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感想戦
入浴
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予告状から始まった連続乱心事件は札付きの浪人──ドクターリヒターを中心とした「芒終月」の縁者「兎小屋」による大臣襲撃事件のための揺動という形で幕を下ろした。
警察がそう断定する頃には襲われた側である大臣は亡くなっているのだが死因が襲撃の際に切っ先を突きつけられた妖刀によるものであると見抜くのは難しい。
大臣の周囲が病死と判断し、襲われた矢先での発表では都合が悪いと閉ざしている口が開くまでの僅かな余暇。
直近一ヶ月弱の激務から先んじて休暇を与えられた彼女は久方ぶりに兄の家に来ていた。
「いくら一段落ついたとはいえ銀時なら今日は来ないぜ。そんなにアイツと一緒に居たいんだったら自分から押しかければ良いじゃねえか」
普段大きなヤマを乗り越えた後に銀時と斬九郎は二人で打ち上げを頻繁に行っている。
楓華もそれに参加し「あわよくば酔った勢いで男女関係の果てまで」と、士としての彼女しか知らない人間には信じられないほど淑女らしからぬ皮算用していた。
だが彼女の恋心を昔から知っている兄には全てお見通し。
しかも親友と妹の関係は「さっさと行き着けば良い」とさえ考えていた。
「それはいけませんわ。銀時様が休めと言っているのだから、万が一にも備えておかないと。それにAKMの上の連中やら代議士の先生やらが集まる場に呼ばれても居ないわたくしが押しかけても迷惑でしょう?」
「だったらお前が考えているような事はシても良いのかよ。しかもオレの家で」
「息抜きは別ですわよ。それにナニを考えているんですか、お兄様」
「言わせるなよ恥ずかしい」
身内贔屓ながら「美男美女」と思っている妹と親友のナニを想像した斬九郎は少し赤らめた頬を咳払いをして誤魔化す。
そして一旦妹の注意を逸らす目的で別のことを彼女に提案した。
「それより……まだ風呂には入っていないんだろう? 沸かしてあるし入っていけよ」
「折角ですがシャワーなら署で済ませていますわよ」
「ダメだダメだ。こういうときには肩までゆっくり湯浴みしないと。お前は女の子なんだから肌や髪もケアしなきゃいかんし、何より万が一アイツが顔を出したときに粗相があったらオレも兄として恥ずかしいからな」
「そう言われましても……」
「普段から何時お前が泊まっても良いように色々と準備はしてあるんだ。遠慮するなって」
「お兄様がそこまで強く言うのなら。ですが覗いたら怒りますわよ」
斬九郎としては強引な理屈だというのは承知の上だったわけだが楓華も押し切られるように承諾して風呂場に向かう。
斬九郎の家には実家暮らしの頃に妹が使っていたバスグッズと同じ品一式を揃えてあり、楓華自身も以前何度か泊まった際にも借りている。
なので軽口を叩きつつも風呂場に向かって脱衣場の戸を閉ざすと、一糸まとわぬ姿となって浴室に飛び込んだ。
浴槽の蓋を開けると張られていた湯は乳白色のにごり湯。
疲労回復効果のある入浴剤が既に溶かされていた。
風呂好きの兄が選んだことも踏まえれば薬効も高いのだろうと判断した楓華は軽く身体を清めてから湯船に浸かる。
四肢の末端からじんわりと伝わる熱が心地よく、身体中の力が抜けていく。
思わず口が半開きになった楓華はゆっくりと息を吐き出した。
瞳を閉じて疲れを湯の中に溶かしていく彼女の瞼の裏に映る光景は昼間の出来事。
まるで焼き切れそうな脳髄が大事な記憶として残そうとしているかの如き反芻である。
警察がそう断定する頃には襲われた側である大臣は亡くなっているのだが死因が襲撃の際に切っ先を突きつけられた妖刀によるものであると見抜くのは難しい。
大臣の周囲が病死と判断し、襲われた矢先での発表では都合が悪いと閉ざしている口が開くまでの僅かな余暇。
直近一ヶ月弱の激務から先んじて休暇を与えられた彼女は久方ぶりに兄の家に来ていた。
「いくら一段落ついたとはいえ銀時なら今日は来ないぜ。そんなにアイツと一緒に居たいんだったら自分から押しかければ良いじゃねえか」
普段大きなヤマを乗り越えた後に銀時と斬九郎は二人で打ち上げを頻繁に行っている。
楓華もそれに参加し「あわよくば酔った勢いで男女関係の果てまで」と、士としての彼女しか知らない人間には信じられないほど淑女らしからぬ皮算用していた。
だが彼女の恋心を昔から知っている兄には全てお見通し。
しかも親友と妹の関係は「さっさと行き着けば良い」とさえ考えていた。
「それはいけませんわ。銀時様が休めと言っているのだから、万が一にも備えておかないと。それにAKMの上の連中やら代議士の先生やらが集まる場に呼ばれても居ないわたくしが押しかけても迷惑でしょう?」
「だったらお前が考えているような事はシても良いのかよ。しかもオレの家で」
「息抜きは別ですわよ。それにナニを考えているんですか、お兄様」
「言わせるなよ恥ずかしい」
身内贔屓ながら「美男美女」と思っている妹と親友のナニを想像した斬九郎は少し赤らめた頬を咳払いをして誤魔化す。
そして一旦妹の注意を逸らす目的で別のことを彼女に提案した。
「それより……まだ風呂には入っていないんだろう? 沸かしてあるし入っていけよ」
「折角ですがシャワーなら署で済ませていますわよ」
「ダメだダメだ。こういうときには肩までゆっくり湯浴みしないと。お前は女の子なんだから肌や髪もケアしなきゃいかんし、何より万が一アイツが顔を出したときに粗相があったらオレも兄として恥ずかしいからな」
「そう言われましても……」
「普段から何時お前が泊まっても良いように色々と準備はしてあるんだ。遠慮するなって」
「お兄様がそこまで強く言うのなら。ですが覗いたら怒りますわよ」
斬九郎としては強引な理屈だというのは承知の上だったわけだが楓華も押し切られるように承諾して風呂場に向かう。
斬九郎の家には実家暮らしの頃に妹が使っていたバスグッズと同じ品一式を揃えてあり、楓華自身も以前何度か泊まった際にも借りている。
なので軽口を叩きつつも風呂場に向かって脱衣場の戸を閉ざすと、一糸まとわぬ姿となって浴室に飛び込んだ。
浴槽の蓋を開けると張られていた湯は乳白色のにごり湯。
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四肢の末端からじんわりと伝わる熱が心地よく、身体中の力が抜けていく。
思わず口が半開きになった楓華はゆっくりと息を吐き出した。
瞳を閉じて疲れを湯の中に溶かしていく彼女の瞼の裏に映る光景は昼間の出来事。
まるで焼き切れそうな脳髄が大事な記憶として残そうとしているかの如き反芻である。
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