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兎小屋の口封じ
ミサンガと人探し
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連続乱心事件が浪人集団「兎小屋」による四杉大臣襲撃のために行われた仕込みだったという形で幕を閉じて早々のこと。
銀刀──杉田銀時らの活躍により無傷で生還した大臣は急病により亡くなってしまった。
死去が公表されて世間が大騒ぎの最中、これ以上は士の領分ではないということで、事件終息の立役者たる係長たちには久々の休暇が舞い込む。
銀髪の美丈夫も青みがかった美女もこの日は骨休め。
年齢相応のカジュアルコーデで待ち合わせをしていた。
そんなことなど知る由もなく、まだ独り身の探偵は事務所で暇を持て余していた。
いくらAKMから妖刀絡みの事件依頼が入るようになったとは言え、肝心の稼ぎ頭が出勤するのは週末だけ。
そうなると所長である律子一人でやれる仕事は限られるわけだが、そもそも依頼が積み重ならないうちはやることがない。
昨日は甫と別れてから1日中ゴロゴロと休んでいたのだが流石にそろそろ仕事が欲しくなる。
「仕事がないんだったら、そのぶん早く報酬を振り込んで欲しいわよ。特に日曜日のは金一封があっても良いくらいじゃない」
財布と通帳を確認しながらボヤいていた律子だったわけだが、そんな彼女も急な来客に飛び上がってしまった。
事務所を設立してから数えるほどしか鳴らなかった呼び鈴に驚いた彼女が玄関先に向かうとサングラスをかけたモジャモジャ頭の男性。
傍らに控えているのは貧弱そうな痩せた男性という何処となく生臭みのある雰囲気を醸し出す二人組である。
出迎えた律子に明かした彼らの素性は「フォー・カス」という週刊誌の編集者で、伝説の探偵と呼ばれた天樹の後継者である律子の能力を頼りに来たらしい。
「──というわけで、このおまもりを使って下須を探してほしいのです」
サングラスをかけた男──小山内(おさない)が差し出したブレスレット型のおまもりは捜索対象である下須フミハルが肌見放さず身につけているのと同じモノ。
彼は編集部の関係者全員で妖気がこもった揃いのおまもりを持っているので祖母譲りのトランス能力を使ってフミハルを探してほしいと言うのだがその裏側はだいぶ黒い。
律子もおまもりから発する妖気の質と彼らの雰囲気に不信感を抱いたわけだが提示された目先の報酬に目がくらんでしまう。
なにせ前金だけで30万円。
全財産をかき集めても高校生のお小遣いに毛が生えた程度しか財布に残っていない今の律子には目に毒な金額だった。
「わかりました。この名探偵に、まっかせなさい」
契約が成立したことに、ニヤニヤとしながら事務所を出ていく小山内たち。
彼らからすればフミハルが手元に戻れば30万円など安いものであり、戻らなければ別の方法で元を取ればいい。
幸いあの女は使えるだろう。
普段であれば律子もそんな悪意に気が付かないほど愚鈍ではないのだが、悲しきは懐の寂しさか。
この金があれば気がかりだった甫の歓迎パーティーを景気よく開けると思った彼女は警戒心が緩くなっていた。
銀刀──杉田銀時らの活躍により無傷で生還した大臣は急病により亡くなってしまった。
死去が公表されて世間が大騒ぎの最中、これ以上は士の領分ではないということで、事件終息の立役者たる係長たちには久々の休暇が舞い込む。
銀髪の美丈夫も青みがかった美女もこの日は骨休め。
年齢相応のカジュアルコーデで待ち合わせをしていた。
そんなことなど知る由もなく、まだ独り身の探偵は事務所で暇を持て余していた。
いくらAKMから妖刀絡みの事件依頼が入るようになったとは言え、肝心の稼ぎ頭が出勤するのは週末だけ。
そうなると所長である律子一人でやれる仕事は限られるわけだが、そもそも依頼が積み重ならないうちはやることがない。
昨日は甫と別れてから1日中ゴロゴロと休んでいたのだが流石にそろそろ仕事が欲しくなる。
「仕事がないんだったら、そのぶん早く報酬を振り込んで欲しいわよ。特に日曜日のは金一封があっても良いくらいじゃない」
財布と通帳を確認しながらボヤいていた律子だったわけだが、そんな彼女も急な来客に飛び上がってしまった。
事務所を設立してから数えるほどしか鳴らなかった呼び鈴に驚いた彼女が玄関先に向かうとサングラスをかけたモジャモジャ頭の男性。
傍らに控えているのは貧弱そうな痩せた男性という何処となく生臭みのある雰囲気を醸し出す二人組である。
出迎えた律子に明かした彼らの素性は「フォー・カス」という週刊誌の編集者で、伝説の探偵と呼ばれた天樹の後継者である律子の能力を頼りに来たらしい。
「──というわけで、このおまもりを使って下須を探してほしいのです」
サングラスをかけた男──小山内(おさない)が差し出したブレスレット型のおまもりは捜索対象である下須フミハルが肌見放さず身につけているのと同じモノ。
彼は編集部の関係者全員で妖気がこもった揃いのおまもりを持っているので祖母譲りのトランス能力を使ってフミハルを探してほしいと言うのだがその裏側はだいぶ黒い。
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幸いあの女は使えるだろう。
普段であれば律子もそんな悪意に気が付かないほど愚鈍ではないのだが、悲しきは懐の寂しさか。
この金があれば気がかりだった甫の歓迎パーティーを景気よく開けると思った彼女は警戒心が緩くなっていた。
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