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第1章
27 迷宮騎士団
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しかし来ない。本当に人が来ない。待てど暮らせど盗賊一人来ない。
もういっそ目立つ見た目にしてやろうか。絶対アレだろ、こんな草原しかないような場所に来る物好きなんていないってやつだろ。
でかい城でもおっ建てれば人も増えるというものだ。先ずは視覚に訴えかけねばならない。買えるかな?
『城・地上は50万DPです。実行しますか?』
ギリギリだが買える。無駄遣いな気がしなくもないが、人が来ないと始まらないしな。実行。
『城・地上の効果で、迷宮に地上1~3階が追加されました』
ゴゴゴゴ……と迷宮が揺れた。
50万DPだし、そんな大層なモノでもないんだろうか。見れる?
『外観を表示します』
……!?
とんでもなく豪華で大きなそれは、50億DP請求されてもおかしくないような出来だった。
城塞に兵舎っぽい何かまである。玉座の部分が迷宮入り口に変わってるんだな。3階から地下に強制転移させるのか。
確か地下には牢獄があったはず……ってかこれってほとんどど「グランサーガⅢ」のルセペ城だな? 俺の世代じゃプレイしてないやつはいないほどの名作RPG。謎の既視感の正体はそういうことか。
あの城のギミックには中々に苦戦したからなぁ。多分俺の記憶に強く残ってたかなんかだろう。
それにしても凄い。宝箱とか魔物とかは置けんの?
『可能です』
神ゲーすぎる。
ルセペ城を超える鬼畜難易度にしてやろうか――と一瞬考えたが、まだ迷宮入り口にすら至ってないしな。あとから地下にも城の階層とか作るか。この割となんでもアリな迷宮なら、階段を上がったのに迷宮では地下に進んでる、みたいなことも可能だろう。
さて、宝箱は安物のさっき作った武器でいいな。とりあえずは。
続いて魔物。うーん、折角だし、触れない限り絶対に襲ってこない最強魔物とか配置したい。城だから甲冑とかかな?
そいつに貴重な武器とか入った宝箱守らせたり。んで中身回収した瞬間的に地下50階に飛ばしたりな。ある程度以上の実力なら上層はダルいだけだろうし。夢が広がる。
城内の通常魔物はゴーストでいいだろ。亡者の執念的な。
『ゴースト:500DP』
なんもないとゴブリン、スライムより安いのか。殴ったら死ぬんじゃなかろうか。
【地上1階:ゴースト50/50】
【地上2階:ゴースト50/50】
【地上3階:ゴースト50/50】
DPが雀の涙ほどしか残っていない。やっぱり宝箱はなしにしよう。最強魔物を配置したらそのとき貴重な武器置く感じで。
そのうち余った武器をゴーストに持たせる、なんてのもいいかもしれない。
武器を持ったゴースト、最早兵士と言っても過言ではないな。迷宮騎士団、なんつって。
……迷宮騎士団、案外悪くないんじゃないか?
早速兵舎を使うときがきたかもしれない。
(ゼーヴェ)
(いかがなされましたか)
(少し話したいことがある。来てくれるか)
数秒と経たぬうちに扉がノックされる。
「入ってくれ」
「失礼致します」
立ち姿もキマってるなぁ。レイスになってから、オーラというか存在感もしっかりした気がする。
「確か、元々どこだったかの隊長やってたって言ってたよな?」
「はい。シレンシア騎士団にて遊撃隊隊長を務めていましたが……」
「よし、それを見込んでの頼みだ。この迷宮でも騎士団を作ろうと思うんだが、それの団長をやってくれないか?」
そう言うとゼーヴェは驚き、暫しの間逡巡した。
やがて、迷いの残る表情で口を開く。
「お言葉は有り難いのですが、私には少々荷が重すぎます。部下に裏切られ、家族すらも守れないような人間に隊長の資格無し。ましてや団長など……」
「いやいや、突然の放火は仕方ないだろ。裏切ったのも、再会の様子を見るにセリザール? だけっぽいしな」
他はゼーヴェのことを元団長として敬っていたようだった。
「ゼーヴェには戦況の把握と次の一手を即座に考える力がある。それこそ、迷宮騎士団の団長を任せるに値する程度には。……まあ戦いも碌に知らない若造が何を言う、って感じかもしれないが……とにかく! 自分を卑下しすぎるなよ」
「はっ。肝に銘じておきます」
先ほどよりも短い間が空く。ゼーヴェは、決意に満ちた目でこちらを真っ直ぐ見つめた。
「団長の件、お受け致しましょう。期待を裏切らぬよう、この身ある限り全力で務めさせていただきます」
「やってくれるか、ありがとな」
この間の経験値稼ぎでは痛い目を見たが、あれは非戦闘経験者を無理矢理魔物狩りに引きずりだしたせいだ。今回は「家族」なんて縛りもなく、ただ「ゴースト」として召喚した。見た感じでは、いわゆる冒険者、傭兵なんてのがほとんど。しかも、何も注文をつけない場合は、魔力タンク込みでも1,000DPらしい。ゴブリンよりかは強そうだが……自然進化の条件が厳しいとかか?
