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第7章:未来への学びと絆
第224話「都市をつなぐ魔力の流れ」
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翌朝。王都アルヴェインの空はどこまでも晴れ渡り、春の柔らかな風が研究塔の窓を揺らしていた。
エルヴィンたちは朝早くから集まり、昨日の発見をもとに、転写装置の具体的な応用について議論を始めていた。
「……で、この《魔力転写装置》だけど、やっぱり僕たちの魔力供給システムと組み合わせることで、さらに大きなことができるはずなんだ。」
机の上に広げた図面を指しながら、エルヴィンが語気を強める。
「これまでは、供給源から各装置に魔力を“分ける”だけだった。でも、転写ができるなら、特定の魔道装置の動作パターンを“別の場所”に再現できる。つまり、遠隔制御だ。」
「それってつまり……王都の端からでも、もう一方の端にある装置を動かせるってことですの?」
カトリーヌが目を丸くしながら問いかける。
「うん、極端に言えばね。もちろん魔力転写には制限があるけど、正確にパターンを写せれば、魔道具を“鏡写し”みたいに操作することができる。」
「それ、すごいですね……!」
リヴィアがノートに走らせていたペンを止め、少し顔を上げる。
「でも……遠隔で操作するって、魔力量も必要ですよね? あと、転写がずれると誤作動とか起きませんか?」
「その通りだよ。だからこそ“同調核”の安定化が必要なんだ。」
エルヴィンは昨日、旧賢者研究棟で見た中枢部の図を思い浮かべながら、説明を続ける。
「転写装置の中心にある“同調核”は、魔力そのものを模倣するだけじゃなく、“魔力の意図”――つまり、動作の性質まで読み取るための部品なんだ。」
「へぇ……なんか魔道具っていうより、“魔力の言葉を聞く耳”みてぇな感じだな。」
レオンが顎に手を当てて言った。
「うん、例えるならそんな感じ。まさに“耳”だね。」
エルヴィンは微笑みながら頷き、手元のスケッチに“魔力転写システム(仮)”と書き加える。
「でね、この仕組みを使えば、都市全体の魔力を制御するだけじゃなく、例えば――」
彼は広げた王都の地図を指さす。
「商業区で使ってる魔道冷却装置の動作を、遠くの工房で再現できる。住宅街での夜間照明の調整を、農地にも適用できる。もっと言えば、災害時の非常用魔道具の作動を中央から一括制御できるんだ。」
「つまり、今までは“供給”だけだったのが、これからは“連携”になるってわけか。」
レオンが地図の上を指でなぞりながら言う。
「ええ、都市そのものが、一つの生きた魔道具のようになる……まさに夢のような構想ですわね。」
カトリーヌが目を細めながら呟いた。
「でも、現状では転写装置の安定性が未知数です。昨日の装置も長年眠っていたものですし、再現には試験が必要です。」
リヴィアが静かに冷静な判断を挟む。
「もちろん。だからこそ、最初は限定されたエリアでテストを重ねて、制御系統を一つずつ確立していく必要があるね。」
エルヴィンは図面に小さく“第一区画テスト区域”と書き込み、赤い丸で囲んだ。
「王都の東側、研究塔近くのエリアから始めて、徐々に拡張していく。そのための“転写中継ポイント”も必要だ。」
「その中継ポイントって、前の農地の中継装置みたいなもんか?」
「うん、基本構造は似てる。でも今度のは“情報の転写”も含むから、魔道文字の構成はもっと複雑になるはず。」
「げぇ、またアレか。あのちっちゃい文字を延々と書くやつ……」
レオンが顔をしかめて大袈裟にのけぞると、カトリーヌが肩をすくめながら苦笑する。
「まあまあ、文句は設計が終わってからにしてくださいな。」
「おふ……そう来るか。」
「私たちが現地の地形を測定しておきますわ。適切な設置場所を見つけるのも大切ですし。」
「私も、過去に王都で使われていた中央魔力制御網の資料を調べてみます。古文書の中に、同調核の応用例があるかもしれません。」
リヴィアも静かに資料をまとめ始める。
それぞれが動き出す中、エルヴィンはひとり、研究塔の窓の外――王都の東に広がる街並みを見つめていた。
人の暮らしが、すべて魔力でつながる未来。
それはまだ、絵空事に思えるかもしれない。
けれど――確かに手は届きつつある。
「……よし、やろう。都市をつなぐ“魔力の流れ”を、僕たちで。」
そう呟いたエルヴィンの声に、誰かが小さく返事をする。
「おう、もちろんだ。オレたちの手で、王都をもっとすげぇ街にしてやろうぜ!」
レオンが笑い、カトリーヌも軽やかにうなずく。
「ええ、どこまでも参りますわ、エルヴィン様。」
「準備は整っています。」
静かに微笑むリヴィアの声が、朝の光の中に溶けていった。
エルヴィンたちは朝早くから集まり、昨日の発見をもとに、転写装置の具体的な応用について議論を始めていた。
「……で、この《魔力転写装置》だけど、やっぱり僕たちの魔力供給システムと組み合わせることで、さらに大きなことができるはずなんだ。」
机の上に広げた図面を指しながら、エルヴィンが語気を強める。
「これまでは、供給源から各装置に魔力を“分ける”だけだった。でも、転写ができるなら、特定の魔道装置の動作パターンを“別の場所”に再現できる。つまり、遠隔制御だ。」
「それってつまり……王都の端からでも、もう一方の端にある装置を動かせるってことですの?」
カトリーヌが目を丸くしながら問いかける。
「うん、極端に言えばね。もちろん魔力転写には制限があるけど、正確にパターンを写せれば、魔道具を“鏡写し”みたいに操作することができる。」
「それ、すごいですね……!」
リヴィアがノートに走らせていたペンを止め、少し顔を上げる。
「でも……遠隔で操作するって、魔力量も必要ですよね? あと、転写がずれると誤作動とか起きませんか?」
「その通りだよ。だからこそ“同調核”の安定化が必要なんだ。」
エルヴィンは昨日、旧賢者研究棟で見た中枢部の図を思い浮かべながら、説明を続ける。
「転写装置の中心にある“同調核”は、魔力そのものを模倣するだけじゃなく、“魔力の意図”――つまり、動作の性質まで読み取るための部品なんだ。」
「へぇ……なんか魔道具っていうより、“魔力の言葉を聞く耳”みてぇな感じだな。」
レオンが顎に手を当てて言った。
「うん、例えるならそんな感じ。まさに“耳”だね。」
エルヴィンは微笑みながら頷き、手元のスケッチに“魔力転写システム(仮)”と書き加える。
「でね、この仕組みを使えば、都市全体の魔力を制御するだけじゃなく、例えば――」
彼は広げた王都の地図を指さす。
「商業区で使ってる魔道冷却装置の動作を、遠くの工房で再現できる。住宅街での夜間照明の調整を、農地にも適用できる。もっと言えば、災害時の非常用魔道具の作動を中央から一括制御できるんだ。」
「つまり、今までは“供給”だけだったのが、これからは“連携”になるってわけか。」
レオンが地図の上を指でなぞりながら言う。
「ええ、都市そのものが、一つの生きた魔道具のようになる……まさに夢のような構想ですわね。」
カトリーヌが目を細めながら呟いた。
「でも、現状では転写装置の安定性が未知数です。昨日の装置も長年眠っていたものですし、再現には試験が必要です。」
リヴィアが静かに冷静な判断を挟む。
「もちろん。だからこそ、最初は限定されたエリアでテストを重ねて、制御系統を一つずつ確立していく必要があるね。」
エルヴィンは図面に小さく“第一区画テスト区域”と書き込み、赤い丸で囲んだ。
「王都の東側、研究塔近くのエリアから始めて、徐々に拡張していく。そのための“転写中継ポイント”も必要だ。」
「その中継ポイントって、前の農地の中継装置みたいなもんか?」
「うん、基本構造は似てる。でも今度のは“情報の転写”も含むから、魔道文字の構成はもっと複雑になるはず。」
「げぇ、またアレか。あのちっちゃい文字を延々と書くやつ……」
レオンが顔をしかめて大袈裟にのけぞると、カトリーヌが肩をすくめながら苦笑する。
「まあまあ、文句は設計が終わってからにしてくださいな。」
「おふ……そう来るか。」
「私たちが現地の地形を測定しておきますわ。適切な設置場所を見つけるのも大切ですし。」
「私も、過去に王都で使われていた中央魔力制御網の資料を調べてみます。古文書の中に、同調核の応用例があるかもしれません。」
リヴィアも静かに資料をまとめ始める。
それぞれが動き出す中、エルヴィンはひとり、研究塔の窓の外――王都の東に広がる街並みを見つめていた。
人の暮らしが、すべて魔力でつながる未来。
それはまだ、絵空事に思えるかもしれない。
けれど――確かに手は届きつつある。
「……よし、やろう。都市をつなぐ“魔力の流れ”を、僕たちで。」
そう呟いたエルヴィンの声に、誰かが小さく返事をする。
「おう、もちろんだ。オレたちの手で、王都をもっとすげぇ街にしてやろうぜ!」
レオンが笑い、カトリーヌも軽やかにうなずく。
「ええ、どこまでも参りますわ、エルヴィン様。」
「準備は整っています。」
静かに微笑むリヴィアの声が、朝の光の中に溶けていった。
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