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第五章 プールヴァ帝国
百五十八夜 ALT+F4
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「やあペールここにいたんですね、よかった……心配してたんですよ」
町を襲った盗賊団が、近くの修道院を占拠していた。
幸いにも大半は護衛に雇った修道女が倒したそうだ。しかし数人が人質を連れ、山のアジトへ逃げたと大騒ぎになっている。
怯える修道女たちを背に、即座に救助隊が組まれた。
皆を従えるリーダールーシー、護衛の修道女アニー、正妻と告げ突如現れた娘、そして奇妙な少年オルロック。
全員が十代前半の未熟なパーティに、修道女たちは不安に顔を見合わせる。
俺も気が気じゃなかったが、修道女たちのそれとはちょっと違う。そのアジトが近かったら、こっちまで巻き添えを食わねえかと……。
「盗賊団の伏兵がどれほどいたって、アユ……オルロックだけで問題ねえだろな。まあムチャを止める奴は必要か、おっかねえ」
やりすぎなきゃいいけど――。
修道院への立ち入りを認められ、縛られた盗賊たちの見張りをしていた。
ところが俺の予想に反し、日が暮れても誰も帰ってこない。やはり町に連絡して自警団を呼ぶべきだと、修道女たちが騒ぎだす。
乞われて馬車の準備をしてると、松明を持った人影が近づいてくる。
ボロボロの救助隊が人質の修道女を連れ戻し帰ってきたのだ。ルーシーの母親が真っ先に駆けだし、修道女たちも口々に感謝し若いパーティを出迎えた。
意外過ぎる結末に俺だけ口を開けてると、気がついた少年が微笑む。
『やあペール――…』
「あれは……っアユムだ!」
それは他人行儀となった瞳ではない。
それだけで一緒に旅をしてた、親しくなった妙な少年に……貴族なのに腰の低い少年に戻ったのだと感じれた。
安堵に膝が揺れ馬にもたれかかり、喉で詰まっていた希望が吹きでる。
「アユムが元に戻りさえすれば、2人で国へ帰れるんじゃないか……?」
さすがに1人じゃ抜け出す気になれなかった。
だがルーシーはこの修道院で、母ちゃんに会うのが目的だったようだ。しばらく滞在するみたいだし、俺は町へ往復して食料なんかを運ぶ役目だろう。
その隙にコッソリ逃げっちまえば、追ってこれねえんじゃねえか?
国をまたいであっちこちとうろつき、ここがどこだか分からねえ。だけど盗賊に襲われてもアユムがいれば問題ない。
道があり人里がある、魔獣が巣食う樹海に比べりゃ天国だ!
「ずっと太陽が昇る方角へ進んでた、沈む方へ向かえばいずれは国へ……っ!」
「へへっ……これを見せりゃあ決定的だ」
修道女たちは昨日からの災難に心底疲れたのだろう。それでもお祈りを済ませ、各自就寝につくと共に静かになる。
俺は布に包まれた荷を手に、修道院内を進んでいた。
中庭で縛られてる盗賊の脇を通り、唯一明かりが灯る部屋を確かめる。はたから見れば不審者丸出しだが、こちとら真剣そのもの。
「以前のアユムなら、敵と遭遇したらまずは逃げることを選択してた。ルーシーはアユムに催涙スプレーを向けてるし、もう俺らの仲間じゃねえ!」
きっと一緒に帰ってくれるはずだ――。
『…――さん、ペールさん! ケガは、大丈夫ですか!?』
『待ってくださいヨーギ様! ペールさんこれが木なら、雷が効きませんか!?』
そうだ敵なんだ、村娘の姿で騙されっちまってただけだ。
だいたいアユムもアユムだ、支配されるのを喜んでるみたいに従いやがって!
