テイマーのんびり生活！スライムと始めるVRMMOスローライフ

第1章：スローライフの始まり

第1話 ぷにとの出会い

「さて、今日からこのゲームを始めますか」

藤原陽平――ゲーム内では「ヨウ」と名乗る24歳のフリーターは、最新のVRMMORPG『エターナルガーデンオンライン』（通称EGO）のヘッドセットを装着し、ベッドに寝転んだ。現実では特に目立つ仕事もなく、淡々とした日常を送っているが、この世界でこそ自分だけののんびりした生活が待っている、と密かに期待していた。

キャラクター作成完了！

システム音と共に、目の前に広がる草原が浮かび上がった。青空が広がり、緑豊かなフィールドがどこまでも続いている。まるで現実の自然の中にいるような、爽やかな風が頬をかすめる。

「すげえ……ほんとに、これゲームなのか？」

陽平は思わず声を漏らした。今までやってきたゲームとはまるで次元が違う臨場感。目の前には、牧歌的な雰囲気が漂うグリーンリーフ村が見えていた。村の周囲には畑や家々が立ち並び、NPCたちが忙しそうに動き回っている。

「よし、まずは村を見て回るか」

ゆっくりと歩き出したヨウは、村の入り口にある広場へ向かった。ここが初めての拠点になるということで、少し緊張しながらもどこか楽しみな気持ちが溢れてくる。ログインしたばかりのプレイヤーも何人かいて、それぞれ村を散策しているようだ。

広場にはNPCの店がいくつか並んでおり、野菜やパン、雑貨を売る小さな露店が目立つ。NPCたちはプレイヤーに親しげに声をかけ、村の生活について教えてくれている。

「こんにちは、冒険者さん。新しくこの村に来たんですね？」

声をかけてきたのは、広場の一角に立っていたNPCの女性。彼女の名前はリリー、この村で長年、農作物を育てている農家だという。リリーは笑顔で話しかけ、村の施設や基本的なクエストについて説明してくれた。

「この村では、畑を借りて自分の野菜を育てたり、モンスターをテイムして共に生活するのが一般的なんです。戦闘に疲れたら、ここでのんびり過ごすのもいいですよ」

「へえ、そうなんですね。僕もそういうのがやりたくて来たんですよ」

リリーの話に興味を惹かれたヨウは、まずは畑を借りて野菜を育てることにした。村の片隅には、プレイヤー用に用意された小さな畑があり、ここでのスローライフをスタートできる。

「何か分からないことがあれば、いつでも声をかけてくださいね」

そう言ってリリーは微笑み、農作業の基本的なコツを教えてくれた。畑に種を撒き、水を与え、育つのを待つというごくシンプルな作業だが、これが後々の生活を豊かにする基本になるという。

「まずは畑の準備か……よし、やってみるか」

ヨウは借りた畑の前に立ち、手始めにリリーからもらった「キャベツの種」を地面に撒くことにした。種を手に持つと、画面に簡単な操作ガイドが表示され、ヨウはそれに従って丁寧に種を撒いていった。小さなシャベルで土を掘り、そこに種を落としてから軽く土をかける。

「次は水やり……か。あれ、井戸はどこだ？」

辺りを見回すと、村の中央にある井戸が目に入った。木製のバケツを使って水を汲み、畑に戻って作物に水を撒いていく。バケツから流れる水のしずくが土に染み込んでいく様子を見ていると、なんだか現実の農作業をしているような感覚に陥る。

「これが意外と楽しいもんだな……」

そんな中、畑の隅で小さな音がした。

「……ん？あれはなんだ？」

ヨウは音のした方向に目を向けると、草むらの中で何かがぴょんぴょんと跳ねているのが見えた。近づいてみると、それは小さな青いスライムだった。ぷよぷよとした体でのんびりと動き回るその姿は、まるで子犬のような愛らしさを持っている。

「おお、スライムか。こいつ、テイムできるのかな……」

ゲーム内の「テイム」システムを思い出したヨウは、そっと手を伸ばしてスライムに接触し、テイムスキルを発動した。テイムにはモンスターとの相性やアイテムが必要だが、スライムは比較的簡単に仲間にできるモンスターだと事前に聞いていた。

「テイム成功！」という表示が画面に浮かび上がり、スライムがヨウの前でぴょこんと小さく跳ねた。

「やった！俺の初めての仲間か」

ヨウは嬉しさのあまり声を上げた。手元に「スライム（名前未設定）」という画面が表示され、名前を付けるように促される。

「んー、名前か……そうだな。ぷにぷにしてるし、ぷにでいいかな」

こうして、スライムの「ぷに」との共同生活がスタートした。ぷには小さくて柔らかい体で、ヨウの足元をちょこちょこと追いかけてくる。どこか頼りなさそうだが、その愛嬌のある姿がたまらなく可愛い。

「ぷに、これからよろしくな」

「ぷにっ！」

ぷにはヨウの呼びかけに反応して、小さく跳ねて見せる。ヨウはそんなぷにを撫でながら、初めてのモンスターとの触れ合いを楽しんだ。

その日の夜、ヨウは村の宿屋で一息ついていた。この世界の一日はリアルタイムで進行するため、夕方になると村の灯りがともり、NPCたちも仕事を終えて家に帰っていく。ゲームとはいえ、そのリアルな日常の雰囲気にすっかり心を奪われていた。

「さて、今日はまず畑の準備とぷにのテイム。上出来かな」

テーブルには、村の料理屋で買ったシンプルなパンとスープが並んでいる。ゲーム内で食べる料理もまたリアルで、味わいこそ感じないが、視覚的にも十分に楽しめる。

「次は、牧場でも作ろうかな……ぷにが仲間になったし、他にもモンスターを増やしてみたい」

ヨウは、明日の計画を考えながら、スローライフの始まりに胸を躍らせていた。グリーンリーフ村での生活は、まだ始まったばかりだ。これから少しずつ、仲間を増やし、モンスターと共にのんびりとした日々を過ごしていくのだろう。

「これからが楽しみだな、ぷに」

「ぷにっ！」

陽平の言葉に反応するように、ぷには再び小さく跳ねて答えた。