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第2章:王都カレドリア学院!学びと挑戦の日々

第30話「カレドリア学院での新しい日常」

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エルヴィンの学院生活は、日に日に慌ただしさを増していった。初めての授業や、学院の広大な敷地に散らばる施設を回るだけで、朝から夕方までほぼ休みなく動き続ける日々が続いている。しかし、エルヴィンにとってはどの瞬間も新鮮で、学びの多い充実した時間だった。

朝は早めに起きて、寮の食堂で朝食を取る。そこには様々な学部に属する同じ寮の新入生たちが集まっており、日々の授業内容について話したり、互いに情報を交換しあったりしている。エルヴィンもだんだんと友人が増え、少しずつ会話を楽しむようになっていた。

「ねえ、エルヴィン様。昨日の『錬金術基礎』の授業、すごく難しくなかった?」

食堂で向かいに座ったのは、リヴィアという小柄な少女だ。リヴィアは貴族の家の生まれではないが、商人の家柄で、幼い頃から商売で培われた観察力や知識の豊富さが特徴的な少女だった。少しおっちょこちょいなところもあるが、その真剣な表情にエルヴィンは親近感を覚えている。

「確かに難しかったね。特に魔法触媒の扱い方については、僕も初めて知ることばかりで……。でも、授業の後に少し復習して、何とか理解できたよ」

「そっかー、エルヴィン様はやっぱりすごいわ。私も、もう少し復習してみようかな……」

そんな会話を交わしつつ、エルヴィンは朝食を済ませる。友人たちと励まし合いながら学んでいけることは、彼にとって心強く感じられた。

この日、エルヴィンは午後から「魔道具開発の基礎」についての講義を受ける予定だった。彼が特に興味を抱いている分野の授業であり、前の晩から楽しみにしていた授業だ。

講義室に入ると、そこには彼と同じように魔道具開発に興味を持つ生徒たちが集まっていた。最前列にはカトリーヌが座っており、エルヴィンに気づくと、軽く手を振ってくれた。エルヴィンも笑顔で手を振り返し、その隣に座った。

やがて講師が現れ、講義が始まった。この日の講師は、錬金学部で著名な魔道具研究者として知られる、老齢の賢者ライエン・バルトンだった。白髪でひげをたくわえ、落ち着いた雰囲気の中に鋭い知性を感じさせる人物だ。

「皆さん、今日は『魔道具の基礎理論』について学びます。魔道具とは、ただの物体に魔力を付与するだけではありません。道具としての構造と、魔力の流れが一体となることで、初めて実用的な魔道具が生まれるのです」

エルヴィンはその言葉を真剣に聞きながら、ノートを取り始めた。魔道具に関してはある程度知識があるつもりだったが、学院で学ぶ理論は想像以上に深く、目から鱗が落ちる思いだった。

「例えば、この簡単なランプを見てください」

ライエン講師は手元の机から、一見すると普通のランプを持ち上げた。だが、次の瞬間、彼が軽く手を振るとランプが青白く光り始めた。通常の灯りとは違い、魔力を媒介にした光だった。

「このランプには、魔力を吸収し、安定的に放出する魔法陣が刻まれています。魔道具を設計する際には、魔力をうまく循環させることが肝要です。皆さんもいずれ、自分の魔力を効率よく道具に通す方法を学び、実際に魔道具を作ることになるでしょう」

エルヴィンはその説明に強く惹かれ、自分もこうした道具を作り出したいという思いを一層強くした。彼が今まで作ってきた魔道具は、主に身の回りを便利にするためのもので、実験的なものも多かったが、学院で正式に学ぶことで自分の技術がさらに向上するかもしれない。

「魔道具を作る際には、魔道文字を刻む技術が重要です。魔道文字とは、魔力を込めるための鍵となるもの。ここでは、その基礎についても順次学んでいきます」

エルヴィンは、その「魔道文字」という単語にピンときた。彼は以前から魔道文字に興味を持っていたが、まだ自分で新しい魔道文字を作り出すという段階には至っていなかった。この学院で学べば、自分の発明をさらに洗練させ、新しい魔道文字を開発する道が開けるかもしれない。

講義が終わり、エルヴィンが立ち上がろうとしたとき、カトリーヌが少し興奮した様子で話しかけてきた。

「エルヴィン様、すごく勉強になりましたわね! 魔道具がこんなに理論的なもので成り立っているなんて、初めて知りました」

「うん、僕も驚いたよ。今まで作ってきた魔道具が、実はまだまだ未完成なものだった気がしてきた」

エルヴィンの視線には決意が宿っていた。彼はこの学院で学ぶことで、自分の発明がどれだけの可能性を秘めているかを知り、それを発展させたいと強く思ったのだ。

そのとき、少し離れた場所から声がかかった。

「おい、エルヴィン!カトリーヌ!講義が終わったなら、ちょっと付き合えよ!」

声の主はレオン・フォン・グレイバーだった。彼は既に講義室の外に出て待っていたらしく、エルヴィンとカトリーヌが出てくるのを見計らって手招きしている。

「レオン様、何かご用ですか?」

エルヴィンが尋ねると、レオンはにやりと笑って答えた。

「お前らもいい加減、学院の施設を回ったか?今日は少し時間があるし、訓練場に行こうぜ。俺が剣術を教えてやるよ」

エルヴィンは少し戸惑いながらも、レオンの誘いに惹かれるものを感じた。彼自身、戦闘にはあまり興味がないが、学院で学ぶ以上は体を鍛えることも重要だと感じていた。特に、王都で生き抜くためには、何かしらの護身術を身につけることも大切だ。

「……わかりました、レオン様。僕もせっかくですから、少しだけお付き合いします」

「エルヴィン様、それなら私もご一緒しますわ。学院生活の一環として、戦闘技術も少しは学ばなければなりませんし」

エルヴィンとカトリーヌが承諾すると、レオンは嬉しそうに二人を訓練場へと案内した。訓練場は広大な敷地にあり、様々な武器や防具が整然と並べられている。ここでは、戦術学部の生徒たちが日々訓練に励んでいるが、他の学部の生徒も自由に使うことが許されていた。

「さあ、まずは基本だ!」

レオンは木剣を取り出し、エルヴィンとカトリーヌに持たせると、剣を構える姿勢を見せた。彼は自信満々で、戦士としての経験がにじみ出ている。

「剣を構えるときは、こうだ。体重を前に乗せるんじゃなくて、重心を保ちながらリラックスするのがコツだ」

エルヴィンも木剣を握り、レオンの指導に従いながら構えを取った。剣術は彼にとって初めての経験だったが、レオンのアドバイスが的確で、少しずつ感覚が掴めてきた気がする。

「なるほど……ただ力を入れるだけじゃなく、リラックスして構えるんですね」

「そうそう!力任せに振っても相手には当たらないし、何より自分が疲れるだけだ。お前も、もっと柔らかく動いてみろよ」

レオンの指導により、エルヴィンは剣術の基礎を少しずつ学んでいった。横でカトリーヌも奮闘しているが、貴族の令嬢らしい華麗な動きで、優雅に構えている。エルヴィンも自分の未熟さを感じつつ、少しでも成長できるよう努力を続けた。
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