『おい遅いぞペール、早く来い!』
『おいペール馬車を中庭へ回しておけ!』
こんな所まで連れ回したあげくアゴで使いやがって。
何様のつもりだっての、まあきっと貴族様なんだろな。それにしちゃ母ちゃんが修道院にいるってのも、変な話に思えるが。
『――お母さん!』
その瞳が赤く染まり、こぼれる涙をぬぐっていた。
けして悪い娘には、見えなかったんだ――。
「ふんっ……わけわかんねえ娘なんだ!」
脳内でブツブツと愚痴をたれ、暗闇の中で息すら殺す。
希望に駆け出したいのをグッとこらえ、忍び足で目当ての部屋へ向かっていく。
「…――っ」
「誰か起きてる? やべえな姿を見られたら、盗賊の仲間と思われっちまわ!」
どこからかふいに聴こえた声。建物で響き木霊しているのか、まるで歌うような旋律となり扉の隙間からもれている。
焦ってとっさに逃げようとしたけど、なぜか無視できない。
ふらりと扉に手をかけ、そっと覗いてしまう。蝋燭に照らされた薄暗い室内で、少年と娘が向かい合っていた。
ルーシーの口内が淡く光り、鬼気とした笑みに揺れて――。
「……っあ!」
大きく床が軋み、驚いて飛び上がると頭が扉に当たる。
盗み視ていたマヌケな姿勢で、無情にも入口で立ち尽くしてしまった。
「んっどうしたペール? 縛っているとはいえ、盗賊から目を離してはならんゾ」
「あっ……へえ! いやっあのですねアユ……オルロックの様子が変だったんで、ほら例の報告に……ってやつですをね」
「ああその件か、もう気にしなくていいゾ」
しどろもどろになりながら言い訳をまくしたてた。
娘が興味もなさそうに顔をそむけると、代わりに少年がゆっくりと首を向ける。
「やあペール殿何用でしょうか、私に変わりはありませんよ」
言葉使いはさして変わらないが、微笑むその瞳は俺を見ていない。
息を呑む間もなく悟っていた――。
「アユムじゃねえ……みじけえ夢だったな……」
☆
「ほうお主ほどの術者が、定期的に行使せねば解けてしまうとはのう」
プールヴァ帝国へ帰国中、ルーシーは福音を唱えてアユムの洗脳を強めていた。
より精神の深部へ、より精神に根強く――。
側に控えるアユムの容姿に変わりはない。だがその瞳に変異を感じていたのか、コンコルディアが顎をさすって頷く。
「ふんっ……旅の間は神経が過敏で、まっとうに「力」が届かなかっただけだ」
夜間は寝たふりをし、日中は荷台で寝ている横で……隙を見ては福音を響かせ、「力」を掛かりやすくしていた。
だが魔獣の出現が重なって、途切れがちとなっていたんだゾ。
「支障なく聴かせれたとは思えん……まったくこんなにも苦労して、黒い大理石を得ることができんとは……っ」
語尾を強めるのは術者の自負か。
老人の賞賛まじりの呟きを、娘は素直に受け取れない。
「アユム様はO属性と聞いてるおるし、同属性は抵抗が強く術の効きが悪いとか。ああいや、もう一つの可能性もあるんでしたな」
「ほうそんな可能性があるのか、知らなかったなあ。さ~て明日もつまらん旅だ、先に休ませてもらうゾ」
娘が焚火に背を向けて寝転ぶと、老人は物言いたげにアユムに視線を流す。
察した少年が丁寧に頭を下げ拒絶をつきつける。老人は残念そうに肩を落とし、わざとらしく深いため息をついた。
『ふんっやはり探っていたか、本当に油断ならんジジイだ!』
ルーシーが背を向けたまま、コンコルディアの気配に毒づく。
もう一つの可能性もあり――老人にそれを伝えなかったのは因果伯の不文律か、意図した当てつけか。
「――いいですか、よほど慣れていなければ、武器は持っている者も怖いのです」
「……っ!」
修道院の中庭で、オルロックが木の棒を持ち防御指南をしていた。
数日前に起こった、盗賊による修道院占拠事件。神をも恐れぬ所業に町の領主は憤慨していたが、今後も予断を許さない。
ルーシーがどうにかしろと詰め寄り、少年に知恵を絞らせたのだ。
