辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第1章：異世界転生！辺境伯家の発明少年

第18話「新しい挑戦、魔法オーブの開発」

家族や友達への感謝を込めた魔道具を作り終え、エルヴィンは次の挑戦に向けて意欲を燃やしていた。リリィの健康を守るための魔道具や、友達が楽しめるおもちゃを作ることで、自分が人を幸せにできる喜びを改めて実感した。そこで彼は、「もっと便利で、もっと多くの人に役立つものを作りたい」という目標を新たに抱いた。

「もっと多くの人の役に立つために、何か新しい魔道具を作れないだろうか……」

そう考えたエルヴィンは、以前王都で見かけた「魔法オーブ」のことを思い出した。オーブは魔力を安定させて貯めることができ、さまざまな魔道具の動力源として使える道具だった。しかし、非常に高価であり、貴族の中でも限られた者しか持っていない。もしこのオーブを自分で作ることができれば、多くの人の生活が便利になるかもしれないと考えたのだ。

エルヴィンはまず、魔法オーブの設計から始めた。王都の商会で見かけたオーブの仕組みを思い出し、自分なりに図面を描き起こす。オーブの中心には魔力を蓄える「魔力鉱」が必要であり、それを安定させるための「魔力制御の魔道文字」を刻む必要がある。また、魔力を放出するための「放出制御」の仕組みも必要だ。

オーブの外殻には透明なクリスタルを使用することにした。クリスタルは魔力を通しやすい性質があり、外から中の魔力鉱を観察できるため、動作状況を確認するのに便利だ。しかし、このクリスタルも普通のものではなく、特別な加工が必要だった。

エルヴィンは倉庫に保管されている素材の中から、魔力をよく通す性質を持つ「蒼水晶（ブルークリスタル）」を選び出した。彼は、クリスタルの表面を研磨し、透明度を高める作業から取り掛かる。研磨剤を布に少量取り、ゆっくりとクリスタルの表面を磨き上げていく。

「この蒼水晶をしっかり磨いておけば、オーブとしての性能もきっと良くなるはずだ」

エルヴィンは研磨の作業に数時間を費やし、クリスタルの表面を滑らかに仕上げた。こうして、オーブの外殻となるクリスタルが完成した。

次に、エルヴィンはオーブの中核である魔力鉱に「魔力制御」の魔道文字を刻む作業に取りかかった。魔力鉱は非常に硬く、通常の道具では刻印が難しいため、特別な彫刻用の工具を用いる必要があった。

彼は慎重に工具を使いながら、魔力鉱に「蓄積」「安定」「放出」の3つの魔道文字を刻み込んだ。蓄積の魔道文字により魔力を集め、安定の文字で魔力を一定に保ち、放出の文字で外部に魔力を供給する。この一連の刻印には非常に高い精度が求められるため、エルヴィンは集中力を切らさないように慎重に作業を進めた。

「よし……これで魔力が安定して蓄えられるはず」

刻印を終えた魔力鉱を、さっそくクリスタルの中に収め、オーブの中心に配置する。エルヴィンはさらに、オーブの表面にも「制御」の魔道文字を刻み込み、オーブの使用者が魔力の出力を調整できるように設計を加えた。

これにより、オーブを使う人が魔力の量を細かく調整でき、必要な場面に応じて魔力を放出することが可能になるはずだ。彼の目指すのは、さまざまな場面で使える汎用性の高いオーブ——それは、家族や友人たちだけでなく、町の人々にも役立つ魔道具としての第一歩だった。

ようやく完成した「魔法オーブ」を手に取ったエルヴィンは、さっそくその性能を試してみることにした。オーブを手のひらに乗せ、ゆっくりと魔力を注ぎ込む。すると、クリスタルの中で魔力鉱が淡く光を放ち始め、エルヴィンがイメージした通りの青白い輝きを放ち始めた。

「うまくいった……！これで魔力が安定して蓄えられている」

エルヴィンはオーブから魔力を引き出し、近くに置いてあった小さなランプに接続してみた。すると、ランプがゆっくりと灯り始め、魔力を放出して安定した明かりを提供してくれる。

しかし、しばらく使っていると、オーブの魔力が予想以上に早く減ってしまうことに気づいた。どうやら、魔力の消費量をうまく制御するためには、さらに細かい調整が必要なようだ。

「まだまだ改良が必要だな……」

エルヴィンはその夜、ノートに改善点を書き込み、魔力の消費を抑えるための工夫を検討した。例えば、一定の範囲内で魔力の流れを遮断する「魔力バリア」を取り付けることで、無駄な魔力の放出を防げるかもしれないと考えた。

翌朝、エルヴィンは改良を重ねた魔法オーブを手に、家族の前で披露することにした。父カールや母エレナ、そしてリリィも見守る中、エルヴィンは自信を持って説明を始めた。

「これは、魔力を蓄えて必要なときに取り出せる『魔法オーブ』なんだ。照明や小さな道具の動力源として使えるようにして、もっと生活が便利になるように改良してみたんだ」

エルヴィンがオーブを手のひらで転がしながら説明すると、父カールは満足げに頷き、エレナも興味津々でその輝きを見つめていた。リリィも目を輝かせてオーブをじっと見つめ、小さな手を伸ばして触れようとする。

「エルヴィン、本当に素晴らしいわ。あなたの作る道具は、どんどん実用的になっているのね」

エレナの言葉にエルヴィンは少し照れくさそうに笑い、さらに改良を重ねる意欲が湧いてきた。父カールも誇らしげにエルヴィンの肩を叩き、激励の言葉をかけてくれた。

「エルヴィン、これは我がシュトラウス家にとっても大きな財産だ。お前のような息子を持てて、私は幸せだよ」

エルヴィンはその言葉に喜びを感じ、ますます「発明家」としての道を歩んでいく決意を新たにした。彼にとって、家族や友人、そして周りの人々を支える魔道具を作ることが、生きがいそのものになっているのだ。

エルヴィンは家族からの称賛を受け、次なる目標として「この魔法オーブをもっと多くの人に届ける方法」を考え始めた。自分が作る魔道具を広めることで、家族だけでなく、領民や町の人々の生活をも豊かにできるのではないかと思ったのだ。

そのためには、自分の発明を量産するための仕組みや、製作を手伝ってくれる職人との協力が必要だと気づいた。エルヴィンは王都の商会で学んだ知識を思い出し、仲間を増やしながら技術を広めていくことの大切さを理解した。

「まずは、信頼できる職人さんを見つけて、協力してもらえるように頼んでみよう。そして、みんなが安心して使える魔道具を作るんだ」

エルヴィンは次に王都を訪れる際には、商会や職人たちと協力して、魔法オーブを広めるための準備を進めようと決意した。そして、その夢を叶えるための第一歩として、量産用のオーブの改良案をノートに書き込み始めた。

エルヴィンの異世界発明ライフは、家族への愛情から生まれた発明の喜びと、人々の生活を支えるための使命感とともに、さらなる挑戦へと向かって進んでいく。