辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第168話「進むべき道、見えてきた光」

夜が明け、朝日が実験棟の窓から差し込む頃には、エルヴィンたちは新たな改良案をもとに動き出していた。昨夜の疲労を感じさせることなく、皆がそれぞれの作業に集中している。

「今回の問題は、分岐のタイミングに関する調整不足だと思う。回路の調整だけじゃなく、制御機構そのものを見直す必要があるね。」

エルヴィンが黒板に書き込んだ新しい設計図を指差して説明する。そこには、回路の分岐点ごとに制御弁を配置し、各弁が独立して魔力を制御できる構造が描かれていた。

「制御機構を独立させるってのは、確かに理にかなってるな。でも、それだと複雑になりすぎて動作が安定しなくなるんじゃないか？」 
レオンが腕を組みながら疑問を投げかける。

「それを防ぐために、魔力伝導性を持つ特級合金『ルミナス・クロム』を使うんだ。」 
エルヴィンは新たな部品を指し示しながら続けた。

「この合金は魔力の流れを滑らかにしてくれるから、回路の複雑さによる負担を大幅に軽減できる。昨日の実験でも証明されたよ。」

リヴィアがエルヴィンの説明を補足するように頷く。 
「『ルミナス・クロム』の特性を活かせば、魔力の流れが安定し、分岐のズレも最小限に抑えられると思います。」

「なるほどな……つまり、この部分を中心にして全体を組み立て直すわけか。」
レオンが理解した様子で設計図を見直した。

「ええ。今回はさらに細かい調整が必要ですわね。でも、完成すれば、今まで以上に高効率な装置になるはずですわ。」 
カトリーヌが資料を整理しながら微笑む。

「それじゃあ、早速部品を準備しよう！」 
エルヴィンが声を弾ませると、チーム全員が動き出した。

レオンとカトリーヌは資材庫へ向かい、必要な金属パーツや結晶を集めてきた。リヴィアは実験室で魔力結晶の状態を再チェックし、エルヴィンは新たな回路設計の最終調整を進める。

「これで必要な材料は揃ったな！」
レオンが部品の入った箱をテーブルに置くと、カトリーヌが確認のために一つ一つ点検を始めた。

「ええ、数も問題ありませんわ。それでは、さっそく作業を始めましょう。」 
カトリーヌが頷きながら工具を手に取る。

「リヴィア、結晶の配置はお願いしてもいい？」
エルヴィンが声をかけると、リヴィアは「はい」と控えめに返事をしながら、魔力結晶の微調整を始めた。

昼過ぎには、全ての部品が組み上がり、新しい装置が完成していた。これまでの試作品よりもさらにコンパクトで、制御機構が独立して配置されたデザインだ。

「よし、これで準備完了だ。いよいよテストを始めるよ。」 
エルヴィンが装置の前に立ち、スイッチを押す準備を整える。

「頼むぜ、今度こそうまくいってくれよな！」 
レオンが拳を握りながら装置を見つめる。

「エルヴィン様、結晶の調整は完璧です。」 
リヴィアが控えめに報告し、エルヴィンに安心感を与える。

「それでは、スイッチを入れますわ。」 
カトリーヌが冷静に声をかけ、全員が緊張した面持ちで装置を見守る。

エルヴィンがスイッチを押すと、装置が静かに振動を始め、内部の魔力回路が滑らかに光を放つ。魔力がスムーズに分岐し、三方向の出力が同時に点灯する。

「動いてる……しかも、安定してる！」 
エルヴィンが驚きと喜びの入り混じった声を上げた。

「おおっ！ついに成功か！？」 
レオンが目を輝かせる。

「まだ初期段階ですわ。もう少し動作を観察してから結論を出しましょう。」 
カトリーヌが慎重な姿勢を見せるが、その顔にも微笑みが浮かんでいる。

10分、20分と時間が経過しても装置は安定して動作を続けていた。ついに1時間が経過した時、エルヴィンが笑顔で言った。

「間違いない、成功だよ！これなら実用化に向けてさらに進められる！」

「よっしゃ！やっぱ俺たちのチームは最高だな！」 
レオンが拳を突き上げると、全員が笑顔で頷いた。

「エルヴィン様の設計が素晴らしかったおかげです。」 
リヴィアが控えめに言うと、カトリーヌも頷いた。 
「ええ、本当に見事な成果ですわ。これなら学院の発表会でも高い評価を受けるに違いありませんわね。」

エルヴィンは仲間たちを見渡し、感謝の気持ちを込めて笑顔を浮かべた。

「みんなのおかげでここまで来られたよ。本当にありがとう。でも、これがゴールじゃない。ここからが本当のスタートだ！」