辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第5章：王宮での試練と更なる発明

第89話「王宮からの招集！新たな試練と陰謀」

エルヴィンの発明した新型魔力供給装置は、王都の研究機関や冒険者ギルドで大きな注目を集めていた。それは単なる魔道具ではなく、辺境の村や厳しい環境での生活を劇的に改善する可能性を秘めたものであり、王国全体の発展にも寄与する発明と評価されていた。

そんな中、王立魔道研究所に一本の緊急の伝令が届いた。それは、カレドリア王家からの正式な招集状だった。

エルヴィンは少し緊張した面持ちで王宮の広間に立っていた。その目の前にいるのは、第一王女セシリア・アメリア・カレドリア。彼女は品のある優雅な佇まいでありながら、聡明さと芯の強さを感じさせる人物だった。

「エルヴィン・シュトラウス様、ようこそ王宮へ。まずは、あなたの発明が王都や辺境の村で大変高い評価を得ていることをお伝えさせていただきます。」
セシリア王女は微笑みながら、そう切り出した。

「ありがとうございます。これも、協力してくれた仲間や現地の人々のおかげです。」
エルヴィンは丁寧に頭を下げる。

「謙虚ですね。ですが、今回お呼びしたのは、さらに重要な任務をお願いするためです。」

セシリアの表情が少し厳しくなり、部屋にいる全員の空気が引き締まる。王宮の重臣たちが周囲を固めており、エルヴィンの後ろでは護衛として同行したガルドとユリウスも緊張した様子で控えている。

「……どのような任務でしょうか？」
エルヴィンが静かに尋ねると、セシリアは話を続けた。

「実は、カレドリア王国北部の国境地帯にある『ドランヴァル砦』で問題が発生しています。この砦は国境警備の最前線に位置し、非常に重要な拠点ですが、最近になって魔物の襲撃が頻発しているのです。」

「魔物の襲撃……？」
エルヴィンが眉をひそめる。

「はい。通常の防衛設備では対応が難しく、被害は日に日に増えています。そのため、あなたの新型魔力供給装置を試験的に導入し、防衛力の向上を図りたいと考えています。」

セシリアの言葉に、周囲の重臣たちもうなずく。その中の一人が補足するように話を続けた。

「ドランヴァル砦は極寒の地にあり、魔物たちは夜間を中心に襲撃を仕掛けてきます。エルヴィン殿、あなたの装置が砦の守備隊の助けになるかどうか――王国の未来がかかっています。」

「……僕の装置が？」
エルヴィンは一瞬戸惑ったが、すぐにその目に決意が宿った。

「分かりました。装置の試験運用を行い、可能な限り改善を施します。ただし、それだけでは問題が解決しない可能性もあります。現地での状況を詳しく調査する必要がありますね。」

「ええ。私もその点については同意します。」
セシリアは穏やかに頷き、少し微笑んだ。

「エルヴィン様、あなたの勇気と知恵に感謝します。私も王国の一員として、この事態が解決に向かうことを願っています。」

翌日、エルヴィンたちは装置の試作機を積んだ馬車とともに、ドランヴァル砦へ向かうための旅路についた。今回の旅には、ガルドとユリウスの他に、王宮から派遣された精鋭護衛隊も同行している。

馬車の中、エルヴィンは試作機の設計図を確認しながら、現地での改良の可能性について考え込んでいた。

「おいおい、エルヴィン。お前さん、また考えすぎてる顔になってるぜ。」
ガルドが隣で笑いながら声をかける。

「うん、そうかも。今回の任務は今まで以上に重要だからね……装置がうまく動かなかったらどうしようって、つい考えちゃうんだ。」

「心配すんなよ。お前が失敗するなんて想像つかねえし、万が一失敗したとしても俺たちが何とかするさ。」
ガルドは大げさに胸を叩いて見せた。

「そうだな。お前が倒れたら俺たちの旅は終わりだ。それに、こういう難題を楽しめるのがエルヴィンのいいところだろ？」
ユリウスも軽く肩をすくめて続けた。

二人の言葉にエルヴィンは少し笑みを浮かべた。そして改めて装置に目を向け、深呼吸をする。

「ありがとう、二人とも。砦に着いたら、早速試験を始めよう。」

旅を続けること数日、エルヴィン一行はついにドランヴァル砦へと到着した。その地は噂通りの極寒で、冷たい風が容赦なく吹き荒れていた。砦の外壁は厳しい環境と魔物の襲撃によってところどころ傷つき、守備隊の疲労も目に見えて分かるほどだった。

「ようこそ、シュトラウス様。一行の無事な到着を心から歓迎します。」
砦の指揮官であるローレンス中佐が出迎え、エルヴィンたちを砦の中へ案内した。

「さっそく現地の状況を確認させてください。それと、装置の設置場所についても相談させてもらえればと思います。」
エルヴィンは寒さを気にするそぶりも見せず、まっすぐにローレンスに目を向けた。

「こちらへどうぞ。」
ローレンスが案内したのは砦の広場だった。そこには夜間に魔物の襲撃が集中するという防衛線が設置されている。

「なるほど……この場所に装置を設置すれば、魔力の供給で防壁の耐久力を強化できるはずです。」
エルヴィンが広場を観察しながら提案する。

しかしその時、砦の上空を飛び交う黒い影が一行の視界を横切った。それは鳥のような形をしていたが、異様に大きく、獣じみた唸り声を上げている。

「まさか……魔物の偵察か！」
ローレンスが眉をひそめる。

「これは早速、仕事が増えそうだな……！」
ガルドが斧を握りしめ、険しい表情を浮かべた。

エルヴィンは魔物を見上げながら、再び強い決意を胸に秘めた。この地での試練を乗り越え、装置を完成させることができるのか――。