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第2章
49 麻痺飲料
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とりあえず二人が迷宮を乗っ取るとかいうことはなさそうだ。部屋と、ついでにクッキーもあげたらとても喜んでいた。
この世界のクッキーはどうやらパサパサしてるらしい。俺の世界の物は10円につき1DPくらいで買えるし、これを利用して商売とかもできそうだな。
庭に喫茶店でも出してみるか。三騎将に店員やってもらってもいいかもしれない。上層部に配置するには強すぎるし、まだ下層に探索者が来るってこともなさそうだしな。
だが売上を何に使うか。ビラ配り?
でも不殺の迷宮でもないしテーマパーク感覚で来られても困るんだよな。悩みどころだ。もういっそ宝箱に入れとくか。
……折角だし城下町的なものでも作ってみるか?
建物と舗装された道路、さっきの喫茶店もこっちに合流させよう。
武器防具を売るのもいいかもしれない。装備のメンテは出来ないが、迷宮産なら失敗作でもそれなりに売れるはずだ。
口コミで広げていくためにも何人かシレンシアまで行ってもらいたい――と思ったがカインは危なっかしいしアルデムは腰痛だし。アイラしかいないのか。
ゼーヴェに迷宮を任せて、俺とレルアとアイラで行くことにしよう。流石にそこまでやれば人も来るだろ。
人の集まるところには街が出来る。街が出来れば探索者も増える。完璧だ。
「ん…………マスター?」
「おはよう、レルア」
そういやここレルアの部屋だった。独り言がうるさかったかもしれん。
筋力にはそれなりに自信があったから部屋まで運んだんだが、軽すぎて驚いた。異常なまでの軽さ。林檎三個分くらいの重さしかないんじゃないか? 出来たてのポップコーンを売ってるアイツと同じくらいな気がする。
……ポップコーンが食いたくなってきたな。
「! 申し訳――」
「あー、謝らなくていいって。俺らのレベルじゃ敵いっこなかった。それを見極められなかった俺も悪い」
「ですが、勇者であるマスターをお守り出来なかった天使など……」
「レルアも無事、俺も無事、結果オーライってやつだ。それよりポップコーンいるか? 美味いぞ」
「……ありがとうございます。いただきます」
もしやポップコーンなんて食う気分でもなかったか。逆に気を使わせたかな。
まぁつられて笑顔になるとか言うしな。俺が笑顔ならレルアも笑顔になるだろ。多分。
『ポップコーン(50g):10DP』
やっぱ安いな。飲み物は……コーラでいいか。500mlだと少ないし1.5Lのものを買おう。
『コーラ(1.5L):15DP』
……グラスがない。ティーカップに注ぐのもなぁ。
って、もしかして。
『グラス:10DP』
なんと驚き百均価格。二つ購入、と。
皿も買っとくか。
『丸皿:10DP』
……もう雑貨屋に転職した方がいいかもしれん。転生したら雑貨屋でしたってか。
「あ、レルア炭酸飲めるよな?」
「炭酸飲料、ですか? 口にしたことはありませんが……恐らくは」
「良かった良かった」
氷もなかったな。まぁ何故か冷えてるしそのままでいいか。
「それじゃ、二人の無事を祝して! かんぱーい」
「乾……杯?」
馴染みがない習慣なのか、突き出されたグラスに自分のそれをおずおずと近付けてくる。
キン、と爽やかな音。懐かしいな。最後にこうやって誰かと乾杯したのはいつだったか。
「くーっ、シミるなあ」
一気飲みすると口内から喉、食道の順に弾けるような感覚が広がった。んー、この独特の酸味! 慣れ親しんだ味だ。
「っ!」
グラスを握りしめて目を丸くしているのはレルア。ははーん、さてはしゅわっしゅわな感覚に驚いてるな?
「……マスターの世界では、麻痺の込められたものを飲む習慣が?」
「炭酸ってのは元々こうしゅわっとしてるもんなんだよ」
「なるほど……勉強になります」
こっちの世界にも炭酸とかあんのかな。シレンシア行ったときに確かめてくるか。
「そういやレルア、なんであの二人と話し合う前に戦闘に持ち込んだんだ? あぁいや、怒ってるとかじゃなくてだな」
「……浅慮でした。逆上した彼女らにマスター諸共殺されていてもおかしくなかった。『天使の力』を過信して驕った結果です」
「でも、殺しておくに越したことはなかったんだろ? 確かに強かったが、部屋と居場所を要求しただけで、そこまで危険には思えなかったんだけどな」
レルアは真剣な顔で考え込む。
「妙なんです、全てが。あの二人の片方は『大罪』という凶悪な存在です。本来であれば共にいる少女は『大罪』の目的に利用されるだけの傀儡になっているはず――」
そういえば「大罪・色欲のラビ」とかいう名前だったな。
「――しかしそんな様子はありません。そして、何故あの強さでこの迷宮に部屋を――居場所を求めたのか」
「ああ、それなら聖騎士がどうとか言ってたぞ。どうやら追われてるらしい」
「聖騎士……確か教会お抱えの騎士団ですね。追われているのにも納得です。『大罪』の契約者は、発覚した瞬間からお尋ね者ですから。生死不問で、全ての大国から懸賞金もかけられます」
「そりゃまた……」
物騒な話だ。契約しただけでお尋ね者か。
「『大罪』はそれほどまでに危険な存在なんです。過去に――文献の情報ですが――かつて『大罪』同士の諍いによって、街が幾つも廃墟と化したと」
まぁレルアが負けるほどだ。そんなやつが来たら警戒するし、先手を打とうと思うわな。
「ありがとな――」
『侵入者です。数は三。音量自動調節を実行します。範囲を侵入者周囲に設定しました』
おい待てよ、まだ影にやられた魔物が復活してない。誰が来たんだ? 冒険者か?
つーかポップコーンも全然食えてない。
「……城?」
「影さんは随分豪華なところに住んでるんだにゃー」
「油断は出来ないねえ。なんたって三人も殺られてるんだから」
白銀の鎧――聖騎士か! 猫っぽいやつは軽め、糸目モノクルのやつに至っては金色の刺繍がしてあるだけの白ローブだが、この様子は恐らく聖騎士。俺の本能がそう言ってる。
「しかも臭う……臭うにゃー。これは罪の臭い。それもとびきり濃いやつだにゃー」
「『大罪』か? しかし、予見では」
「アレはシレンシアに出現る時の話だからねえ。ここで影と手を組んでいてもおかしなことじゃない」
いざという時はレルアに出て貰うことになるかもしれない。ゼーヴェだと精々一人がギリギリとかじゃないか?
レルアが聞いたところでは、聖騎士はそれぞれが救世主のような扱いを受けているとか。
なんでまたこう強いのが来るんだ。
「まあ入らないことには始まらないよねえ。お邪魔しまあす」
「待て、罠がある可能性を」
「大丈夫だにゃー、まさか普段歩く城内に罠なんて仕掛けないにゃー」
……まぁ普段歩かないから仕掛けることは出来るが。
しっかし、参ったな。ミノっちがギリギリ復活するかどうかってとこだ。
レア進化したゴーレムを突破されるといよいよ不味い。……運3,420を信じるしかないか。
この世界のクッキーはどうやらパサパサしてるらしい。俺の世界の物は10円につき1DPくらいで買えるし、これを利用して商売とかもできそうだな。
庭に喫茶店でも出してみるか。三騎将に店員やってもらってもいいかもしれない。上層部に配置するには強すぎるし、まだ下層に探索者が来るってこともなさそうだしな。
だが売上を何に使うか。ビラ配り?
でも不殺の迷宮でもないしテーマパーク感覚で来られても困るんだよな。悩みどころだ。もういっそ宝箱に入れとくか。
……折角だし城下町的なものでも作ってみるか?
建物と舗装された道路、さっきの喫茶店もこっちに合流させよう。
武器防具を売るのもいいかもしれない。装備のメンテは出来ないが、迷宮産なら失敗作でもそれなりに売れるはずだ。
口コミで広げていくためにも何人かシレンシアまで行ってもらいたい――と思ったがカインは危なっかしいしアルデムは腰痛だし。アイラしかいないのか。
ゼーヴェに迷宮を任せて、俺とレルアとアイラで行くことにしよう。流石にそこまでやれば人も来るだろ。
人の集まるところには街が出来る。街が出来れば探索者も増える。完璧だ。
「ん…………マスター?」
「おはよう、レルア」
そういやここレルアの部屋だった。独り言がうるさかったかもしれん。
筋力にはそれなりに自信があったから部屋まで運んだんだが、軽すぎて驚いた。異常なまでの軽さ。林檎三個分くらいの重さしかないんじゃないか? 出来たてのポップコーンを売ってるアイツと同じくらいな気がする。
……ポップコーンが食いたくなってきたな。
「! 申し訳――」
「あー、謝らなくていいって。俺らのレベルじゃ敵いっこなかった。それを見極められなかった俺も悪い」
「ですが、勇者であるマスターをお守り出来なかった天使など……」
「レルアも無事、俺も無事、結果オーライってやつだ。それよりポップコーンいるか? 美味いぞ」
「……ありがとうございます。いただきます」
もしやポップコーンなんて食う気分でもなかったか。逆に気を使わせたかな。
まぁつられて笑顔になるとか言うしな。俺が笑顔ならレルアも笑顔になるだろ。多分。
『ポップコーン(50g):10DP』
やっぱ安いな。飲み物は……コーラでいいか。500mlだと少ないし1.5Lのものを買おう。
『コーラ(1.5L):15DP』
……グラスがない。ティーカップに注ぐのもなぁ。
って、もしかして。
『グラス:10DP』
なんと驚き百均価格。二つ購入、と。
皿も買っとくか。
『丸皿:10DP』
……もう雑貨屋に転職した方がいいかもしれん。転生したら雑貨屋でしたってか。
「あ、レルア炭酸飲めるよな?」
「炭酸飲料、ですか? 口にしたことはありませんが……恐らくは」
「良かった良かった」
氷もなかったな。まぁ何故か冷えてるしそのままでいいか。
「それじゃ、二人の無事を祝して! かんぱーい」
「乾……杯?」
馴染みがない習慣なのか、突き出されたグラスに自分のそれをおずおずと近付けてくる。
キン、と爽やかな音。懐かしいな。最後にこうやって誰かと乾杯したのはいつだったか。
「くーっ、シミるなあ」
一気飲みすると口内から喉、食道の順に弾けるような感覚が広がった。んー、この独特の酸味! 慣れ親しんだ味だ。
「っ!」
グラスを握りしめて目を丸くしているのはレルア。ははーん、さてはしゅわっしゅわな感覚に驚いてるな?
「……マスターの世界では、麻痺の込められたものを飲む習慣が?」
「炭酸ってのは元々こうしゅわっとしてるもんなんだよ」
「なるほど……勉強になります」
こっちの世界にも炭酸とかあんのかな。シレンシア行ったときに確かめてくるか。
「そういやレルア、なんであの二人と話し合う前に戦闘に持ち込んだんだ? あぁいや、怒ってるとかじゃなくてだな」
「……浅慮でした。逆上した彼女らにマスター諸共殺されていてもおかしくなかった。『天使の力』を過信して驕った結果です」
「でも、殺しておくに越したことはなかったんだろ? 確かに強かったが、部屋と居場所を要求しただけで、そこまで危険には思えなかったんだけどな」
レルアは真剣な顔で考え込む。
「妙なんです、全てが。あの二人の片方は『大罪』という凶悪な存在です。本来であれば共にいる少女は『大罪』の目的に利用されるだけの傀儡になっているはず――」
そういえば「大罪・色欲のラビ」とかいう名前だったな。
「――しかしそんな様子はありません。そして、何故あの強さでこの迷宮に部屋を――居場所を求めたのか」
「ああ、それなら聖騎士がどうとか言ってたぞ。どうやら追われてるらしい」
「聖騎士……確か教会お抱えの騎士団ですね。追われているのにも納得です。『大罪』の契約者は、発覚した瞬間からお尋ね者ですから。生死不問で、全ての大国から懸賞金もかけられます」
「そりゃまた……」
物騒な話だ。契約しただけでお尋ね者か。
「『大罪』はそれほどまでに危険な存在なんです。過去に――文献の情報ですが――かつて『大罪』同士の諍いによって、街が幾つも廃墟と化したと」
まぁレルアが負けるほどだ。そんなやつが来たら警戒するし、先手を打とうと思うわな。
「ありがとな――」
『侵入者です。数は三。音量自動調節を実行します。範囲を侵入者周囲に設定しました』
おい待てよ、まだ影にやられた魔物が復活してない。誰が来たんだ? 冒険者か?
つーかポップコーンも全然食えてない。
「……城?」
「影さんは随分豪華なところに住んでるんだにゃー」
「油断は出来ないねえ。なんたって三人も殺られてるんだから」
白銀の鎧――聖騎士か! 猫っぽいやつは軽め、糸目モノクルのやつに至っては金色の刺繍がしてあるだけの白ローブだが、この様子は恐らく聖騎士。俺の本能がそう言ってる。
「しかも臭う……臭うにゃー。これは罪の臭い。それもとびきり濃いやつだにゃー」
「『大罪』か? しかし、予見では」
「アレはシレンシアに出現る時の話だからねえ。ここで影と手を組んでいてもおかしなことじゃない」
いざという時はレルアに出て貰うことになるかもしれない。ゼーヴェだと精々一人がギリギリとかじゃないか?
レルアが聞いたところでは、聖騎士はそれぞれが救世主のような扱いを受けているとか。
なんでまたこう強いのが来るんだ。
「まあ入らないことには始まらないよねえ。お邪魔しまあす」
「待て、罠がある可能性を」
「大丈夫だにゃー、まさか普段歩く城内に罠なんて仕掛けないにゃー」
……まぁ普段歩かないから仕掛けることは出来るが。
しっかし、参ったな。ミノっちがギリギリ復活するかどうかってとこだ。
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