騎士団メンバーは、様子見も兼ねてまずは30人。各階10人ずつに魔力タンクを付与。
『DPを15,000消費しました』
DPも本格的に厳しくなってきた。さて、兵舎に移動してもらおう。
「まだ『小隊』と呼んだ方がいいような人数だが、ゴースト30人を騎士団メンバーとして配置する。魔力タンクは付与済みだ。早速パーティーを組んで魔物狩りにでもいってきてくれ。武器は宝箱の中から自由に持って行って構わないが、流石にまともな武器を全員分はまだ用意出来ない。あくまで試験的に、だ。マズそうなら即帰還、もしくはレルアに直接念話を飛ばしてくれ」
こんなとこか。
パーティっつったら王道は戦士に魔法使い、僧侶……って感じだろうが、ゴーストは回復魔術で消えたりしないんだろうか。
「承知しました。最高の成果を約束致しましょう」
ゼーヴェは、深々とお辞儀して部屋を出て行った。
よし、DP関連もこれで解決するだろ。一回行って大丈夫そうなら、レルアに邪竜とか探して狩ってもらうのもいいな。
さてと、DPを使わずにできることを探すとするか。
もういっそ目立つ見た目にしてやろうか。絶対アレだろ、こんな草原しかないような場所に来る物好きなんていないってやつだろ。
でかい城でもおっ建てれば人も増えるというものだ。先ずは視覚に訴えかけねばならない。買えるかな?
『城・地上は50万DPです。実行しますか?』
ギリギリだが買える。無駄遣いな気がしなくもないが、人が来ないと始まらないしな。実行。
『城・地上の効果で、迷宮に地上1~3階が追加されました』
ゴゴゴゴ……と迷宮が揺れた。
50万DPだし、そんな大層なモノでもないんだろうか。見れる?
『外観を表示します』
……!?
とんでもなく豪華で大きなそれは、50億DP請求されてもおかしくないような出来だった。
城塞に兵舎っぽい何かまである。玉座の部分が迷宮入り口に変わってるんだな。3階から地下に強制転移させるのか。
確か地下には牢獄があったはず……ってかこれってほとんどど「グランサーガⅢ」のルセペ城だな? 俺の世代じゃプレイしてないやつはいないほどの名作RPG。謎の既視感の正体はそういうことか。
あの城のギミックには中々に苦戦したからなぁ。多分俺の記憶に強く残ってたかなんかだろう。
それにしても凄い。宝箱とか魔物とかは置けんの?
『可能です』
神ゲーすぎる。
ルセペ城を超える鬼畜難易度にしてやろうか――と一瞬考えたが、まだ迷宮入り口にすら至ってないしな。あとから地下にも城の階層とか作るか。この割となんでもアリな迷宮なら、階段を上がったのに迷宮では地下に進んでる、みたいなことも可能だろう。
さて、宝箱は安物のさっき作った武器でいいな。とりあえずは。
続いて魔物。うーん、折角だし、触れない限り絶対に襲ってこない最強魔物とか配置したい。城だから甲冑とかかな?
