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第9章：精霊と王都の希望

第59話 旅立ちと森の呼び声

優馬たちはアークを仲間に迎え、アークレインの森への準備を整えた。ギルドの面々からの見送りを受け、早朝の柔らかな光に包まれながら、彼らは王都の北東へと歩みを進める。

ギルドの玄関口で、ミリアが手を振りながら彼らに声をかけた。

「優馬さん、リリアちゃん、カイさん、アークさん……どうか気をつけてね！精霊たちも、あなたたちを見守ってくれるよう祈っています」

優馬は振り返って笑顔を見せ、彼女に力強く答えた。

「ありがとう、ミリア。精霊たちの声に耳を傾けながら、必ず戻ってくるよ。ギルドのみんなにもよろしく伝えてくれ」

リリアも優しく手を振り、精霊石を胸に抱えながら微笑む。

「精霊たちも、ミリアさんに感謝しています。私たちが無事に帰ってこられるよう、力を貸してくれると……」

「ふむ、今回の旅は長くなるかもしれないが、成果を持ち帰るつもりだ」

カイは冷静な表情を保ちつつも、その言葉には確かな決意が込められていた。アークは笑いながら彼らの肩に軽く手を置き、明るい声でミリアに応じる。

「心配するなって、ミリア嬢ちゃん。俺たちは精霊も遺跡もひっくり返して、どんな謎だって解決してやるさ」

その声に、優馬も笑みを浮かべ、リリアとカイ、そしてコハクと共に再び歩き出した。コハクも元気に「ワン！」と鳴き、仲間たちを元気づけるように足元を駆け回っている。

王都を抜け、広大な平原を越えると、遠くにアークレインの森の影が見え始める。深い緑の海のように広がるその森は、優馬たちを歓迎しているかのように風にざわめいていた。

「やっぱり、アークレインの森は壮大だな……こういう自然と触れ合うのも、なんだか久しぶりだ」

優馬は遠くに見える森を眺めながら呟く。その言葉にリリアも同意し、精霊石を掲げて風の流れに耳を傾ける。

「精霊たちが……森の中に眠る古い力を感じているみたいです。でも、その奥にはまだ見えない何かが隠れているとも……」

「なるほど、かつて精霊と賢者たちが暮らしていた場所だ。きっと、ただの廃墟とは違う何かが待ち受けているだろう」

カイがそう言って、遠くを見つめる目を細めた。その言葉には、これから訪れる未知の出来事への警戒が込められている。

一方で、アークは気楽な様子を見せ、手持ちの短剣を軽く振りながら笑みを浮かべる。

「まあ、何が出てきたって俺たちで対応すりゃいいさ。精霊の力だって、賢者の遺跡だって、どんと来いってな」

彼の楽天的な言葉に、リリアも少し笑顔を見せる。

「ふふ、アークさんの前向きさには、精霊たちも驚いています。でも、それが皆の力になるって……」

「だろう？　精霊たちの応援があるなら、百人力だぜ！」

アークはそう言って、リリアの隣で自信満々に親指を立てた。優馬も彼らのやり取りに微笑み、リュックを背負い直す。

「よし、ならこの調子で森に入ってみよう。まだ何が待っているかわからないけど、俺たちならきっと切り抜けられるさ」

アークレインの森に足を踏み入れると、そこにはひんやりとした空気が漂い、木々の間から柔らかな光が差し込んでいた。鳥のさえずりや小動物の足音が聞こえる中、リリアが精霊石を掲げ、精霊たちに道案内を頼む。

「精霊たち……私たちに力を貸してください。森の奥へと続く道を、どうか教えてください」

リリアの優しい声に応じ、精霊たちの囁きが風に乗って森を導いていく。彼女の周囲には淡い緑の光が揺れ、風が木々を撫でるようにして進むべき方向を示していた。

「ありがとう、リリア。精霊たちのおかげで、迷わずに済みそうだな」

優馬は感謝の言葉をリリアに向け、彼女も少し照れくさそうに微笑んだ。

「精霊たちも……優馬さんたちと一緒にいることを楽しんでいます。こんなに強く応えてくれるのは、初めてかもしれません」

「それは頼もしいな。なら、僕たちも精霊たちに応えるように頑張らなければならないな」

カイも優しく微笑み、彼らの間に流れる穏やかな時間が広がる。

アークは少し先を歩きながら、周囲の木々を観察していた。

「こうして歩いていると、本当に静かな森だよな。だが、その静けさが逆に気になるぜ……何かがひそんでいやしないか？」

彼の鋭い勘が何かを察知したのか、手元の短剣を構えて辺りを見回す。優馬もその言葉に気を引き締め、手元の浄化ポーションをいつでも使えるようにリュックのポケットに入れ直した。

「そうだな、油断は禁物だ。森の奥に行くほど、古代の精霊術が残っている可能性が高い……」

リリアも精霊たちに声を掛け、コハクも緊張した様子で鼻をひくつかせている。

「ワン……」

コハクの警戒心を感じ取った優馬は、彼の頭を軽く撫でながら励ます。

「心配するな、コハク。何があっても、俺たちで守るからさ」

コハクもその言葉に応えるように尻尾を振り、仲間たちと共に森の奥へと進んでいく。

森を進むにつれ、彼らの周囲には古びた遺跡の痕跡がちらほらと現れ始めた。苔むした石碑や、朽ちた石柱が並ぶ広場が見え、その先にはかつて精霊と賢者たちが共に暮らしていたとされる神殿の入口が姿を現す。

「ここが……『失われた地』か」

優馬は神殿の前で立ち止まり、その厳かな雰囲気に息を飲んだ。リリアも精霊石を強く握りしめ、精霊たちに語りかける。

「精霊たちが……この神殿の奥に何かが眠っていると言っています。それが私たちを待っていると……」

「ならば、その真実を暴くために進むべきだ。優馬、リリア、アーク、準備はいいか？」

カイが問いかけ、彼ら全員が頷いた。優馬は深く息を吸い、古代の石の扉に手をかける。

「よし、行こう。俺たちでこの神殿の謎を解き明かして、精霊たちを守ろう！」

こうして、優馬たちは新たな試練と真実を求め、神殿の奥深くへと足を踏み入れるのだった。彼らの冒険はさらに深まる――古代の精霊術と、隠された真実を求めて。