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第6章:帝国の陰謀と赤き核
第134話「帝国の影――不気味な施設」
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シェリル峡谷を抜けたエルヴィンたちは、遠くに見える建物を目指して進んでいた。それは山肌に張り付くように建てられた、黒く無機質な巨大施設。瓦礫と鉄骨がむき出しになったその姿は、不気味な威圧感を放っていた。
「……あれが帝国の施設か?」
ガルドが険しい顔でつぶやく。
「間違いないだろうな。」
ゼッド中尉が頷く。
「以前から情報があった『レッドクレスト研究施設』だ。だが、ここまで厳重に隠されているとはな。」
施設の周囲には、高い鉄柵と警備兵の姿が確認できた。特に入口付近は重装備の兵士が何重にも警戒態勢を敷いている。
「相手の守りは相当固いな。」
ユリウスが双眼鏡を覗きながら言う。
「正面突破は無理だ。」
「正面突破したいわけじゃねえよ。これだけ人数が多いと、どっかに隙があるはずだろ。」
ガルドが鼻息荒く斧を肩に担ぎ直す。
ゼッド中尉が冷静に策を練るように、施設の周囲を観察した。
「奴らの警備が厚いのは入口だけだ。裏手に回り込めば、隙が見つかるかもしれん。」
「それが一番現実的ですね。でも、警備の目をどうやってかいくぐるんですか?」
エルヴィンが眉をひそめる。
「気づかれずに動くには、まずこちらが陽動を仕掛ける必要がある。」
ゼッド中尉は少し考えてから部下たちに命令を下した。
「隊を二手に分ける。俺たちは裏手に回り込み、隙を探す。その間、別の部隊が正面付近で奴らをかき乱してくれ。」
兵士たちが頷き、手際よく指示に従い始める。
計画が決まり、エルヴィンたちはゼッド中尉の指示に従い、施設の裏手に向かって移動を開始した。山の起伏を利用して、警備の目を避けるように進む。
「なあ、エルヴィン。」
ガルドが振り返って小声で話しかけてきた。
「お前、あの施設の中にどんな仕掛けがあるか、なんとなく想像できてるか?」
エルヴィンは少し考えてから答えた。
「多分、あの中には自律型魔道核を中心にした何かがある。帝国があそこまで守りを固めてるんだから、ただの研究施設じゃないはずだよ。」
「ふーん。じゃあ、また厄介な罠が待ってるってわけだな。」
ガルドが苦笑いを浮かべる。
「覚悟はしておいたほうがいいな。」
ユリウスが静かに付け加える。
「それでも進むしかないよ。あそこを止めないと、王国が危険に晒されるんだから。」
エルヴィンは強い口調で言い切った。
ガルドとユリウスは顔を見合わせた後、ガルドがにやりと笑う。
「ったくよ、エルヴィン。お前がただの子供じゃねえのは分かってるさ。でも、そんなガキに覚悟決められちまったら、俺らがヘタれたら格好つかねえだろ?よっしゃ、やるしかねえな。」
「ガルドにしてはまともなこと言うじゃないか。」
ユリウスが皮肉っぽく言うと、ガルドは肩をすくめて答える。
「そりゃあな。こいつが頭を絞って作った装置だ。俺たちが信じなくて誰が信じるんだよ。」
エルヴィンは少し照れくさそうに笑ったが、その目には感謝の光が宿っていた。
施設の裏手に到着したエルヴィンたちは、警戒しながら周囲を確認した。そこには、正面ほどの警備は見られなかったものの、小規模な警備隊が見張りについている。
「どうする、中尉?」
ガルドが小声で尋ねる。
ゼッド中尉は一瞬考えた後、低く答えた。
「静かに片付けるぞ。騒ぎを起こせば、正面の陽動が無意味になる。」
「了解。」
ユリウスが短く返事をし、剣を構える。
ゼッド中尉の合図で、調査隊は一斉に行動を開始した。ガルドが斧で見張りの兵士を無音で倒し、ユリウスが迅速な剣捌きで他の兵士たちを次々と仕留めていく。
