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雪月夜狐

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第9章:精霊と王都の希望

第58話 新たな仲間と旅の準備

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古代の手紙に記された「失われた地」についての情報を手にした優馬たちは、ギルドに戻り、早速準備を整えることにした。彼らが目指す次の目的地は、王都から遠く離れた精霊の古い聖地――かつて精霊と人々が共に暮らしていたという伝説の地であった。

ミリアが手元の古い地図を広げ、彼らに説明を続ける。

「この手紙に書かれている『失われた地』……それに該当する場所が、こちらの『アークレインの森』です。王都から北東に二日ほどの距離で、古くから精霊の信仰が残る場所ですが、今は廃墟となっていると聞いています」

ミリアの指差した地図上には、広大な森の記号が記されており、その奥深くにある古い遺跡のマークが見える。優馬は地図をじっと見つめ、リリアとカイに目を向けた。

「二日か……ちょっとした遠出だな。でも、精霊たちが警告している以上、行かないわけにはいかない。新しいポーションのストックもあるし、食料や装備も揃えておくか」

「はい、精霊たちも森の奥で何か強い力を感じているみたいです。彼らの声を頼りにすれば、きっと迷わずに進めると思います」

リリアは精霊石を見つめながら微笑むが、その表情には少しだけ緊張の色が見える。彼女にとって、精霊たちの力を頼りに進むことは、精霊たちを守るための使命でもあった。

カイもまた、地図をじっくりと見つめ、何か考え込むような表情を浮かべていた。

「このアークレインの森には、かつて精霊と共に暮らしていた賢者たちが遺した古い魔法陣が眠っていると聞いたことがある。それが手紙の言う『真実』と関係しているなら、調べる価値はある」

「賢者たちの遺した魔法陣……か。もしかすると、古代の精霊術に関する手がかりも見つかるかもしれないな」

優馬は興味深そうに頷き、リュックから調合道具を取り出してチェックを始めた。

「それなら、森の中で使えそうなポーションをもう少し準備しておくよ。『森の露』を使った回復用のエリクサーと、視界を良くするための『クリアアイ』も作っていこう。精霊たちと一緒に使えば、きっと役立つはずだ」

「ふふ、優馬さん、本当に頼りになりますね。私も精霊たちと一緒に、少しでもお手伝いできるよう頑張ります」

リリアが優しく微笑むと、カイも少し口元を緩める。

「……確かに、君の調合の腕は頼りになるな。だが、森の奥深くは危険だ。油断せずに進もう」

「そうだな。慎重に行こう。リリアもカイも、何か気になることがあったらすぐに教えてくれ」

準備を進める中、優馬たちは新しい仲間と出会うことになる。ギルドでの買い出しを終えた帰り道、優馬がリリアとコハクを連れて露店を見ていると、見慣れない青年が話しかけてきた。

彼は冒険者風の装いをしていて、短く切った金髪に青い瞳が印象的だった。体格はしっかりしており、動きも無駄がなく、経験豊富そうな様子を漂わせている。

「お前たちが、霧の異変を解決したっていう噂の連中か?」

突然の問いかけに優馬が振り返ると、彼は少し笑みを浮かべて、自分の名前を名乗った。

「俺はアーク。北の荒野で冒険をしてたんだが、ここに来る途中で何度か精霊の気配を感じてな。どうやら、あんたたちがその原因に関わってるらしいって聞いて、興味が湧いたってわけさ」

優馬はアークの姿をじっと見つめ、警戒心を持ちながらも彼の目に悪意がないことを見抜いた。そして、軽く肩をすくめて笑みを返す。

「そうか、俺たちのことを聞いてわざわざ来てくれたのか?確かに、俺たちは王都周辺で霧の異変を調査していたけど、今度はもっと遠くへ行くことになる」

アークは興味深そうに優馬たちを見つめ、その口調に少しだけ挑戦的な響きを込めた。

「だったら、俺もその調査に乗らせてくれよ。精霊や古代の遺跡なんて、普段の冒険じゃお目にかかれない代物だ。力を貸すから、連れて行ってくれると嬉しいんだが」

リリアは少し驚いた様子で優馬の顔を見つめ、精霊石を握りしめながらそっと囁いた。

「優馬さん……彼からは、悪い気配は感じません。精霊たちも、彼を嫌っている様子はないようです」

優馬はリリアの言葉を聞いて考え込み、そしてカイに視線を送る。カイは少しばかり冷静な眼差しでアークを見つめ、やがてゆっくりと頷いた。

「確かに、彼の力があれば役立つ場面も多いだろう。だが、精霊たちや封印に関する情報については、慎重に扱うべきだ」

「わかってる。アーク、俺たちと一緒に来るなら、協力してくれるって約束してくれよ」

優馬が手を差し出すと、アークは満面の笑みを浮かべて、その手を強く握った。

「もちろんだ。仲間として力を合わせようぜ!」

こうして、優馬たちの旅に新しい仲間が加わった。彼らはアークと共に、「失われた地」アークレインの森へと向かう準備を整え、旅立ちの時を迎えようとしていた。

古代の精霊術、賢者たちの遺した魔法陣、そして新たな仲間との絆――これからの冒険は、さらなる試練と発見に満ちている。

精霊たちが見守る森の中で、優馬たちはどのような真実を目にし、そして何を手に入れるのか。すべては、次の一歩に託されていた。
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