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第5章:新たな冒険の扉

第36話 シャロウ渓谷の異変と、不穏な気配

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シャロウ渓谷へと向かう道中、優馬たちは昼間の陽光に照らされた草原を抜け、山々が連なる地域へと足を進めていた。風は爽やかで、山道には野花が咲き誇り、旅そのものは平穏だった。

しかし、リリアは時折立ち止まり、精霊石を握りしめて周囲の気配を感じ取ろうとしていた。

「リリア、どうした?何か感じるのか?」

優馬が問いかけると、リリアは少し困った顔をして答えた。

「はい……精霊たちが不安がっているんです。この先にある何かが、彼らにとっても脅威になるような存在だって。まるで……自然そのものが怯えているみたい」

「自然が怯えてる……?嫌な予感がするな。今までの魔物の活性化とは、何か違うのかもしれない」

優馬はリュックから錬金術セットを取り出し、調合できるポーションの在庫を確認した。彼は戦闘になった時のために、新しく調合した「精霊強化ポーション」や回復アイテムを揃え、備えておくことにした。

「リリア、俺もできる限りの準備をしておくよ。コハクも頼りにしてるからな」

「ワン!」

コハクは優馬の言葉に応えるように低く唸り声を上げ、リリアのそばを離れずに慎重に前を見据えていた。

ようやくシャロウ渓谷に辿り着くと、そこには彼らが想像していた以上の異変が待ち受けていた。渓谷を囲む岩山の至るところに、黒い霧のようなものが漂い、その中から不気味な唸り声が聞こえてくる。

「これは……黒い霧? 魔物のものとは違うようだな……」

優馬が驚きの声を上げると、リリアも精霊石を強く握りしめ、霧の中に向けて精霊たちの力を呼び起こそうとした。

「精霊たち、この霧の正体を教えて……」

リリアの精霊石が淡く光を放ち、彼女の意識が精霊たちと交感する。その瞳には、霧の向こうに潜む何かが見えたようで、リリアは顔を青ざめさせた。

「優馬さん、この霧は……精霊たちが傷ついている証です。何者かが、精霊たちの力を無理やり引き出して、魔物を強化しているみたい……!」

「なんだって……!?」

優馬はリリアの言葉に驚き、そしてその場に不快感が漂うのを感じた。コハクもまた、鼻を鳴らし、険しい表情で周囲を警戒している。

「つまり、この異変の裏には、誰かが精霊の力を悪用しているってことか……。どうやら、ここでもう一度、戦いが必要みたいだな」

優馬は決意を込めて、再び錬金術セットを手に取り、リリアとコハクと共に霧の中へと足を踏み入れた。
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