テイマーのんびり生活！スライムと始めるVRMMOスローライフ

第4章：星の夜への準備

第22話 鍛冶屋リックの秘密と特別な武具

エメラルドフォレストでシャボンという新しい仲間を迎え入れ、森の異変と不思議な石碑の言葉を心に留めたヨウ。星の夜が訪れるまでに村を守るための準備を整えたいという思いが、少しずつ彼の中で強まっていた。

ある朝、ヨウはいつものように牧場で四匹とシャボンに挨拶し、ふと鍛冶屋リックのことを思い出した。リックは村で腕の良い鍛冶師として知られているが、実は何か秘密があるらしいという噂を聞いたことがある。

「そういえば、リックさんが村の守護者たちに特別な武具を作っていたって話を聞いたことがあるな……。よし、ちょっと鍛冶屋に行って話を聞いてみよう！」

「ぷにっ！」「ふわっ！」「もこっ！」「もふっ！」「ぽよん！」

五匹の仲間たちはそれぞれに元気よく応え、ヨウと一緒に村の鍛冶屋へ向かうことにした。ふわりは空を飛びながら前方を確認し、ぷには跳ねながらヨウの足元を守り、ムームーはのんびりと草を食みながら後をついてきている。シャボンは空中をふわふわと漂い、ヨウの肩にちょこんと乗ったもふと一緒に辺りを見渡していた。

鍛冶屋に到着すると、リックは巨大なハンマーを手に、黙々と炉の前で作業をしていた。鍛冶場には熱気が立ちこめ、金属が打たれる音がリズミカルに響いている。リックがこちらに気づき、汗をぬぐいながらヨウに向かってにこりと笑った。

「おお、ヨウじゃないか！今日はどうしたんだ？」

「リックさん、実は少しお話を聞きたくて……村の守護者たちに特別な武具を作ったことがあるって聞いたんですけど、それって本当ですか？」

ヨウがそう尋ねると、リックの表情が少しだけ変わり、真剣な面持ちで頷いた。

「ああ、確かに。俺が昔、村を守るために作った武具がある。その武具には、古代の魔力を宿した素材が使われていて、特別な力を持っているんだ」

リックはそう言って、鍛冶場の奥から小さな木箱を取り出し、ヨウの前に置いた。木箱の中には、銀色に輝く美しいペンダントが入っており、その中心には青い宝石がはめ込まれていた。宝石は、どこかルミナスクリスタルに似た淡い光を放っている。

「これが、『星の守り』と呼ばれるペンダントだ。この村に古くから伝わる素材で作られていて、持ち主に魔力の加護を与える力がある」

ヨウはそのペンダントに手を伸ばし、静かに触れてみた。冷たくも優しい感触が指先に伝わり、ペンダントからは微かに安らぎを感じる。

「リックさん、これ……もしよければ、俺に貸してもらえませんか？星の夜が近づいているって長老から聞いて、何かあった時のために備えておきたいんです」

ヨウの真剣な表情にリックは少し考え込んだが、やがてうなずいた。

「分かった。このペンダントをお前に預けよう。だが、その代わりに一つお願いがある。俺のところに特別な鉱石『スターメタル』を持ってきてほしいんだ」

「スターメタル？それはどこで手に入るんですか？」

リックは説明を続けた。

「スターメタルは、星の力を宿した非常に貴重な鉱石で、この村の近くにある『銀の洞窟』でしか採れない。ただし、洞窟は今や魔物たちが住みついているらしく、簡単には手に入らないんだ」

ヨウはリックの話を聞いて頷き、洞窟へ向かう決意を固めた。星の夜に向けて準備を整えるためには、この鉱石が必要だと感じたからだ。

「分かりました、リックさん！スターメタルを持ってきます！」

ヨウは仲間たちと一緒に、銀の洞窟を目指して村の北へ向かった。銀の洞窟はかつて鉱山として栄えた場所で、内部は暗く、ひんやりとした空気が漂っている。道中、ヨウは四匹とシャボンに声をかけ、洞窟の中での協力を頼んだ。

「みんな、スターメタルを見つけるために協力してくれよ。シャボン、お前も初めての冒険だけど、頼りにしてるからな！」

「ぽよん！」

シャボンは元気よく応え、ヨウの周りを楽しそうに飛び回った。他の四匹も気合いを入れたようにそれぞれの鳴き声を上げ、洞窟の暗闇に向けて心を奮い立たせている。

洞窟に入ると、辺りは薄暗く、わずかな光が岩壁に反射して鈍い輝きを放っている。ヨウは懐中ランプを取り出し、周囲を照らしながら慎重に進んでいった。ふわりは風を起こして道を確認し、ぷには跳ねて足元を照らしてくれる。ムームーは慎重に歩を進め、もふもヨウの肩で周囲を見渡している。

しばらく進むと、奥から低くうなり声が聞こえてきた。どうやら魔物が出現したようだ。

「みんな、気をつけて！敵が出てきたぞ！」

ヨウが身構えると、岩陰から「シャドウゴブリン」と呼ばれる小柄で暗い色をした魔物が数体現れた。ゴブリンたちはヨウたちに向かって威嚇するように唸り声を上げ、こちらにじりじりと近づいてくる。

「よし、行くぞ！ぷに、まずはお前からだ！」

「ぷにっ！」

ぷにはヨウの指示に応え、体を硬化させてゴブリンたちの目の前に飛び込み、攻撃を受け止める防御役を担った。続いてふわりが「風のダンス」を使ってゴブリンたちの足元を攪乱し、ムームーが体当たりで突進し、もふがヨウの肩から魔物の動きを観察してアドバイスを送っている。

シャボンは初めての戦闘だったが、勇敢に「ぽよん！」と音を立て、体をふわりと膨らませてゴブリンの視界を塞ぐように浮かんで攻撃を妨害した。

「よし、みんなの協力で倒せるぞ！最後は僕が！」

ヨウは戦闘の隙を見つけ、ゴブリンたちに向かって剣を振りかざした。仲間たちの援護もあって、シャドウゴブリンを無事に退けることに成功した。

戦闘が終わり、ヨウは洞窟の奥へと進み、ついに目当ての「スターメタル」を見つけた。青白く輝く鉱石が岩壁に埋め込まれており、淡い光を放ちながら静かに佇んでいる。

「これがスターメタル……なんて綺麗なんだ」

ヨウは慎重に鉱石を採取し、インベントリにしまった。星の夜の予言に備えるために、少しずつ力を蓄えている感覚が湧き上がり、胸が熱くなる。

「みんな、本当にありがとう！このスターメタルで、きっと村を守る武具が作れるはずだ」

「ぷにっ！」「ふわっ！」「もこっ！」「もふっ！」「ぽよん！」

仲間たちはそれぞれ嬉しそうに応え、ヨウと共に洞窟を後にした。

鍛冶屋に戻り、ヨウはリックにスターメタルを渡した。リックはそれを受け取り、しっかりとした手つきで加工を始めると、数日後には特別な装備が完成することを約束した。

「ヨウ、この装備が完成したら、お前の力になることは間違いない。星の夜に備えて、しっかりと準備をしておけよ」

ヨウはリックの言葉に頷き、仲間たちと共に一歩ずつ未来に向かって進んでいる実感を噛み締めた。そして、星の夜に向けた準備が着々と進んでいることに、頼もしさと緊張感が胸を駆け巡る。

その夜、ヨウは牧場で満天の星空を見上げながら、仲間たちと一緒に未来への思いを馳せていた。星々が静かに瞬く夜空の下で、ヨウと仲間たちの絆は一層深まり、星の夜に向けて少しずつ心が強くなっていくのを感じていた。