辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第189話「再び王宮へ！魔力供給システムの未来」

祝宴の余韻が残る翌朝――。

王都アルヴェインの朝は、爽やかな陽光と賑やかな市場の声で始まる。カレドリア学院の寮もまた、学生たちの活気に包まれていた。しかし、エルヴィンたちは昨夜の祝賀会で満腹になりすぎたせいか、少し寝坊気味だった。

「……ふぁぁ、まだちょっと食べすぎた気がするな……。」
レオンが大きく伸びをしながら、椅子にぐったりと寄りかかる。

「まったく、レオン様は昨夜どれだけ食べたのですか？」
カトリーヌが呆れたように微笑む。

「いや、だってあんな美味い料理、なかなか食えねぇしさ！」

「私も、少し食べすぎたかもしれません……。」
リヴィアが控えめに呟くと、エルヴィンは苦笑した。

「でも、昨日は本当に楽しかったね。研究の成功を、こうしてみんなで祝えたことが嬉しいよ。」

「ええ、私もそう思いますわ。」
カトリーヌが優雅に頷く。

そんな和やかな空気の中――学院の寮の扉をコツコツと叩く音が響いた。

「ん？ こんな朝早くに誰だ？」
レオンが首を傾げる。

エルヴィンが立ち上がり、扉を開けると、そこには王宮付きの文官が立っていた。

「シュトラウス様、王宮より正式な招待状をお持ちしました。」

そう言って、彼はエルヴィンへと一通の封書を差し出した。

「王宮からの招待状……？」
エルヴィンは驚きながら、それを受け取る。

封には王国の紋章――黄金の双剣と白い鳩が刻まれていた。

「なんだか、すごく厳かな雰囲気の招待状ですわね……。」
カトリーヌが封書を覗き込みながら言った。

「俺たち、何かやらかしたか？」
レオンが冗談めかして言うが、リヴィアは慎重に分析する。

「たぶん、魔力供給システムの件ではないでしょうか。王宮が正式に研究を認めたとなれば、私たちの技術に興味を持っているはずです。」

「確かに……。でも、王宮から招かれるのは二回目だね。」
エルヴィンが封書を眺めながら呟く。

「ええ、最初はアルカディアの件で呼ばれましたわね。」
カトリーヌが思い出すように微笑む。

「そういや、あの時も緊張したなぁ……。まさかまた王宮で説明することになるとは思わなかったぜ。」
レオンが腕を組んで言う。

エルヴィンは慎重に封を切り、中の文書を広げた。

◆ 王宮からの正式な通達 ◆
王立魔道研究所の研究班 エルヴィン・シュトラウス殿 ならびに関係者各位

カレドリア王国王宮より、貴殿らの研究成果を正式に認可し、王宮にて技術報告会を行うことを決定しました。
つきましては、以下の日程にて王宮へご参集願います。

日時：〇〇日午前十時
場所：カレドリア王宮 大広間
目的：魔力供給システムの技術報告および今後の活用方針についての協議

カレドリア王国 宮廷技術顧問
マクシミリアン・フォン・ヴェルトナー

「……やっぱり、魔力供給システムのことか。」
エルヴィンは封書を読み終え、考え込む。

「つまり、俺たちが王宮で研究の説明をするってことか？」
レオンが難しい顔をする。

「ええ、技術報告会ということは、王宮の人々に対して私たちの研究を正式に説明し、今後の展開について話し合う場になりますわね。」
カトリーヌが冷静に分析した。

「しかも、ヴェルトナー伯直々の招待……これは重要な機会ですね。」
リヴィアが真剣な表情で頷く。

エルヴィンは少しだけ息を吐き、皆を見渡した。

「……これは、僕たちにとって大きなチャンスだ。」

「チャンス？」

「うん。今までは研究所や学院の中で試験をしていたけど、これからは本当に王国全体でこの技術が使われるかどうかが決まる。だから、王宮での説明は、僕たちの研究がどれだけ実用的で、どんな未来を作るのかを伝える場になるんだよ。」

「なるほど……たしかに、ここでうまく話せれば、俺たちの技術がもっと広がるかもしれねぇな。」
レオンが納得したように腕を組む。

「でも、その分、慎重に準備しなければなりませんわね。王宮には重要な方々もいらっしゃいますし、適当な説明では済まされませんわ。」
カトリーヌが指摘する。

「ええ。特に王宮の貴族や官僚たちは、軍事や経済の観点からも研究を見てくるはずです。」
リヴィアも静かに付け加える。

エルヴィンは小さく頷きながら、すぐに次の行動を決めた。

「じゃあ、早速準備を始めよう。王宮での説明用の資料を作らないと。」

「おっしゃ、俺は装置の調整を手伝うぜ！」
レオンが意気込む。

「私は、プレゼンテーションの流れを整理しますわ。」
カトリーヌがノートを開く。

「私もデータの整理を進めますね。」
リヴィアが静かに書類をまとめ始める。

エルヴィンは、仲間たちがすぐに動き出すのを見て、心の中で感謝した。

（みんながいるからこそ、ここまで来られたんだ。）

数日後――。

エルヴィンたちは、王宮へと向かうために準備を整えた。

「エルヴィン様、服装は大丈夫ですか？」
カトリーヌが念入りに身だしなみを確認する。

「うん、バッチリ。」
エルヴィンは、学院の正式な制服に身を包んでいた。

「なんだか緊張してきたな……。」
リヴィアが小さく呟くと、レオンが笑いながら背中を軽く叩いた。

「大丈夫だって！ いつも通りやればいいんだよ！」

「……はい。」
リヴィアも少し緊張しながら頷いた。

馬車に乗り込むと、王都の景色が次第に変わっていく。

そして、視界の先に見えたのは――カレドリア王宮。

「よし……行こう！」

エルヴィンたちは、再び王宮へと足を踏み入れる――！