辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第3章:発明家エルヴィン、王宮に参上!

第71話「研究の先にあるもの!魔道具が紡ぐ未来」

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セシリア王女との会話をきっかけに、エルヴィンは魔道具の可能性をさらに広げることを決意した。それは王宮や軍事だけでなく、民間の生活を支えるものであるべきだという考えだった。研究所での試作作業はこれまで以上に忙しくなり、エルヴィンはさらに新しいアイデアを取り入れるために改良を続けていた。

ある日の朝、ヴェルトナー大臣が研究所に現れ、エルヴィンに新たな依頼を持ちかけた。

「シュトラウス殿、これまでの試作品は素晴らしい成果を上げている。しかし、今回の依頼はさらに簡便かつ汎用性の高い魔道具だ。」

「簡便かつ汎用性……ですか?」
エルヴィンは設計ノートを手に取りながら聞き返した。

「その通りだ。たとえば、日常生活で役立つ魔道具をイメージしてほしい。民間の領民たちが特別な技術や知識を持たずとも使いこなせるものが必要なのだ。」
ヴェルトナー大臣は腕を組みながら説明を続ける。

「それなら、王宮や軍だけでなく、多くの人々に恩恵を与えられるかもしれませんね。」
エルヴィンはすぐにペンを取り、アイデアを書き留め始めた。

「たとえば、災害時の簡易シェルターや、長時間光を放つ魔道灯、あるいは料理や家事を助ける道具など……」
エルヴィンの脳内では次々とアイデアが浮かび、手が止まらなかった。

「良い発想だ。その方向で進めてくれ。国民の生活が向上すれば、それは王国全体の力となるだろう。」
ヴェルトナーは満足げに頷き、エルヴィンに期待を寄せた。

まずエルヴィンが着手したのは、簡単で長時間使える「魔法ランタン」の試作だった。魔力を利用して明かりを灯すランタンはこれまでも存在していたが、それらは一般家庭で使うにはコストが高く、取り扱いも複雑だった。

「低コストで誰でも使える仕組みが必要だ……。」
エルヴィンは魔力鉱の量を最小限に抑えながら、効率的に光を放つ仕組みを考えた。

「シュトラウス様、こちらの試作素材ですが、魔力効率が高く、耐久性もあります。これを使えば、光を長時間維持できるかもしれません。」
研究員の一人が提案した素材を見せる。

「これはいいね。じゃあ、この素材を中心に設計を見直してみよう。」
エルヴィンは早速作業台に向かい、ランタンの試作品を組み立て始めた。

数日後、最初の試作品が完成した。小型で持ち運びがしやすく、スイッチを押すだけで柔らかな光を放つランタンだ。さらに、魔力の消費を抑えたことで、一度充填すれば数日間使い続けることができる。

エルヴィンは研究所の暗室でランタンを点灯させ、光の具合を確認した。

「これならいい感じだ。明るすぎず、目に優しい光だし、誰でも簡単に使える。」
彼は満足げに頷いた。

ランタンの完成後、エルヴィンは王宮の許可を得て、王都の一部の家庭に試験的に配布することを提案した。

「民間の声を聞くことが、改良の大きな手助けになります。実際に使った感想や、改善点を教えてもらえれば、さらに良いものが作れるはずです。」
エルヴィンの提案にヴェルトナー大臣も同意し、ランタンは王都の数十世帯に試験配布されることとなった。

配布から一週間後、王宮に集められた感想を読んだエルヴィンは、想像以上の反応に驚いていた。

「このランタンのおかげで、夜遅くまで作業ができるようになりました!」
「子どもでも簡単に使えるので、とても助かります。」
「明かりが柔らかく、目に優しいので重宝しています。」

「やった……民間でも喜ばれてる。」
エルヴィンは喜びを感じる一方で、改良すべき点もリストアップしていた。

「いくつかの家庭では、ランタンの持ち手部分が壊れやすいという声があったな……あと、もっと明るさの調節ができたら便利という意見も。」
エルヴィンはそれらをノートに記録し、次の試作に活かす決意を固めた。

ランタンが成功を収めたことで、王宮から次の依頼が舞い込んだ。それは、地方の村々や災害時に役立つ「簡易的な魔力供給装置」の開発だった。

「災害時には、魔力を補充するのが難しい状況がある。そのため、簡易的に魔力を供給できる道具を作ってほしい。」
ヴェルトナー大臣は、資料を手渡しながら依頼内容を説明した。

「魔力供給……それはかなり挑戦的ですね。でも、やりがいがあります。」
エルヴィンは目を輝かせながら頷いた。

「ただし、これは非常に重要なプロジェクトだ。うまくいけば、王国全土での使用が見込まれる。それだけに、失敗は許されないぞ。」
ヴェルトナーの言葉に、エルヴィンは小さく息を呑んだ。

「分かっています。責任を持って取り組みます。」
彼は真剣な表情で答えた。

エルヴィンは新たな試作に取り掛かる前に、自分が抱える責任の重さを改めて実感していた。しかし、彼の胸には「多くの人々の生活を支える道具を作りたい」という強い意志があった。

「失敗しても諦めない。どんな困難があっても乗り越えてみせる。」
エルヴィンはそう自分に言い聞かせながら、次の設計図に向かってペンを走らせた。

彼の挑戦はまだ始まったばかりだ。そして、その努力が王国全体にどのような影響を及ぼしていくのか――それは、誰にも分からない。
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