辺境伯家ののんびり発明家 ～異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々～

第2章：王都カレドリア学院！学びと挑戦の日々

第50話「冬の訪れと実家への手紙」

学院の庭の木々は、少しずつ葉を落とし始めていた。冷たい風が頬を撫で、冬の訪れを告げる気配が漂う。エルヴィンは、朝の授業を終えた後、学院の図書館で調べ物をしていたが、窓から見える風景にふと目を止めた。

（もうすぐ冬休みか……久しぶりに家族のみんなに会えるのが楽しみだな。でも、家に帰る前に何か特別なものを作って、みんなを驚かせたいな。）

エルヴィンは微笑みながら、持っていたノートを開き、新しいアイデアを書き留め始めた。

午後の自由時間、エルヴィンは工房へと向かった。工房は少しひんやりとしていて、冬の空気を感じさせる。暖炉に火を入れて温めると、リヴィアが手紙を持ってやってきた。

「エルヴィン様、お父上からお手紙が届いていますよ。」

「ありがとう、リヴィアさん。」

エルヴィンは手紙を受け取り、その場で封を切った。父であるカール・シュトラウスからの手紙は、彼らしい実直な筆跡で綴られていた。

『エルヴィン、お前が学院で元気に頑張っているという噂を聞いている。お前の成長を家族全員が誇りに思っているぞ。冬休みには帰省するだろうが、リリィが君に会えるのを特に楽しみにしている。君が作った動くぬいぐるみは彼女のお気に入りで、夜も手放そうとしないほどだ。どうやら、君が家にいない間にもう一つ欲しいと言い始めたらしい。』

『母上も最近は体調が良いようだが、寒さが厳しくなるので、家の暖房を見直そうと考えている。君の発明で何か役立つものがあれば、ぜひ持ち帰ってくれ。家族みんなで楽しみにしているぞ。』

エルヴィンは手紙を読み終えると、自然と笑みがこぼれた。特にリリィのことを思い浮かべると、微笑ましい気持ちになる。

「リリィが動くぬいぐるみをそんなに気に入ってくれてるなんて……これは新しいぬいぐるみを作って持ち帰るしかないな。」

「それに暖房……前に作った携帯式暖房魔道具をもっと家用に改良できないか考えてみよう。」

エルヴィンは早速作業に取り掛かった。まずは、リリィのために作る新しいぬいぐるみのアイデアを練り始めた。

（リリィが好きなのは、あのウサギのぬいぐるみだよな。なら、今度はもっと可愛い仕掛けを入れてみよう。たとえば、魔道文字を使って手を振ったり、耳を動かしたりするようにして……音を出す仕組みを加えれば、もっと楽しいかもしれない。）

エルヴィンはリリィの喜ぶ顔を思い浮かべながら、設計図を描き始めた。

次に取り掛かったのは、家族全員で使える暖房魔道具の改良だった。前に学院で作った携帯式の暖房魔道具を基に、部屋全体を暖めることを目的とした大型の装置に改良する必要があった。

（家族全員が暖かく過ごせるようにするには、効率よく魔力を分散させる仕組みが必要だ。……あ、そうだ。熱を部屋全体に循環させるように、魔力で空気をゆっくり動かす仕組みを組み込めばいいんじゃないか？）

エルヴィンは思いつくたびにノートにメモを取り、工房の奥から材料を集めて作業を始めた。

数時間後、ぬいぐるみの試作品が完成した。可愛らしいウサギ型のぬいぐるみで、耳がピコピコと動き、短いメロディを奏でる仕組みが組み込まれている。

「よし、これならリリィも喜んでくれるはずだ！」

エルヴィンは試作品を動かしてみながら満足げに頷いた。

続いて暖房装置の改良も進め、こちらも一通りの形になった。装置は部屋の中央に置いて使用するタイプで、内部の魔力鉱から発生する熱を循環させ、部屋全体を効率よく暖める仕組みだ。

試運転を行うと、暖かい空気が心地よく工房全体に広がった。

「これも成功……かな。あとは家に持ち帰って、実際に使ってもらいながら調整していこう。」

その日の夜、エルヴィンは自分の部屋で家族に宛てた手紙を書き始めた。

『父上、母上、リリィへ。

お元気ですか？学院での生活にも慣れてきて、毎日充実した日々を過ごしています。先日の模擬試験や課題では、いくつか新しい発明に挑戦する機会をいただきました。その中で、家で役立ちそうな魔道具もいくつか作ったので、冬休みに持ち帰るつもりです。

リリィへ。お兄ちゃんが新しい動くぬいぐるみを作ったよ！今回はもっと楽しい仕掛けを入れてみたから、楽しみにしていてね。母上や父上にも新しい暖房装置を試してもらいたいと思っています。

冬休みにはすぐに会いに帰ります。みんなに会えるのを心から楽しみにしています。

エルヴィンより』

手紙を書き終えると、エルヴィンはホッと一息ついた。

「これで準備は大丈夫かな……冬休みが待ち遠しいな。」

窓の外には満天の星が輝いていた。エルヴィンは、久しぶりに家族と過ごす時間を想像しながら、ベッドに潜り込んだ。