辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第4章:旅路で紡ぐ魔道具と絆

第82話「霧の洞窟の危機!魔物との遭遇」

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霧の洞窟で、エルヴィンたちは魔力を放つ幻想的な霧晶石を目にし、その特性に心を躍らせていた。しかし、その静かな洞窟に緊張感をもたらす唸り声が響き、薄暗い霧の中から魔物の影が現れる――。素材を無事に持ち帰るため、エルヴィンたちは洞窟で試練に挑むことになる。

「後ろに下がれ!」
護衛隊の隊長が手を上げて警告すると、エルヴィンは咄嗟に霧晶石の採取道具を置き、後方に下がった。ガルドも護衛たちの横に立ち、斧を構える。

「おいおい、本当に出るのかよ……。」
ガルドの声は少し緊張していたが、どこか楽しんでいるようでもあった。

「慎重に進め!敵の位置を確認するぞ!」
隊長がそう指示すると、護衛の一人が持つ松明の光が霧をかき分け、前方の影を照らした。

霧の中から現れたのは、体長2メートルほどの四足歩行の獣――その体は白い毛で覆われ、目は魔力を放つように赤く輝いている。その姿は、エルヴィンが学院で見た魔物図鑑に載っていた「霧狼」と酷似していた。

「霧狼……。この洞窟の霧晶石の魔力を吸収して、こんな場所に潜んでいたのか……。」
エルヴィンは震える声で呟いた。

「やれやれ、厄介な相手だな。霧の中じゃ、動きが読みにくそうだぜ。」
ガルドは肩を回しながら斧を構え直す。

「どうする?逃げるか?」
護衛の一人が提案するが、隊長が即座に否定した。

「ここまで来たからには、素材を確保する!無駄な戦いは避けるが、もし襲ってきたら応戦するぞ!」

エルヴィンは霧狼の動きを見ながら必死に考えた。このまま素材を持ち帰ることだけを考えれば、霧狼を刺激せずに撤退するのが最善だ。しかし、それでは洞窟内の素材を十分に調べることができない。霧晶石の特性を解明するためには、どうしてもこの場所での採取が必要だった。

「エルヴィン様、どうしますか?」
護衛隊の隊長が慎重に尋ねる。

「……時間がかかるかもしれませんが、霧狼を刺激せずに動きを観察しながら作業を続けるしかないです。この霧晶石を持ち帰らなければ、次の装置改良に進めません。」

「無理はするなよ、エルヴィン!」
ガルドが少し苛立った声で言うと、エルヴィンは苦笑しながら頷いた。

「ありがとう、ガルド。でも、僕の役目はここで終わらせるわけにはいかない。」

ガルドは「全くお前ってやつは」と呟きながら、斧を軽く肩に乗せ、霧狼をにらみ続けた。

霧狼は距離を保ちながら、エルヴィンたちの様子を伺っていた。時折、低い唸り声を上げてはゆっくりと歩き回る。どうやら彼らが何をするのか見定めているようだった。

エルヴィンは慎重に道具を手に取り、霧晶石の採取を再開した。石を割らないように注意深く削り、魔力が逃げないよう特製の保存容器に詰めていく。

「急げよ、エルヴィン。あいつ、いつ飛びかかってくるかわからねえぞ。」
ガルドが周囲を警戒しながら言った。

「わかってる。でも、焦ると石を壊してしまう……。」
エルヴィンの手元は驚くほど正確で、冷静さを保ちながら作業を続けていた。

しかし、その時――霧狼が突然低い吠え声を上げ、こちらに向かって数歩近づいてきた。その赤い目が鋭く輝き、牙を剥き出しにして威嚇している。

「くそ、やる気か!」
ガルドが一歩前に出て斧を構えた。

「護衛隊!陣を組め!絶対にシュトラウス様を守るんだ!」
隊長が号令をかけ、護衛たちが盾を構えてエルヴィンの前に立ちはだかった。

霧狼は数秒間静止した後、突然駆け出し、彼らに襲いかかってきた――。

「来るぞ!」
護衛の一人が剣を構え、狼の鋭い爪を受け止める。鋭い金属音が洞窟内に響いた。

「後ろは任せろ!お前は作業を続けろ!」
ガルドが叫びながら、斧を振り上げて狼の動きを封じ込めるように牽制する。

エルヴィンは振り返らず、必死に霧晶石の採取を続けた。心臓が早鐘のように鳴る中、彼の手元は決してブレることはなかった。

ガルドと護衛隊の奮闘の末、霧狼は負傷し、低い唸り声を上げながら再び霧の奥へと姿を消した。

「行ったか……。」
ガルドが斧を肩に乗せながら息を吐く。

「ありがとうございます。皆さんのおかげで、必要な素材はすべて採取できました。」
エルヴィンは容器に収めた霧晶石を見せながら、深々と頭を下げた。

「これで終わりじゃねえぞ、エルヴィン。今度はこの石をどう加工するかが問題だ。」
ガルドがそう言うと、エルヴィンは笑いながら頷いた。

「そうだね。でも、ここで得た知識は必ず次に繋がる。みんな、本当にありがとう。」

村に戻ったエルヴィンたちは、霧晶石を用いた装置改良の可能性について長老や村人たちに感謝を述べた。その夜、エルヴィンは改めて決意を固めた。

(この旅で得た経験は、すべて装置の改良に役立つ。必ず、多くの人々の生活を支える道具を作り上げる――。)

翌朝、エルヴィン一行は次の目的地に向けて再び旅立つ。彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。
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