辺境伯家ののんびり発明家 ～異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々～

第2章：王都カレドリア学院！学びと挑戦の日々

第58話「新たな挑戦の始まりと仲間たちの支え」

フローリスの試験運用が成功し、ロベルトから届いた手紙を読んだエルヴィンは、心の中で新たな意欲が湧き上がるのを感じていた。自分が作った魔道具が、学院の課題の枠を超えて、誰かの生活を本当に変えることができる。それは、今まで夢見ていた「役に立つ魔道具作り」が具体的な形として実感できた瞬間だった。

（ロベルト君のお母さんに喜んでもらえたのは本当に嬉しい。次は、もっと多くの人が手軽に使えるものを作りたいな。でも、そのためにはコストや使いやすさも考えなきゃいけない……まだまだ課題は山積みだ。）

エルヴィンは工房のテーブルに広げたノートに、改良のアイデアを書き連ねていった。

翌朝、学院の授業が始まると、クラスメイトたちの間でフローリスの話題が広がっていた。

「聞いたか？シュトラウスの作ったフローリスって魔道具、ロベルトの家族に試してもらったら大好評だったらしいぜ。」
「空気を浄化して花粉症にも効くとか。そんな便利なもの、どうやって作ったんだろう？」
「さすが、エルヴィン様。やっぱり俺たちとは次元が違うな……。」

教室の片隅で、その噂を耳にしたエルヴィンは、思わず苦笑いを浮かべた。

（なんだか少し大げさになってる気がするけど……とにかく、次はもっといいものを作らないとね。）

その日の授業では、アラン先生が魔道具制作における「量産化」について話し始めた。

「君たちがこれまで学んできた魔道具制作は、個人のスキルを活かして一品物を作ることが中心だった。しかし、実際の市場では、同じ品質の魔道具を効率よく量産することも重要だ。量産化に成功すれば、それだけ多くの人に届けることができる。」

その言葉に、エルヴィンは興味を引かれた。

（量産化か……フローリスをもっと多くの人に使ってもらうには、僕一人で作るだけじゃ限界がある。どうやったら、同じ品質で効率よく作れるんだろう？）

授業後、エルヴィンはアラン先生に声をかけた。

「先生、量産化についてもっと詳しく教えていただけませんか？」

「おや、シュトラウス君。早速興味を持ったのかね？君のような魔道具職人にとっては、避けて通れないテーマだな。まずは、材料の選定と工程の簡略化が重要だ。そして、同じ品質を保つためには、細かい魔道文字の刻み方や魔力鉱の調整を標準化する必要がある。」

アラン先生の説明を聞きながら、エルヴィンは熱心にメモを取った。

「なるほど……確かに、僕がフローリスを作ったときも、一つひとつの工程に手間がかかりすぎていました。それをもっと効率的にする方法を考えないといけませんね。」

「そうだな。特に君のように新しい発想を持つ者は、そういった工夫を積み重ねていけば、より多くの人々に感謝される魔道具を作れるはずだ。期待しているぞ、シュトラウス君。」

「ありがとうございます！頑張ってみます。」

その日の放課後、エルヴィンは工房に戻り、フローリスの量産化に向けた第一歩として、製作工程を見直し始めた。だが、一人で作業をしていると、どうしても手が回らない部分や行き詰まる部分が出てきた。

「うーん……ここをもっと簡略化できればいいんだけど、魔道文字の細かい調整が必要だから、どうしても時間がかかるな……。」

頭を抱えていると、ふいに工房の扉がノックされた。

「エルヴィン様、失礼します。」
入ってきたのはリヴィアだった。彼女は微笑みながらテーブルの上のフローリスを見つめる。

「新しい改良を進めているのですね？」

「うん、今度は量産化を目指しているんだ。でも、魔道文字の調整をどう簡略化するかで悩んでいて……。」

リヴィアは少し考えた後、提案した。

「もしよろしければ、私もお手伝いしてもよろしいですか？以前、エルヴィン様が教えてくださった魔道文字の基礎を活かせば、いくつか刻む作業をお手伝いできるかもしれません。」

「本当に？それは助かるよ！ありがとう、リヴィアさん！」

エルヴィンの顔がぱっと明るくなり、リヴィアも嬉しそうに頷いた。

その後、レオンも加わり、エルヴィンの工房は活気に満ちていった。レオンは魔道具の外装作りや組み立ての手伝いを申し出て、手際よく作業を進めていく。

「エルヴィン、俺の方は外装のパーツが一通りできたぞ。次はどれを手伝えばいい？」

「ありがとう、レオン君！じゃあ、ここの部品の組み立てをお願いしてもいいかな？」

「任せとけ！」

エルヴィン、リヴィア、レオンの三人で手分けして作業を進めると、工程が一気にスムーズになり、フローリスの試作品がいくつも完成していった。

数日後、エルヴィンは完成した改良版フローリスをアラン先生に見せることにした。

「先生、この改良版では、製作工程を簡略化して、より効率的に作れるようにしました。これなら、量産化にも近づけると思います。」

アラン先生は完成品をじっくりと観察し、うなずいた。

「素晴らしいな。改良版は前回よりもさらに使いやすそうだし、効率も上がっている。君のような生徒が、学院の誇りであることを忘れないでくれ。」

「ありがとうございます！もっと改良を重ねて、さらに良いものを目指します。」

その日の夜、エルヴィンは工房で改良版フローリスを手に取りながら、一緒に作業してくれた仲間たちのことを思い返していた。

（僕一人じゃここまで完成度を高めることはできなかった。リヴィアさんやレオン君、そしてアラン先生やロベルト君のお母さん……みんなのおかげで、少しずつ前に進めているんだな。）

彼の胸には感謝と、新たな挑戦への意欲が溢れていた。