10 / 14
第三幕 芽生えたものは何?
3-3.皆が幸せならそれでいい※
しおりを挟む
ソルタオとエルテに、アレグリアが妖精郷への見回りを頼んだところ、二人は快諾してくれた。ソルタオの方は、顔を合わせたとき少し寂しそうだったのが印象的だ。きっと、フィロンのことが心配なのだろう。
だが、フィロンが身籠もっていることはまだ言えない。アレグリアとしては今すぐに報告したい気持ちがあるのだけれど、姉の心を無下にすることはどうしてもできなかった。
「縁談? 兄上に?」
妖精郷の近く、森の中、一緒に歩いていたエルテが目を丸くしてこちらを見る。
「う、うん。そんな話は出てないのかなって」
「あー、何人か候補は挙がってたみたいだけど、兄上は蹴ってる。全部」
「そう……」
アレグリアはほっとした。これで婚約者が現れたとなれば、ソルタオに抗議するところだ。例えフィロンが身を引こうとしていようとも。思い合う二人を邪魔するのは、今のところ王の地位だけで、それなら自分の努力でなんとかすることができる。
少しの間沈黙が続き、鳥の鳴き声だけが大きい。ごく微かにだが、ソルタオが貸してくれた兵士たちの声も遠くに聞こえた。
今、森の中は兵士たちとエルテに見守られている。一般の人間は、結界が弱まっても妖精郷に入ることは難しい。ビドゥーリが来ても包囲網を敷いている限り、安全だ。
「……どうしてそんなことを気にするんだよ、リア」
「ソルタオ様は王位を継がれる。もう、婚約者やそういった人がいても、全然おかしくないんじゃないかって」
「まだ兄上のことが気になるんだな」
「私が気にしてるのは姉様のことだよ」
どこか不服そうにしているエルテに苦笑した。思った以上に吹っ切りが早かったな、と自分で感じる。ソルタオに対しての思慕は、綺麗さっぱり消え去ってしまった。もちろん、尊敬の念は抱いたままだが。
「あの二人は好き同士だから、か。リアはそれでいいわけ?」
「姉様とソルタオ様、そして皆が幸せになってくれるなら」
「その幸せの中に、リアはいないのかよ」
「私?」
話しているうちに湖畔まで来た。秋の陽射しが水面が反射していて、とても美しい。
「私のことはいいんだ。皆が幸せになるのが、私の幸せ」
大言を吐いたな、と小さく苦笑した。それでも本当の願いだ。フィロン、ソルタオ、妖精郷に住む同族たち。彼らが笑顔になってくれれば、自分は満足できる。それにはやはり、長老と意志の疎通ができなければいけないだろう。
「……その中にオレはいる?」
「もちろん。エルテにだって幸せになってほしいって思う」
「オレが他の誰かと一緒になっても?」
「え」
石を蹴飛ばしたエルテを見た。どこか不満げなその顔に、もしかして、と口を開く。
「誰かとの婚約が決まった……とかなのか」
「オレも成人になったから。候補は出てる」
「そ、そっか」
エルテが結婚する――考えるとなぜか、胸が軋んだ。無視してほとりに近付き、加護によって未だ温い水を掬う。水には自分の顔が映っていて、それはあまりに強張っていた。
「リアはそれでも、オレを祝うつもりなんだな」
「……エルテが幸せなら、それでいいよ」
ぱちゃん、と掬った水を落として、隣にしゃがんだエルテに笑う。エルテは真剣な顔で何も言わない。水を手にして、それから。
「それ」
「わぷっ」
いきなり水をかけてきた。しかもアレグリアの顔面に。
「な、何をするんだ!」
「ちょっとムカついたから」
「なんで……わっ」
エルテの動きは止まらない。今度は水を、全身に浴びせるように大量にかけてくる。菜の花色のドレスが水で重みを帯びた。手で防護しても飛沫の量が酷く、アレグリアの体は全身水浸しになる。ふるふると頭を振って、怒りのために立ち上がった。
「な、なんてことするんだ……せっかく降ろしたばかりのドレスなのに!」
「リア」
「……なんだ」
「肌、透けてる」
へ、と自分の体を見下ろした。しとどになった体、ドレスが水によって肌に張りついたためか、確かに素肌が露わになっている。下着をつけない癖が仇となった。
「ば、馬鹿っ。見るな!」
声を上げて腕を使い、体を隠す。身を丸めたこちらへ、エルテが無言のまま近付いてくるものだから、一歩、後退った。
「な、何?」
「こうして昼のときに素肌見るの、はじめてだなって思ってさ」
「当たり前だろう……って、わわっ」
強引に手を引かれ、思わずたたらを踏んだ。そのまますっぽりとエルテの両腕に抱き留められる。胸板に顔を押しつけられ、知らずのうちに鼓動が速まった。
鳥の声が遠くに聞こえる。心臓の音だけが大きく全身を支配していた。身動ぎしても、エルテの腕は微動だにしない。
「エルテ……?」
「オレはリアにも幸せになってほしい」
「う、うん……」
「ついでに、気持ちよくなってほしい」
「気持ちよく……?」
顔を上げた瞬間、エルテが額に口付けしてきた。頬が赤くなる。唇から伝わる熱は熱く感じた。慌てふためく自分を無視して、瞼、耳、頬とキスを続けるエルテは、どこか扇情的な視線でこちらを捉える。
唇の柔らかさ、情熱を灯す赤い瞳。触れられている、見つめられている、そう思うたび心臓が高鳴った。顎を持ち上げられて、すぐ間近に自分の顔がある、エルテの瞳に自分が映っていることがありありとわかる。
あ、と吐息を漏らした瞬間、声を塞ぐように唇を重ねられた。心臓が今にも破裂しそうで動悸がやまない。思わず目を閉じる。ゆっくり、愛撫するようにエルテの舌先が唇の輪郭をなぞってきて、背筋に甘い痺れが走った。
体から力が抜けた、その刹那を見計らってか、エルテの舌がやんわりと口腔をまさぐってくる。あの夜とは違って優しく、熱烈な口付け。緊張がほどけ、心までも蕩けていく気がした。
エルテの片手が胸にあてがわれる。そのまま、柔らかく揉みほぐされた。尖った乳頭を執拗に指で嬲られ、淫悦がアレグリアの理性を壊していく。
「だ、だめ。エルテ」
「リアを気持ちよくさせるだけだから」
残った悟性が静止の声を出させたが、エルテの手つきは妖しいままだ。再び口付けされ、ふかふかの草むらに体を横たえられる。透けたスカート部分をたくし上げられた。水滴が草に落ち、腹までが露わとなる。
「可愛い、リア」
「やっ……んんっ」
乳暈全部をドレスの上ごと口に含まれ、舐められた。張りついた乳房の尖りは、エルテの口の中で舌先によっていじめられている。そのつど体が勝手に跳ね上がる。
「こんなのだめ……あ、んっ」
快楽に流されてはいけない。自分にはすべきことがある――そう思うのに、エルテの頭を押す手に力が入らなかった。上擦った声が自分のものだと信じられない。自ら弄るのとでは段違いの悦楽は、少し怖かった。
「人……来ちゃう、から……っ」
「平気だよ。オレがいる場所に、他の奴らは来ない」
口で手を押さえるこちらを見下ろし、エルテは優しく微笑む。その手が伸びた。アレグリアの股間へと。
「ふあっ……!」
下着の上から秘芽を爪弾かれ、びくんと体を震わせた。何度も、何度も、指の腹で嬲られるたび、体の奥から愛蜜が溢れてくるのがわかる。
「リアの体、やっぱり甘いな」
「やめ、てぇ……そこ、だめ……」
「やめない。可愛いから」
言うとエルテは胸から腹、下腹部を舐めて、ついには蜜で湿った淫芽すらも口に含む。
「んん! やっ、あ、ああん!」
じゅる、と音を立てて秘部を吸われ、アレグリアの口から嬌声が上がった。下着の横から指を入れられて、隘路の中でゆっくりと抽送がはじまる。
「絹みたいだな。狭くてきついけど……触り心地がいい」
「怖い……エルテ! やめて、私っ、私、もうっ」
自分の指では届かなかった箇所、弱点のような部分を掻き回され、つつかれるつど、電撃のような感覚が全身に走った。自慰では決して得られない快感に、頭がおかしくなりそうだ。
「イきそうか? イって、リア」
「い、く……私、だめ、イく……ぅっ!」
頤をのけ反らせ、絶頂に甘い悲鳴を喉から迸らせた。四肢に力が入らない。しかし法悦の余韻に浸る余裕など、なかった。
「甘いな、リアの愛液。ずっと吸ってられる。ちゃんと綺麗にするから」
「やあ、舐めちゃ……だめぇ……っ」
下着を剥ぎ取られ、秘路と肉芯をいじられては達する――
幾度絶頂へと導かれたのだろう。アレグリアが気を失うまで淫らな行為は続き、次に目を覚ましたときにはもう、黄昏が空に広がっていた。
