辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第7章:未来への学びと絆

第151話「試行錯誤の連続」

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新たな目標を掲げたエルヴィンたちは、さらに研究に熱を入れた。学院内の実験棟では、朝早くから夜遅くまで魔道具の設計図や試作品と向き合う日々が続いていた。

エルヴィンは黒板に新たな回路図を描きながら、仲間たちに話しかける。
「次のステップは、魔力の供給効率をさらに高めることだ。この部分の回路に改良を加えれば、全体の消費を抑えられるはずだよ。」

「でも、それって具体的にどうやるんだ?」
レオンが腕を組みながら首をかしげる。

「魔力の流れを調整する新しい素材を使えば可能性があるわ。例えば、魔力を反射しない『透過結晶』を配置することで、ロスを減らす方法が考えられますわね。」
カトリーヌが設計図を指差しながら提案する。

「その結晶って、学院の資材庫にあったかな……?」
リヴィアが不安そうに問いかけると、エルヴィンはノートをめくりながら答える。
「確か、実験用の小さいものなら見た覚えがある。でも、大きなサイズが必要なら発注しないといけないかも。」

「よし、まずは資材庫を確認してみようぜ。なかったら、俺が発注の手続きしてくる!」
レオンがやる気満々に拳を握る。

「ありがとうございます、レオン様。でも、手続きはカトリーヌ様にお任せした方が早いかもしれませんわね。」
リヴィアが控えめに提案すると、カトリーヌが優雅に微笑む。
「それでは、私が手続きしてまいりますわ。レオン様、一緒に行きましょう。」

「おいおい、俺だってちゃんとやれるぞ!」
レオンは不満げに言いながらも、結局カトリーヌに従う形で資材調達へ向かった。

その日の午後、エルヴィンとリヴィアは実験室で新しい試作品を組み立てていた。透過結晶の代用品を使った簡易版で、魔力効率を確認するための初期テストだ。

「リヴィア、この部分の結晶の角度、もう少し調整できるかな?」
エルヴィンが指差しながら尋ねる。

「はい、少しお待ちください……。」
リヴィアは慎重に工具を使い、結晶の配置を微調整した。

「よし、これで動かしてみよう。」
エルヴィンが装置のスイッチを押すと、結晶を通った魔力が回路を流れ始める。

しかし、次の瞬間――。
「ピシッ」という嫌な音とともに、装置が停止してしまった。

「失敗……?」
リヴィアが不安げにエルヴィンを見上げる。

「うーん、多分、結晶の角度と魔力の流れがぶつかり合ってしまったんだと思う。もう少し柔軟な素材が必要かもしれないね。」
エルヴィンは冷静に原因を分析し、ノートにメモを取り始めた。

「やっぱり、透過結晶そのものを使わないと限界があるのかもしれませんね……。」
リヴィアが肩を落とすと、エルヴィンは優しく微笑んで励ました。
「大丈夫だよ、リヴィア。失敗は成功への第一歩だ。これで改良点が分かったから、次に進める。」

その時、ドアが開いてレオンとカトリーヌが戻ってきた。
「透過結晶、なんとか資材庫にあったぜ!大きいのはなかったけど、小さいのをいくつか持ってきた。」
レオンが誇らしげに袋を掲げる。

「お疲れさまでした、レオン様。持ち帰ってくださって助かりますわ。」
カトリーヌが少し得意そうに微笑む。

「いやいや、こいつを見つけたのはカトリーヌだって!俺は運び役だよ。」
レオンが笑いながら言うと、カトリーヌは軽く咳払いをして正した。
「もちろん、レオン様にもご協力いただきましたわ。」

「では、さっそくこれを試してみましょう。」
リヴィアが結晶を受け取り、慎重に手元で確認し始めた。

「これなら次の試作ができるね!」
エルヴィンは目を輝かせながら新しい結晶を手に取り、再び組み立てを始めた。

透過結晶を使った改良版が完成し、いよいよテストが始まった。エルヴィンがスイッチを押すと、結晶を通じて魔力がスムーズに流れ始める。今度は、どこにも無駄のない輝きが装置全体を包み込んだ。

「動いた……!完璧だ!」
エルヴィンが声を上げると、全員が喜びの表情を浮かべた。

「やったな、エルヴィン!これなら本番でもうまくいくじゃないか?」
レオンが嬉しそうに装置を見つめる。

「ええ、とても素晴らしい結果ですわね。」
カトリーヌが満足げに頷く。

「私も……少しでも役に立ててよかったです。」
リヴィアが控えめに微笑む。

「みんなのおかげだよ。これで次の段階に進める!」
エルヴィンは仲間たちに感謝しながら、さらに改良を進める決意を新たにした。

その夜、エルヴィンは実験室に一人残り、次の設計に取り掛かっていた。
「もっと効率を上げる方法があるはずだ……。」

机の上には無数のメモや設計図が広がり、エルヴィンの頭の中には新たなアイデアが次々と浮かんでいた。

「これを完成させれば、学院だけじゃなく、王国全体の役に立てる……。」

彼の目には、未来への期待と使命感が宿っていた――。
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