28 / 252
第1章
28 三騎将
しおりを挟む
結論から言うと、DPを使わずに出来ることなんて散歩と配置換えくらいしかなかった。が、これが楽しすぎる。
異世界行ったらゲームの中の城を歩けるなんて夢にも思ってなかった。控えめに言って最高。
無意識にギミックを避けて通ってたが、どうやら踏んだら発動していたらしい。お陰で配置換えには頭を使った。
えげつないギミック・罠は停止させたが、突然魔物に挟み撃ちにされるようなのを幾つか追加。魔物はゴーストだし死ぬことはないだろうが、大いに驚いてくれるだろう。地下入り前の良い準備運動になるはずだ。
ゼーヴェ率いる迷宮騎士団がどうなるかわからないので、ひとまずレルアには自室で待機してもらった。暇だと思うので、格安DPで買えた「魔術全集(禁書指定)」を渡しておいた。厨二病全開の名前に見えたが、中身は案外ガチの魔導書っぽかったな。あとで俺も読みたい。
そういえば、ゴーストにも三種類いることがわかった。ただ命令だけ聞いてふらふらしてるやつ、一応の意思疎通は出来るやつ、バリバリ人間っぽいやつ。順に、名なしタンクなし、名なしタンクあり、名あり(ゼーヴェ)だ。
タンクを持ったゴーストの一部は魔物狩りに出掛けているが、意思疎通が出来るならきっと楽だろう。現にDPも着々と貯まってきている。
あとは、職員用玄関的な扱いで転移門も設置し直した。城の裏庭の茂みの中だ。念のためレルアに破壊困難な結界を張ってもらった。
どうやら「自らに結界を張り、そこから解呪をかけ、更にその状態を維持しつつ、結界の型をなぞる」とかいう面倒な手順を踏まないと内側には入れないらしい。よくわからん。
……と、転移門の作動する音がした。次いでノック。
「只今戻りました」
「おう、お帰り」
ドアを開けると、思った以上に疲れた様子のゼーヴェ。
椅子に座って貰ったはいいものの、いい感じの紅茶やらなんやらがないな。DPで買える?
『午前の紅茶(500ml):10DP』
違う、そうじゃない。が、とりあえずこれでいいか。購入。
幸いティーカップはレルアが買ってきてくれていた。ペットボトルから注ぐのも何か違和感があるが、まぁ雰囲気が出るので良し。
「わざわざありがとうございます。不思議な飲み物ですね」
「ああ、俺の世界の飲み物だよ。俺は微糖が一番好きなんだが、これも割とイケるぞ」
一口飲んで、ゼーヴェは目を丸くした。
「……甘い、ですね。しかし上品な甘みです」
「まぁな。疲れた身体には丁度いい」
徹夜明けでぼーっとするときなんかにはお世話になった。コーヒーは独特な苦みが嫌いだったからな。
エナドリ――魔剤は寿命が縮むってんで敬遠してたが、結局関係なかったな……。
「で、狩りはどうだった?」
「ええ、上々の結果と言えるでしょう。しかし、私だけでは少々手が足りません。一班六人で五班にわけましたが、一班迷宮待機としても私と同等程度のレイスが三人は必要かと」
三人なら増えたDPだけでどうとでもなりそうだな。
「少人数での戦闘に慣れていない者もいましたが、一班に一人監督役を付けることでスムーズになると思われます」
まぁ全ての班をゼーヴェ一人でなんとかしろってのも無理な話だ。
『レイス:30,000DP』
数は三、と。決定。
レイスレベルの魔物なら魔力タンクが不要なことはゼーヴェが実証済みだ。
ゼーヴェ達を召喚したときと同じような魔法陣が現れる。
「お、なンだぁ!?」
「ほっほ、これはこれは」
「……」
思った以上にキャラの濃そうな面子。
「貴方が我々のマスターということでよろしいですかな?」
と、真ん中の老人。
「ああ。これからよろしく頼む」
「へぇ、お前がマスターね。ンな弱そうなナリで大丈夫か?」
横でゼーヴェがムッとしたのがわかる。ステイ・クールでいこうな。
「…………無礼」
召喚から終始無言だった黒髪の少女が口を開く。服も黒ドレスでかなり大人っぽい感じだ。
「ンだよ、思ったことを言っただけじゃねぇか!」
「はは、まぁ俺は戦わないしな。弱い俺の代わりにそこのゼーヴェや君らに戦ってもらうってわけだ」
「ゼーヴェ? 確かシレンシアの火事で死んだ雑魚がそんな名前だったような気がするなァ。マスターが弱えーと使い魔も弱えーのな」
ゼーヴェキレかけてるじゃん? 初っ端から飛ばしまくるのやめようぜ?