「よし、クリアだ。」
ガルドが斧を振り下ろした後、小声で報告した。
「急ぐぞ。この静寂がいつまで保つかわからん。」
ゼッド中尉が部隊を促し、エルヴィンたちは施設の裏口に接近する。
施設の裏口は思ったよりも簡単に開けることができた。警備が薄い理由はすぐに明らかになった。中に入ると、異様な空気が漂っていた。
「……何だ、この感覚。」
エルヴィンが眉をひそめる。施設内部は冷たく、魔力の不穏な波動が感じられる。
「この魔力、施設全体に広がっているようだな。」
ユリウスが壁に手を当てながらつぶやいた。
「たぶん、自律型魔道核がこの施設全体を制御してるんだろう。」
「気を抜くなよ。敵の罠があちこちに仕掛けられているかもしれん。」
ゼッド中尉が警戒を呼びかける。
エルヴィンはバッグから装置を取り出しながら答えた。
「施設の構造を探るためにも、この装置を使ってみます。魔力の流れを検知できるはずです。」
装置が稼働し、赤い光が施設内部の魔力の流れを映し出す。その結果、施設の奥深くに一箇所だけ、異常に強い魔力が集まっていることがわかった。
「ここですね……たぶん、あそこが自律型魔道核のある場所です。」
エルヴィンが指し示すと、ゼッド中尉が頷いた。
「わかった。だが、そこにたどり着くまでにどんな仕掛けが待っているかわからんぞ。全員、最大限の警戒を保て。」
「了解。」
ガルドとユリウスが即答する。
エルヴィンは装置を手にしっかりと握り、深呼吸をした。
「……ここまで来たら、絶対に成功させるしかない。」
ガルドが彼の肩を軽く叩いた。
「お前ならやれるさ、エルヴィン。俺たちがついてるから、心配すんな。」
「そうだ。お前が考えた装置なんだ。俺たちも信じてる。」
ユリウスが静かに微笑む。
ゼッド中尉も振り返り、短く言った。
「お前をここまで守った以上、最後まで守り抜く。安心して仕事をしろ。」
エルヴィンは力強く頷いた。
「ありがとうございます。僕も、絶対に皆さんを裏切りません。」
施設の奥へと進むエルヴィンたち。そこで彼らを待ち受けているのは、帝国の最終防衛――そして、自律型魔道核の正体だった。
「……あれが帝国の施設か?」
ガルドが険しい顔でつぶやく。
「間違いないだろうな。」
ゼッド中尉が頷く。
「以前から情報があった『レッドクレスト研究施設』だ。だが、ここまで厳重に隠されているとはな。」
施設の周囲には、高い鉄柵と警備兵の姿が確認できた。特に入口付近は重装備の兵士が何重にも警戒態勢を敷いている。
「相手の守りは相当固いな。」
ユリウスが双眼鏡を覗きながら言う。
「正面突破は無理だ。」
「正面突破したいわけじゃねえよ。これだけ人数が多いと、どっかに隙があるはずだろ。」
ガルドが鼻息荒く斧を肩に担ぎ直す。
ゼッド中尉が冷静に策を練るように、施設の周囲を観察した。
「奴らの警備が厚いのは入口だけだ。裏手に回り込めば、隙が見つかるかもしれん。」
「それが一番現実的ですね。でも、警備の目をどうやってかいくぐるんですか?」
エルヴィンが眉をひそめる。
「気づかれずに動くには、まずこちらが陽動を仕掛ける必要がある。」
ゼッド中尉は少し考えてから部下たちに命令を下した。
「隊を二手に分ける。俺たちは裏手に回り込み、隙を探す。その間、別の部隊が正面付近で奴らをかき乱してくれ。」
兵士たちが頷き、手際よく指示に従い始める。
計画が決まり、エルヴィンたちはゼッド中尉の指示に従い、施設の裏手に向かって移動を開始した。山の起伏を利用して、警備の目を避けるように進む。
「なあ、エルヴィン。」
ガルドが振り返って小声で話しかけてきた。
「お前、あの施設の中にどんな仕掛けがあるか、なんとなく想像できてるか?」
エルヴィンは少し考えてから答えた。
「多分、あの中には自律型魔道核を中心にした何かがある。帝国があそこまで守りを固めてるんだから、ただの研究施設じゃないはずだよ。」
「ふーん。じゃあ、また厄介な罠が待ってるってわけだな。」
ガルドが苦笑いを浮かべる。
「覚悟はしておいたほうがいいな。」
ユリウスが静かに付け加える。
「それでも進むしかないよ。あそこを止めないと、王国が危険に晒されるんだから。」
エルヴィンは強い口調で言い切った。
ガルドとユリウスは顔を見合わせた後、ガルドがにやりと笑う。
「ったくよ、エルヴィン。お前がただの子供じゃねえのは分かってるさ。でも、そんなガキに覚悟決められちまったら、俺らがヘタれたら格好つかねえだろ?よっしゃ、やるしかねえな。」
「ガルドにしてはまともなこと言うじゃないか。」
ユリウスが皮肉っぽく言うと、ガルドは肩をすくめて答える。
「そりゃあな。こいつが頭を絞って作った装置だ。俺たちが信じなくて誰が信じるんだよ。」
エルヴィンは少し照れくさそうに笑ったが、その目には感謝の光が宿っていた。
施設の裏手に到着したエルヴィンたちは、警戒しながら周囲を確認した。そこには、正面ほどの警備は見られなかったものの、小規模な警備隊が見張りについている。
「どうする、中尉?」
ガルドが小声で尋ねる。
ゼッド中尉は一瞬考えた後、低く答えた。
「静かに片付けるぞ。騒ぎを起こせば、正面の陽動が無意味になる。」
「了解。」
ユリウスが短く返事をし、剣を構える。
ゼッド中尉の合図で、調査隊は一斉に行動を開始した。ガルドが斧で見張りの兵士を無音で倒し、ユリウスが迅速な剣捌きで他の兵士たちを次々と仕留めていく。
「よし、クリアだ。」
ガルドが斧を振り下ろした後、小声で報告した。
「急ぐぞ。この静寂がいつまで保つかわからん。」
ゼッド中尉が部隊を促し、エルヴィンたちは施設の裏口に接近する。
施設の裏口は思ったよりも簡単に開けることができた。警備が薄い理由はすぐに明らかになった。中に入ると、異様な空気が漂っていた。
「……何だ、この感覚。」
エルヴィンが眉をひそめる。施設内部は冷たく、魔力の不穏な波動が感じられる。
「この魔力、施設全体に広がっているようだな。」
ユリウスが壁に手を当てながらつぶやいた。
「たぶん、自律型魔道核がこの施設全体を制御してるんだろう。」
「気を抜くなよ。敵の罠があちこちに仕掛けられているかもしれん。」
ゼッド中尉が警戒を呼びかける。
エルヴィンはバッグから装置を取り出しながら答えた。
「施設の構造を探るためにも、この装置を使ってみます。魔力の流れを検知できるはずです。」
装置が稼働し、赤い光が施設内部の魔力の流れを映し出す。その結果、施設の奥深くに一箇所だけ、異常に強い魔力が集まっていることがわかった。
「ここですね……たぶん、あそこが自律型魔道核のある場所です。」
エルヴィンが指し示すと、ゼッド中尉が頷いた。
「わかった。だが、そこにたどり着くまでにどんな仕掛けが待っているかわからんぞ。全員、最大限の警戒を保て。」
「了解。」
ガルドとユリウスが即答する。
エルヴィンは装置を手にしっかりと握り、深呼吸をした。
「……ここまで来たら、絶対に成功させるしかない。」
ガルドが彼の肩を軽く叩いた。
「お前ならやれるさ、エルヴィン。俺たちがついてるから、心配すんな。」
「そうだ。お前が考えた装置なんだ。俺たちも信じてる。」
ユリウスが静かに微笑む。
ゼッド中尉も振り返り、短く言った。
「お前をここまで守った以上、最後まで守り抜く。安心して仕事をしろ。」
エルヴィンは力強く頷いた。
「ありがとうございます。僕も、絶対に皆さんを裏切りません。」
施設の奥へと進むエルヴィンたち。そこで彼らを待ち受けているのは、帝国の最終防衛――そして、自律型魔道核の正体だった。
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