転生特典：錬金術師スキルを習得しました！

第5章：新たな冒険の扉

第38話 渓谷での小さな休息

しばらく進んだ後、彼らは小さな清流のほとりで一息つくことにした。流れは澄んでおり、黒い霧の影響は及んでいないようだ。優馬は早速リュックからお茶セットを取り出し、リリアとコハクに声をかける。

「せっかくだし、少し休もうか。リリア、この間の『星屑ベリー』でティータイムにしよう」

「ふふ、いいですね。あのベリー、とっても甘くて美味しいですから」

リリアは精霊石をそっと清流に浸し、精霊たちに感謝の祈りを捧げてから優馬の隣に座った。優馬は星屑ベリーをカップに入れ、温かいお湯を注ぐ。ベリーが湯に溶けると、ほんのりと青い光がカップの中で揺らめき、甘い香りが漂ってくる。

「お前も飲むか、コハク？」

優馬がコハクにも小さなカップを差し出すと、彼は鼻を近づけて香りを楽しんでから、ちょんと舐めてみる。リリアはその様子を見て、思わずくすっと笑った。

「コハクも、ちゃんと味を確かめているんですね。優馬さんの作るお茶は、精霊たちも喜んで飲んでくれるから……」

「そうか、それなら俺も嬉しいよ。こうしてのんびりできる時間も、戦いの合間には大事だからな」

リリアはカップを両手で包み込み、湯気の立つお茶を一口飲む。その表情は自然と柔らかくなり、少し緊張していた気持ちがほぐれていくのがわかる。

「このベリーの甘さと、優馬さんのお茶、やっぱり最高です。こういう時間、もっとずっと続けばいいのに……」

「そうだな。でも、こんな風に休めるのも、今のうちかもしれないな。渓谷の奥に何が待ってるか分からないし……」

「うん……でも、私たちならきっと大丈夫です」

リリアの言葉に、優馬も深く頷いた。そして、彼はコハクの背を撫でながら、再び気持ちを引き締める。

「よし、休憩が終わったらもう少し奥へ進もう。霧の元を探り当てて、この渓谷に平和を取り戻してやるんだ」

「はい、精霊たちも応援してくれています。だから、私も精一杯頑張りますね！」

リリアの決意に、コハクも元気よく「ワン！」と鳴いて応える。その声が渓谷に響き、彼らの絆を感じさせるようだった。

こうして、優馬たちは再びシャロウ渓谷の奥深くへと足を踏み出した。冷たい風が渓谷を吹き抜け、彼らの前にさらなる試練が待ち受けている。

しかし、その合間に見つけた穏やかなひとときが、彼らの心を強くし、希望を繋ぐ力となるのだった。