てか赤髪のお前。お前も一応使い魔なんだからブーメランだからな、それ。
「お、なんか文句あンのか? いいぜェ、ならオレと殺し合いだ」
「まぁまぁ、落ち着きなされ。身内で争うのも良くない。それに、先ずマスターに名乗らないというのもそれこそ無礼というもの」
「るっせジジイ。まーいい。オレはカイン。元Bランクのソロ冒険者だ」
よし、老人氏ナイス。場をおさめるのが上手い。
にしてもBランクか。散々言うだけあるな。
「儂はアルデム。生前は大賢者と呼ばれたりもしとりましたが、それも遠い昔の話。ま、非力な老人なりに精一杯お仕えさせていただきますじゃ」
非力て。俺でもかなりの魔力量だってわかるぞ。謙遜しすぎにも程がある。
「……アイラ。よろしく」
アイラはどうやら寡黙なタイプらしい。まぁレイスとして召喚されるくらいだし実力はあるんだろう。
「よーし、じゃあ皆改めてよろしくな。早速だが、君らには迷宮騎士団――この迷宮にある騎士団の中心として活動してもらう」
折角だし四天王みたいな称号欲しいな。三人……騎士……で将軍……?
「三騎将、としてな」
「へーェ、名前は結構いいじゃねェの。で、そこのゼーヴェはオレらの上なのか? 下なのか?」
「上だ。団長がゼーヴェで、三騎将はそのすぐ下になる」
「あァ、そう……」
あ、こいつ舌打ちしやがった。
「何はともあれまずは兵舎に行ってみてくれ。既にゴースト達は班に分けてあるらしい。ゼーヴェ、案内頼んだ」
「承知しました」
ゼーヴェに連れられて一向は地上へと向かった。微妙に心配だが、少なくともアルデムは常識人っぽいし大丈夫だろう。……ゼーヴェ用に一応DPで胃薬を買っとくか。
さて、次は邪竜狩りだ。
異世界行ったらゲームの中の城を歩けるなんて夢にも思ってなかった。控えめに言って最高。
無意識にギミックを避けて通ってたが、どうやら踏んだら発動していたらしい。お陰で配置換えには頭を使った。
えげつないギミック・罠は停止させたが、突然魔物に挟み撃ちにされるようなのを幾つか追加。魔物はゴーストだし死ぬことはないだろうが、大いに驚いてくれるだろう。地下入り前の良い準備運動になるはずだ。
ゼーヴェ率いる迷宮騎士団がどうなるかわからないので、ひとまずレルアには自室で待機してもらった。暇だと思うので、格安DPで買えた「魔術全集(禁書指定)」を渡しておいた。厨二病全開の名前に見えたが、中身は案外ガチの魔導書っぽかったな。あとで俺も読みたい。
そういえば、ゴーストにも三種類いることがわかった。ただ命令だけ聞いてふらふらしてるやつ、一応の意思疎通は出来るやつ、バリバリ人間っぽいやつ。順に、名なしタンクなし、名なしタンクあり、名あり(ゼーヴェ)だ。
タンクを持ったゴーストの一部は魔物狩りに出掛けているが、意思疎通が出来るならきっと楽だろう。現にDPも着々と貯まってきている。
あとは、職員用玄関的な扱いで転移門も設置し直した。城の裏庭の茂みの中だ。念のためレルアに破壊困難な結界を張ってもらった。
どうやら「自らに結界を張り、そこから解呪をかけ、更にその状態を維持しつつ、結界の型をなぞる」とかいう面倒な手順を踏まないと内側には入れないらしい。よくわからん。
……と、転移門の作動する音がした。次いでノック。
「只今戻りました」
「おう、お帰り」
ドアを開けると、思った以上に疲れた様子のゼーヴェ。
椅子に座って貰ったはいいものの、いい感じの紅茶やらなんやらがないな。DPで買える?
