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第二章 港湾都市サーガラ
四十五夜 高く飛ぶためには……
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ジャーラフに「シューズ」をプレゼントする。
この時代貧しい者や使用人はまだ裸足の者が多く、そこまで変には思われない。
しかし馬車で都市部を通った際、サーガラにも「塊」が散見していた。
今までどうしていたのか知らないけど、そこを女の子が裸足で歩くのはどうにも抵抗があり……ぼくの我が儘だとは自覚している。
「でもアユムの靴みたいに、妙な段差があるんだろ?」
「妙な……まっまあ気に入らなきゃ脱いでもいいからさ、試すだけでいいから」
ジャーラフは足下を見ながら、不承不承で頷く。
衝撃吸収ブーツは召還した現代の製品。ぼくにとり靴の踵はあって当然だけど、これも生活習慣の違いだろう。
――靴の踵が普及するのは17世紀である。
桶にお湯を用意してもらい、まずは石鹸で足を洗う。
くすぐったそうだ……スーリヤ様に背を流してもらってた時、ぼくもこんな顔をしていたのだろうか。
でも別に臭わないよなと鼻を近づけたら、無言で蹴られた。
「……ごめんなさい」
「短距離走者用スパイクシューズ・全天候型」
最軽量100グラム、スマホと変わらない軽さ。グリップ力が強く推進力に置き換える反発性、接地時の衝撃吸収性、摩擦に対するアウトソールの耐久性が高い。
希望もありより裸足に近い感覚を得られる、フラットな形状のソール。
ジャーラフの性質上ブラックを選択。
「どうかな、動きにくいとかない?」
「んん――~妙な圧迫感はあるけど……」
初めて靴を履いたのかもしれない、眉を寄せ違和感を抱いている。
靴の先を床に何度か弾ませ、一瞬体重をかけたかと思ったら――かき消えた。
「ジャ……ええっ!?」
真正面にいたはず、驚いて周囲を見回すがどこにもいない――窓から外へ!?
焦って振り返ったら、背後で声が響く。
「凄いなコレ! なにも履いてない、どころか壁に吸いつくよ!」
ジャーラフが壁の角、天井近くに張りつき驚いていた。
自然に発生する『カルマ』さえも閉じてしまう。
「完全に気配を消す術があると、バクティ卿から教わってたけど……この距離でも存在を見失うなんて」
ほとんど瞬間移動だな……。
どうやら彼女は対象者が向けている意識まで、感覚としてとらえてるようだ。
右に意識を向けている者に左から寄る、瞬時に現れたかに思えるだろう。
無意識に行ってるみたいだけど――「力」のある者に最先端の技術を与えると、信じられないほどのポテンシャルを引き出す。
「少し、怖いくらいだ……」
とりあえず問題はないようなので、もう1足召喚し手入れを伝えた。
「クリーナー……はないけど、ブラシで汚れを落とし、布で縫い目やシワを磨く。1足だけ使うんじゃなく、交互に履くのもいいね。日々のこまめなクリーニングが長持ちさせるコツで……ジャーラフ?」
さっきまで興奮してシューズを愛でたのに、なにか思いつき急激に静かになる。
「やっぱりさ……こんなに便利な物は、ボクより殿下に……」
話してる時もなでるくらい気に入ってるのに、どこまでも殿下なんだな。
我慢している姿が可愛かった。
「これはジャーラフへの個人的プレゼントなんだ、ぜひ受け取って欲しい。それに殿下のそばには……誰がいるか分からないだろ?」
興味を持つだけではなく盗む、あるいは秘密を暴こうとする輩――。
ジャーラフは意味が分らず首を傾げている。
「そうだなあ……ジャーラフはこのシューズを売って、お金にしようとか思う?」
「はあ? そんなことするわけないだろ、こんな凄いのに!」
凄いから、なんだけどね。
召喚した品をおいそれと広めれない、彼女ならその点の心配はないだろう。
「そういう所だよ、ジャーラフ」
なんだか可笑しくって、口内で笑ってたらお尻を蹴られた。
「そういう所だぞ、ジャーラフ……」
市場に行こうと誘ったノルブリンカが、城館のホールで待っていた。
少し遠いから馬車で――と話してたら、ジャーラフが走ると言い出す。
「昨日は走ったあとだから乗ったけど、馬車は窮屈で苦手なんだ。それにほらボクは監視だし、並走する義務がある!」
漆黒のマントにシューズを履き、嬉しそうに軽く飛び跳ねている。どうも本音は別の処にあるようだ。
ずいぶんと気に入ってもらえて、それは本当に嬉しいんだけどね。
「んじゃあ、あたしも走ろうかな!」
ってなりますよね……。
そして競争するジャーラフとノルブリンカを、見失わないよう必死に追う。
「護衛とか、監視とか、考えようよ――っ!」
ぼくの叫びは、青空に吸い込まれていった。
この2人といると嫌でも鍛えられるので、良いことなのだと己に言い聞かせる。
心の安らぎであるカレシーは、お腹でぐっすり寝ていた……。
競争はどちらが勝ったのか、胸を張るジャーラフを見てあえて訊かなかった。
☆
市場はサーガラの中央広場で行われる。
街中に旗が立てられ、開始の合図である教会の鐘が鳴り響く。待ちかねた商人と領民が広場にあふれていた。
日除けの天幕がたなびき、所狭しと品物が並べられる。
本日は週に1回の市場だった。街の商店や街頭商人だけではなく、他領地からも商人が集まってきたのだ。
通常は縄張りがあり、職人ギルド成員しか商売はできない。
それが市場の間だけは解放されるので、多様な賑わいをみせている。年に数回の大規模な定期市など、1ヵ月も続く大騒ぎとなるそうだ。
歩くのも困難で、石畳が見えないほどの混雑。
市場が開催中は民家も仮宿屋となり、通行税が減額され、街に犯罪を取り締まる衛兵が目を光らせた。
「旗が立ったぞ――!」
それだけで市民の顔がほころぶのだ。
収穫祭と同様市民にとってのお祭りであり、娯楽をともなうイベントである。
「そうか向こうの世界でも商品の値札が当然となるのは、19世紀からだっけ」
中央広場は騒然となり、呼び売り商人が口上香具師が大声で客を引く。客もなんだかんだと話し込み、値段交渉に余念がない。
見慣れない雰囲気のなかさらに違和感があるのは、値札が掲げられていない点。
識字率の低さ……値札表示は「両者が字を読める」のが前提の習慣。この時代は全てが口頭で、現在と違い会話が比べ物にならないほど重要だった。
「ふふっ空気が違う――か、本当に異国だな」
サーガラは「パシュチマ連合王国」とも海上交易している。
市場にはマナスルになかった食材や製品が並び、見るだけで飽きない。地元では手に入らない商品の説明を受け、交渉し、話のタネにと購入していた。
商人と客のやり取りを眺めるだけで、市場を堪能できるのだ。
「……差し迫った期限がなければ、だけどね」
なにか考えようとすると立ち進まない現実に直面し、気分が滅入ってしまう。
「黄昏れる」しかなかったのだ。
「ほらアユム、向こうで大道芸人の笛の音がする。行ってみようか!」
ノルブリンカが気を使っているのだろう、腕を組んでなにかと話しかけてくる。
スーリヤ様を思わせる豊満な胸が当たって柔らかい。
「サンガ伯爵令嬢……伯爵のご息女とは、とても思えないなあ」
腕を引かれるままに呟く。
いろんな意味で貴族には見えないけど、いい方だと思う。
半身に羽の生えたハーピーが、音楽に合わせ舞っていた。人にはおよそ不可能な動きに、市民も魅入って拍手を送る。
二足歩行の猫かと思ったらケット・シー、見事な口上で舞台の説明をしていた。
リザードマンが雄叫びと共に大樽を抱え上げ、喝采が弾ける。小柄で犬の頭――コボルトが舌を出し、ナイフでジャグリング決めた。
「そういえばマナスルでは、亜人をほとんど見かけなかったなあ」
亜人は「パシュチマ連合王国」に、多くの街があるそうだ。大道芸人に雑ざって技を披露しながら各地を巡ると聞く。
実り豊かで人が多く賑わう場所でなければ、娯楽商売は難しいのだろう。
今のマナスルなら亜人が立ち寄り、音楽が鳴り響く市場が開けるのではないか。
多種多様な種族が混然一体となる情景、ファンタジーに心が躍る。
「ねえお兄ちゃんは、なんの芸をするの?」
突然袖を引かれ、子供が話しかけてきた。
日中は暖かな陽気になり、コートをはおらず燕尾服を見せている。皆日に焼けてたくましいから、ぼくの色白が珍しく大道芸人に思えたのかな。
「お兄ちゃんは……そうだねえ、お話が得意かなあ」
「あっギンユウチジンなんだ――っどんなお話――?」
笑って訊いてくる子供に話を合わせてあげた。
「これ、なにしてるのこの娘はっ! もっ申し訳ございません、大変失礼を……」
「いえ問題ありませんよ、お嬢ちゃんまたね」
お母さんが血相を変えて引き取りにくる。何度も頭を下げ子供を引っ張っぱり、そんな恐縮しなくてもいいのにと手を振った。
ぼくはむしろ側溝通りで、子供たちに物語を話していたのを思い出す。
皆元気でやってるかなあ……今の娘みたいに、何度も話を聞きたがってたっけ。
「っほらジャーラフ、見事な牡蠣だ! マナスルじゃ食べれないね――!」
心を振りきれない自分が情けなくて、無理にでもはしゃいでみた。
同じように見て周っていたジャーラフに、振り返って声をかけ――…。
「えっと……ジャーラフ? どう、したの?」
なぜか漆黒のマントに黒い靄がかかり、目だけ青く輝いている。
気がつけば領民が避け、ぼくらの周囲は完全に空間ができていた。やたらと歩きやすいな、佩刀していて貴族が分かるせいかなと思ってたけど……。
ノルブリンカが豊かな胸を押しつけ、涙を流して爆笑している。
ジャーラフの黒い靄が増し、周囲の市民がさらに遠ざかった。
「……なぜ?」
ノルブリンカが言っていた、「面白いもん」の正体が判明する。
一層混雑する屋台村の一角で、客引きの声が木霊していたのだ。
「アラヤシキクレープの列はここで――すっ!」
「マナスルで1番人気――奇天烈ドッグ――っ!」
ここまでは首を傾げつつもまだいい。
「アユム揚げ――アユム揚げ、次回分揚がったよ――っ!」
その名称はいかがなものか……。
「噂」を広めて欲しいとお願いはしたけど、まさかこうなるとは。
「2~3回前の市場から、やたらうまいって屋台が噂になってた。あの時の坊主の名とは思わなかったなあ」
ノルブリンカがアユム揚げを頬張り、笑いながら説明してくれた。
ぼくの護衛は、ほとんどウールドがやっていたそうだ。そうなると因果伯とは、召喚の間ですれ違っただけですからねえ。
連呼される名に頭を抱えたけど、サーガラ市民には受け入れられたようだ。
「それもどうかとは思うけど……」
味は――と気になり、列に並び買ってみた。
うん試行錯誤が凄く伝わる、いい傾向だと思う。
「前代未聞昼食会、の時のがうまかったな」
ジャーラフがペロリと舌を出し、奇天烈ドッグを吟味する。
昼食会にそんなタイトルが……そしてキミ、いつの間にか食べてたんだね。
「えっ? ジャーラフそれ食べて平気なの!? あっそうだ昼食会のポタージュ、あれにはタマネギも入ってたんだけど……っ」
「んっ……なにが?」
ほっぺを膨らませて奇天烈ドッグにかぶりつく、気を回しすぎたかな。
幸いにもぼくの顔を覚えている、商人や屋台持ちはいなかった。
「あれ? どこかで……」
燕尾服を見てそう呟く程度だ。まあ特許の説明時はウールド――「貴族」の印象が凄かっただろうしね。
「マナスルもそうですが、こちらでも評判になってるみたいですね」
大汗をかきながらソーセージを焼く、コールマン髭のおじさんに訊いてみた。
「兄ちゃんはマナスルの屋台を知ってるのかい、サーガラの客は大絶賛してくれるんだがなあ……『本場の味』を知ってる客は、物足りなく感じるそうだ」
「もう数段違うな」
フードをかぶったジャーラフが、奇天烈ドッグを食べきって頷く。
「娘さんは厳しいなあ……まあ俺も、そう思うんだけど」
コールマン髭が若干下がり、苦笑しながらも認める。
売り上げは上々だが満足はいかない、味を確かめたいがマナスルは遠い――と。
「これがある店が本当のマナスル産だからな、間違えて変なもん買うなよ」
屋台には誇らしげに、「特許使用許可証」が掲げられていた。
流行っていれば――マネならまだマシで、名を騙る店が出てきかねない。それは全体の評判と信用を落としてしまう。
そこで対処として特許使用許可証を張り出す、独自の線引きが生まれる。
これはスーリヤ様にお願いし、「光恚」で作成していただいた公文書。インクによる書類ですらなく、そも偽造はできない。
しかも外見だけ整えたくとも、商店クラスでは「筆記」を行える者はいない。
許可証の偽装はほぼ不可能と言っていいだろう。それがいつの間にか広まって、本場の証明変わりとなったそうだ。
「特許使用許可証の使い方的には違うけど、目安になっているのならまあいいか」
パンとソーセージはすでにあるけど、ソースはレシピがあっても再現は困難。
水――「蒸留水」に関しては、思いつきもしないはず。
「レシピには書いてない、実地研修時に口伝となった部分もあるしね」
ホットドッグにはにんにくオリーブオイルから、薄切りのにんにくを取り出し、きつね色に炒めたガーリックチップを散らしていた。
猫にはにんにくもNGだが、個体差もあってかジャーラフは問題ないようだ。
にんにくオイルは万能調味料として、他の料理にも活用できる。鶏の唐揚げ用の衣とお好みクレープの生地、マヨネーズにはおろしにんにく入り。
ほぼ全てに、にんにくを使用していた。
これらは隠し味の他にもう一点、感染症に対する免疫力のアップも狙っている。
古代エジブトからにんにくの栄養素や疲労回復効果は知られており、食欲増進や健康を支える食品として期待されていた。
「ピラミッドはにんにくによって作られた」……そんな言葉まであるほど。
新陳代謝を高め腸内環境を整え、風邪薬や予防として重宝されたのだ。
さらににんにくの匂い――「アリシン」は外敵を避け、カビや細菌を除くほどの強い殺菌・抗菌力まである。
カレシーのお蔭で快適になったけど、マナスル城では害虫避けに活用していた。
ぼくの部屋には常ににんにくが干してあり、メイドさんに妙な顔をされたっけ。
これらは全て、黒死病への対策である。
「やはり食の魅力は、絶大ですねえ」
名称に驚きはしたものの、料理は好意的に受け止められており報われた。
おいしそうに食べてる市民の笑顔を改めて確認し、胸を熱くする。ジャーラフとノルブリンカも、当然とばかりに頷く。
停滞したとばかり思っていた、でもこうしてちゃんと進んでいたんだな。
「気ばかり焦っても仕方がない、道の端を掘って歩いたのを思い出そう!」
塩の生成は自然が相手なので力技が通用しない……ゆえに真っ先に取り掛かりたかったのだけど、そのための1歩から。
回り道ではない、やるべきことできることから、1歩ずつ進もう。
「ならばまずは、領主の目に留まらなければならない。直訴できるだけの業績……ノルブリンカ、例の話に乗ります!」
「おんっ!? っ……やるか!」
アラヤシキクレープを詰め込み、ソースまみれの顔でニヤリと笑う。
「はい、町……小都市おこしを行います!」
喋る取っ手のドアが開かないなら、鍵穴から通ってしまえ! ぼくはアリスとは違い、向こうの世界に帰りたい訳ではない。
だけど異世界に留まるため、涙で海原だろうが創ってみせるとも――。
ヴィーラ王国は6~7万平方キロメートルほどだと思われる。
「約8万平方キロメートルの北海道より、ひと回り小さいくらいの国土かな」
絵画的な地図しかないので、あくまで伝え聞いた推測にはなるけど。
2万人以上の大都市が3ヵ所。
新王都4万人、サーガラ3万人、ウダカ2万5千人。
現代であれば驚くけど、当時は大都市と呼ばれるパリでも10万人前後だった。
2千人以上の中都市が10数ヵ所――現在3000人のマナスルは中都市。
5百人以上の小都市が20数ヵ所、百人以上の町~以下の村となる。
欧州の人口は12~13世紀に爆発的に増えたが、それでもこの程度。
「短い平均寿命と未発達な医療技術の世界で、人口だけ上昇曲線を描いていく……それは人類の望みだったのか、危惧されるべき未来だったのか」
ぼくはサーガラより北西にある小都市に降り立った。
再び「バールのようなもの」を握りしめて。
この時代貧しい者や使用人はまだ裸足の者が多く、そこまで変には思われない。
しかし馬車で都市部を通った際、サーガラにも「塊」が散見していた。
今までどうしていたのか知らないけど、そこを女の子が裸足で歩くのはどうにも抵抗があり……ぼくの我が儘だとは自覚している。
「でもアユムの靴みたいに、妙な段差があるんだろ?」
「妙な……まっまあ気に入らなきゃ脱いでもいいからさ、試すだけでいいから」
ジャーラフは足下を見ながら、不承不承で頷く。
衝撃吸収ブーツは召還した現代の製品。ぼくにとり靴の踵はあって当然だけど、これも生活習慣の違いだろう。
――靴の踵が普及するのは17世紀である。
桶にお湯を用意してもらい、まずは石鹸で足を洗う。
くすぐったそうだ……スーリヤ様に背を流してもらってた時、ぼくもこんな顔をしていたのだろうか。
でも別に臭わないよなと鼻を近づけたら、無言で蹴られた。
「……ごめんなさい」
「短距離走者用スパイクシューズ・全天候型」
最軽量100グラム、スマホと変わらない軽さ。グリップ力が強く推進力に置き換える反発性、接地時の衝撃吸収性、摩擦に対するアウトソールの耐久性が高い。
希望もありより裸足に近い感覚を得られる、フラットな形状のソール。
ジャーラフの性質上ブラックを選択。
「どうかな、動きにくいとかない?」
「んん――~妙な圧迫感はあるけど……」
初めて靴を履いたのかもしれない、眉を寄せ違和感を抱いている。
靴の先を床に何度か弾ませ、一瞬体重をかけたかと思ったら――かき消えた。
「ジャ……ええっ!?」
真正面にいたはず、驚いて周囲を見回すがどこにもいない――窓から外へ!?
焦って振り返ったら、背後で声が響く。
「凄いなコレ! なにも履いてない、どころか壁に吸いつくよ!」
ジャーラフが壁の角、天井近くに張りつき驚いていた。
自然に発生する『カルマ』さえも閉じてしまう。
「完全に気配を消す術があると、バクティ卿から教わってたけど……この距離でも存在を見失うなんて」
ほとんど瞬間移動だな……。
どうやら彼女は対象者が向けている意識まで、感覚としてとらえてるようだ。
右に意識を向けている者に左から寄る、瞬時に現れたかに思えるだろう。
無意識に行ってるみたいだけど――「力」のある者に最先端の技術を与えると、信じられないほどのポテンシャルを引き出す。
「少し、怖いくらいだ……」
とりあえず問題はないようなので、もう1足召喚し手入れを伝えた。
「クリーナー……はないけど、ブラシで汚れを落とし、布で縫い目やシワを磨く。1足だけ使うんじゃなく、交互に履くのもいいね。日々のこまめなクリーニングが長持ちさせるコツで……ジャーラフ?」
さっきまで興奮してシューズを愛でたのに、なにか思いつき急激に静かになる。
「やっぱりさ……こんなに便利な物は、ボクより殿下に……」
話してる時もなでるくらい気に入ってるのに、どこまでも殿下なんだな。
我慢している姿が可愛かった。
「これはジャーラフへの個人的プレゼントなんだ、ぜひ受け取って欲しい。それに殿下のそばには……誰がいるか分からないだろ?」
興味を持つだけではなく盗む、あるいは秘密を暴こうとする輩――。
ジャーラフは意味が分らず首を傾げている。
「そうだなあ……ジャーラフはこのシューズを売って、お金にしようとか思う?」
「はあ? そんなことするわけないだろ、こんな凄いのに!」
凄いから、なんだけどね。
召喚した品をおいそれと広めれない、彼女ならその点の心配はないだろう。
「そういう所だよ、ジャーラフ」
なんだか可笑しくって、口内で笑ってたらお尻を蹴られた。
「そういう所だぞ、ジャーラフ……」
市場に行こうと誘ったノルブリンカが、城館のホールで待っていた。
少し遠いから馬車で――と話してたら、ジャーラフが走ると言い出す。
「昨日は走ったあとだから乗ったけど、馬車は窮屈で苦手なんだ。それにほらボクは監視だし、並走する義務がある!」
漆黒のマントにシューズを履き、嬉しそうに軽く飛び跳ねている。どうも本音は別の処にあるようだ。
ずいぶんと気に入ってもらえて、それは本当に嬉しいんだけどね。
「んじゃあ、あたしも走ろうかな!」
ってなりますよね……。
そして競争するジャーラフとノルブリンカを、見失わないよう必死に追う。
「護衛とか、監視とか、考えようよ――っ!」
ぼくの叫びは、青空に吸い込まれていった。
この2人といると嫌でも鍛えられるので、良いことなのだと己に言い聞かせる。
心の安らぎであるカレシーは、お腹でぐっすり寝ていた……。
競争はどちらが勝ったのか、胸を張るジャーラフを見てあえて訊かなかった。
☆
市場はサーガラの中央広場で行われる。
街中に旗が立てられ、開始の合図である教会の鐘が鳴り響く。待ちかねた商人と領民が広場にあふれていた。
日除けの天幕がたなびき、所狭しと品物が並べられる。
本日は週に1回の市場だった。街の商店や街頭商人だけではなく、他領地からも商人が集まってきたのだ。
通常は縄張りがあり、職人ギルド成員しか商売はできない。
それが市場の間だけは解放されるので、多様な賑わいをみせている。年に数回の大規模な定期市など、1ヵ月も続く大騒ぎとなるそうだ。
歩くのも困難で、石畳が見えないほどの混雑。
市場が開催中は民家も仮宿屋となり、通行税が減額され、街に犯罪を取り締まる衛兵が目を光らせた。
「旗が立ったぞ――!」
それだけで市民の顔がほころぶのだ。
収穫祭と同様市民にとってのお祭りであり、娯楽をともなうイベントである。
「そうか向こうの世界でも商品の値札が当然となるのは、19世紀からだっけ」
中央広場は騒然となり、呼び売り商人が口上香具師が大声で客を引く。客もなんだかんだと話し込み、値段交渉に余念がない。
見慣れない雰囲気のなかさらに違和感があるのは、値札が掲げられていない点。
識字率の低さ……値札表示は「両者が字を読める」のが前提の習慣。この時代は全てが口頭で、現在と違い会話が比べ物にならないほど重要だった。
「ふふっ空気が違う――か、本当に異国だな」
サーガラは「パシュチマ連合王国」とも海上交易している。
市場にはマナスルになかった食材や製品が並び、見るだけで飽きない。地元では手に入らない商品の説明を受け、交渉し、話のタネにと購入していた。
商人と客のやり取りを眺めるだけで、市場を堪能できるのだ。
「……差し迫った期限がなければ、だけどね」
なにか考えようとすると立ち進まない現実に直面し、気分が滅入ってしまう。
「黄昏れる」しかなかったのだ。
「ほらアユム、向こうで大道芸人の笛の音がする。行ってみようか!」
ノルブリンカが気を使っているのだろう、腕を組んでなにかと話しかけてくる。
スーリヤ様を思わせる豊満な胸が当たって柔らかい。
「サンガ伯爵令嬢……伯爵のご息女とは、とても思えないなあ」
腕を引かれるままに呟く。
いろんな意味で貴族には見えないけど、いい方だと思う。
半身に羽の生えたハーピーが、音楽に合わせ舞っていた。人にはおよそ不可能な動きに、市民も魅入って拍手を送る。
二足歩行の猫かと思ったらケット・シー、見事な口上で舞台の説明をしていた。
リザードマンが雄叫びと共に大樽を抱え上げ、喝采が弾ける。小柄で犬の頭――コボルトが舌を出し、ナイフでジャグリング決めた。
「そういえばマナスルでは、亜人をほとんど見かけなかったなあ」
亜人は「パシュチマ連合王国」に、多くの街があるそうだ。大道芸人に雑ざって技を披露しながら各地を巡ると聞く。
実り豊かで人が多く賑わう場所でなければ、娯楽商売は難しいのだろう。
今のマナスルなら亜人が立ち寄り、音楽が鳴り響く市場が開けるのではないか。
多種多様な種族が混然一体となる情景、ファンタジーに心が躍る。
「ねえお兄ちゃんは、なんの芸をするの?」
突然袖を引かれ、子供が話しかけてきた。
日中は暖かな陽気になり、コートをはおらず燕尾服を見せている。皆日に焼けてたくましいから、ぼくの色白が珍しく大道芸人に思えたのかな。
「お兄ちゃんは……そうだねえ、お話が得意かなあ」
「あっギンユウチジンなんだ――っどんなお話――?」
笑って訊いてくる子供に話を合わせてあげた。
「これ、なにしてるのこの娘はっ! もっ申し訳ございません、大変失礼を……」
「いえ問題ありませんよ、お嬢ちゃんまたね」
お母さんが血相を変えて引き取りにくる。何度も頭を下げ子供を引っ張っぱり、そんな恐縮しなくてもいいのにと手を振った。
ぼくはむしろ側溝通りで、子供たちに物語を話していたのを思い出す。
皆元気でやってるかなあ……今の娘みたいに、何度も話を聞きたがってたっけ。
「っほらジャーラフ、見事な牡蠣だ! マナスルじゃ食べれないね――!」
心を振りきれない自分が情けなくて、無理にでもはしゃいでみた。
同じように見て周っていたジャーラフに、振り返って声をかけ――…。
「えっと……ジャーラフ? どう、したの?」
なぜか漆黒のマントに黒い靄がかかり、目だけ青く輝いている。
気がつけば領民が避け、ぼくらの周囲は完全に空間ができていた。やたらと歩きやすいな、佩刀していて貴族が分かるせいかなと思ってたけど……。
ノルブリンカが豊かな胸を押しつけ、涙を流して爆笑している。
ジャーラフの黒い靄が増し、周囲の市民がさらに遠ざかった。
「……なぜ?」
ノルブリンカが言っていた、「面白いもん」の正体が判明する。
一層混雑する屋台村の一角で、客引きの声が木霊していたのだ。
「アラヤシキクレープの列はここで――すっ!」
「マナスルで1番人気――奇天烈ドッグ――っ!」
ここまでは首を傾げつつもまだいい。
「アユム揚げ――アユム揚げ、次回分揚がったよ――っ!」
その名称はいかがなものか……。
「噂」を広めて欲しいとお願いはしたけど、まさかこうなるとは。
「2~3回前の市場から、やたらうまいって屋台が噂になってた。あの時の坊主の名とは思わなかったなあ」
ノルブリンカがアユム揚げを頬張り、笑いながら説明してくれた。
ぼくの護衛は、ほとんどウールドがやっていたそうだ。そうなると因果伯とは、召喚の間ですれ違っただけですからねえ。
連呼される名に頭を抱えたけど、サーガラ市民には受け入れられたようだ。
「それもどうかとは思うけど……」
味は――と気になり、列に並び買ってみた。
うん試行錯誤が凄く伝わる、いい傾向だと思う。
「前代未聞昼食会、の時のがうまかったな」
ジャーラフがペロリと舌を出し、奇天烈ドッグを吟味する。
昼食会にそんなタイトルが……そしてキミ、いつの間にか食べてたんだね。
「えっ? ジャーラフそれ食べて平気なの!? あっそうだ昼食会のポタージュ、あれにはタマネギも入ってたんだけど……っ」
「んっ……なにが?」
ほっぺを膨らませて奇天烈ドッグにかぶりつく、気を回しすぎたかな。
幸いにもぼくの顔を覚えている、商人や屋台持ちはいなかった。
「あれ? どこかで……」
燕尾服を見てそう呟く程度だ。まあ特許の説明時はウールド――「貴族」の印象が凄かっただろうしね。
「マナスルもそうですが、こちらでも評判になってるみたいですね」
大汗をかきながらソーセージを焼く、コールマン髭のおじさんに訊いてみた。
「兄ちゃんはマナスルの屋台を知ってるのかい、サーガラの客は大絶賛してくれるんだがなあ……『本場の味』を知ってる客は、物足りなく感じるそうだ」
「もう数段違うな」
フードをかぶったジャーラフが、奇天烈ドッグを食べきって頷く。
「娘さんは厳しいなあ……まあ俺も、そう思うんだけど」
コールマン髭が若干下がり、苦笑しながらも認める。
売り上げは上々だが満足はいかない、味を確かめたいがマナスルは遠い――と。
「これがある店が本当のマナスル産だからな、間違えて変なもん買うなよ」
屋台には誇らしげに、「特許使用許可証」が掲げられていた。
流行っていれば――マネならまだマシで、名を騙る店が出てきかねない。それは全体の評判と信用を落としてしまう。
そこで対処として特許使用許可証を張り出す、独自の線引きが生まれる。
これはスーリヤ様にお願いし、「光恚」で作成していただいた公文書。インクによる書類ですらなく、そも偽造はできない。
しかも外見だけ整えたくとも、商店クラスでは「筆記」を行える者はいない。
許可証の偽装はほぼ不可能と言っていいだろう。それがいつの間にか広まって、本場の証明変わりとなったそうだ。
「特許使用許可証の使い方的には違うけど、目安になっているのならまあいいか」
パンとソーセージはすでにあるけど、ソースはレシピがあっても再現は困難。
水――「蒸留水」に関しては、思いつきもしないはず。
「レシピには書いてない、実地研修時に口伝となった部分もあるしね」
ホットドッグにはにんにくオリーブオイルから、薄切りのにんにくを取り出し、きつね色に炒めたガーリックチップを散らしていた。
猫にはにんにくもNGだが、個体差もあってかジャーラフは問題ないようだ。
にんにくオイルは万能調味料として、他の料理にも活用できる。鶏の唐揚げ用の衣とお好みクレープの生地、マヨネーズにはおろしにんにく入り。
ほぼ全てに、にんにくを使用していた。
これらは隠し味の他にもう一点、感染症に対する免疫力のアップも狙っている。
古代エジブトからにんにくの栄養素や疲労回復効果は知られており、食欲増進や健康を支える食品として期待されていた。
「ピラミッドはにんにくによって作られた」……そんな言葉まであるほど。
新陳代謝を高め腸内環境を整え、風邪薬や予防として重宝されたのだ。
さらににんにくの匂い――「アリシン」は外敵を避け、カビや細菌を除くほどの強い殺菌・抗菌力まである。
カレシーのお蔭で快適になったけど、マナスル城では害虫避けに活用していた。
ぼくの部屋には常ににんにくが干してあり、メイドさんに妙な顔をされたっけ。
これらは全て、黒死病への対策である。
「やはり食の魅力は、絶大ですねえ」
名称に驚きはしたものの、料理は好意的に受け止められており報われた。
おいしそうに食べてる市民の笑顔を改めて確認し、胸を熱くする。ジャーラフとノルブリンカも、当然とばかりに頷く。
停滞したとばかり思っていた、でもこうしてちゃんと進んでいたんだな。
「気ばかり焦っても仕方がない、道の端を掘って歩いたのを思い出そう!」
塩の生成は自然が相手なので力技が通用しない……ゆえに真っ先に取り掛かりたかったのだけど、そのための1歩から。
回り道ではない、やるべきことできることから、1歩ずつ進もう。
「ならばまずは、領主の目に留まらなければならない。直訴できるだけの業績……ノルブリンカ、例の話に乗ります!」
「おんっ!? っ……やるか!」
アラヤシキクレープを詰め込み、ソースまみれの顔でニヤリと笑う。
「はい、町……小都市おこしを行います!」
喋る取っ手のドアが開かないなら、鍵穴から通ってしまえ! ぼくはアリスとは違い、向こうの世界に帰りたい訳ではない。
だけど異世界に留まるため、涙で海原だろうが創ってみせるとも――。
ヴィーラ王国は6~7万平方キロメートルほどだと思われる。
「約8万平方キロメートルの北海道より、ひと回り小さいくらいの国土かな」
絵画的な地図しかないので、あくまで伝え聞いた推測にはなるけど。
2万人以上の大都市が3ヵ所。
新王都4万人、サーガラ3万人、ウダカ2万5千人。
現代であれば驚くけど、当時は大都市と呼ばれるパリでも10万人前後だった。
2千人以上の中都市が10数ヵ所――現在3000人のマナスルは中都市。
5百人以上の小都市が20数ヵ所、百人以上の町~以下の村となる。
欧州の人口は12~13世紀に爆発的に増えたが、それでもこの程度。
「短い平均寿命と未発達な医療技術の世界で、人口だけ上昇曲線を描いていく……それは人類の望みだったのか、危惧されるべき未来だったのか」
ぼくはサーガラより北西にある小都市に降り立った。
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