辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第210話「周波数調整の難関！理想のバランスを探せ」

王都アルヴェイン東部農地――。
朝日が畑を照らし、魔力供給システムの試験運用が続けられていた。

「エルヴィン、今の設定で試してみるぞ！」
レオンが調整したセンサーのスイッチを入れると、スプリンクラーが静かに動き出した。

――ゴォォォ……

一定のリズムで魔力が供給され、スプリンクラーが畑に向かって魔力を噴霧する。

「今度こそ……！」
エルヴィンは測定器を握りしめ、魔力の流れを確認する。

しかし――

――バチッ！

「うわっ！？ またかよ！」
レオンがとっさに飛び退く。

スプリンクラーのひとつが突然停止し、その周囲に設置されていた魔道ランプが一斉に点滅し始めた。

「……また魔力干渉か。」
エルヴィンはため息をつき、測定器の数値を確認した。

「今度は何が起こったのですの？」
カトリーヌが冷静に尋ねる。

「スプリンクラーの魔力周波数を調整したことで、今度は近くの魔道具の魔力の流れを狂わせちゃったみたいだ。」
エルヴィンは魔力測定器を確認しながら説明する。

「たしかに……ここの魔道ランプ、点滅が不規則になっていますね。」
リヴィアがランプの光を見つめながら、慎重に言った。

「魔道具同士の干渉って、こんなに面倒なもんだったのかよ。」
レオンがため息をつく。

「住宅街や商業区では、基本的に魔道具の種類が限られているからね。でも、農地は環境ごとに違う魔道具が使われてるから、干渉のパターンが複雑になってるんだ。」
エルヴィンは頭をかきながら、考え込む。

「では、どうすればよいのでしょう？」
リヴィアが静かに尋ねる。

エルヴィンは少し考えたあと、あるアイデアを口にした。

「……魔力の優先順位を設定してみようか。」

「優先順位？」
カトリーヌが興味深そうに問い返す。

「うん。魔道文字に『どの魔道具を最優先で動作させるか』っていう指示を組み込めば、干渉を抑えられるかもしれない。」
エルヴィンは試作の魔道文字を描きながら説明する。

「たとえば、スプリンクラーが動くときに周囲の魔道具が一斉に魔力を引き込むと、供給のバランスが崩れる。でも、魔道文字で優先順位を設定すれば、スプリンクラーが必要な魔力を確保した後に、ほかの魔道具へ魔力が流れるようになるんだ。」

「なるほどね。まずは農作業に必要な魔道具を最優先に動かし、その次に環境を整える装置、最後に補助的な設備を動かすようにするわけか。」
レオンが理解した様子で頷く。

「その通り！ 具体的には――」
エルヴィンは紙に魔道文字の設定を描きながら説明を続けた。

「まず第一に、水やりや肥料散布など、作物の成長に直接関わる魔道具が最優先で魔力を受け取る。」
「次に、土壌の温度管理や風除け結界など、作物の環境を整える魔道具へ魔力を供給する。」
「最後に、農場内の照明や、作業用の補助装置などに魔力が送られる。」

「この順番なら、一番大事な農作業が滞ることはなくなるはずだよ。」

「なるほど……理にかなっていますわね。」
カトリーヌが納得したように頷く。

「でも、調整が難しそうですわね。」
カトリーヌが慎重に指摘する。
「スプリンクラーに魔力を集中させすぎたら、今度は他の魔道具が動かなくなるのではなくて？」

「だよなぁ……。夜の照明が消えたりしたら、作業ができなくなるかもしれねぇし。」
レオンが眉をひそめる。

「うん。だから、優先度のバランスをうまく調整しないといけない。」
エルヴィンは真剣な表情で言った。

「では、さっそく試してみましょう。」
リヴィアが静かに言う。

「よし、やるぞ！」
エルヴィンは気合を入れ、魔道文字の修正に取りかかった。

◇

数時間後――

「さあ、これでどうだ！」
エルヴィンがスイッチを押すと、スプリンクラーが静かに動き出した。

――ゴォォォ……

今度は、他の魔道具に影響を与えることなく、スムーズに魔力が供給されている。

「おおっ、うまくいったんじゃねぇか？」
レオンが目を輝かせる。

「ええ、魔道ランプも安定していますわね。」
カトリーヌが魔力測定器を確認しながら頷く。

「魔力の流れに乱れはありません。優先順位の設定がうまく機能しているようです。」
リヴィアが穏やかに微笑む。

エルヴィンは大きく息を吐き、頷いた。

「これで、魔力の干渉問題は解決できたはず……！」

「いやー、さすがエルヴィン！ こういうの考えさせたら天才だな！」
レオンが親指を立てる。

「ふふっ、さすがですわね。」
カトリーヌも満足げに微笑んだ。

「みんなのおかげだよ。」
エルヴィンは照れくさそうに笑いながら、仲間たちの顔を見渡す。

こうして、農地における魔道具の干渉問題は解決し、魔力供給システムはさらに安定性を増していった。

だが、新たな課題が待ち受けていることを、エルヴィンたちはまだ知らなかった――。