辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第3章：発明家エルヴィン、王宮に参上！

第77話「王宮の評価！魔道具が届ける未来」

家庭用魔力供給装置の最終試作品が完成し、いよいよ王宮で正式な審査を受ける日が訪れた。エルヴィンにとって、この日は彼の努力がどのように評価されるかを知る重要な瞬間だった。これまで試行錯誤を繰り返し、仲間たちの支えを受けながら完成させた装置。その結果がどのように受け止められるのか、期待と不安が入り混じっていた。

「準備はできていますか、シュトラウス様？」
研究所で待ち合わせたヴェルトナー大臣が、エルヴィンの方へ歩み寄った。

「ええ、装置も万全です。」
エルヴィンは改良を重ねた最終試作品を手に取り、力強く頷いた。

「良い返事だ。今日の審査は、王宮の主要な役職者たちが集まる。民間向けの魔道具という新たな試みがどれだけ受け入れられるか、私も楽しみだ。」
ヴェルトナーの言葉に、エルヴィンの緊張は少しだけ和らいだ。

セシリア王女やリヴィアもこの場に出席する予定で、エルヴィンにとって心強い味方となる。彼は装置を丁寧に箱に収めると、大臣と共に王宮の審査会場へ向かった。

審査会場は、王宮の中でも特に格式の高い部屋だった。装飾が施された大きなテーブルを囲むように、王宮の主要人物たちが集まっている。宰相、国土開発大臣、治安維持担当官、さらに軍の高官たち――その顔ぶれは、エルヴィンにとっても見慣れたものだったが、一様に厳格な雰囲気をまとっていた。

部屋の中央には審査用の台が置かれ、そこにエルヴィンが作った家庭用魔力供給装置が置かれている。

「それでは、シュトラウス殿、装置の説明とデモンストレーションをお願いします。」
セシリア王女が柔らかな声で促す。

エルヴィンは一礼して台の前に立つと、落ち着いた声で話し始めた。

「こちらが、今回開発した家庭用魔力供給装置です。この装置は、災害時や日常生活において魔力を効率的に補充することを目的としています。簡単な操作で誰でも扱えるよう設計し、軽量化や安全性の向上も図りました。」

装置を手に取り、スイッチを押すと、ランタンが柔らかな光を灯し始めた。さらに、防御壁装置を接続して魔力を供給するデモンストレーションも行い、壁が安定して展開される様子を示した。

「これは素晴らしい……安定性が高いな。」
国土開発大臣が感心したように呟く。

「しかし、これだけの機能を詰め込んだ装置ならば、製造コストが気になるところだ。」
治安維持担当官が冷静に指摘する。

「その点についても考慮しています。」
エルヴィンはすぐに応じた。

「装置には量産性を意識した設計を取り入れています。現在の試作品は手作業で作られたものですが、シュトラウス領で採れる魔力鉱を効率的に加工することで、コストを抑える計画です。」

その言葉に、宰相が興味深そうに頷いた。

「量産体制が整えば、確かに普及の可能性が高まるな。だが、庶民の手に渡る価格まで下げることができるかどうかが課題だ。」

「はい、その点も含めて今後の改良を進めていきます。」
エルヴィンは自信を持って答えた。

審査が進む中、一人の軍高官が険しい表情で口を開いた。

「シュトラウス殿、この装置は確かに便利だ。しかし、我々のような実戦の現場で使うには、まだ信頼性が足りないのではないか？」

「現場での厳しい環境に耐えられる装置を作るには、さらなる検証が必要だと思うが、その点はどう考えている？」

その言葉に、エルヴィンは一瞬考え込んだ。

「確かに、現場での耐久性は重要な課題です。ですが、この装置は家庭用として設計されているため、戦場での使用を想定したものではありません。」

「だが、災害時には家庭用であろうと過酷な状況で使われるだろう。その点を軽視しているようでは、国民の安全を守る道具とは言えん。」

高官の厳しい口調に、エルヴィンの心は少し揺らいだ。彼の言葉には確かに一理ある。災害時に装置が壊れてしまえば、それが命取りになる可能性もあるのだ。

「……そのご指摘はごもっともです。」
エルヴィンは深く頷いた。

「家庭用であっても、あらゆる環境に耐えられる設計を目指します。これまでの試作品の耐久性テストを見直し、さらに改良を重ねます。」

その誠実な答えに、会場の空気が少し和らいだ。

会議の最後に、セシリア王女が再び発言した。

「エルヴィン様の装置は、王国にとって非常に大きな可能性を秘めた発明です。まだ課題は残されていますが、それを克服するための努力を惜しまない姿勢こそ、国にとって必要なものだと私は思います。」

王女の力強い言葉に、審査員たちは静かに頷いた。

「確かに、完成度は高い。だが、改善点を見逃すわけにはいかない。それを解決できるかどうかが、今後の鍵となるだろう。」
宰相が総評を述べる。

「引き続き改良を進め、次回の審査でさらなる成果を見せてくれることを期待している。」
ヴェルトナー大臣もエルヴィンに向けて微笑んだ。

審査を終えたエルヴィンは、緊張から解放されつつも、課題の重さを痛感していた。しかし、セシリア王女やヴェルトナー大臣の励ましを受け、彼の心には新たな決意が生まれていた。

（もっと信頼性の高い装置を作り上げる。家庭用でも、災害時でも、どんな状況でも役立つ道具を――。）

彼の挑戦はまだ終わらない。そして、その先には、さらに大きな可能性が待ち受けている。