辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第4章:旅路で紡ぐ魔道具と絆

第79話「現地調査への出発!未知の素材を求めて」

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エルヴィンは、家庭用魔力供給装置を地方へ普及させる計画の一環として、王宮の支援を受け、現地調査の旅に出発することになった。これまで研究所での作業や学院での学びを中心にしていた彼にとって、この旅は未知の地での出会いと発見、そして自分自身のさらなる成長を期待させるものだった。

王立魔道研究所の敷地に、エルヴィンが旅で使う馬車が用意されていた。護衛として同行する兵士たちが荷物を運び込んでいる中、エルヴィンは装置のパーツや測定器、研究ノートなどを改めて確認していた。

「シュトラウス様、これが旅程表です。訪問予定の村や町、それぞれの地域の特徴も記載しております。」
研究員の一人が渡してきた書類をエルヴィンは丁寧に受け取り、目を通した。

「ありがとう。これを参考に、現地の人たちと直接話して装置をどう活用できるか考えてみるよ。」
エルヴィンは感謝の笑みを浮かべて答えた。

そのとき、小走りで現れたのはリヴィアだった。スカートを軽く抑えながら、息を切らして近づいてくる。

「エルヴィン様、お見送りに参りましたわ!」
彼女は微笑みながら手を軽く振った。

「リヴィア、来てくれてありがとう。君にはいつも助けられてばかりだね。」
エルヴィンが少し照れたように言うと、リヴィアは顔を少し赤らめながら答えた。

「いえ、そんな……エルヴィン様の旅が成功することを心からお祈りしています。現地での発見が、きっと装置の改良に繋がるはずですわ。」
リヴィアの言葉に、エルヴィンは頷いてみせた。

続いて現れたのはカトリーヌとレオンだった。

「エルヴィン様、現地でどんな素材や人に出会うのか楽しみですわね。帰ってきたら、ぜひその話を聞かせてください。」
カトリーヌが少し寂しそうにしながらも期待を込めて声をかける。

「エルヴィン、旅の途中で魔物に遭遇しても、あんまり無茶すんなよ。護衛がついてるとはいえ、油断は禁物だ。」
レオンが腕を組んで念押しするように言うと、エルヴィンは苦笑した。

「ありがとう。気をつけるよ。君こそ学院の実技試験で無茶しすぎないようにね。」
その返しに、レオンは「ははっ、俺のことだって分かってんだろ!」と笑い飛ばした。

「みんなも学院生活をしっかり楽しむんだよ。戻ってきたら、それぞれの成果を聞かせてね。」
エルヴィンは仲間たちに手を振りながら馬車に乗り込んだ。

旅の初日は、王都を抜けて穏やかな平原を進むところから始まった。馬車の車輪が規則正しい音を刻み、揺れる車内でエルヴィンは旅程表を広げ、訪れる予定の村々を改めて確認していた。

(地方には、それぞれ独特の自然や文化がある。そうした環境で装置をどう活用できるか考えるのが、今回の旅の目的だ。)

窓の外には広大な草原が広がり、所々に小さな丘や林が点在している。その中をゆっくりと進む馬車の周りには、護衛の兵士たちが馬に乗りながら目を光らせていた。

護衛隊の隊長が馬車の横を並走しながら話しかけてきた。
「シュトラウス様、もう少し進むと小さな宿場町に到着します。そこで少し休憩を取られてはいかがでしょうか?」

「ありがとう。それは助かる。」
エルヴィンがそう答えると、隊長は先頭に戻り、兵士たちに指示を飛ばした。

窓から風景を眺めながら、エルヴィンはふと自分の故郷であるシュトラウス領を思い出した。草原の中で遊んだ幼い頃の日々、家族との時間――。今の彼の原動力は、そんな思い出の一つ一つが支えている。

馬車が最初の目的地であるアーヴェルト村に到着すると、そこには静かな田園風景が広がっていた。石造りの家々が点在し、畑を耕す農民たちの姿が見える。馬車が村の中心に入ると、子どもたちが興味津々に近寄ってきた。

「お兄ちゃん、その箱の中には何が入ってるの?」
勇気を出して声をかけたのは、まだ幼い男の子だった。

「これはね、魔力を供給する装置なんだ。この村で役立つかどうか、試してみようと思っているよ。」
エルヴィンは馬車から降りると、しゃがみこんで子どもたちに優しく説明した。

「すごい!魔力を供給するなんて、本当にできるの?」
子どもたちは目を輝かせ、口々に質問を浴びせる。

その様子を見ていた村長らしき初老の男性が、ゆっくりと近づいてきた。
「これはこれは、王宮の方からようこそいらっしゃいました。この村で何かお役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください。」

「ありがとうございます。装置を実際に使っていただき、感想や改善点を教えていただければと思います。」
エルヴィンが装置を取り出して説明すると、村長は興味深そうに頷いた。

エルヴィンは村の広場に設置された簡易テーブルに装置を置き、村人たちにその使い方を説明した。魔力供給装置を使ってランタンを点灯させると、柔らかな光が広場を照らし、村人たちから驚きの声が上がった。

「おお、こんな明るいランタンがあれば、夜でも安心だな!」
「だけど、これは本当に長く使えるのか?」

村人の一人が実際の使い勝手について尋ねると、エルヴィンは少し悩みながらも答えた。
「そうですね。この村の湿気が装置に影響を与える可能性があります。もう少し調整が必要かもしれません。」

その後、村の若い鍛冶職人が装置に興味を持ち、エルヴィンに声をかけてきた。
「この装置、俺も手伝えるかもしれない。鍛冶仕事には自信があるんだ。」

彼の力強い声に、エルヴィンは目を輝かせた。
「ぜひ協力してほしい。現地の知識が、僕には何よりも助けになるからね。」

こうして、エルヴィンは村人たちと協力しながら、新たな改良に向けて動き出した。
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