目の前には焚き火があり、暖かい。いつくらいから気絶していたのかわからなかったが、ドレスは乾いていた。下着もはいている。体中がすっきりしていて、でも少し、気怠い。
「おはよう、リア」
「……何がおはようだ、馬鹿」
寄りかかっていたのはエルテの肩で、エルテが悪びれもせず挨拶をしてくるものだから、アレグリアは慌てて離れて睨みつけた。
「なんで怒ってんだ?」
「あ、あんなことするから……に決まってるだろう」
「最後まではしてない。今日はリアを悦ばせたかっただけだから」
「悦ばせるって……」
いやらしい声を外で出してしまったこと、そして何より、エルテに唇だけじゃなく、大事な箇所を預けてしまったことに顔が熱くなった。使命があるというのに、悦楽に溺れた自分が恨めしい。
「……帰る。長老の木と思念、通じ合わせないといけないし」
「少しは気分転換できたろ?」
「馬鹿っ」
エルテが明るく笑いながら、焚き火を消しはじめる。その横顔、所作を見てるとなぜか胸がまた、どきどきした。体を許してしまったからだろうか。それとも。
「妖精郷まで送るから」
「うん……」
エルテといると、普段ならとても落ち着くのだ。なのに今は胸の鼓動が大きい。きっと、と皺になったドレスをはたいて立ち上がる。恥ずかしいところを見られたからだろう。
焚き火を完全に消し終えたエルテが、そっと手を握ってきた。温かい掌を、どうしてもアレグリアは払いのけることができない。
手を繋いだまま妖精郷近くへと戻る。数人の兵士が、そこにはいた。
「エルテ王子、現在ビドゥーリの姿はございません」
「ご苦労。交代で見回りを続けてくれ。リアも気をつけて帰ること」
「子供じゃあるまいし。……でもありがとう、エルテ。皆も」
手を外し、微笑んでエルテを見る。エルテに笑みを返され、また小さく胸が疼いた。うつむきつつ羽を出して、オーロラのような壁に飛びこむ。少し、結界が弱い気がした。やはりフィロンの力が弱まってしまっている。
――皆のためにも、早く長老を操れるようにならなくちゃ。
決意し、洞へと向かう。焦りと共にそれでも脳裏に浮かぶのは、エルテの顔だった。
だが、フィロンが身籠もっていることはまだ言えない。アレグリアとしては今すぐに報告したい気持ちがあるのだけれど、姉の心を無下にすることはどうしてもできなかった。
「縁談? 兄上に?」
妖精郷の近く、森の中、一緒に歩いていたエルテが目を丸くしてこちらを見る。
「う、うん。そんな話は出てないのかなって」
「あー、何人か候補は挙がってたみたいだけど、兄上は蹴ってる。全部」
「そう……」
アレグリアはほっとした。これで婚約者が現れたとなれば、ソルタオに抗議するところだ。例えフィロンが身を引こうとしていようとも。思い合う二人を邪魔するのは、今のところ王の地位だけで、それなら自分の努力でなんとかすることができる。
少しの間沈黙が続き、鳥の鳴き声だけが大きい。ごく微かにだが、ソルタオが貸してくれた兵士たちの声も遠くに聞こえた。
今、森の中は兵士たちとエルテに見守られている。一般の人間は、結界が弱まっても妖精郷に入ることは難しい。ビドゥーリが来ても包囲網を敷いている限り、安全だ。
「……どうしてそんなことを気にするんだよ、リア」
「ソルタオ様は王位を継がれる。もう、婚約者やそういった人がいても、全然おかしくないんじゃないかって」
「まだ兄上のことが気になるんだな」
「私が気にしてるのは姉様のことだよ」
どこか不服そうにしているエルテに苦笑した。思った以上に吹っ切りが早かったな、と自分で感じる。ソルタオに対しての思慕は、綺麗さっぱり消え去ってしまった。もちろん、尊敬の念は抱いたままだが。
「あの二人は好き同士だから、か。リアはそれでいいわけ?」
「姉様とソルタオ様、そして皆が幸せになってくれるなら」
「その幸せの中に、リアはいないのかよ」
「私?」
話しているうちに湖畔まで来た。秋の陽射しが水面が反射していて、とても美しい。
「私のことはいいんだ。皆が幸せになるのが、私の幸せ」
