転生特典：錬金術師スキルを習得しました！

第5章：新たな冒険の扉

第42話 王都への帰還と次なる一歩

優馬たちは、霧が晴れ始めたシャロウ渓谷を後にして、王都アルバロッサへの道をたどっていた。渓谷での戦いの疲れが彼らの体に残る中、それでも一歩一歩確実に前へ進んでいる。

「リリア、コハク、もう少しで王都に戻れる。今日はゆっくり休もうな」

優馬は、疲れた体を労わるように歩調を緩め、リリアに声をかける。彼の表情は柔らかく、少しホッとした様子だ。

「はい……精霊たちも、少し安心しているみたいです。王都に戻ったら、優馬さんの料理がまた楽しみです」

リリアは精霊石を握りしめながら微笑んだ。精霊たちが彼女を通して語りかける声も、渓谷での時より穏やかだ。コハクもリリアに寄り添うように歩きながら、疲れた体を引きずる様子も見せず、優馬たちを守るように前後を見回している。

「よし、今日は特製の『回復ハーブスープ』でも作るか。渓谷で手に入れた薬草を使えば、疲れが吹き飛ぶような味になるはずだ」

優馬の言葉にリリアは嬉しそうに頷き、コハクも「ワン！」と元気に応じた。優馬たちは戦いと疲労を忘れるように、王都での穏やかな時間を思い浮かべながら歩を進めていく。

夕暮れ時、ようやく王都の門が見えてきた。ギルドの建物が遠くに姿を現し、優馬たちは少しだけ歩調を早める。ミリアが出迎えてくれるいつもの場所が、彼らにとってはまるで自宅のように感じられる場所だった。

ギルドの入り口では、いつも通りミリアが受付のカウンターの向こう側で忙しそうにしていたが、優馬たちが帰ってくるのを見つけると、ぱっと笑顔を浮かべて手を振った。

「優馬さん、リリアちゃん、コハク！　おかえりなさい！　シャロウ渓谷の調査、大変だったでしょう？」

「ただいま、ミリア。渓谷の霧の原因を探ってきたけど、思った以上に厄介だったよ……。でも、なんとか霧の異変は解決できたみたいだ」

優馬がそう報告すると、ミリアは安堵の表情を浮かべた。

「本当にお疲れ様。優馬さんたちが帰ってきてくれて、みんな安心するわ。今夜はギルドの皆で歓迎会をしましょうか？」

「それは嬉しいけど、今日はちょっと休みたいかな。リリアも疲れてるし、コハクもよく頑張ってくれたからね」

ミリアの提案に笑顔で応えつつも、優馬はリリアとコハクの顔を見て、静かに休める時間を大切にしたいと思った。

「わかりました。それじゃあ、またいつでも声をかけてね。休息が終わったら、また新しい依頼も紹介できると思うわ」

ミリアは優しく微笑んで、彼らを見送る。優馬たちはギルドの仲間に軽く挨拶をしてから、宿に向かって歩き出した。

夜になり、王都の宿屋で優馬たちは久しぶりにリラックスした時間を過ごしていた。優馬が調理した「回復ハーブスープ」は、渓谷で採取した薬草の香りがふんわりと漂い、リリアとコハクはその味に心から満足しているようだった。

「うん、やっぱり優馬さんのスープは美味しいです……体の疲れが取れる感じがします」

「それはよかった。俺も渓谷で手に入れた薬草を使ってみたかったからな。リリアの精霊たちにも気に入ってもらえたら嬉しいよ」

リリアは精霊石をそっと撫でながら、優馬に微笑み返した。

「精霊たちも、こういう穏やかな時間を喜んでいるみたいです。渓谷での戦いは大変だったけど、こうしてまた皆で無事にご飯を食べられるのが何よりですね」

「そうだな……次の戦いがいつになるか分からないけど、今はこうしてのんびりしよう」

優馬はそう言って、もう一杯のスープをリリアとコハクに差し出した。コハクもその香りを満喫するように、ゆっくりと飲んでいる。

夜も更け、優馬たちは宿の窓から外の夜空を見上げていた。満天の星が王都の空を照らし、優馬はふと、自分が異世界に転生してからのことを思い返していた。

「リリア、コハク、こうして異世界での生活が続いているけど、俺たちはこれからもこうやって一緒に進んでいけるんだろうな」

リリアは優馬の隣で星空を見つめながら、優しく微笑んだ。

「はい、優馬さん。私もそう思います。あなたとコハクがいてくれるから、どんな困難でもきっと乗り越えられる気がします」

コハクもまた、二人のそばで静かに寄り添い、王都の静かな夜を楽しんでいるようだった。その穏やかな時が、これからのさらなる冒険の前に彼らを癒してくれる大切なひとときになる。

「さて、明日はどうしようか。また新しい食材を探しに市場に行ってみるか？」

優馬の提案にリリアが笑顔で応え、コハクも尻尾を振りながら賛成の声を上げる。彼らの旅はまだ続くが、今はただ、この平和な時間を大切にしたい。

こうして、優馬たちの新たな日常が再び始まった。王都での平和なひとときと、迫り来る新たな冒険――彼らの物語は、次なる幕開けへと進んでいくのだった。