辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第205話「試作機の設計と新たな試練」

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 王都アルヴェイン東部農地――。
 バルタザールの許可を得たエルヴィンたちは、農地の魔力供給を自動で調整する「簡易制御盤」の試作機を作るため、農場の作業小屋を借りて設計作業を進めていた。

「さて、試作機の設計を本格的に進めるよ。」
 エルヴィンは持ち込んだ設計図を広げながら言う。
「リヴィアの提案した『自動調整機能』も組み込んで、農場の状況に応じて適切な魔力供給ができるようにしたい。」

「とはいえ、自動調整って具体的にどうするんだ?」
 レオンが椅子に座りながら腕を組む。
「単純に魔力の流れを増やすとか減らすだけじゃ、作物の種類とか気候の変化には対応できねぇだろ?」

「その通りです。」
 リヴィアは静かに頷きながら、手元のノートにサラサラとペンを走らせた。
「私が考えているのは、土壌の水分量や気温、さらには作物の成長段階を感知できるセンサーを制御盤に組み込むことです。」

「なるほど……気温が高い日は水分の蒸発が早いから、スプリンクラーの魔力供給を増やし、逆に雨の日は抑える……といった感じですわね。」
 カトリーヌが整理するように頷く。

「そういうこと! それに、作物によって必要な魔力の量も違うから、その辺も調整できるようにしたいね。」
 エルヴィンがワクワクした表情でスケッチを描き加える。

「けど、そんなに高性能なセンサー、簡単に作れるのか?」
 レオンが眉をひそめる。
「俺たち、研究者じゃなくて冒険者寄りの魔道工学チームだろ?」

「確かに、複雑なものを作ろうとすると時間がかかりますわね。」
 カトリーヌも考え込む。

「だから、まずは最低限の機能を持たせた簡易型から作るのがいいと思うんだ。」
 エルヴィンはスケッチを指さしながら続ける。
「土壌の水分量だけを測定して、自動でスプリンクラーの魔力量を調整するシンプルなものなら、比較的すぐに作れるはず。」

「それなら現実的ですわね。」
 カトリーヌがメモを取りながら微笑む。

「よし、それじゃあさっそく部品を組み立てよう!」
 エルヴィンは腕まくりをし、試作機の制作に取り掛かった。

***

 それから数時間後――。

 作業小屋の中では、エルヴィンたちがそれぞれの役割を分担しながら試作機を作り上げていた。

「レオンくん、そっちの回路はどう?」
 エルヴィンが声をかけると、レオンは小さな魔道工具を使いながら、慎重に配線を調整していた。

「おう、今つなぎ終わったところだ。けどよ、これって本当にこんな単純な回路でいいのか?」

「うん。あくまで試作機だからね。まずは最低限の動作を確認して、それから徐々に改良していけばいいよ。」

「そういうもんか……ま、あんたが言うなら信じるぜ!」
 レオンはケーブルをまとめながら、大きく伸びをした。

 一方、カトリーヌとリヴィアは、センサー部分の魔道回路の調整を行っていた。

「この水分センサー、魔力の流れが不安定ですわね。」
 カトリーヌが小さく眉をひそめる。
「エルヴィン様、魔力伝導体の素材を変更した方がいいかもしれませんわ。」

「うーん、確かに少し誤差が出てるね。」
 エルヴィンは計測器を覗き込みながら考える。
「もしかすると、銅製の伝導体よりも魔力を通しやすい銀系の合金を使った方がいいかもしれない。」

「それなら、研究所にあるストックを使えます。」
 リヴィアが手を挙げる。
「持ってきますね。」

「ありがとう、リヴィア!」

 こうして、みんなで試行錯誤しながら試作機の完成へと近づいていった――。

***

 夕方――。

 ついに、簡易制御盤の試作機が完成した。

「よし……ついにできた!」
 エルヴィンは装置を見つめながら、満足げに頷く。

「長かったな……もう夕飯の時間じゃねぇか。」
 レオンが空腹を訴えるようにお腹をさすりながらぼやく。

「ですが、その分、手応えのある試作機になりましたわね。」
 カトリーヌは微笑みながら、完成した装置を眺めた。

「エルヴィン様、さっそく試験運用を行いましょう。」
 リヴィアが真剣な表情で言う。

「そうだね。まずは実際に動かしてみて、改善点を探そう!」
 エルヴィンたちは試作機を持って農地へと向かい、設置作業を始めた。

 試作機の設置が完了し、ついに動作テストが始まった。

「それじゃあ……スイッチ、オン!」

 エルヴィンが操作盤のレバーを引くと、魔力が流れ始め、スプリンクラーがゆっくりと動き出す。
 センサーが土壌の水分を測定し、魔力の流量を調整する――はずだった。

 しかし――

「……ん? なんかおかしくねぇか?」
 レオンが畑の様子を見て首を傾げた。

 スプリンクラーの一部がうまく作動せず、特定のエリアだけ水が出ていなかったのだ。

「ええっ!? なんで!?」
 エルヴィンが慌てて装置を確認する。

「魔力の流れに偏りがあるみたいです。」
 リヴィアが測定器を覗きながら言う。
「一部のセンサーが適切に作動していません。」

「くっ……まだ調整が甘かったか。」
 エルヴィンはすぐに装置を開き、原因を探り始める。

「でも、少なくとも一部のスプリンクラーは動いてるんだろ?」
 レオンが励ますように言う。
「つまり、まったくの失敗じゃねぇってことだ!」

「ええ、確かに。部分的には成功していますわ。」
 カトリーヌも微笑む。
「後は、原因を突き止めて修正すればいいだけですわね。」

「……そうだね!」
 エルヴィンは気持ちを切り替え、修正作業に取り掛かった。

 こうして、簡易制御盤の試作機は一歩ずつ改良を重ねながら、農場での本格運用に向けて進化していくのだった――。
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