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第2章:大きな試練

第15話 王都へ帰還、そして迎え撃つ

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エレメンタルの泉で力を得た優馬たちは、すぐさま王都アルバロッサへと戻った。しかし、彼らが帰還した時には、すでに町の一部が炎に包まれていた。巨大な魔物が町の門を破壊し、王都の兵士たちが必死に応戦している様子が見える。

「王都が……間に合わなかったのか……!」

優馬は目の前の光景に歯噛みしながらも、リリアとコハクと共にすぐさま町の中央へと駆け込む。そこでは、ゼルドが単身で魔物の大群を相手に戦っていた。

「ゼルドさん! 俺たち、戻りました!」

「……お前たち、精霊の力を得て戻ってきたか。ちょうどいい、力を見せてみろ!」

ゼルドはそう叫びながら、優馬に向かって頷いた。優馬はすぐさま精霊強化ポーションを取り出し、仲間たちに与える。

「リリア、コハク、これを使え!」

リリアが精霊強化ポーションを飲み込むと、彼女の精霊の翼がさらに大きく輝き、精霊の風が彼女の周囲に集まる。コハクもその力を受け、俊敏さが一層増している。

「行きます、精霊の風よ――『エアロストーム』!」

リリアが魔物に向かって手をかざすと、強大な竜巻が彼女の手から放たれ、魔物たちを巻き込んで吹き飛ばす。竜巻の中で魔物たちは次々と砕け、地面に叩きつけられる。

「すごい……これがリリアの本当の力か」

優馬は感嘆しつつも、さらに精霊の盾を展開し、コハクとリリアを守りながら攻撃を続ける。コハクはその隙を突いて魔物たちの間を駆け抜け、鋭い爪と牙で次々と魔物を倒していく。

彼らの連携により、王都を襲っていた魔物たちは次々と撃退され、やがて最後の一匹がゼルドの剣によって倒された。

「はぁ……やっと……終わったのか……」

優馬は息を切らしながらも、戦いが終わったことに安堵し、地面に腰を下ろした。リリアも疲れ切った表情を見せながら、彼の隣に座り込む。

「優馬さん……私たち、王都を守ることができましたね」

「ああ、リリア……お前のおかげだ。俺たちが力を合わせて戦えたからだよ」

優馬は彼女の頭を優しく撫で、コハクも寄り添うように彼らに体を寄せる。その白い毛並みが優馬とリリアを包み込み、温かさを感じさせた。

ゼルドは剣を収め、彼らの元へと近づくと、静かに言葉をかけた。

「お前たちの力、確かに見せてもらった。これで一つの危機は乗り越えたが……まだ、王国には新たな脅威が潜んでいる」

「新たな脅威……?」

ゼルドは鋭い眼差しを王都の遠くを見据えながら、頷いた。

「魔物を操る者たちが存在する。奴らの真の目的はまだ掴めていないが、リリアの精霊の力が重要な鍵を握っていることは確かだ。お前たちには、さらなる力を手に入れ、彼らを追い詰める旅を続けてほしい」

優馬とリリアはゼルドの言葉に応じて頷き、立ち上がった。

「わかりました。俺たち、もっと強くなって王国を守ります。新たな脅威にも立ち向かってみせる!」

リリアも覚悟を決めた表情で拳を握りしめる。彼女の瞳には、失った故郷と仲間たちを守るという決意が宿っていた。

こうして、王都を救った優馬たちは、新たな敵に立ち向かうための旅を再び始めることになった。エレメンタルの泉で得た精霊の力と、仲間たちとの絆を胸に、彼らはさらなる冒険の地へと足を踏み出す。

しかし、その先に待つのは、より強大な敵と、精霊と魔物の謎が絡み合う深い陰謀だった――。
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