転生特典：錬金術師スキルを習得しました！

第1章：異世界転生

第9話 丘での薬草採取と不思議な少女

優馬とコハクは町を出て、依頼に記されていた近くの丘へと向かった。緑豊かな草原が広がり、空は澄み渡り、優しい風が吹き抜けている。こんな穏やかな場所で、危険な魔物が出ることはなさそうだ。

「ここなら、のんびりと薬草集めができそうだな」

優馬は地面に生えているミスティハーブを見つけて、丁寧に一株ずつ摘み取っていく。ミスティハーブは淡い青色の葉を持ち、ほんのりとした爽やかな香りが漂っていた。これを使えば、ポーションの品質も少し向上するかもしれない。

「よし、あと少しで目標の10株だ。コハクも手伝ってくれてありがとうな」

コハクは優馬の声に反応して、鼻を地面に近づけて薬草を探している。彼の嗅覚のおかげで、優馬が見落とした場所でもミスティハーブを見つけることができた。

しかし、草むらの中で採取を続けていると、遠くからかすかに小さな声が聞こえてきた。

「……助けて……」

優馬はその声に耳を澄ませる。誰かが、弱々しく呼びかけているようだ。

「誰かいるのか……？　コハク、気をつけながら進もう」

コハクと共に声の方へと歩いていくと、草むらの陰で小さな少女が倒れているのが見えた。彼女は10歳くらいの見た目で、金色の髪を持ち、白いローブに身を包んでいる。顔は蒼白で、息も荒い。

「大丈夫か？　しっかりして！」

優馬は彼女に駆け寄り、持っていたポーションを取り出して彼女の口元に差し出した。ポーションを少しずつ飲ませると、少女の顔色が徐々に良くなり、彼女はゆっくりと目を開けた。

「……ありがとう、あなたは……？」

「俺は優馬。錬金術師をしてるんだ。怪我をしているようだったから、助けたんだよ。君の名前は？」

「私はリリア……、実は、魔物に襲われて……」

リリアと名乗った少女は、体を震わせながら優馬に事情を話し始めた。どうやら、彼女は何らかの理由でこの森を訪れ、迷子になっていたところを魔物に襲われ、逃げるうちに力尽きて倒れてしまったらしい。

「リリアか……無事でよかった。でも、君みたいな子が一人でこんなところにいるのは危険だよ。町まで一緒に戻ろう」

優馬は彼女に手を差し出し、リリアもその手を掴んで立ち上がる。リリアはまだ不安そうな表情を浮かべていたが、優馬とコハクが一緒にいることに少し安心したのか、かすかに笑みを見せた。

「ありがとう、優馬さん。あなたのおかげで……助かりました」

「気にするなよ。困った時はお互い様だ」

こうして、優馬とコハク、そして新たに加わったリリアは、町へと戻ることになった。リリアとの出会いは、これからの冒険にとって大きな意味を持つものになるとは、この時の優馬はまだ知らなかった。

次第に明らかになるリリアの秘密、そして彼女を追う影――新たな仲間を得た優馬とコハクの旅は、ますます複雑で賑やかなものへと進んでいくのだった。