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第20章:精霊たちの試練と光の記憶

第106話 予兆と古の精霊

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影の王の封印を強化し、精霊の加護を一時的に取り戻した優馬たち。王都アルバロッサには再び平穏が訪れ、町の人々も安堵の表情を浮かべていた。しかし、優馬の胸には妙な違和感が残っていた。まるで何かが、遠くで蠢いているような…不安が消えないのだ。

ギルドに戻った優馬たちは、影の王についてさらに詳しい情報を集めるため、精霊に関する古文書を調査しようと決めた。ギルドの受付にいるミリアも協力し、王都の図書館やギルドの書庫から古い書物を取り寄せてくれていた。

優馬が手に取った一冊の古い書物には、こう記されていた。

「影の王は、古の時代に封印された精霊の一部であり、影と光の均衡を乱す存在として恐れられてきた。しかし、彼を封じたのはただの人間ではなく、特別な力を持った“光の精霊の守り手”であったという…」

その一文に、リースが顔を曇らせた。

「光の精霊の守り手…? つまり、私たちと同じように、精霊の加護を受けた人々がかつて存在していたということでしょうか」

リリアもその文に目を凝らし、真剣な表情で考え込んでいた。

「もしかすると、光の精霊の守り手は、影の王を封印するために自らの力を捧げたのかもしれませんね…その代償として、今も影と光の均衡を見守り続けている、とか…」

優馬は書物から目を離し、仲間たちに言った。

「俺たちが精霊の守り手としてここにいるのも、そうした過去の守り手たちの意思が受け継がれているからかもしれない。影の王の封印は一時的に安定したけど、まだ終わっていない気がする…」

するとその時、ギルドの入り口が勢いよく開かれ、一人の若い冒険者が駆け込んできた。彼の表情は青ざめ、汗が滴り落ちている。

「た、大変だ! 王都の北にある“聖樹の森”で、精霊たちが消え始めているって…!」

リリアが驚いた顔で声を上げた。

「聖樹の森…? あそこは精霊たちの聖域で、精霊たちが集い力を癒す場所のはずです。それが、どうして?」

若い冒険者は震える声で続けた。

「わからないんだ。ただ、森の中がどんどん暗くなっていて、まるで何かが精霊の力を吸い取っているようだって…近くに住む村人たちも恐れて森に近づけないって言ってる」

優馬はその報告を聞いてすぐに決意を固めた。

「よし、聖樹の森へ向かおう。影の王の封印と関係があるかはわからないが、精霊たちが危険にさらされているのなら見過ごすわけにはいかない」

カイが冷静に頷き、作戦を確認した。

「聖樹の森は王都から半日の距離にあるが、森の奥深くまで入るとなると慎重に進む必要があるだろう。準備を整えて出発しよう」

こうして、優馬たちは聖樹の森へ向けて再び旅立つことになった。森には未知の脅威が潜んでいるかもしれないが、精霊たちの加護を受ける守り手として、彼らはその使命を果たさなければならなかった。

聖樹の森に到着した優馬たちは、森の異変を肌で感じた。空気は重く淀んでおり、草木の色もどこか生気を失っている。普段なら聞こえるはずの小さな精霊たちの囁きも、今は静まり返っていた。

リースが慎重に森の気配を探りながら言った。

「この森には、精霊たちの力を奪う何かが潜んでいる…まるで、影の王の気配に似ているわ」

レインが影の結晶を手に、周囲の様子を警戒しながら歩みを進めた。

「影の王の力が及んでいるなら、ここで影の精霊が出現する可能性もあるわね。全員、準備を怠らないで」

やがて、森の奥に大きな聖樹が見えてきた。しかし、その根元には黒い霧が漂い、周囲の精霊たちは完全に姿を消していた。明らかに、何かが精霊たちの力を吸い取っているのが感じられる。

優馬が剣を構え、仲間たちに声をかけた。

「ここが異変の源みたいだな。みんな、気を引き締めていこう。何が出てきてもおかしくない状況だ」

その瞬間、聖樹の根元から黒い霧が渦を巻き、巨大な影の精霊が姿を現した。その精霊は冷たい目で優馬たちを見つめ、不気味な笑みを浮かべた。

「光の守り手たちよ…我が影の王の封印を妨げるつもりか? 精霊たちの加護など、この影には無力だ」

リリアが精霊石を掲げ、力強く宣言した。

「私たちは精霊の守り手として、あなたのような邪悪な存在を見逃すわけにはいきません! 影に囚われた精霊たちを解放するため、全力で戦います!」

カイが冷静な表情で仲間たちに指示を出した。

「まずは影の精霊の動きを封じ、リースとレインが浄化の魔法を準備する。タイミングを合わせて一気に決めるぞ」

こうして、優馬たちと巨大な影の精霊との戦いが幕を開けた。彼らは精霊たちの安息を取り戻すため、光と影の均衡を守るべく立ち向かうのだった。
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