『午前の紅茶(500ml):10DP』
違う、そうじゃない。が、とりあえずこれでいいか。購入。
幸いティーカップはレルアが買ってきてくれていた。ペットボトルから注ぐのも何か違和感があるが、まぁ雰囲気が出るので良し。
「わざわざありがとうございます。不思議な飲み物ですね」
「ああ、俺の世界の飲み物だよ。俺は微糖が一番好きなんだが、これも割とイケるぞ」
一口飲んで、ゼーヴェは目を丸くした。
「……甘い、ですね。しかし上品な甘みです」
「まぁな。疲れた身体には丁度いい」
徹夜明けでぼーっとするときなんかにはお世話になった。コーヒーは独特な苦みが嫌いだったからな。
エナドリ――魔剤は寿命が縮むってんで敬遠してたが、結局関係なかったな……。
「で、狩りはどうだった?」
「ええ、上々の結果と言えるでしょう。しかし、私だけでは少々手が足りません。一班六人で五班にわけましたが、一班迷宮待機としても私と同等程度のレイスが三人は必要かと」
三人なら増えたDPだけでどうとでもなりそうだな。
「少人数での戦闘に慣れていない者もいましたが、一班に一人監督役を付けることでスムーズになると思われます」
まぁ全ての班をゼーヴェ一人でなんとかしろってのも無理な話だ。
『レイス:30,000DP』
数は三、と。決定。
レイスレベルの魔物なら魔力タンクが不要なことはゼーヴェが実証済みだ。
ゼーヴェ達を召喚したときと同じような魔法陣が現れる。
「お、なンだぁ!?」
「ほっほ、これはこれは」
「……」
思った以上にキャラの濃そうな面子。
「貴方が我々のマスターということでよろしいですかな?」
と、真ん中の老人。
「ああ。これからよろしく頼む」
「へぇ、お前がマスターね。ンな弱そうなナリで大丈夫か?」
横でゼーヴェがムッとしたのがわかる。ステイ・クールでいこうな。
「…………無礼」
召喚から終始無言だった黒髪の少女が口を開く。服も黒ドレスでかなり大人っぽい感じだ。
「ンだよ、思ったことを言っただけじゃねぇか!」
「はは、まぁ俺は戦わないしな。弱い俺の代わりにそこのゼーヴェや君らに戦ってもらうってわけだ」
「ゼーヴェ? 確かシレンシアの火事で死んだ雑魚がそんな名前だったような気がするなァ。マスターが弱えーと使い魔も弱えーのな」
ゼーヴェキレかけてるじゃん? 初っ端から飛ばしまくるのやめようぜ?
てか赤髪のお前。お前も一応使い魔なんだからブーメランだからな、それ。
「お、なんか文句あンのか? いいぜェ、ならオレと殺し合いだ」
「まぁまぁ、落ち着きなされ。身内で争うのも良くない。それに、先ずマスターに名乗らないというのもそれこそ無礼というもの」
「るっせジジイ。まーいい。オレはカイン。元Bランクのソロ冒険者だ」
よし、老人氏ナイス。場をおさめるのが上手い。
にしてもBランクか。散々言うだけあるな。
「儂はアルデム。生前は大賢者と呼ばれたりもしとりましたが、それも遠い昔の話。ま、非力な老人なりに精一杯お仕えさせていただきますじゃ」
非力て。俺でもかなりの魔力量だってわかるぞ。謙遜しすぎにも程がある。
「……アイラ。よろしく」
アイラはどうやら寡黙なタイプらしい。まぁレイスとして召喚されるくらいだし実力はあるんだろう。
「よーし、じゃあ皆改めてよろしくな。早速だが、君らには迷宮騎士団――この迷宮にある騎士団の中心として活動してもらう」
折角だし四天王みたいな称号欲しいな。三人……騎士……で将軍……?
「三騎将、としてな」
「へーェ、名前は結構いいじゃねェの。で、そこのゼーヴェはオレらの上なのか? 下なのか?」
「上だ。団長がゼーヴェで、三騎将はそのすぐ下になる」
「あァ、そう……」
あ、こいつ舌打ちしやがった。
「何はともあれまずは兵舎に行ってみてくれ。既にゴースト達は班に分けてあるらしい。ゼーヴェ、案内頼んだ」
「承知しました」
ゼーヴェに連れられて一向は地上へと向かった。微妙に心配だが、少なくともアルデムは常識人っぽいし大丈夫だろう。……ゼーヴェ用に一応DPで胃薬を買っとくか。
さて、次は邪竜狩りだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
74
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる