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第5章:王宮での試練と更なる発明
第96話「砦に迫る真実――新たなる脅威の足音」
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ドランヴァル砦へと戻る道中、エルヴィンたちは疲労を隠せないでいた。術者との激闘で体力を使い果たしたガルドやユリウスだけでなく、ローレンス中佐や兵士たちも全員が満身創痍だった。だが、遺跡での戦いが終わったことで、一時的な安堵が彼らの表情に浮かんでいる。
エルヴィンは砦が見えてくると深い息を吐き、霧晶石を組み込んだ携帯用魔道具を手の中で見つめた。それは彼らを守る盾として機能したが、限界を超えて酷使したため、内部の魔力回路が完全に焼き切れていた。
「……これも作り直さないといけないな。」
独り言のようにつぶやくエルヴィンの言葉に、ガルドが隣から顔を覗き込む。
「おいおい、お前さん、またそんな顔して考え込むなよ。俺たちの命を救ったんだから、少しくらいは自分を褒めとけっての。」
ガルドが豪快に笑いながら肩を叩く。
「そうだな……ありがとう、ガルド。」
エルヴィンは少し笑って答えるが、心の中には別の不安が渦巻いていた。術者を背後で操っていた存在、そして遺跡が持つ未知の力――これらが明らかになるには、まだ多くの謎を解く必要があった。
一行が砦に戻ると、すぐに会議室に招集された。ローレンス中佐が砦の上層部に今回の戦闘と遺跡での出来事を報告し、術者が言い残した「新たな秩序」についても議論が始まる。
「今回の戦いで明らかになったのは、あの術者が単独で動いていたわけではないということだ。」
ローレンス中佐が厳しい表情で話し始める。
「彼は自らを犠牲にしてでも儀式を完成させようとしていた。その執念から考えても、背後に何者かがいるのは間違いない。」
「しかし、その“何者か”が何を狙っているのか、まだ見えてこない。」
ユリウスが腕を組みながら呟く。
「ただの砦の襲撃が目的じゃないのは明白だ。」
「そうだ。」
エルヴィンが口を開く。
「術者が遺跡を利用して生み出そうとしていた力――それが王国全体を脅かす可能性がある。そして、その力を支配しようとしている存在が、どこかでこの国を見ている。」
会議室内に重い沈黙が流れる。やがて、ローレンス中佐が口を開いた。
「いずれにせよ、この情報を王都に届ける必要がある。王国全体で対策を練らなければならないだろう。」
「僕も同行します。」
エルヴィンがすかさず言った。
「術者が使っていた魔法陣の残骸や装甲片の解析も進めないといけません。それを研究することで、次に彼らが何をしようとしているか分かるかもしれません。」
「頼もしいな。」
ローレンス中佐は感謝の意を込めて頷いた。
その夜、砦はようやく静けさを取り戻していた。兵士たちは戦闘の疲れを癒すために仮眠を取り、エルヴィンも会議が終わった後、自室で次の設計図を描き始めていた。
「もっと効率的に防御と攻撃を切り替えられる装置が必要だ……」
彼は疲れた頭を振り絞りながら、手元の紙に新たな魔道具のアイデアを描き込んでいく。
その時――。
「……妙な気配がする。」
エルヴィンはふと顔を上げた。窓の外、砦の周囲を覆う暗闇の中に微かだが異様な気配を感じ取ったのだ。まるで何者かが砦を監視しているような視線を感じる。
「また魔物か……?」
エルヴィンは立ち上がり、窓から外を覗き込んだ。しかし、そこには何も見えない。ただ、彼の胸に残る不安感は消えなかった。
「ガルドかユリウスに知らせたほうがいいかもしれない……」
エルヴィンが部屋を出ようとした瞬間、砦の鐘が鳴り響いた。
ゴォォン! ゴォォン!
「警報……!?何が起きた!?」
エルヴィンは急いで廊下を駆け出し、鐘の音が響く広場へと向かった。
広場に到着したエルヴィンが目にしたのは、緊張した面持ちのローレンス中佐と武装を整える兵士たちだった。ガルドとユリウスもすでに戦闘態勢を整えている。
「中佐、何があったんですか?」
エルヴィンが息を切らしながら尋ねる。
「砦の北側で不審な動きが確認された。再び魔物の群れが現れた可能性がある。」
ローレンス中佐が険しい表情で答える。
「まだ襲撃が続くのか……!」
エルヴィンは唇を噛んだ。
「ただの魔物じゃないかもしれないぞ。」
ガルドが斧を握りしめながら言う。
「さっき、妙に気持ち悪い影を見た。まるで生き物じゃないみたいな、異様な動きだったな。」
「影……?」
エルヴィンはその言葉に引っかかりを覚えた。
「おい、あれを見ろ!」
ユリウスが指差した先――砦の外に広がる暗闇の中で、確かに何かが蠢いていた。それは人影のようにも見えるが、実態がなく、まるで霧のように漂っている。
「これは……魔物じゃない……!」
エルヴィンは声を震わせながら呟いた。
蠢く影は徐々に砦に向かって近づいてくる。そして、それが砦の壁に触れると、黒い瘴気が広がり、壁の一部が腐食していくのが見えた。
「これはまずい!あの影、直接砦を侵食してる!」
エルヴィンが叫ぶ。
「どうする、エルヴィン!?お前の装置で何とかできるのか!」
ガルドが焦った声で問いかける。
「……やるしかない!」
エルヴィンは魔道具を持ち出し、砦の防衛線に向かって駆け出した。
影が砦を侵食し始める中、エルヴィンは急いで装置を設置し、魔力を充填した。
「これで障壁を展開すれば、影の侵食を防げるはず……!」
彼は汗だくで装置を操作し始めた。その間にも影の動きは速くなり、瘴気が砦の壁をさらに侵食していく。
「時間を稼ぐぞ!兵士たち、影を食い止めろ!」
ローレンス中佐が叫び、兵士たちが次々と武器を振るい、影に向かって攻撃を繰り出す。しかし、物理攻撃はまるで効果がない。
「エルヴィン、急げ!壁が持たねえぞ!」
ガルドが叫ぶ中、ついに装置が作動した。霧晶石を利用した魔力障壁が展開され、影の侵食を一時的に防ぐことに成功する。
「よし、これで少しは持ちこたえられる……!」
エルヴィンは安堵したのも束の間、影の中から巨大な異形が現れた。それは闇の兵士とは異なる、もっと禍々しく巨大な存在だった。
「なんだ……あれは……!」
ユリウスが声を失う。
その異形は低い唸り声を上げながら砦に向かって歩みを進め、障壁に触れると、障壁が一瞬でひび割れを起こした。
「嘘だろ……!?」
エルヴィンは愕然とする。
「エルヴィン、この化け物、どうすりゃいい!」
ガルドが叫ぶ。
「考えろ……!何か手があるはずだ!」
エルヴィンは震える手で新たな魔道具を準備し始めた。
エルヴィンは砦が見えてくると深い息を吐き、霧晶石を組み込んだ携帯用魔道具を手の中で見つめた。それは彼らを守る盾として機能したが、限界を超えて酷使したため、内部の魔力回路が完全に焼き切れていた。
「……これも作り直さないといけないな。」
独り言のようにつぶやくエルヴィンの言葉に、ガルドが隣から顔を覗き込む。
「おいおい、お前さん、またそんな顔して考え込むなよ。俺たちの命を救ったんだから、少しくらいは自分を褒めとけっての。」
ガルドが豪快に笑いながら肩を叩く。
「そうだな……ありがとう、ガルド。」
エルヴィンは少し笑って答えるが、心の中には別の不安が渦巻いていた。術者を背後で操っていた存在、そして遺跡が持つ未知の力――これらが明らかになるには、まだ多くの謎を解く必要があった。
一行が砦に戻ると、すぐに会議室に招集された。ローレンス中佐が砦の上層部に今回の戦闘と遺跡での出来事を報告し、術者が言い残した「新たな秩序」についても議論が始まる。
「今回の戦いで明らかになったのは、あの術者が単独で動いていたわけではないということだ。」
ローレンス中佐が厳しい表情で話し始める。
「彼は自らを犠牲にしてでも儀式を完成させようとしていた。その執念から考えても、背後に何者かがいるのは間違いない。」
「しかし、その“何者か”が何を狙っているのか、まだ見えてこない。」
ユリウスが腕を組みながら呟く。
「ただの砦の襲撃が目的じゃないのは明白だ。」
「そうだ。」
エルヴィンが口を開く。
「術者が遺跡を利用して生み出そうとしていた力――それが王国全体を脅かす可能性がある。そして、その力を支配しようとしている存在が、どこかでこの国を見ている。」
会議室内に重い沈黙が流れる。やがて、ローレンス中佐が口を開いた。
「いずれにせよ、この情報を王都に届ける必要がある。王国全体で対策を練らなければならないだろう。」
「僕も同行します。」
エルヴィンがすかさず言った。
「術者が使っていた魔法陣の残骸や装甲片の解析も進めないといけません。それを研究することで、次に彼らが何をしようとしているか分かるかもしれません。」
「頼もしいな。」
ローレンス中佐は感謝の意を込めて頷いた。
その夜、砦はようやく静けさを取り戻していた。兵士たちは戦闘の疲れを癒すために仮眠を取り、エルヴィンも会議が終わった後、自室で次の設計図を描き始めていた。
「もっと効率的に防御と攻撃を切り替えられる装置が必要だ……」
彼は疲れた頭を振り絞りながら、手元の紙に新たな魔道具のアイデアを描き込んでいく。
その時――。
「……妙な気配がする。」
エルヴィンはふと顔を上げた。窓の外、砦の周囲を覆う暗闇の中に微かだが異様な気配を感じ取ったのだ。まるで何者かが砦を監視しているような視線を感じる。
「また魔物か……?」
エルヴィンは立ち上がり、窓から外を覗き込んだ。しかし、そこには何も見えない。ただ、彼の胸に残る不安感は消えなかった。
「ガルドかユリウスに知らせたほうがいいかもしれない……」
エルヴィンが部屋を出ようとした瞬間、砦の鐘が鳴り響いた。
ゴォォン! ゴォォン!
「警報……!?何が起きた!?」
エルヴィンは急いで廊下を駆け出し、鐘の音が響く広場へと向かった。
広場に到着したエルヴィンが目にしたのは、緊張した面持ちのローレンス中佐と武装を整える兵士たちだった。ガルドとユリウスもすでに戦闘態勢を整えている。
「中佐、何があったんですか?」
エルヴィンが息を切らしながら尋ねる。
「砦の北側で不審な動きが確認された。再び魔物の群れが現れた可能性がある。」
ローレンス中佐が険しい表情で答える。
「まだ襲撃が続くのか……!」
エルヴィンは唇を噛んだ。
「ただの魔物じゃないかもしれないぞ。」
ガルドが斧を握りしめながら言う。
「さっき、妙に気持ち悪い影を見た。まるで生き物じゃないみたいな、異様な動きだったな。」
「影……?」
エルヴィンはその言葉に引っかかりを覚えた。
「おい、あれを見ろ!」
ユリウスが指差した先――砦の外に広がる暗闇の中で、確かに何かが蠢いていた。それは人影のようにも見えるが、実態がなく、まるで霧のように漂っている。
「これは……魔物じゃない……!」
エルヴィンは声を震わせながら呟いた。
蠢く影は徐々に砦に向かって近づいてくる。そして、それが砦の壁に触れると、黒い瘴気が広がり、壁の一部が腐食していくのが見えた。
「これはまずい!あの影、直接砦を侵食してる!」
エルヴィンが叫ぶ。
「どうする、エルヴィン!?お前の装置で何とかできるのか!」
ガルドが焦った声で問いかける。
「……やるしかない!」
エルヴィンは魔道具を持ち出し、砦の防衛線に向かって駆け出した。
影が砦を侵食し始める中、エルヴィンは急いで装置を設置し、魔力を充填した。
「これで障壁を展開すれば、影の侵食を防げるはず……!」
彼は汗だくで装置を操作し始めた。その間にも影の動きは速くなり、瘴気が砦の壁をさらに侵食していく。
「時間を稼ぐぞ!兵士たち、影を食い止めろ!」
ローレンス中佐が叫び、兵士たちが次々と武器を振るい、影に向かって攻撃を繰り出す。しかし、物理攻撃はまるで効果がない。
「エルヴィン、急げ!壁が持たねえぞ!」
ガルドが叫ぶ中、ついに装置が作動した。霧晶石を利用した魔力障壁が展開され、影の侵食を一時的に防ぐことに成功する。
「よし、これで少しは持ちこたえられる……!」
エルヴィンは安堵したのも束の間、影の中から巨大な異形が現れた。それは闇の兵士とは異なる、もっと禍々しく巨大な存在だった。
「なんだ……あれは……!」
ユリウスが声を失う。
その異形は低い唸り声を上げながら砦に向かって歩みを進め、障壁に触れると、障壁が一瞬でひび割れを起こした。
「嘘だろ……!?」
エルヴィンは愕然とする。
「エルヴィン、この化け物、どうすりゃいい!」
ガルドが叫ぶ。
「考えろ……!何か手があるはずだ!」
エルヴィンは震える手で新たな魔道具を準備し始めた。
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