大言を吐いたな、と小さく苦笑した。それでも本当の願いだ。フィロン、ソルタオ、妖精郷に住む同族たち。彼らが笑顔になってくれれば、自分は満足できる。それにはやはり、長老と意志の疎通ができなければいけないだろう。
「……その中にオレはいる?」
「もちろん。エルテにだって幸せになってほしいって思う」
「オレが他の誰かと一緒になっても?」
「え」
石を蹴飛ばしたエルテを見た。どこか不満げなその顔に、もしかして、と口を開く。
「誰かとの婚約が決まった……とかなのか」
「オレも成人になったから。候補は出てる」
「そ、そっか」
エルテが結婚する――考えるとなぜか、胸が軋んだ。無視してほとりに近付き、加護によって未だ温い水を掬う。水には自分の顔が映っていて、それはあまりに強張っていた。
「リアはそれでも、オレを祝うつもりなんだな」
「……エルテが幸せなら、それでいいよ」
ぱちゃん、と掬った水を落として、隣にしゃがんだエルテに笑う。エルテは真剣な顔で何も言わない。水を手にして、それから。
「それ」
「わぷっ」
いきなり水をかけてきた。しかもアレグリアの顔面に。
「な、何をするんだ!」
「ちょっとムカついたから」
「なんで……わっ」
エルテの動きは止まらない。今度は水を、全身に浴びせるように大量にかけてくる。菜の花色のドレスが水で重みを帯びた。手で防護しても飛沫の量が酷く、アレグリアの体は全身水浸しになる。ふるふると頭を振って、怒りのために立ち上がった。
「な、なんてことするんだ……せっかく降ろしたばかりのドレスなのに!」
「リア」
「……なんだ」
「肌、透けてる」
へ、と自分の体を見下ろした。しとどになった体、ドレスが水によって肌に張りついたためか、確かに素肌が露わになっている。下着をつけない癖が仇となった。
「ば、馬鹿っ。見るな!」
声を上げて腕を使い、体を隠す。身を丸めたこちらへ、エルテが無言のまま近付いてくるものだから、一歩、後退った。
「な、何?」
「こうして昼のときに素肌見るの、はじめてだなって思ってさ」
「当たり前だろう……って、わわっ」
強引に手を引かれ、思わずたたらを踏んだ。そのまますっぽりとエルテの両腕に抱き留められる。胸板に顔を押しつけられ、知らずのうちに鼓動が速まった。
鳥の声が遠くに聞こえる。心臓の音だけが大きく全身を支配していた。身動ぎしても、エルテの腕は微動だにしない。
「エルテ……?」
「オレはリアにも幸せになってほしい」
「う、うん……」
「ついでに、気持ちよくなってほしい」
「気持ちよく……?」
顔を上げた瞬間、エルテが額に口付けしてきた。頬が赤くなる。唇から伝わる熱は熱く感じた。慌てふためく自分を無視して、瞼、耳、頬とキスを続けるエルテは、どこか扇情的な視線でこちらを捉える。
唇の柔らかさ、情熱を灯す赤い瞳。触れられている、見つめられている、そう思うたび心臓が高鳴った。顎を持ち上げられて、すぐ間近に自分の顔がある、エルテの瞳に自分が映っていることがありありとわかる。
あ、と吐息を漏らした瞬間、声を塞ぐように唇を重ねられた。心臓が今にも破裂しそうで動悸がやまない。思わず目を閉じる。ゆっくり、愛撫するようにエルテの舌先が唇の輪郭をなぞってきて、背筋に甘い痺れが走った。
体から力が抜けた、その刹那を見計らってか、エルテの舌がやんわりと口腔をまさぐってくる。あの夜とは違って優しく、熱烈な口付け。緊張がほどけ、心までも蕩けていく気がした。
エルテの片手が胸にあてがわれる。そのまま、柔らかく揉みほぐされた。尖った乳頭を執拗に指で嬲られ、淫悦がアレグリアの理性を壊していく。
「だ、だめ。エルテ」
「リアを気持ちよくさせるだけだから」
残った悟性が静止の声を出させたが、エルテの手つきは妖しいままだ。再び口付けされ、ふかふかの草むらに体を横たえられる。透けたスカート部分をたくし上げられた。水滴が草に落ち、腹までが露わとなる。
「可愛い、リア」
「やっ……んんっ」
乳暈全部をドレスの上ごと口に含まれ、舐められた。張りついた乳房の尖りは、エルテの口の中で舌先によっていじめられている。そのつど体が勝手に跳ね上がる。
「こんなのだめ……あ、んっ」
