17 / 28
第1章 商業都市『ベレンツィア』聖カルメア教会 初任務 編
16.史徒サンマルコとルシフィー
しおりを挟む
「その者に、手を出すでないぞ!『我が名は、神の第1の史徒、サンマルコ――』」
――エルたちが来た道の暗闇から姿を現したのは、エルと同じく黒いマントを被り、白い髭を蓄えた老人と……
同じく黒いマントを被り星屑を散りばめたようなシルバーの長い髪の女性である。
「『≪エメラルドタブレット≫、我、第1の史徒サンマルコが命じる――敵を捕らえよ≪キャプター≫』」
「あれれ!?サンマルコおじいちゃん!と、――ル…、ルシフィー様!」
エルは、突如現れた2人のイストランダの史徒に、何が何だか状況が掴めず、ただ驚くしかなかった。
エルからルシフィーと呼ばれた、年若く美しい女神のような女性が、エルとリアードに駆け寄り、ぎゅっと2人を抱きしめた。
「――エル、リアード……!あぁ、2人とも!本当に無事でよかったです!」
「ル、ルシフィー様…苦しいよぉ」
ルシフィーの大きな胸へ顔を埋めて、エルもリアードも満更でもないといった様子である。
そんな微笑ましい様とは対称的に――その傍らでは、第1使徒サンマルコと、『ハコブネ』の白マントの女が、互いの発動した魔力を激しくぶつけ合い、火花と光の破片とを、辺りに散らしている。
――サンマルコが優勢で、白マントの女を押している。
「くっ…!よりにもよって、第1史徒のお出ましとはな!こちらに分が悪すぎる…!
エルノアを連れ帰るチャンスだったが……ここは『大罪の黙示録』だけ手に入れば良しとしよう。――ドリドルン、一旦退くぞ!」
白マントの女は、飛び退くと、現れた空中の亀裂へと身を滑り込ませた。
「――エルノア。いずれ、お前も、この世界の真実を知り、我ら反十字教結社『ハコブネ』の主に賛同する時が来るだろう。――必ず再び、迎えにくる」
そう、エルへ言い残し――白マントの女は、時空の狭間へと消えていった。
ガレリア司祭を担いだ鉄仮面の男――ドリドルンも、その後に続く。
「――待って!お父さんなんだよね?!お父さん……、みんなと一緒に、ドラコーンの森へ帰ろう?みんな、お父さんを心配――」
「――アイリス。私は森へは帰れない…。真実を知ってしまっては、『ハコブネ』と共にいく。
――お前の父は……もういない」
呼び止めるアイリスの言葉を遮って、そう告げると、鉄仮面の男――ドリドルンも、空間の亀裂へと消えていった。
アイリスは、変わり果てた父の背中を、成す術なく見送るしかなかった。
「『我、神の史徒ルシフィーが命じるのは≪ピカトリクス≫、追跡せよ≪トレース≫!」
ルシフィーは胸元からロザリオを取り出し、魔法の杖で光の円盤を描いた。
円盤は時空の狭間へと滑り込み、『ハコブネ』の2人を追った。
「――…恐らくは、撒かれるであろうな。そう簡単に、奴らは捕まらんじゃろう」
サンマルコは、豊かな白髭を撫でながら、悠然とその場の者たちへ告げた。
「ひとまずは我らの勝利じゃ!――聖カルメア教会の危機は去った!
『鎖を解き自由を――解放≪リリーズ≫』
――ほれほれ、聖カルメア教会の神父殿、修道士殿。捕らわれたアミリア族と魔獣たちの介抱を頼まれてくれんかのう」
サンマルコに声を掛けられ、フーゴ神父とモリリス修道士は、はっと我に返った。
「モリリス修道士!ノームらとともに、傷ついた彼らの手当てを、任せましたぞ!
私は、教会の皆を叩き起こして、呼んで参りますぞ!」
◆
――手当てを受けながら、解き放たれたアミリア族の一同と魔獣らが、アイリスのもとに寄って集まってきた。副部族長のロドゲルがアイリスのもとに、跪いた。
「おぉ、アイリス様!我らを案じて、森の外まで探しに来てくださったのですね!
あぁ…!私が付いていながら、このようなことに……!さらには、族長まで失ってしまった…。
アイリス様に、どう償ったらよいか…ドラコーンの森の皆にも合わす顔がない……」
「そんなこと言わないで!――みんなが無事で本当によかった。
ロドゲル、お願い!――お父さんは一体、どうしてしまったの!?」
――変わり果てた父の姿…もう、アイリスのことも、ドラコーンの森のことも、頭にないようだった。
「……我らも、記憶に靄がかかったように、よくわからないのです……。
ただ、我らは、ガレリア司祭の持つ得体の知れない書物の力によって、十字教軍戦争時の聖カルメア要塞での出来事を見せられ――多くの民の幸福のもと、魔獣たちの小さき犠牲が正当化される――という思想を植え付けられたのです……
それは、アミリア族が大切にしてきた自然崇拝を、根幹から覆すように――勝手に脳裏の奥深くまで入り込んできて、無理矢理我らを支配した……我らに抗う術は、なかったのです!
――しかし、ドリドルン部族長だけは、違った。大切な我らの誇りを持ち続け、ガレリア司祭に立ち向かった。――そして、ガレリア司祭の放った炎に焼かれたのです」
――誰よりもドラコーンの森を愛していたアミリア族の部族長である父に、『大罪の黙示録』によって見せられた世界の理は、赦せるものではなかったのだろう。ドラコーンの森も、家族すらも、投げ打ってしまうほどに――
――アイリスは、去り際の父の姿を思い浮かべながら、父の決断を悟った。
◆
「サンマルコおじいちゃん!ルシフィー様も。――どうして、ここへ?」
エルとリアードは、サンマルコのもとへと駆け寄った。
「――エル、リアードよ。そなたら、よく無事であったのう」
サンマルコは、エルとリアードに、自分とルシフィーが聖カルメア教会へ駆けつけた経緯を説明した――
――史徒エルの初任務が、邪悪な禁書報告による『検閲』任務であることに気が付いたサンマルコは、文書館内部に異変が忍び込んでいることを悟った。
「そなたにこの任務を指示した、文書館事務局長を問い詰めようと局長室を訪ねると、もぬけの殻で、逃げた後じゃった……。
あやつは、先ほどの反十字教結社『ハコブネ』とやらと繋がっておったのじゃろう」
「――私は、サンマルコ様から、あなたたちに危険が迫っていることをお聞きして、かわいいあなたたちに何かあったら、と思ったら……居ても立っても居られなくて。
サンマルコ様と共に、急いで聖カルメア教会へやって来たのです。そうしたら、聖堂の床下に階段が続いていて――ここへ辿り着いたのですよ。
2人とも、本当に無事でよかった……。よく頑張りましたね!」
ルシフィーは再び、エルとリアードを抱きしめた。
サンマルコはルシフィーに聞こえないよう、エルの耳元で密やかに続けた
「――それにしても、じゃ。初任務で、『大罪の黙示録』に出くわすこととなろうとは。
――エル、そなたよく無事でいられたものじゃ。先ほどの反十字教結社『ハコブネ』と文書館事務局長……。恐らくは、大いなる力が、大聖堂都市『イストランダ』まで……、ひいては聖ヨハネウス十字教国全土にまで、及んでおる…」
「――!サンマルコおじいちゃんは、『大罪の黙示録』を知っているの!?」
ガレリア司祭が言っていた――この世界の真理、聖ヨハネウスの力を宿した書物『大罪の黙示録』…。
――第1史徒のサンマルコは、知っている?
イストランダの文書館には、エルがまだ知らない何かが隠されているのだろうか?
「――エルよ。この話をするには、ここは人が多すぎる。話は、イストランダに帰ってからじゃ。
今晩、見聞きしたことを、誰にも言うでないぞ――ルシフィーにもじゃ。よいな?」
「えっ!?ルシフィー様にも?」
同じ文書館の史徒であるルシフィーにも、秘密の書物――『大罪の黙示録』って、一体……?
「――そこのドラコーンの娘。……そなたじゃ。名は何という?」
「へ!?わ、私は、アイリスです!」
俯いて考えこんでいたところで、突然サンマルコに声を掛けられ、アイリスは慌てている。
「――アイリスよ。そなたの父は、あの『ハコブネ』の鉄仮面の男だそうじゃのう?そなたには、『大罪の黙示録』について、知る権利があるじゃろう。
――そして、そなたの持つ力…『大罪の黙示録』の力をも凌駕しておった。そなたは、この戦いの切り札じゃ――我らとともに、大聖堂都市『イストランダ』まで、来てもらおうぞ」
「わ、私が…切り札!?」
確かに、アイリスが首から下げた『ドラコーンの秘石』は、ガレリア司祭が放った『大罪の黙示録』の魔力から、アイリスを守ってくれた。
それに、アイリスとて、父を放っては、森へ帰れない――
「――今日は、夜も遅い。今夜一晩、聖カルメアに滞在し、明日『イストランダ』へ戻ることにしようぞ――」
――エルたちが来た道の暗闇から姿を現したのは、エルと同じく黒いマントを被り、白い髭を蓄えた老人と……
同じく黒いマントを被り星屑を散りばめたようなシルバーの長い髪の女性である。
「『≪エメラルドタブレット≫、我、第1の史徒サンマルコが命じる――敵を捕らえよ≪キャプター≫』」
「あれれ!?サンマルコおじいちゃん!と、――ル…、ルシフィー様!」
エルは、突如現れた2人のイストランダの史徒に、何が何だか状況が掴めず、ただ驚くしかなかった。
エルからルシフィーと呼ばれた、年若く美しい女神のような女性が、エルとリアードに駆け寄り、ぎゅっと2人を抱きしめた。
「――エル、リアード……!あぁ、2人とも!本当に無事でよかったです!」
「ル、ルシフィー様…苦しいよぉ」
ルシフィーの大きな胸へ顔を埋めて、エルもリアードも満更でもないといった様子である。
そんな微笑ましい様とは対称的に――その傍らでは、第1使徒サンマルコと、『ハコブネ』の白マントの女が、互いの発動した魔力を激しくぶつけ合い、火花と光の破片とを、辺りに散らしている。
――サンマルコが優勢で、白マントの女を押している。
「くっ…!よりにもよって、第1史徒のお出ましとはな!こちらに分が悪すぎる…!
エルノアを連れ帰るチャンスだったが……ここは『大罪の黙示録』だけ手に入れば良しとしよう。――ドリドルン、一旦退くぞ!」
白マントの女は、飛び退くと、現れた空中の亀裂へと身を滑り込ませた。
「――エルノア。いずれ、お前も、この世界の真実を知り、我ら反十字教結社『ハコブネ』の主に賛同する時が来るだろう。――必ず再び、迎えにくる」
そう、エルへ言い残し――白マントの女は、時空の狭間へと消えていった。
ガレリア司祭を担いだ鉄仮面の男――ドリドルンも、その後に続く。
「――待って!お父さんなんだよね?!お父さん……、みんなと一緒に、ドラコーンの森へ帰ろう?みんな、お父さんを心配――」
「――アイリス。私は森へは帰れない…。真実を知ってしまっては、『ハコブネ』と共にいく。
――お前の父は……もういない」
呼び止めるアイリスの言葉を遮って、そう告げると、鉄仮面の男――ドリドルンも、空間の亀裂へと消えていった。
アイリスは、変わり果てた父の背中を、成す術なく見送るしかなかった。
「『我、神の史徒ルシフィーが命じるのは≪ピカトリクス≫、追跡せよ≪トレース≫!」
ルシフィーは胸元からロザリオを取り出し、魔法の杖で光の円盤を描いた。
円盤は時空の狭間へと滑り込み、『ハコブネ』の2人を追った。
「――…恐らくは、撒かれるであろうな。そう簡単に、奴らは捕まらんじゃろう」
サンマルコは、豊かな白髭を撫でながら、悠然とその場の者たちへ告げた。
「ひとまずは我らの勝利じゃ!――聖カルメア教会の危機は去った!
『鎖を解き自由を――解放≪リリーズ≫』
――ほれほれ、聖カルメア教会の神父殿、修道士殿。捕らわれたアミリア族と魔獣たちの介抱を頼まれてくれんかのう」
サンマルコに声を掛けられ、フーゴ神父とモリリス修道士は、はっと我に返った。
「モリリス修道士!ノームらとともに、傷ついた彼らの手当てを、任せましたぞ!
私は、教会の皆を叩き起こして、呼んで参りますぞ!」
◆
――手当てを受けながら、解き放たれたアミリア族の一同と魔獣らが、アイリスのもとに寄って集まってきた。副部族長のロドゲルがアイリスのもとに、跪いた。
「おぉ、アイリス様!我らを案じて、森の外まで探しに来てくださったのですね!
あぁ…!私が付いていながら、このようなことに……!さらには、族長まで失ってしまった…。
アイリス様に、どう償ったらよいか…ドラコーンの森の皆にも合わす顔がない……」
「そんなこと言わないで!――みんなが無事で本当によかった。
ロドゲル、お願い!――お父さんは一体、どうしてしまったの!?」
――変わり果てた父の姿…もう、アイリスのことも、ドラコーンの森のことも、頭にないようだった。
「……我らも、記憶に靄がかかったように、よくわからないのです……。
ただ、我らは、ガレリア司祭の持つ得体の知れない書物の力によって、十字教軍戦争時の聖カルメア要塞での出来事を見せられ――多くの民の幸福のもと、魔獣たちの小さき犠牲が正当化される――という思想を植え付けられたのです……
それは、アミリア族が大切にしてきた自然崇拝を、根幹から覆すように――勝手に脳裏の奥深くまで入り込んできて、無理矢理我らを支配した……我らに抗う術は、なかったのです!
――しかし、ドリドルン部族長だけは、違った。大切な我らの誇りを持ち続け、ガレリア司祭に立ち向かった。――そして、ガレリア司祭の放った炎に焼かれたのです」
――誰よりもドラコーンの森を愛していたアミリア族の部族長である父に、『大罪の黙示録』によって見せられた世界の理は、赦せるものではなかったのだろう。ドラコーンの森も、家族すらも、投げ打ってしまうほどに――
――アイリスは、去り際の父の姿を思い浮かべながら、父の決断を悟った。
◆
「サンマルコおじいちゃん!ルシフィー様も。――どうして、ここへ?」
エルとリアードは、サンマルコのもとへと駆け寄った。
「――エル、リアードよ。そなたら、よく無事であったのう」
サンマルコは、エルとリアードに、自分とルシフィーが聖カルメア教会へ駆けつけた経緯を説明した――
――史徒エルの初任務が、邪悪な禁書報告による『検閲』任務であることに気が付いたサンマルコは、文書館内部に異変が忍び込んでいることを悟った。
「そなたにこの任務を指示した、文書館事務局長を問い詰めようと局長室を訪ねると、もぬけの殻で、逃げた後じゃった……。
あやつは、先ほどの反十字教結社『ハコブネ』とやらと繋がっておったのじゃろう」
「――私は、サンマルコ様から、あなたたちに危険が迫っていることをお聞きして、かわいいあなたたちに何かあったら、と思ったら……居ても立っても居られなくて。
サンマルコ様と共に、急いで聖カルメア教会へやって来たのです。そうしたら、聖堂の床下に階段が続いていて――ここへ辿り着いたのですよ。
2人とも、本当に無事でよかった……。よく頑張りましたね!」
ルシフィーは再び、エルとリアードを抱きしめた。
サンマルコはルシフィーに聞こえないよう、エルの耳元で密やかに続けた
「――それにしても、じゃ。初任務で、『大罪の黙示録』に出くわすこととなろうとは。
――エル、そなたよく無事でいられたものじゃ。先ほどの反十字教結社『ハコブネ』と文書館事務局長……。恐らくは、大いなる力が、大聖堂都市『イストランダ』まで……、ひいては聖ヨハネウス十字教国全土にまで、及んでおる…」
「――!サンマルコおじいちゃんは、『大罪の黙示録』を知っているの!?」
ガレリア司祭が言っていた――この世界の真理、聖ヨハネウスの力を宿した書物『大罪の黙示録』…。
――第1史徒のサンマルコは、知っている?
イストランダの文書館には、エルがまだ知らない何かが隠されているのだろうか?
「――エルよ。この話をするには、ここは人が多すぎる。話は、イストランダに帰ってからじゃ。
今晩、見聞きしたことを、誰にも言うでないぞ――ルシフィーにもじゃ。よいな?」
「えっ!?ルシフィー様にも?」
同じ文書館の史徒であるルシフィーにも、秘密の書物――『大罪の黙示録』って、一体……?
「――そこのドラコーンの娘。……そなたじゃ。名は何という?」
「へ!?わ、私は、アイリスです!」
俯いて考えこんでいたところで、突然サンマルコに声を掛けられ、アイリスは慌てている。
「――アイリスよ。そなたの父は、あの『ハコブネ』の鉄仮面の男だそうじゃのう?そなたには、『大罪の黙示録』について、知る権利があるじゃろう。
――そして、そなたの持つ力…『大罪の黙示録』の力をも凌駕しておった。そなたは、この戦いの切り札じゃ――我らとともに、大聖堂都市『イストランダ』まで、来てもらおうぞ」
「わ、私が…切り札!?」
確かに、アイリスが首から下げた『ドラコーンの秘石』は、ガレリア司祭が放った『大罪の黙示録』の魔力から、アイリスを守ってくれた。
それに、アイリスとて、父を放っては、森へ帰れない――
「――今日は、夜も遅い。今夜一晩、聖カルメアに滞在し、明日『イストランダ』へ戻ることにしようぞ――」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる