌なこと言わないでよ」
よくよく考えるとえげつないよな。上層には即死系は設置しないようにするか……。
上層でバンバン人が死ぬような迷宮嫌だし。カジュアルに楽しめるくらいが丁度いいんだよ。だからミノっちに二人で挑むとかはやめてくれよな。
「っと、数が多いな……」
「――鼓舞。アレンは前のスライムを処理、私とアリシアで後ろの変異種を殴る……っ!」
スライムたちに次々と強化魔術がかかっていく。
そう、これこそがマジックスライムの特殊技・模倣だ。敵の最初の行動を延々と真似続ける。
戦闘開始時に鼓舞を使うのは定石なのかもしれないが、ここでは悪手だろう。なんたって相手に鼓舞吐き続ける置物が出来上がるわけだからな!
お頭みたいに一撃で全部吹っ飛ばせるわけでもなさそうだ。さぁどう動く?
「アレン君! 作戦変更だ、まず変異種を始末しないと大変なことになる! 全力で変異種を――」
「任せてくれよ、ラーさん! 行くぜええええええ!!」
おお、咄嗟によくそこまで判断出来たな。それについていけるアレンも凄い。やっぱ慣れか。
「銀狼斬り!」
恐らくスキルですらないが、それでいて強力なただの振り下ろしがマジックスライムを両断する。
「よくやった! ――アリシア君」
「あと半分もいないですよー。鼓舞が切れればただのスライム、私の敵じゃないし?」
「流石はアリシア君だね。では私は散らばったゴブリンを片付けるとしよう」
最初の一瞬で殺したから鼓舞も一度しかかかっていない。しかもこの模倣は「劣化コピー」、つまりはほぼ普通のスライムってことだ。
ワイズスライムも案外簡単に突破されるかもしれない。
「ラッキー、また宝箱だ!」
「えーずるいずるいずるい! なんでアレンばっかり!」
アレンは運良さそうだな。ただ中身がルナの宝箱ばっか引き当ててるし、そういう意味ではパーティ全体の運が悪いのかもしれん。
ただ、運が悪いからといってその連携が崩れることはなかった。
いきなりスライムが変異しようと、上からハイゴブリンが降ってこようと、その場その場で対応していく。フィルとパミルもかなりのものだったが、普段から一緒に冒険してる奴らはやっぱ違うな。
取り敢えず壁の罠は設置完了。誘引はまたの機会に取っておこう。丁度地下9階着くとこっぽいし。
「! アレン君、一旦立ち止まってくれるかい」
「ん? なんすかラーさん」
「嫌な予感がするんだ。慎重に下りよう」
大当たり。だけど慎重もクソもないんだな、それが。
「紫……? また別の変異種ってこと?」
「そうかもしれない、こんなに変異種だらけの迷宮なんて聞いたことがないけどね」
へえ、普通は通常種ばっかなのか。勝手に進化するのもしかして勇者補正だったりする?
「うおあっ」
「アレン!?」
っしゃ踏んだ! まさか階段そのものに突き飛ばされるとは思わんだろう。ふふふ。
まぁ安心してくれ。吹っ飛んだ先にはワイズスライムっていうクッションがあるから。
こいつだけは初期位置をランダムにしないように設定した。吹っ飛ばされて怪我するんじゃ可哀想だしな。我ながら名案。
「 !」
からの、この黒板引っ掻いたみたいな音よ。さあワイズスライムが集まってくるぞ。
「っ、アレン、大丈夫!?」
大丈夫なはずなかろ。全力で窒息させられかけてるぞ。早く助けないと。
あ、ちなみに身体に触ると軽く麻痺食らうから気を付けてね。捕まったら簡単に抜け出せません。
「まずい、早く核を壊さないと――アリシア君!」
「そ、そんな、いくら私だってアレンに当てずに核だけ貫くなんて」
「私はあの核を壊す術を持っていないんだ。急所にさえ当たらなければ少しの怪我で済む。早く!」
アレンはワイズスライムから逃れようと暴れ続ける。核の位置もブレ続ける。
「決める――私なら――できる」
一つ大きく深呼吸をして、アリシアは弓を引く。
狙うは核。やべえ、俺まで緊張してきた。
「――シッ!」
アリシアの手を離れた一筋の光は、弧を描いてワイズスライムに突き刺さる。
一瞬の間の後、ワイズスライムが爆散した。成功だ! 拍手。よくやった。
「っぷはぁ! 助かったぜアリー!」
「まだ終わりじゃないから……!」
ああ、そういや大量にわらわら集まってきてるんだった。
アリシアは弓を上に向かって引いた――光の矢の束をつがえて。
「流星矢!」
大量の光線が容赦なくワイズスライムに降り注ぐ。
光は、核も、それ以外も、平等に容赦なく貫いていく。
――地下9階層のワイズスライムは、全滅した。
単純計算で46万DP。聖騎士分どころか貯めてあったDP全部使ってギリギリだ。作るけど。実行。
『製作完了。フィライソード他199個に特殊効果が付与されました』
財布が軽いぜ。折角だから1/50くらいの確率でドロップするように設定しとくか。ドロップする度に新しく作ってけばいいしな。
「あ、ラーさん!」
「ラストルさん!」
お、合流したのか。まぁ序盤の魔物は弱いし迷宮造って待っとこう。
……いっそ上層に新しい罠とか設置してみるか?
いくら上層ったって落とし穴だけは芸がない。大体あっちの世界じゃもっと色々罠張ってあったしな。
壁が突然せり出してくるとか、誘引罠で軽いモンスターハウス状態になるとかしよう。
どうせ今いる階層には干渉出来ないんだし、ワイズスライムのとこからでいいか。
……でもワイズスライムは誘引せずとも固まって動いてるよな。壁の罠だけにしとこう。
「ラーさん、この宝箱ルナ入ってますよ! ラッキー!」
「えー、ずるい。私も欲しいんだけど……最近弓新しくしたせいで金欠なんだよね」
「アリーは新しいの買いすぎなんだよ。ちょっと傷んだくらいなら直せばいいっつーのに」
「弓は両手剣みたいに頑丈じゃないの! すぐに壊れるし、歪んだ部分を直すのも結構手間とお金がかかるんだから」
弓……は宝箱に入ってたっけ。砂漠のやつには入れておいた気がする。多分アリシアが使ってるやつより強いやつがな!
ってかアリシアが撃ってるの魔力の矢か。属性付与か何かで光ってるだけだと思ったが、どうやら矢そのものが魔術によるものらしい。
盗賊が投げてた短剣と似てるのかもな。
「きゃあっ!」
「どうしたアリー、って落とし穴にハマったのか。ドジだなー、全く」
「うっさい! 見てないで助けてよ」
「へーへー、今助けますよっと……どわっ!?」
お、盗賊二人組がかかった罠と同じとこだ。あいつらは二人同時に落ちたが、本来はこうやって落ちて欲しかったんだよ。そのためにわざわざ少しズラして設置したんだからな。
「さーせんラーさん! ちょっと手伝って下さい」
「ははは、構わないよ」
ラーさんは落ちなかったのか。結構デカい落とし穴のはずなんだが。
「お喋りも良いけど、二人はもう少し注意して歩いた方がいいね。君たちなら、踏んだ瞬間に飛び退くことも不可能ではないはずだ」
いやマジで? もう少し注意っていうか、それ最早落とし穴警戒して歩けっつってるようなもんだろ。
「確かにここ迷宮ですもんね、緊張感持ってかないと」
「あーもう、服が泥だらけになっちゃった。最悪ー」
「んなこと気にしてる場合かよ。落ちた先が針まみれで血だらけになるよりマシだろ?」
「ちょっと! 嫌なこと言わないでよ」
よくよく考えるとえげつないよな。上層には即死系は設置しないようにするか……。
上層でバンバン人が死ぬような迷宮嫌だし。カジュアルに楽しめるくらいが丁度いいんだよ。だからミノっちに二人で挑むとかはやめてくれよな。
「っと、数が多いな……」
「――鼓舞。アレンは前のスライムを処理、私とアリシアで後ろの変異種を殴る……っ!」
スライムたちに次々と強化魔術がかかっていく。
そう、これこそがマジックスライムの特殊技・模倣だ。敵の最初の行動を延々と真似続ける。
戦闘開始時に鼓舞を使うのは定石なのかもしれないが、ここでは悪手だろう。なんたって相手に鼓舞吐き続ける置物が出来上がるわけだからな!
お頭みたいに一撃で全部吹っ飛ばせるわけでもなさそうだ。さぁどう動く?
「アレン君! 作戦変更だ、まず変異種を始末しないと大変なことになる! 全力で変異種を――」
「任せてくれよ、ラーさん! 行くぜええええええ!!」
おお、咄嗟によくそこまで判断出来たな。それについていけるアレンも凄い。やっぱ慣れか。
「銀狼斬り!」
恐らくスキルですらないが、それでいて強力なただの振り下ろしがマジックスライムを両断する。
「よくやった! ――アリシア君」
「あと半分もいないですよー。鼓舞が切れればただのスライム、私の敵じゃないし?」
「流石はアリシア君だね。では私は散らばったゴブリンを片付けるとしよう」
最初の一瞬で殺したから鼓舞も一度しかかかっていない。しかもこの模倣は「劣化コピー」、つまりはほぼ普通のスライムってことだ。
ワイズスライムも案外簡単に突破されるかもしれない。
「ラッキー、また宝箱だ!」
「えーずるいずるいずるい! なんでアレンばっかり!」
アレンは運良さそうだな。ただ中身がルナの宝箱ばっか引き当ててるし、そういう意味ではパーティ全体の運が悪いのかもしれん。
ただ、運が悪いからといってその連携が崩れることはなかった。
いきなりスライムが変異しようと、上からハイゴブリンが降ってこようと、その場その場で対応していく。フィルとパミルもかなりのものだったが、普段から一緒に冒険してる奴らはやっぱ違うな。
取り敢えず壁の罠は設置完了。誘引はまたの機会に取っておこう。丁度地下9階着くとこっぽいし。
「! アレン君、一旦立ち止まってくれるかい」
「ん? なんすかラーさん」
「嫌な予感がするんだ。慎重に下りよう」
大当たり。だけど慎重もクソもないんだな、それが。
「紫……? また別の変異種ってこと?」
「そうかもしれない、こんなに変異種だらけの迷宮なんて聞いたことがないけどね」
へえ、普通は通常種ばっかなのか。勝手に進化するのもしかして勇者補正だったりする?
「うおあっ」
「アレン!?」
っしゃ踏んだ! まさか階段そのものに突き飛ばされるとは思わんだろう。ふふふ。
まぁ安心してくれ。吹っ飛んだ先にはワイズスライムっていうクッションがあるから。
こいつだけは初期位置をランダムにしないように設定した。吹っ飛ばされて怪我するんじゃ可哀想だしな。我ながら名案。
「 !」
からの、この黒板引っ掻いたみたいな音よ。さあワイズスライムが集まってくるぞ。
「っ、アレン、大丈夫!?」
大丈夫なはずなかろ。全力で窒息させられかけてるぞ。早く助けないと。
あ、ちなみに身体に触ると軽く麻痺食らうから気を付けてね。捕まったら簡単に抜け出せません。
「まずい、早く核を壊さないと――アリシア君!」
「そ、そんな、いくら私だってアレンに当てずに核だけ貫くなんて」
「私はあの核を壊す術を持っていないんだ。急所にさえ当たらなければ少しの怪我で済む。早く!」
アレンはワイズスライムから逃れようと暴れ続ける。核の位置もブレ続ける。
「決める――私なら――できる」
一つ大きく深呼吸をして、アリシアは弓を引く。
狙うは核。やべえ、俺まで緊張してきた。
「――シッ!」
アリシアの手を離れた一筋の光は、弧を描いてワイズスライムに突き刺さる。
一瞬の間の後、ワイズスライムが爆散した。成功だ! 拍手。よくやった。
「っぷはぁ! 助かったぜアリー!」
「まだ終わりじゃないから……!」
ああ、そういや大量にわらわら集まってきてるんだった。
アリシアは弓を上に向かって引いた――光の矢の束をつがえて。
「流星矢!」
大量の光線が容赦なくワイズスライムに降り注ぐ。
光は、核も、それ以外も、平等に容赦なく貫いていく。
――地下9階層のワイズスライムは、全滅した。
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