辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

文字の大きさ
上 下
119 / 179
第7章:未来への学びと絆

第164話「モデルの拡張と新たな壁」

しおりを挟む
翌日、エルヴィンたちは完成した小型モデルをもとに、次のステップとしてシステムの規模を拡張する作業に取り掛かった。学院の施設内にある広めの実験室を借り、より大きな魔力供給モデルを構築する準備を進めていた。

「昨日のモデルを少しずつ拡張していけばいいけど、接続部分の安定性が鍵になるね。」
エルヴィンが黒板に新たな設計図を描きながら説明する。

「でもさ、この規模になると、結晶の数も必要な部品も倍以上になるんだろ?結構な手間だな。」
レオンが腕を組んで設計図を見上げながら言う。

「その通りですわ。だからこそ、最初にしっかりと計画を立てておかないと、途中で手戻りが発生する可能性があります。」
カトリーヌが資料を手に冷静に補足する。

「確かに……。一度組み立ててから間違いに気づくのは避けたいですね。」
リヴィアが控えめに言いながら、設計図の細部を確認していた。

「だからこそ、今日は各部品の役割と配置をきちんと確認するところから始めよう。まずは結晶の配置と回路の分岐点の見直しだ。」
エルヴィンが仲間たちに目を向けて指示を出した。

新たなモデルの規模拡大に伴い、大量の資材が必要だったため、エルヴィンたちは学院の資材庫へ向かった。だが、資材の一部はすでに他の研究で使われており、十分な数が揃っていないことが判明した。

「おいおい、これじゃあ全然足りねえじゃねえか。」
レオンが棚を確認しながらぼやく。

「困りましたわね……。どうしますの、エルヴィン様?」
カトリーヌが不安げに尋ねる。

エルヴィンは一瞬考え込んだが、すぐに笑みを浮かべた。
「大丈夫。足りない分は、学院の他の部署に相談してみよう。必要な部材が余っているところがあるかもしれない。」

「なるほど、交渉するわけだな。」
レオンがニヤリと笑う。

「交渉ごとなら、私たちで協力しますわ。」
カトリーヌが自信を持って答え、リヴィアも小さく頷いた。

その結果、エルヴィンたちは学院の魔法実験部門や工学部門を回り、必要な資材を一部ずつ集めていくことに成功した。

資材が揃った後、エルヴィンたちは実験室に戻り、大型モデルの構築を開始した。回路の基盤となる板を敷き、エルヴィンが黒板に描いた新設計図をもとに、それぞれのパーツを組み立てていく。

「この回路、少しでもズレると全体に影響が出るから気をつけてね。」
エルヴィンが慎重に指示を出す。

「お前の言う通りにやってるから大丈夫だって!」
レオンが工具を手に笑いながら答える。

リヴィアは、配置する魔力結晶の安定性を一つ一つ確認し、補強魔法を施していく。
「エルヴィン様、この部分の結晶ですが、安定性が少し低いです……補強を重ねたほうが良いかもしれません。」

「ありがとう、リヴィア。それなら、補強魔法を強化してみよう。念には念を入れておこう。」
エルヴィンが笑顔で答える。

カトリーヌは、全体の進行状況を記録しながら、進行中の課題を整理していた。
「次の段階に進む前に、もう一度回路全体を見直したほうがよろしいですわね。特に分岐点の接続部分。」

「確かに……それが安定してないと、すぐに問題が出る。」
エルヴィンが頷き、全員で再確認作業に入った。

夕方、ようやく拡張モデルが完成し、最初の動作テストを行う時が来た。エルヴィンがスイッチを入れると、回路を流れる魔力が結晶を通じて輝き始めた。

「順調そうだな……。」
レオンがランプの光を見つめながら呟く。

しかし、数分後、一部の回路で魔力の流れが滞り、ランプがチカチカと点滅し始めた。
「ここ、魔力の流れが詰まってる……。」
エルヴィンが不具合の箇所を指摘する。

「もしかして、結晶の配置が密すぎるのでは?」
カトリーヌが設計図を見直しながら提案する。

「確かに、それが原因かも。結晶の間隔を少し広げて、魔力の流れをスムーズにしよう。」
エルヴィンはすぐに調整に取り掛かった。

リヴィアも追加の補強魔法を施し、結晶が安定するように手を加えた。その結果、再びスイッチを入れると、ランプが均一な光を放つようになった。

「やったな!これで次のステップに進める!」
レオンが笑顔で拳を突き上げる。

「でも、これで完璧というわけではありませんわ。全体の安定性をもっと高める必要があります。」
カトリーヌが冷静に指摘する。

「うん。でも、最初の段階としてはいい成果だよ。みんな、本当にありがとう!」
エルヴィンが仲間たちに感謝を伝えると、リヴィアは控えめに微笑み、カトリーヌも満足げに頷いた。

その夜、エルヴィンたちは研究室で今日の成果をまとめながら、次の課題について話し合った。

「これをさらに大きなシステムにするには、接続部分のさらなる改良と、全体の魔力バランスをどう取るかが重要だね。」
エルヴィンがノートにメモを取りながら言う。

「そのあたりは、次回のテストで細かく調整していけばいいだろう。」
レオンが自信ありげに答える。

「ええ、ですが……これからの課題は、今まで以上に難しいものになるはずですわ。」
カトリーヌが真剣な表情で言うと、リヴィアも頷いた。

「でも……皆さんと一緒なら、きっと乗り越えられると思います。」
リヴィアが控えめに微笑む。

エルヴィンはそんな仲間たちを見渡し、静かに決意を固めた。
「そうだね。僕たちなら必ずできる。次も一歩ずつ進んでいこう!」

こうして、彼らの研究はさらに大きな挑戦へと進んでいく――未来の王国を変える技術を目指して。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。