辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第152話「新たな壁と仲間たちの絆」

翌朝、エルヴィンたちは改良型装置の次なる課題に取り組むため、実験室に集合していた。前日の成功に湧いた空気は一旦落ち着き、目の前にある新たな問題へと向けられていた。

「次は、魔力の安定性をさらに高める仕組みを追加しないといけない。特に長時間使用する場合に、魔力がどこかで滞る可能性があるんだ。」
エルヴィンが黒板に書き足した設計図を指しながら説明する。

「滞るってことは、回路のどこかが詰まるってことだよな？」
レオンが腕を組みながら尋ねる。

「その通り。特定の部分で魔力が集中しすぎると、結果的に全体の効率が下がるし、最悪の場合は暴走する可能性もある。」
エルヴィンが真剣な表情で答えると、レオンは顔をしかめて苦笑いを浮かべた。
「それは困るな……爆発なんてしたら俺たちが吹き飛ぶぞ。」

「そうならないために、安定化装置を組み込む必要があるんですわ。」
カトリーヌが冷静に設計図を見ながら提案する。
「ですが、それにはさらに精密な部品が必要になりますわね。」

「その通りだ。でも、学院の資材庫にある部品で十分対応できるはずだよ。問題は、安定化装置と魔力分岐システムをどう組み合わせるかだね。」
エルヴィンが考え込みながら言う。

「……それなら、まず小規模な試作品を作ってみるのはどうでしょう？」
リヴィアが控えめに提案した。

「それはいいアイデアだ！小さいものから試せば、問題点も見つけやすくなる。」
エルヴィンが目を輝かせてリヴィアの方を見た。

「おっ、珍しくリヴィアが積極的じゃないか！」
レオンがからかうように言うと、リヴィアは顔を赤らめながら俯いた。
「そ、そんなことは……ただ、少しでもお役に立ちたいだけです……。」

「レオン様、リヴィア様をからかわないでくださいませ。」
カトリーヌがピシャリと言うと、レオンは肩をすくめて笑った。
「悪かったよ、悪かった！」

その日の午後、エルヴィンたちはリヴィアの提案に従い、小型の試作品を組み立てていた。手際よく作業を進めていく中、エルヴィンが調整した装置を台の上に設置する。

「よし、これで準備完了だね。さっそく動かしてみよう。」
エルヴィンが装置のスイッチを入れると、装置内部の魔法陣が青く輝き始めた。

最初は順調に動作しているように見えたが、次の瞬間――。

「……あれ？」
リヴィアが小さく声を漏らす。

装置の一部から白い煙が立ち上り、魔法陣が不安定に明滅を繰り返す。すぐにエルヴィンがスイッチを切り、全員が駆け寄った。

「魔力の流れが途中で乱れたみたいだ。どこかの接続部分に問題があるんだろうな。」
エルヴィンが装置を調べながら言う。

「これだけ精密な回路だと、どこでミスが起きたのか探るのも一苦労だな。」
レオンがため息をつきながら工具を手にする。

「確かに難しいですが、この部分……接続部分の結晶にわずかな歪みがありますわね。」
カトリーヌが指摘すると、エルヴィンが顕微鏡で確認する。

「本当だ。リヴィア、結晶の調整をもう一度お願いできる？」
エルヴィンが頼むと、リヴィアは頷いて新しい結晶の調整を始めた。

作業が中断した間、レオンが工具をいじりながら口を開く。
「なあ、エルヴィン。お前、本当にすごいよな。俺だったらこんな複雑な設計、頭がこんがらがっちまうぜ。」

「そんなことないよ。みんなが協力してくれるから、ここまで来られたんだ。」
エルヴィンは微笑みながら答える。

「それでもさ、お前がこのグループの中心なのは間違いない。正直、俺は魔道具の仕組みとかよく分からないけど、お前が指示を出してくれるから安心して動けるんだよ。」
レオンが少し照れくさそうに言う。

「レオン様、そういうことを正直に言えるところがあなたの良いところですわね。」
カトリーヌが微笑みながら茶化すと、レオンは慌てて話題を変えようとした。
「お、おい！からかうなよ！」

そのやり取りを聞いていたリヴィアが、小さく微笑みながら完成した結晶を持ってきた。
「エルヴィン様、調整が終わりました……これなら大丈夫だと思います。」

「ありがとう、リヴィア。さっそく取り付けてみよう！」
エルヴィンが再び装置に結晶を組み込み、慎重に調整を加えた。

数時間後、再び装置のスイッチが入れられた。今度は、魔力の流れがスムーズに回路を通り、全体が均等に輝き始める。

「やった！これで問題は解決だ！」
エルヴィンが喜びの声を上げると、全員が拍手で応えた。

「ふぅ、やっと一歩前進だな。」
レオンが肩を回しながら笑う。

「でも、まだこれで完成ではありませんわ。次は装置全体の耐久性を試す必要がありますわね。」
カトリーヌが冷静に言うと、リヴィアも小さく頷いた。
「はい……長時間の使用テストが重要です。」

「そうだね。だけど、今日はここまでにしよう。みんな、本当にありがとう！」
エルヴィンが感謝の言葉を口にすると、仲間たちは笑顔で頷いた。

エルヴィンたちの挑戦は続く。失敗と成功を繰り返しながら、彼らは確実に新たな技術の完成に近づいていた――。