そいつに貴重な武器とか入った宝箱守らせたり。んで中身回収した瞬間的に地下50階に飛ばしたりな。ある程度以上の実力なら上層はダルいだけだろうし。夢が広がる。
城内の通常魔物はゴーストでいいだろ。亡者の執念的な。
『ゴースト:500DP』
なんもないとゴブリン、スライムより安いのか。殴ったら死ぬんじゃなかろうか。
【地上1階:ゴースト50/50】
【地上2階:ゴースト50/50】
【地上3階:ゴースト50/50】
DPが雀の涙ほどしか残っていない。やっぱり宝箱はなしにしよう。最強魔物を配置したらそのとき貴重な武器置く感じで。
そのうち余った武器をゴーストに持たせる、なんてのもいいかもしれない。
武器を持ったゴースト、最早兵士と言っても過言ではないな。迷宮騎士団、なんつって。
……迷宮騎士団、案外悪くないんじゃないか?
早速兵舎を使うときがきたかもしれない。
(ゼーヴェ)
(いかがなされましたか)
(少し話したいことがある。来てくれるか)
数秒と経たぬうちに扉がノックされる。
「入ってくれ」
「失礼致します」
立ち姿もキマってるなぁ。レイスになってから、オーラというか存在感もしっかりした気がする。
「確か、元々どこだったかの隊長やってたって言ってたよな?」
「はい。シレンシア騎士団にて遊撃隊隊長を務めていましたが……」
「よし、それを見込んでの頼みだ。この迷宮でも騎士団を作ろうと思うんだが、それの団長をやってくれないか?」
そう言うとゼーヴェは驚き、暫しの間逡巡した。
やがて、迷いの残る表情で口を開く。
「お言葉は有り難いのですが、私には少々荷が重すぎます。部下に裏切られ、家族すらも守れないような人間に隊長の資格無し。ましてや団長など……」
「いやいや、突然の放火は仕方ないだろ。裏切ったのも、再会の様子を見るにセリザール? だけっぽいしな」
他はゼーヴェのことを元団長として敬っていたようだった。
「ゼーヴェには戦況の把握と次の一手を即座に考える力がある。それこそ、迷宮騎士団の団長を任せるに値する程度には。……まあ戦いも碌に知らない若造が何を言う、って感じかもしれないが……とにかく! 自分を卑下しすぎるなよ」
「はっ。肝に銘じておきます」
先ほどよりも短い間が空く。ゼーヴェは、決意に満ちた目でこちらを真っ直ぐ見つめた。
「団長の件、お受け致しましょう。期待を裏切らぬよう、この身ある限り全力で務めさせていただきます」
「やってくれるか、ありがとな」
この間の経験値稼ぎでは痛い目を見たが、あれは非戦闘経験者を無理矢理魔物狩りに引きずりだしたせいだ。今回は「家族」なんて縛りもなく、ただ「ゴースト」として召喚した。見た感じでは、いわゆる冒険者、傭兵なんてのがほとんど。しかも、何も注文をつけない場合は、魔力タンク込みでも1,000DPらしい。ゴブリンよりかは強そうだが……自然進化の条件が厳しいとかか?
騎士団メンバーは、様子見も兼ねてまずは30人。各階10人ずつに魔力タンクを付与。
『DPを15,000消費しました』
DPも本格的に厳しくなってきた。さて、兵舎に移動してもらおう。
「まだ『小隊』と呼んだ方がいいような人数だが、ゴースト30人を騎士団メンバーとして配置する。魔力タンクは付与済みだ。早速パーティーを組んで魔物狩りにでもいってきてくれ。武器は宝箱の中から自由に持って行って構わないが、流石にまともな武器を全員分はまだ用意出来ない。あくまで試験的に、だ。マズそうなら即帰還、もしくはレルアに直接念話を飛ばしてくれ」
こんなとこか。
パーティっつったら王道は戦士に魔法使い、僧侶……って感じだろうが、ゴーストは回復魔術で消えたりしないんだろうか。
「承知しました。最高の成果を約束致しましょう」
ゼーヴェは、深々とお辞儀して部屋を出て行った。
よし、DP関連もこれで解決するだろ。一回行って大丈夫そうなら、レルアに邪竜とか探して狩ってもらうのもいいな。
さてと、DPを使わずにできることを探すとするか。
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