助けたはずのヒロイン達が全力で恩を仇で返してくるんだが?お前らなんなの??

羽希

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3章

ナンパじゃない(環奈視点)

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ー環奈視点ー

はっきり言ってしまえば、私は男性が苦手です。

体をいやらしい目つきで見られたりするたりすることが多くあまりいい気になれません。
中には何を勘違いするのか、仲良くもないのにすぐに馴れ馴れしくしてきたり、ボディタッチをしてくる人さえいます。もちろんそんな方は少数ですが。

そのように経験的に男性には不快にされることが多く、いつしか私は男性との接触は最低限にして生活をするようになっていました。

そして、気づけばこれまで恋愛というものを経験することなく…。
最近では友達にも心配されることが多くなってきてしまいました。

『環奈、恋は絶対したほうがいいよ!相手のことを考えるだけでドキドキしてしまったり、気がついたら、ついその人を考えてしまったり…。一緒にいるだけで心がすごく満たされるの。
きっと環奈の前にもそういう人が現れるから、もしそういう風に感じる男に会ったら絶対に逃しちゃダメだよ!』

友達にはそう言われましたが、私が本当にそんなふうに感じる人が本当に出てくるのでしょうか…?
正直なところ私の前にはそういう人は現れないだろうなと考えていました。

ーー

そんなある日。
土曜日に部活に行く時のことです。

「君可愛いね~。どう、俺とお茶でも行かない?いい店知ってるんだよ」
「…」

「あ、君ハンカチ落としたよ!おっと違った?でもせっかくこうして知り合えたんだからどこか遊びに行かない?」
「………」

通学路で平日にナンパされることは少ないですが、土曜ともなるとこういう類の人に遭遇しやすくなります。

その日は特に声をかけられる事が多く、イライラしていました。
こうして下心が透けて見える人は本当に苦手です。


そしてまたしても背後から声をかけられます。

「おい、何か落としたぞ」
「…」

またですか…。
こういう輩は無視するに限ります。

「君、財布。財布落としたよ」
「…」

「ちょっと、ロングヘアーの君!財布落としたよ!」
「……」


「財布!財布落としたって!」
「っ…!」


しつこいです!

「いい加減にしてください!もうその手のナンパは聞き飽きました!迷惑です!」

くるりと振り返るとうちの学校の制服を着た男子が一人。
迷惑であると怒鳴ったのですが、彼は本当に私の財布を拾ってくれていました…。

顔から火が出るほど恥ずかしい…。

慌てて怒鳴ってしまったことを釈明するも、彼は呆れた顔をして私に財布を渡すとそのままスタスタと歩いて行ってしまいます。

よくよく考えれば、私は彼にお礼の一言も言っていませんでした。
彼が呆れるのも当然です。

「待ってください!あの、何かお礼を!」
慌てて追いかけますが、彼は私と関わりたくないのか「いらない」とただ一言。

色々な男性に声をかけられてきましたが、どんな人でも私に何かしら私に関心を持っていたので
彼のように下心が一切見えない人は初めてでした。

そんな人にお礼も言わずに怒鳴ってしまったのかと思うと後悔しかありません。
私の馬鹿!

せめてお礼を!せめて名前でも教えてください!!
と必死に言い募ると観念したように彼はようやく名前を教えてくれた。

「村井。村井優斗です」

村井優斗君。

その名前はそれからの私の人生で決して忘れることのない名前でした。

今思えば、私は自分で気付いていなかっただけでこの時から既に彼に特別な感情を抱いていたように思います。
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