修道女たちが持ち慣れぬ棒を手に緊張している。武器に慣れている者――それは取りも直さず、戦の経歴を表すのだから。
「お母さんにまで武器を取らせて……やっぱり修道院の周りに護衛を置くべきだ、
じゃなきゃもっと頑丈な石壁を建てるとか……っ」
まあ全部、修道院に不釣り合いだって断られたけど――。
ルーシーは二階から、指導するオルロックを眺めていた。
奇妙な少年の手慣れた口調に、どこで得た知識なのか疑問しか沸かない。
「オルロックはO属性ではない、それは旅で得た事実だ。なのに術の効きが悪く、少し気を許せば記憶が蘇ってしまうのはなぜか」
ここまで抵抗の強い精神も珍しい。
術者の技量や同属性以外で「力」が効きにくいもう一つの可能性――幼少時から繰り返し、「力」を掛けられていた場合などだ。
知れば知るほど、近ければ近いほどというのは心も同様。
親密度の高さは、永続して操れるほど強力となる。ゆえに信頼を寄せる友人や、忠実な部下などは操りやすく解けにくい。
親から子へなどは最適といえる。
子供は理屈や常識が根付いておらず効きやすい。それは強い刷り込みとなって、決して解けない呪詛となる。
「年齢的にいってアユムは――オルロックはかなり強固な「綺人」を、おそらくは幼少時から受け続けていたのかもしれん」
私の「力」に反発してしまうほど根深く――。
中庭では母が戸惑いつつ講習を受けている。
目が合って手を挙げると挙げ返してくれた、なんだかそれだけで嬉しい。
「しかし肉親がやったとは思えん、通常なら我が子を操り人形にする親はいない。自我の崩壊を招き、思考力を破壊された傀儡となりかねないからだ」
それでも望むとしたら、高位の貴族あたりか……。
外郭十二門会議の去りぎわ、エクスがこぼしていたっけな。アラヤシキの少年は実在しない噂だと。
ならばオルロックはいったい――。
「あんたはいったい、何処から来たんだ?」
「ところでルーちん♥ 「ジャーラフ」と「シーちゃん」ってだ~れ?」
「……体が治ったのなら幸いだ、しかしいい加減帝都に帰ったらどうだ。あんたも因果伯ならアニー……アニムム殿下の件を、報告しなければならんだろ」
「ルーちんにいわれたくな~い♥」
「私が受けた指令ではない、帝国のため勤勉に働く気などないゾ。同様に元皇女を手助けする義理もないがな」
トゥバーがイチジクのカスタードプディングとアップルパイを手に、忙しく喉を鳴らしながら入ってくる。
体はすっかり癒えたのか、犬のマスクと銀のプレートアーマーが鈍く輝いた。
「それがねえロックさまはこ~んなカワイイ正妻に、隠しごとしてたんだよ~? それも2人も♥ どっちが愛人か両方か……「シーちゃん」がアヤシイなあ♥」
「ふっあんたより可愛いのは確かだゾ」
そうだ確かあの蛇を、シーちゃんと呼んでいたっけ――ルーシーはふと、樹海の旅で会った驚くほど賢い蛇を思い出す。
あれは魔獣ではなかったか。
因果伯なら経験から、魔獣にも属性があるのを承知している。人と同じで全ての魔獣が啓ける訳ではないが、そういった個体は広大な縄張りを誇っていた。
「力」を行使しているのだ。
あのコカトリスもそうだった、O属性を匂わせる魔獣。
「……親子にも思えるほど懐いた蛇を、獣者にしていたんだ。案外と真の魔獣は、蛇の生まれ変わりやもしれん」
自分の想像が面白く、ルーシーは窓に突っ伏し喉で笑う。
「ウチよりカワイイ~? なにそれ~聞き捨てらんな~い♥」
「オルロックにはすでに掛け替えのない子がいるのだ、諦めたがよかろう」
「ふ~んだ♥ もう修道院なんてほっとけばいいのに、ロックさまの熟女好き♥ そうだいっそルーちんのお義父さんになれば、ライバルが減っていいかも~♥」
「だからオルロックとはなにも……ってかお母さんに妙な噂を流すな!」
「わか~い新妻より修道女と汗をながすなんて、ほかに理由はないじゃない~?」
「いい加減にしろ恋愛脳! 大体あんたのどこが若――~…っ」
年齢に突っ込みを入れると自分に返ってくると、ルーシーは言葉を呑んだ。
こいつと話すと疲れるとばかりに、息を吐いて再び中庭を見下ろす。
「――背中を見せ逃げるだけでは、抵抗できず襲われるだけです。無抵抗を見逃してくれるほど、悪意は優しくありません」
オルロックの主張に、修道女たちは思わず腕を見る。
盗賊に縛られた痕が残っており、恐怖と痛みが襲って眉をひそめた。
「といっても武器を手にした暴漢相手です、皆さんに戦えとは言いません。まずは避難場所の設定と、防御を重点的に見直しましょう」
「……っはい!」
「修道院での修行も大切ですけど、どうか皆さんに平安が訪れますように」
修道女たちが一斉に頷く、また同じような襲撃を受けるかもしれないのだ。
緊張で沸き上がった不安が、少年の微笑で打ち消される。
「さて皆さんの避難場所はもちろん修道院ですよね、数ヵ所に鐘を設置しました。日頃の集合や異常事態が発生した場合の、合図を決めておきましょう」
柵に吊り下げられた小さな鐘を、木製ハンマーで叩く。
修道院の外に広がる農地まで、十分に響く高い音が鳴った。
「町で鳴らしている、ミサや閉門を報せる鐘と同じですね。言葉で伝え合うより、耳に残る「音」の方が注意をうながしやすいんです」
他にも木柵の定期的な点検、各人の居場所を把握するスケジュールの可視化。
緊急避難用の小部屋などの建造も視野に入れる。
「次に防御ですね、これは町で作ってもらったのですが――…」
「あっあの申し訳ございません……私どもはこのような、武器の類は……」
修道女の1人が木の棒を手におずおずと意見する。
周囲も同一の意見だったのだろう、持ち慣れぬ以上に精神の忌避がうかがえた。
「これは武器ではありません、暴漢者を捕らえる捕縛具――刺股です」
2~3メートルの棒に、U字形の金具を取り付けた構造。
U字形の部分で対象者の腕や胴体を押さえ込む。両先端には複数の返しが付き、衣服に絡まると取れにくくなる。
「服なら無理矢理にも引き千切れます。ですがチェインメイルや革鎧の場合は、一旦脱いで内側から返しを外さなければなりません。一度からみつけば――っ」
少年が胴体に見立てた太い杭を突く。
U字形が杭に固定され、軽く引いた程度では外せない重しとなった。
「このように対象者の自由を奪う、拘束具となります」
「わああ――~…っ!」
武器を振るうにも邪魔となり、金具で補強された棒は易々と折れない。
けっして広いとは言えない修道院の通路。部屋に逃げ込んで防壁を築く時間は、十分に確保できるだろう。
「では皆さんそれぞれ構えて、順番に突いてみてください!」
「「はいっ!」」
「常に2人で対応するように! 1人では心細くとも、仲間の存在を意識する! 声をかけあい呼応すれば勇気が湧きます!」
「体力の差は歴然です、力に力で応じてはいけません!」
「悪意に迫られた時など恐怖で身体の自由がきかなくなります! 自分はこうして抵抗できる手段がある、その経験が気持ちに余裕を生むんです!」
「無事逃げるための、安全を確保するための防御です!」
「町にフラリと立ち寄った英雄が、都合よく助けてはくれません! 自分を友人を大切な方を守れるのは、己だけだと認識してください!!」
「「はい――――っ!!」」
「ああいうやり取りって、本当アユムのままなんだよなあ」
ペールが馬に水をやり、農地で休ませていた。
木柵に囲まれた修道院から、兵士の訓練を彷彿とさせる音が響く。重なる元気な掛け声は、とても修道女とは思えない。
寝っ転がりながら眺めていると、山間の村落道に影が浮かぶ。
「ん……? ああ騎馬だな、後ろに馬車も一緒だ。ってことはお偉いさんか、町の領主が盗賊騒ぎに焦ってたからなあ」
寄進でもしに来たのかな――。
のんびりと立ち上がったペールに、遠くで馬の蹄が応じる。
「……、……っ!」
「ちょ……っま――…!」
慣れない訓練だが達成感もあり、修道女の汗と笑顔が弾ける中庭に異音がした。
木柵の向こうから馬のいななきと押し問答が起こったのだ。ペールを押しのけ、一見して貴族と分かる青年が乗り込んでくる。
「どなたですか、先触れもなく失礼でしょう」
即座にオルロックが盾となり、修道女の前に立ち塞がった。
ふってわいた騒動に、二階で眺めていたルーシーも立ち上がる。だが貴族の顔を確認して窓枠からコケた。
「――フっフラーテル様!?」
「ええい邪魔するな小僧……っおお! そこに居られるのはルーシー様っ!!」
「あ~らら~♥ ルーちん修羅場~?」
町を襲った盗賊団が、近くの修道院を占拠していた。
幸いにも大半は護衛に雇った修道女が倒したそうだ。しかし数人が人質を連れ、山のアジトへ逃げたと大騒ぎになっている。
怯える修道女たちを背に、即座に救助隊が組まれた。
皆を従えるリーダールーシー、護衛の修道女アニー、正妻と告げ突如現れた娘、そして奇妙な少年オルロック。
全員が十代前半の未熟なパーティに、修道女たちは不安に顔を見合わせる。
俺も気が気じゃなかったが、修道女たちのそれとはちょっと違う。そのアジトが近かったら、こっちまで巻き添えを食わねえかと……。
「盗賊団の伏兵がどれほどいたって、アユ……オルロックだけで問題ねえだろな。まあムチャを止める奴は必要か、おっかねえ」
やりすぎなきゃいいけど――。
修道院への立ち入りを認められ、縛られた盗賊たちの見張りをしていた。
ところが俺の予想に反し、日が暮れても誰も帰ってこない。やはり町に連絡して自警団を呼ぶべきだと、修道女たちが騒ぎだす。
乞われて馬車の準備をしてると、松明を持った人影が近づいてくる。
ボロボロの救助隊が人質の修道女を連れ戻し帰ってきたのだ。ルーシーの母親が真っ先に駆けだし、修道女たちも口々に感謝し若いパーティを出迎えた。
意外過ぎる結末に俺だけ口を開けてると、気がついた少年が微笑む。
『やあペール――…』
「あれは……っアユムだ!」
それは他人行儀となった瞳ではない。
それだけで一緒に旅をしてた、親しくなった妙な少年に……貴族なのに腰の低い少年に戻ったのだと感じれた。
安堵に膝が揺れ馬にもたれかかり、喉で詰まっていた希望が吹きでる。
「アユムが元に戻りさえすれば、2人で国へ帰れるんじゃないか……?」
さすがに1人じゃ抜け出す気になれなかった。
だがルーシーはこの修道院で、母ちゃんに会うのが目的だったようだ。しばらく滞在するみたいだし、俺は町へ往復して食料なんかを運ぶ役目だろう。
その隙にコッソリ逃げっちまえば、追ってこれねえんじゃねえか?
国をまたいであっちこちとうろつき、ここがどこだか分からねえ。だけど盗賊に襲われてもアユムがいれば問題ない。
道があり人里がある、魔獣が巣食う樹海に比べりゃ天国だ!
「ずっと太陽が昇る方角へ進んでた、沈む方へ向かえばいずれは国へ……っ!」
「へへっ……これを見せりゃあ決定的だ」
修道女たちは昨日からの災難に心底疲れたのだろう。それでもお祈りを済ませ、各自就寝につくと共に静かになる。
俺は布に包まれた荷を手に、修道院内を進んでいた。
中庭で縛られてる盗賊の脇を通り、唯一明かりが灯る部屋を確かめる。はたから見れば不審者丸出しだが、こちとら真剣そのもの。
「以前のアユムなら、敵と遭遇したらまずは逃げることを選択してた。ルーシーはアユムに催涙スプレーを向けてるし、もう俺らの仲間じゃねえ!」
きっと一緒に帰ってくれるはずだ――。
『…――さん、ペールさん! ケガは、大丈夫ですか!?』
『待ってくださいヨーギ様! ペールさんこれが木なら、雷が効きませんか!?』
そうだ敵なんだ、村娘の姿で騙されっちまってただけだ。
だいたいアユムもアユムだ、支配されるのを喜んでるみたいに従いやがって!
『おい遅いぞペール、早く来い!』
『おいペール馬車を中庭へ回しておけ!』
こんな所まで連れ回したあげくアゴで使いやがって。
何様のつもりだっての、まあきっと貴族様なんだろな。それにしちゃ母ちゃんが修道院にいるってのも、変な話に思えるが。
『――お母さん!』
その瞳が赤く染まり、こぼれる涙をぬぐっていた。
けして悪い娘には、見えなかったんだ――。
「ふんっ……わけわかんねえ娘なんだ!」
脳内でブツブツと愚痴をたれ、暗闇の中で息すら殺す。
希望に駆け出したいのをグッとこらえ、忍び足で目当ての部屋へ向かっていく。
「…――っ」
「誰か起きてる? やべえな姿を見られたら、盗賊の仲間と思われっちまわ!」
どこからかふいに聴こえた声。建物で響き木霊しているのか、まるで歌うような旋律となり扉の隙間からもれている。
焦ってとっさに逃げようとしたけど、なぜか無視できない。
ふらりと扉に手をかけ、そっと覗いてしまう。蝋燭に照らされた薄暗い室内で、少年と娘が向かい合っていた。
ルーシーの口内が淡く光り、鬼気とした笑みに揺れて――。
「……っあ!」
大きく床が軋み、驚いて飛び上がると頭が扉に当たる。
盗み視ていたマヌケな姿勢で、無情にも入口で立ち尽くしてしまった。
「んっどうしたペール? 縛っているとはいえ、盗賊から目を離してはならんゾ」
「あっ……へえ! いやっあのですねアユ……オルロックの様子が変だったんで、ほら例の報告に……ってやつですをね」
「ああその件か、もう気にしなくていいゾ」
しどろもどろになりながら言い訳をまくしたてた。
娘が興味もなさそうに顔をそむけると、代わりに少年がゆっくりと首を向ける。
「やあペール殿何用でしょうか、私に変わりはありませんよ」
言葉使いはさして変わらないが、微笑むその瞳は俺を見ていない。
息を呑む間もなく悟っていた――。
「アユムじゃねえ……みじけえ夢だったな……」
☆
「ほうお主ほどの術者が、定期的に行使せねば解けてしまうとはのう」
プールヴァ帝国へ帰国中、ルーシーは福音を唱えてアユムの洗脳を強めていた。
より精神の深部へ、より精神に根強く――。
側に控えるアユムの容姿に変わりはない。だがその瞳に変異を感じていたのか、コンコルディアが顎をさすって頷く。
「ふんっ……旅の間は神経が過敏で、まっとうに「力」が届かなかっただけだ」
夜間は寝たふりをし、日中は荷台で寝ている横で……隙を見ては福音を響かせ、「力」を掛かりやすくしていた。
だが魔獣の出現が重なって、途切れがちとなっていたんだゾ。
「支障なく聴かせれたとは思えん……まったくこんなにも苦労して、黒い大理石を得ることができんとは……っ」
語尾を強めるのは術者の自負か。
老人の賞賛まじりの呟きを、娘は素直に受け取れない。
「アユム様はO属性と聞いてるおるし、同属性は抵抗が強く術の効きが悪いとか。ああいや、もう一つの可能性もあるんでしたな」
「ほうそんな可能性があるのか、知らなかったなあ。さ~て明日もつまらん旅だ、先に休ませてもらうゾ」
娘が焚火に背を向けて寝転ぶと、老人は物言いたげにアユムに視線を流す。
察した少年が丁寧に頭を下げ拒絶をつきつける。老人は残念そうに肩を落とし、わざとらしく深いため息をついた。
『ふんっやはり探っていたか、本当に油断ならんジジイだ!』
ルーシーが背を向けたまま、コンコルディアの気配に毒づく。
もう一つの可能性もあり――老人にそれを伝えなかったのは因果伯の不文律か、意図した当てつけか。
「――いいですか、よほど慣れていなければ、武器は持っている者も怖いのです」
「……っ!」
修道院の中庭で、オルロックが木の棒を持ち防御指南をしていた。
数日前に起こった、盗賊による修道院占拠事件。神をも恐れぬ所業に町の領主は憤慨していたが、今後も予断を許さない。
ルーシーがどうにかしろと詰め寄り、少年に知恵を絞らせたのだ。
修道女たちが持ち慣れぬ棒を手に緊張している。武器に慣れている者――それは取りも直さず、戦の経歴を表すのだから。
「お母さんにまで武器を取らせて……やっぱり修道院の周りに護衛を置くべきだ、
じゃなきゃもっと頑丈な石壁を建てるとか……っ」
まあ全部、修道院に不釣り合いだって断られたけど――。
ルーシーは二階から、指導するオルロックを眺めていた。
奇妙な少年の手慣れた口調に、どこで得た知識なのか疑問しか沸かない。
「オルロックはO属性ではない、それは旅で得た事実だ。なのに術の効きが悪く、少し気を許せば記憶が蘇ってしまうのはなぜか」
ここまで抵抗の強い精神も珍しい。
術者の技量や同属性以外で「力」が効きにくいもう一つの可能性――幼少時から繰り返し、「力」を掛けられていた場合などだ。
知れば知るほど、近ければ近いほどというのは心も同様。
親密度の高さは、永続して操れるほど強力となる。ゆえに信頼を寄せる友人や、忠実な部下などは操りやすく解けにくい。
親から子へなどは最適といえる。
子供は理屈や常識が根付いておらず効きやすい。それは強い刷り込みとなって、決して解けない呪詛となる。
「年齢的にいってアユムは――オルロックはかなり強固な「綺人」を、おそらくは幼少時から受け続けていたのかもしれん」
私の「力」に反発してしまうほど根深く――。
中庭では母が戸惑いつつ講習を受けている。
目が合って手を挙げると挙げ返してくれた、なんだかそれだけで嬉しい。
「しかし肉親がやったとは思えん、通常なら我が子を操り人形にする親はいない。自我の崩壊を招き、思考力を破壊された傀儡となりかねないからだ」
それでも望むとしたら、高位の貴族あたりか……。
外郭十二門会議の去りぎわ、エクスがこぼしていたっけな。アラヤシキの少年は実在しない噂だと。
ならばオルロックはいったい――。
「あんたはいったい、何処から来たんだ?」
「ところでルーちん♥ 「ジャーラフ」と「シーちゃん」ってだ~れ?」
「……体が治ったのなら幸いだ、しかしいい加減帝都に帰ったらどうだ。あんたも因果伯ならアニー……アニムム殿下の件を、報告しなければならんだろ」
「ルーちんにいわれたくな~い♥」
「私が受けた指令ではない、帝国のため勤勉に働く気などないゾ。同様に元皇女を手助けする義理もないがな」
トゥバーがイチジクのカスタードプディングとアップルパイを手に、忙しく喉を鳴らしながら入ってくる。
体はすっかり癒えたのか、犬のマスクと銀のプレートアーマーが鈍く輝いた。
「それがねえロックさまはこ~んなカワイイ正妻に、隠しごとしてたんだよ~? それも2人も♥ どっちが愛人か両方か……「シーちゃん」がアヤシイなあ♥」
「ふっあんたより可愛いのは確かだゾ」
そうだ確かあの蛇を、シーちゃんと呼んでいたっけ――ルーシーはふと、樹海の旅で会った驚くほど賢い蛇を思い出す。
あれは魔獣ではなかったか。
因果伯なら経験から、魔獣にも属性があるのを承知している。人と同じで全ての魔獣が啓ける訳ではないが、そういった個体は広大な縄張りを誇っていた。
「力」を行使しているのだ。
あのコカトリスもそうだった、O属性を匂わせる魔獣。
「……親子にも思えるほど懐いた蛇を、獣者にしていたんだ。案外と真の魔獣は、蛇の生まれ変わりやもしれん」
自分の想像が面白く、ルーシーは窓に突っ伏し喉で笑う。
「ウチよりカワイイ~? なにそれ~聞き捨てらんな~い♥」
「オルロックにはすでに掛け替えのない子がいるのだ、諦めたがよかろう」
「ふ~んだ♥ もう修道院なんてほっとけばいいのに、ロックさまの熟女好き♥ そうだいっそルーちんのお義父さんになれば、ライバルが減っていいかも~♥」
「だからオルロックとはなにも……ってかお母さんに妙な噂を流すな!」
「わか~い新妻より修道女と汗をながすなんて、ほかに理由はないじゃない~?」
「いい加減にしろ恋愛脳! 大体あんたのどこが若――~…っ」
年齢に突っ込みを入れると自分に返ってくると、ルーシーは言葉を呑んだ。
こいつと話すと疲れるとばかりに、息を吐いて再び中庭を見下ろす。
「――背中を見せ逃げるだけでは、抵抗できず襲われるだけです。無抵抗を見逃してくれるほど、悪意は優しくありません」
オルロックの主張に、修道女たちは思わず腕を見る。
盗賊に縛られた痕が残っており、恐怖と痛みが襲って眉をひそめた。
「といっても武器を手にした暴漢相手です、皆さんに戦えとは言いません。まずは避難場所の設定と、防御を重点的に見直しましょう」
「……っはい!」
「修道院での修行も大切ですけど、どうか皆さんに平安が訪れますように」
修道女たちが一斉に頷く、また同じような襲撃を受けるかもしれないのだ。
緊張で沸き上がった不安が、少年の微笑で打ち消される。
「さて皆さんの避難場所はもちろん修道院ですよね、数ヵ所に鐘を設置しました。日頃の集合や異常事態が発生した場合の、合図を決めておきましょう」
柵に吊り下げられた小さな鐘を、木製ハンマーで叩く。
修道院の外に広がる農地まで、十分に響く高い音が鳴った。
「町で鳴らしている、ミサや閉門を報せる鐘と同じですね。言葉で伝え合うより、耳に残る「音」の方が注意をうながしやすいんです」
他にも木柵の定期的な点検、各人の居場所を把握するスケジュールの可視化。
緊急避難用の小部屋などの建造も視野に入れる。
「次に防御ですね、これは町で作ってもらったのですが――…」
「あっあの申し訳ございません……私どもはこのような、武器の類は……」
修道女の1人が木の棒を手におずおずと意見する。
周囲も同一の意見だったのだろう、持ち慣れぬ以上に精神の忌避がうかがえた。
「これは武器ではありません、暴漢者を捕らえる捕縛具――刺股です」
2~3メートルの棒に、U字形の金具を取り付けた構造。
U字形の部分で対象者の腕や胴体を押さえ込む。両先端には複数の返しが付き、衣服に絡まると取れにくくなる。
「服なら無理矢理にも引き千切れます。ですがチェインメイルや革鎧の場合は、一旦脱いで内側から返しを外さなければなりません。一度からみつけば――っ」
少年が胴体に見立てた太い杭を突く。
U字形が杭に固定され、軽く引いた程度では外せない重しとなった。
「このように対象者の自由を奪う、拘束具となります」
「わああ――~…っ!」
武器を振るうにも邪魔となり、金具で補強された棒は易々と折れない。
けっして広いとは言えない修道院の通路。部屋に逃げ込んで防壁を築く時間は、十分に確保できるだろう。
「では皆さんそれぞれ構えて、順番に突いてみてください!」
「「はいっ!」」
「常に2人で対応するように! 1人では心細くとも、仲間の存在を意識する! 声をかけあい呼応すれば勇気が湧きます!」
「体力の差は歴然です、力に力で応じてはいけません!」
「悪意に迫られた時など恐怖で身体の自由がきかなくなります! 自分はこうして抵抗できる手段がある、その経験が気持ちに余裕を生むんです!」
「無事逃げるための、安全を確保するための防御です!」
「町にフラリと立ち寄った英雄が、都合よく助けてはくれません! 自分を友人を大切な方を守れるのは、己だけだと認識してください!!」
「「はい――――っ!!」」
「ああいうやり取りって、本当アユムのままなんだよなあ」
ペールが馬に水をやり、農地で休ませていた。
木柵に囲まれた修道院から、兵士の訓練を彷彿とさせる音が響く。重なる元気な掛け声は、とても修道女とは思えない。
寝っ転がりながら眺めていると、山間の村落道に影が浮かぶ。
「ん……? ああ騎馬だな、後ろに馬車も一緒だ。ってことはお偉いさんか、町の領主が盗賊騒ぎに焦ってたからなあ」
寄進でもしに来たのかな――。
のんびりと立ち上がったペールに、遠くで馬の蹄が応じる。
「……、……っ!」
「ちょ……っま――…!」
慣れない訓練だが達成感もあり、修道女の汗と笑顔が弾ける中庭に異音がした。
木柵の向こうから馬のいななきと押し問答が起こったのだ。ペールを押しのけ、一見して貴族と分かる青年が乗り込んでくる。
「どなたですか、先触れもなく失礼でしょう」
即座にオルロックが盾となり、修道女の前に立ち塞がった。
ふってわいた騒動に、二階で眺めていたルーシーも立ち上がる。だが貴族の顔を確認して窓枠からコケた。
「――フっフラーテル様!?」
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「あ~らら~♥ ルーちん修羅場~?」
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