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第3章:新たなる旅の始まり
第23話 ルナフォレストの入口にて
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優馬たちは、王都を後にして数日かけて「ルナフォレスト」の入口までやってきた。森の入り口には、長い年月を経て緑に覆われた石の門が立っており、その門には古代文字が刻まれている。リリアはその文字をじっと見つめていた。
「これ、精霊語ですね……。『ここより先、試練を受ける者、自然の声を聞け』と書かれています」
「試練か……ま、俺たちにはもう慣れた言葉だな。でも、今回はちゃんと準備してきたから、何とかなるさ」
優馬は軽く肩をすくめて笑い、手元の錬金術セットを確認する。王都で揃えた新しい材料も多く、精霊の力を活かした新しいポーションやアイテムのレパートリーが増えていた。リリアも精霊石を手に持ち、緊張しつつも前を見据えている。
「さあ、コハク、リリア、行こう。俺たちの新しい冒険が始まる」
「うん、頑張りましょう、優馬さん!」
「ワン!」
コハクも元気よく鳴き、三人はルナフォレストの中へと足を踏み入れた。森の中は薄暗く、密集した木々が日光を遮っているが、彼らの足元には不思議な光る苔が生えており、優しい光で道を照らしてくれていた。
しばらく進んだ後、優馬たちは適当な休憩場所を見つけ、荷物を下ろして休憩を取ることにした。リリアは精霊の力を使って周囲の魔物の気配を探り、コハクは辺りを警戒しながら鼻を鳴らしている。
「リリア、どうだ? この辺りには何も危険なものはないか?」
「はい、今のところは平和ですね。でも、この森全体に漂う精霊の気配がとても強いです……何かが、私たちを見守っているような感じがします」
「なるほどな。あんまり気を緩めるわけにもいかないけど、せっかくの休憩だからちょっとゆっくりしよう」
優馬はリュックからお茶セットを取り出し、前日に王都の市場で買った「スピカの花」を使って温かいハーブティーを淹れ始めた。スピカの花は、爽やかな香りとほんのり甘い味わいが特徴の、リリアの大好きな茶葉だ。
「よし、これでできた……リリア、どうぞ」
優馬がカップを差し出すと、リリアはその香りを嗅いで目を細め、嬉しそうに受け取った。
「優馬さん、ありがとうございます……ああ、すごくいい香りですね」
リリアが一口飲むと、ハーブティーの柔らかい香りが口いっぱいに広がり、緊張していた気持ちが和らぐようだった。コハクも優馬のそばに座り、同じようにリラックスした表情を浮かべている。
「ふぅ、こういう時間って本当に大切ですよね……。精霊たちも、こうやって穏やかな気持ちになるのが好きみたいです」
「そうだな。森の中っていうのもあるけど、なんだか落ち着くよな」
優馬もカップを手に取り、森の香りとハーブティーの香りを楽しみながら、コハクの頭を撫でた。コハクはその手に嬉しそうに顔を擦り付ける。
「でもさ、リリア……君の精霊たちって、普段はどんなことを話してるんだ? 俺には見えないけど、いつも君のそばにいるって感じだよな」
優馬が興味津々に聞くと、リリアは少し照れながら答えた。
「精霊たちって、実はおしゃべりなんですよ。森のこととか、天気のこととか、あと時々、優馬さんが作る料理の匂いについて話してくれたりもします」
「え、俺の料理の匂いが精霊にも届いてるのか?」
「はい……実は、優馬さんのリュナの実のパイがとても人気なんです。特に、風の精霊たちが……」
リリアはくすくすと笑いながら話す。その様子に優馬も思わず笑みがこぼれ、コハクも尻尾を揺らしていた。
「そっか、精霊たちにも俺の料理が評判なんだな。なんか嬉しいな、それ」
「優馬さんは本当にすごいです……私、あなたと旅をしていて、いろいろなことを学んでいます。だから、もっともっと頑張りたいって思うんです」
リリアの真剣な言葉に、優馬は少し照れたように頭を掻いた。
「そんなこと言われると、俺も頑張らないとって思うよ。でも、無理はするなよ。こうして、リラックスできる時間も大切だからさ」
リリアは優馬の言葉に頷き、ハーブティーをもう一口飲んでから、ゆっくりと目を閉じて深呼吸をした。コハクもその場に体を横たえ、優馬たちと一緒に穏やかなひとときを楽しんでいる。
「これ、精霊語ですね……。『ここより先、試練を受ける者、自然の声を聞け』と書かれています」
「試練か……ま、俺たちにはもう慣れた言葉だな。でも、今回はちゃんと準備してきたから、何とかなるさ」
優馬は軽く肩をすくめて笑い、手元の錬金術セットを確認する。王都で揃えた新しい材料も多く、精霊の力を活かした新しいポーションやアイテムのレパートリーが増えていた。リリアも精霊石を手に持ち、緊張しつつも前を見据えている。
「さあ、コハク、リリア、行こう。俺たちの新しい冒険が始まる」
「うん、頑張りましょう、優馬さん!」
「ワン!」
コハクも元気よく鳴き、三人はルナフォレストの中へと足を踏み入れた。森の中は薄暗く、密集した木々が日光を遮っているが、彼らの足元には不思議な光る苔が生えており、優しい光で道を照らしてくれていた。
しばらく進んだ後、優馬たちは適当な休憩場所を見つけ、荷物を下ろして休憩を取ることにした。リリアは精霊の力を使って周囲の魔物の気配を探り、コハクは辺りを警戒しながら鼻を鳴らしている。
「リリア、どうだ? この辺りには何も危険なものはないか?」
「はい、今のところは平和ですね。でも、この森全体に漂う精霊の気配がとても強いです……何かが、私たちを見守っているような感じがします」
「なるほどな。あんまり気を緩めるわけにもいかないけど、せっかくの休憩だからちょっとゆっくりしよう」
優馬はリュックからお茶セットを取り出し、前日に王都の市場で買った「スピカの花」を使って温かいハーブティーを淹れ始めた。スピカの花は、爽やかな香りとほんのり甘い味わいが特徴の、リリアの大好きな茶葉だ。
「よし、これでできた……リリア、どうぞ」
優馬がカップを差し出すと、リリアはその香りを嗅いで目を細め、嬉しそうに受け取った。
「優馬さん、ありがとうございます……ああ、すごくいい香りですね」
リリアが一口飲むと、ハーブティーの柔らかい香りが口いっぱいに広がり、緊張していた気持ちが和らぐようだった。コハクも優馬のそばに座り、同じようにリラックスした表情を浮かべている。
「ふぅ、こういう時間って本当に大切ですよね……。精霊たちも、こうやって穏やかな気持ちになるのが好きみたいです」
「そうだな。森の中っていうのもあるけど、なんだか落ち着くよな」
優馬もカップを手に取り、森の香りとハーブティーの香りを楽しみながら、コハクの頭を撫でた。コハクはその手に嬉しそうに顔を擦り付ける。
「でもさ、リリア……君の精霊たちって、普段はどんなことを話してるんだ? 俺には見えないけど、いつも君のそばにいるって感じだよな」
優馬が興味津々に聞くと、リリアは少し照れながら答えた。
「精霊たちって、実はおしゃべりなんですよ。森のこととか、天気のこととか、あと時々、優馬さんが作る料理の匂いについて話してくれたりもします」
「え、俺の料理の匂いが精霊にも届いてるのか?」
「はい……実は、優馬さんのリュナの実のパイがとても人気なんです。特に、風の精霊たちが……」
リリアはくすくすと笑いながら話す。その様子に優馬も思わず笑みがこぼれ、コハクも尻尾を揺らしていた。
「そっか、精霊たちにも俺の料理が評判なんだな。なんか嬉しいな、それ」
「優馬さんは本当にすごいです……私、あなたと旅をしていて、いろいろなことを学んでいます。だから、もっともっと頑張りたいって思うんです」
リリアの真剣な言葉に、優馬は少し照れたように頭を掻いた。
「そんなこと言われると、俺も頑張らないとって思うよ。でも、無理はするなよ。こうして、リラックスできる時間も大切だからさ」
リリアは優馬の言葉に頷き、ハーブティーをもう一口飲んでから、ゆっくりと目を閉じて深呼吸をした。コハクもその場に体を横たえ、優馬たちと一緒に穏やかなひとときを楽しんでいる。
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