快楽に流されてはいけない。自分にはすべきことがある――そう思うのに、エルテの頭を押す手に力が入らなかった。上擦った声が自分のものだと信じられない。自ら弄るのとでは段違いの悦楽は、少し怖かった。
「人……来ちゃう、から……っ」
「平気だよ。オレがいる場所に、他の奴らは来ない」
口で手を押さえるこちらを見下ろし、エルテは優しく微笑む。その手が伸びた。アレグリアの股間へと。
「ふあっ……!」
下着の上から秘芽を爪弾かれ、びくんと体を震わせた。何度も、何度も、指の腹で嬲られるたび、体の奥から愛蜜が溢れてくるのがわかる。
「リアの体、やっぱり甘いな」
「やめ、てぇ……そこ、だめ……」
「やめない。可愛いから」
言うとエルテは胸から腹、下腹部を舐めて、ついには蜜で湿った淫芽すらも口に含む。
「んん! やっ、あ、ああん!」
じゅる、と音を立てて秘部を吸われ、アレグリアの口から嬌声が上がった。下着の横から指を入れられて、隘路の中でゆっくりと抽送がはじまる。
「絹みたいだな。狭くてきついけど……触り心地がいい」
「怖い……エルテ! やめて、私っ、私、もうっ」
自分の指では届かなかった箇所、弱点のような部分を掻き回され、つつかれるつど、電撃のような感覚が全身に走った。自慰では決して得られない快感に、頭がおかしくなりそうだ。
「イきそうか? イって、リア」
「い、く……私、だめ、イく……ぅっ!」
頤をのけ反らせ、絶頂に甘い悲鳴を喉から迸らせた。四肢に力が入らない。しかし法悦の余韻に浸る余裕など、なかった。
「甘いな、リアの愛液。ずっと吸ってられる。ちゃんと綺麗にするから」
「やあ、舐めちゃ……だめぇ……っ」
下着を剥ぎ取られ、秘路と肉芯をいじられては達する――
幾度絶頂へと導かれたのだろう。アレグリアが気を失うまで淫らな行為は続き、次に目を覚ましたときにはもう、黄昏が空に広がっていた。
目の前には焚き火があり、暖かい。いつくらいから気絶していたのかわからなかったが、ドレスは乾いていた。下着もはいている。体中がすっきりしていて、でも少し、気怠い。
「おはよう、リア」
「……何がおはようだ、馬鹿」
寄りかかっていたのはエルテの肩で、エルテが悪びれもせず挨拶をしてくるものだから、アレグリアは慌てて離れて睨みつけた。
「なんで怒ってんだ?」
「あ、あんなことするから……に決まってるだろう」
「最後まではしてない。今日はリアを悦ばせたかっただけだから」
「悦ばせるって……」
いやらしい声を外で出してしまったこと、そして何より、エルテに唇だけじゃなく、大事な箇所を預けてしまったことに顔が熱くなった。使命があるというのに、悦楽に溺れた自分が恨めしい。
「……帰る。長老の木と思念、通じ合わせないといけないし」
「少しは気分転換できたろ?」
「馬鹿っ」
エルテが明るく笑いながら、焚き火を消しはじめる。その横顔、所作を見てるとなぜか胸がまた、どきどきした。体を許してしまったからだろうか。それとも。
「妖精郷まで送るから」
「うん……」
エルテといると、普段ならとても落ち着くのだ。なのに今は胸の鼓動が大きい。きっと、と皺になったドレスをはたいて立ち上がる。恥ずかしいところを見られたからだろう。
焚き火を完全に消し終えたエルテが、そっと手を握ってきた。温かい掌を、どうしてもアレグリアは払いのけることができない。
手を繋いだまま妖精郷近くへと戻る。数人の兵士が、そこにはいた。
「エルテ王子、現在ビドゥーリの姿はございません」
「ご苦労。交代で見回りを続けてくれ。リアも気をつけて帰ること」
「子供じゃあるまいし。……でもありがとう、エルテ。皆も」
手を外し、微笑んでエルテを見る。エルテに笑みを返され、また小さく胸が疼いた。うつむきつつ羽を出して、オーロラのような壁に飛びこむ。少し、結界が弱い気がした。やはりフィロンの力が弱まってしまっている。
――皆のためにも、早く長老を操れるようにならなくちゃ。
決意し、洞へと向かう。焦りと共にそれでも脳裏に浮かぶのは、エルテの顔だった。
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる