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第2章:王都カレドリア学院!学びと挑戦の日々

第46話「エルヴィン、ライバルに刺激される」

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学院の交流会から数日が経ち、日常の授業が再び始まった。エルヴィンの心には、未だあの日の出会いが鮮やかに残っていた。軍務大臣の息子であるアルノルト・フォン・ツィーグラーとの邂逅。それは単なる出会い以上のものだった。彼の堂々とした態度と挑戦的な言葉は、エルヴィンの中に何か新たな火を灯した。

(競い合う機会、か……。学院にいる限り、どこかでそういう場面が訪れるだろう。彼に負けないように僕ももっと腕を磨かなきゃ。)

エルヴィンは机にノートを広げ、最近の課題やアイデアを書き留めていく。学院に入ってから多くの魔道具を試作してきたが、まだまだ完成度に不満を感じるものも多い。アルノルトのような自信に満ちた人物と渡り合うためには、さらに上を目指さなければならないと痛感していた。

そんなエルヴィンの様子を見て、リヴィアが心配そうに声をかけた。

「エルヴィン様、今日はずいぶん熱心ですね……何か新しい発明を考えているんですか?」

「うん。新しいアイデアを思いついたわけじゃないんだけど、今まで作った魔道具を見直して、もっと改良できるところがないか考えているんだ。」

「そうなんですね……でも、あまり無理しすぎないでくださいね。模擬試験や交流会もあって、最近ずっと忙しかったですし。」

エルヴィンは微笑んでリヴィアに頷いた。

「ありがとう、リヴィアさん。でも、今はやれるだけやっておきたいんだ。学院で過ごせる時間って限られてるし、ここで吸収できることを全部吸収したいからね。」

その言葉に、リヴィアも少し感心した様子で頷いた。

その日の「魔道具制作学基礎講座」では、新たな課題が提示された。アラン先生が教壇に立ち、黒板に課題のテーマを書き出す。

「今回の課題は『持ち運びが便利な魔道具』だ。ここでのポイントは、実用性を追求しつつ、形状や重量などを考慮してデザインすること。特に、魔力効率をどう最適化するかが評価の基準になるだろう。」

持ち運びに便利な魔道具というテーマは、一見すると単純だが、実際に作るとなると意外と難しい。小型化することで耐久性が落ちたり、魔力効率が悪化したりすることが多いため、設計には高度な工夫が必要になるのだ。

生徒たちはそれぞれ自分なりのアイデアを考え始めた。エルヴィンもノートを開き、頭の中に浮かんだ案を整理していく。

(持ち運びが便利で、実用性もある……。例えば、旅の途中で役立つ道具とか、何かしらの緊急時に使えるものがいいかも。)

考えを巡らせていると、隣のレオンがひょいと顔を近づけてきた。

「なあエルヴィン、今回の課題、何かいいアイデアあるか?俺、どうもこういう細かいのは苦手でよ。」

「うーん、まだ完全には決まってないけど……例えば、持ち運びできる簡易浄水器なんてどうだろう?」

「浄水器?なんだそりゃ?」

「ほら、旅先や野外で安全な水を確保するのって結構大変でしょ?その場で水を浄化して飲めるようにする魔道具があれば便利だと思うんだ。」

「へぇ、なるほどな。でも、そんなのどうやって作るんだ?」

「水の汚れを除去するための魔道文字を刻んだフィルターを組み込めば、汚れや毒素を取り除けると思う。あとは魔力を少量で効率よく使える仕組みをどう作るかが課題だけど……」

レオンは頭を掻きながら苦笑した。

「相変わらず難しいこと考えるよな。ま、俺にはさっぱりだが、お前なら何とかするんだろ?」

「うん、ちょっと試してみるよ。」

エルヴィンは工房に向かい、早速試作に取り掛かった。浄水器の基本構造を設計し、フィルター部分には「浄化」の魔道文字を刻む計画だ。しかし、試作品を作る過程で、いくつかの問題に直面した。

最初の試作では、魔力効率が悪すぎて、少量の水を浄化するだけで大量の魔力を消費してしまった。また、フィルター部分の加工が不十分だったため、細かい汚れが完全に取り除けなかった。

「これじゃ使い物にならないな……」

エルヴィンは失敗の原因をノートに書き出しながら、次の改良案を考えた。

(フィルター部分をもっと細かく加工する必要がある。それから、魔力を効率よく使うために、魔道文字の配置を見直して……)

改良を重ねる中で、エルヴィンはアルノルトの言葉を思い出していた。

(どれほどの実力か確かめたい……か。もし彼がこの課題に取り組むとしたら、どんなアプローチをするんだろう?)

ライバルとして意識し始めたアルノルトの存在が、エルヴィンの中にさらなる向上心を芽生えさせていた。彼に負けたくないという思いが、失敗を乗り越える原動力になっていたのだ。

三度目の試作で、ついに小型で効率的な浄水器が完成した。手のひらサイズの装置でありながら、一定量の水を素早く浄化できる優れものだ。装置の試運転をしながら、エルヴィンは満足げに呟いた。

「よし、これなら合格点かな。これを持っていれば、どんな場所でも安全な水が確保できるはず。」

工房の外で待っていたリヴィアとレオンに完成品を見せると、二人とも驚いた様子で声を上げた。

「エルヴィン様、これ本当にすごいです!こんなに小さいのに、そんなに便利なんですね。」

「確かに便利そうだが……お前、よくこんなもん思いつくよな。俺には絶対無理だぜ。」

「そんなことないよ、レオン様。誰でも自分の得意なことを活かせばいいんだから。」

エルヴィンの言葉に、レオンは照れくさそうに頭を掻いた。

授業で完成品を提出すると、アラン先生もその出来栄えに感心した様子だった。

「素晴らしい発想力と技術だ。特に、この小型でありながら実用性を重視したデザインは見事だな。魔道文字の配置も工夫されていて、魔力効率が非常に良い。」

先生の評価を受けて、エルヴィンは改めて自信を深めた。そして、アルノルトとの再会を心待ちにしながら、次の課題に向けて新たな挑戦を決意するのだった。

学院での日々は、エルヴィンにとって成長と挑戦の連続だ。そして、彼の中で芽生えたライバル意識が、さらにその歩みを加速させていく。
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