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4章
流石に気づいた人
しおりを挟む待ち合わせの駅に着くと、水城先輩はもうすでに待ち合わせの時計台の下で待っていた。俺もちょっと早めに出てきたつもりだが、水城先輩はそれよりも随分前から来ていたようだ。
まだ待ち合わせ時間の20分前だというのに当たり前のようにいらっしゃる。
そして、当たり前のようにナンパされていらっしゃる…。
「ねー、彼女ー無視しないでよー。俺悲しいなー」
「…」
水城先輩は声をかけてくる男の存在を完全に無視をしていた。全く見えていないかのように振る舞っている。
…なんかこういう時の対処に慣れてる感じがするな。
しかしナンパが治安と関係あるのかは知らないが、もしかしてこの辺って治安が悪いのだろうか?ナンパの確率が多すぎる。
ナンパしている男は流石に昨日の連中ではなく、一人でナンパしている人だった。彼にも早々におかえりいただくことにしよう、
ナンパをしている男性と水城先輩の間に身を滑らすと、二人とも急に割り込んできた俺に驚いていた。
「すみません。彼女、俺と待ち合わせしてるので…。ナンパするのなら他の方を当たってもらえますか?」
「…」
彼は俺と水城先輩の顔を交互に見やると「あははー。まじかー。こりゃ無理だ…失礼しましたー」とそそくさとこの場から離れていった。
なんか思った以上にあっさり引き下がったな。
まあ、その方がありがたいんだけどね。
ナンパ男が離れていくのを見届けると俺は水城先輩に声をかけた。
「水城先輩、大丈夫でしたか?」
「えっ?えっ?」
水城先輩は俺を見て驚いていた。
あ、そうだった。眼鏡してないと俺のこと別のやつだと思っちゃうんだったな。
それに、なんかこれと同じ下り昨日神代とやった気が…。
これはまた水城先輩に誤解されるパターンか。もしくは神代みたいに引っ叩かれるたり罵倒されたりするのだろうか?
もしそうだとすると、やっぱり残念な先輩だなぁ…。
と思っていたが、
「もしかして、村井君ですか…??」
なんと水城先輩は俺の眼鏡のない姿にびっくりしているようではあったが、眼鏡がなくてもちゃんと俺のことをわかってくれた。そのことに俺はちょっと驚いた。
「よく俺のこと分かりましたね。結構みんな眼鏡がないと俺のことわかってもらえなかったんですけど」
「私のことをそういう風に残念そうに見る男性は村井君にしかいなかったので…」
「…」
…俺はそんな目でいつも水城先輩のことを見ていただろうか?
見ていたかもしれないが、そんなのバレてるの?
「あ、もしかして自覚なかったんですか?村井君、思っていることいつも全部顔に出てますよ…?」
…いや、俺はポーカーフェイスな男のはずなんだが。
「いえ、ですから分かります…」
まじか…。だとしたら、俺今まで陽キャと接している時とか、イヤイヤ対応してるのとかバレバレだったわけ…?え?それは、やばいじゃん…。
「私が演奏会のチケット渡した時も、下駄箱の前で村井君を待っていた時もすごく嫌そうな顔してましたよ?」
「…ごめんなさい」
まさかそんな思っていることが顔に出ているとは…。
俺が謝ると水城先輩はくすくすと笑った。
「いつもと反対ですね。私が謝ってばかりだったのに。別に怒ってはいませんよ?先程も助けてくれてありがとうございました。やっぱり村井君は頼りになりますね」
…そう言って微笑む先輩を改めて見ると、とても可愛いらしい服装をしていた。
白いブラウスと膝下まで伸びたワインレッドのチャック柄のスカートで綺麗にまとめている。元々素材がいいのもあるが、今日は普段と比べても一段と綺麗に見えた。
そういえば、水城先輩の私服を見るのは初めてではないだろうか?
先輩の姿に見惚れていると、視線に気がついたのか先輩は少し恥ずかしそうにしていた。
「…似合ってますか?」
「えっと…はい。とても綺麗です…」
「良かった…頑張った甲斐がありました…」
そう言って俺が言った言葉に喜びを噛み締め、嬉しそうにはにかんでいる様子を見て、流石の俺もわかってしまった。
あ、これlike じゃない方だ…。
そっちの可能性を考えないようにしてきたので、俺も動揺が激しい。
え…まじで?そんなことあるの!?
い、いや待て雰囲気はそんな感じだけど、自意識過剰な可能性もまだ…。
「村井君も…今日は随分格好いいですね。私のためにおしゃれしてきてくれたんですか?」
「えっと、一応そうなります…」
「…一応はいらないんじゃないですか?」
少し剥れている先輩もとても可愛い。
おかしい。この間先輩にあった時、こんな雰囲気微塵もなかったと思うんだけど!?
…あ、でもあの時は俺の母さんとかあっちのご両親もいたな。
もしかしてそういう様子を見せてなかっただけ??
え?いつから??
今日この後どうしよう…。まともに会話ができる気がしない…。
「? どうかしましたか?」
「…いや、その。…って俺の表情で考えてること、わかるんじゃなかったんですか?」
「全部はわかりませんよ。だから、これから知っていけたら嬉しいなと思ってます」
「…」
うわぁ。この人全然好意隠してない。こんなに真っ直ぐ好意を向けられたのは初めてなので普通に赤面してしまう。
「ふふふ、じゃあ早速ランチにいきましょうか」
そういっている歩き出す先輩をよくよく見ると先輩も顔を赤くしている。先輩も緊張しているらしい。
うわー、なんかすげえ恥ずかしい…。
え?俺今日どんな態度で過ごせばいいの…?
会話もなんだか緊張してしまって当たり障りのないことしか言えない。
「…えっと、先輩がお薦めしてたランチってどの辺りですか?」
「駅を行ったちょっと先です。あ、見えてきましたよ」
「…どの店ですかね?」
「ほら、あのお店です」
「…」
そう言って先輩が指差すお店はどこかで見たようなお店だった。
具体的には昨日見たし、行った。しかも2回も。
「このお店はパフェで有名なんですが、実はランチもとても美味しんですよ!良かったらパフェも一緒に頼みましょうか?」
「…」
この店ランチでも有名な店なのか…。
…今からでも違う店にしたくなってきた。
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